概要. 対称半正定値な連立一次方程式の効率的で頑健な反復解法を提案する.基礎反復法としては最小二乗解に収束するMINRES 法を採用し,それに問題の等価性を保ち易い右前処理を適用する.まず,右前処理MINRES 法を定式化し,特に通常CG 法の両側前処理の計算量を削減するEisenstat’s trick をSSOR 右前処理に適用したMINRES 法と,同手法のリスタートを提案し,有効性を数値実験により報告する.
概要. アメリカ合衆国では議員の配分方式の合憲性に関し,一度だけ,連邦最高裁で審議された.以前よりBalinskiらは,Hill方式が小州に有利であり,Webster方式には大州・小州間に偏りがないと主張していたが,この裁判では結局その主張が認められず,Hill方式が合憲という判決で決着した.本稿では,このときの国勢調査局のErnstの主張を検討し,彼の主張の一部が妥当性に欠けることを明らかにする.
概要. 数値計算に幅広く採用されている浮動小数点演算は高速である一方で誤差の問題を抱えている.そのために,計算結果と真値の距離の上限,すなわち絶対誤差の上限を求める丸め誤差解析の研究が進んでいる.本稿では,内積に対する丸め誤差解析の最近の結果をその特徴を含めて紹介しつつ,著者らにより改善できた誤差評価式とその特徴を紹介する.
概要. 本研究では,ガン細胞に対する免疫応答を記述する環境依存型モデルを扱う.このモデルでは,腫瘍免疫学において指摘されている免疫能の飽和性と呼ばれる限界値があることを理論的に説明することができる.またエフェクター群の免疫作用によりガンが局所的に駆逐される様子に対応する局所消滅性を示すことができる.さらにモデル論的立場から生存性および共存性に関する結果について考察する.
概要. テクスチャ解析は,画像の空間パターンを数値化し画像分類を行う手法である.第2次高調波発生は,近年のバイオイメージングの発展を支える技術であり,医学研究への応用が進んでいる.この2つの技術を融合した研究は,生命現象の基礎的な理解のみでなく,病態診断への期待もあり,活発に研究が行われ始めている.本論文では,これらがどのような医学的問題を解決するために利用されているのかを解説する.