整数ベキxpの高速計算法としてbinary powering と呼ばれる方法がある.この方法を用いるとlog p に比例した乗算回数でxpが求まる.一方,xが浮動小数点数の場合,xpの計算はいかなる計算法を用いようとも相対誤差がおおよそp倍に拡大される不安定な問題である.本論文では,x = 1 + d, (|d| ≪ 1) という特殊な場合を対象とし,binary powering を改良しxpを高速かつ高精度で計算する方法を提案し,数値実験でその効果を確認する.
概要. 波動方程式で用いられるPerfectly Matched Layer に基づき,流体方程式を簡約化した非線形渦度方程式に仮想吸収層を実装した.吸収性能を評価する理論的な指針として残留率を導入し,有限差分法を用いて渦の並進運動やカルマン渦列の数値計算を行って,渦度方程式でも仮想吸収層が有効であることを示した.最適な吸収係数は理論的な残留率の評価だけでは定まらず,グリッド幅や離散化の精度に依存する.
概要. 高齢者の孤独死や認知症徘徊による行方不明者の増加などといった,昨今の高齢化地域が抱える問題を解決するためには,住民同士の支えあいが不可欠である.本論文では,著者らによって行われてきた住民同士の支え合いを促進するための方法の評価を動機として,比較的,小規模の社会ネットワークに対し,その変化を示すための統計的検定手法を提案する.
概要. 本稿では通勤時間帯に焦点を当て,駅利用者が駅構内店舗に立ち寄る行動を数理的に分析する.利用者の性別,店舗の面積や品揃えによって購買行動が異なることをデータから導き,複数店舗の立ち寄り率を店舗内混雑という一つの指標によって説明する.さらに,15 分ごとの駅利用者数のデータを入力として,属性別の店舗利用者数を推定する数理モデルを構築する.
概要. 連続なウェーブレットとして世界で初めて構成されたのがStömberg ウェーブレットである.本論文では,これまでのStömberg ウェーブレットの導出方法を再考し,新たな類似タイプのスプラインウェーブレットを導くことを目的とする.また,一般に最もよく利用されるスプライン関数N4(x) に対応する4 次のStömberg ウェーブレットと,その類似タイプの対称性などの性質を調べる.
概要. 本稿では,周波数領域のサポートがコンパクトなウェーブレット関数を用いた,連続的なウェーブレット係数を求める計算における,演算量削減法を提案する.そして帯域制限フィルタを施し,周波数領域のサポートがコンパクトになるように設計された,近似Gabor Wavelet を用いた,連続ウェーブレット変換に適用する.
概要. 聴性脳幹反応(ABR)は,他覚的聴力検査の重要な指標の一つであり,音刺激後 10 ミリ秒で得られる誘発脳波を 2000 回程度加算して得られる.本稿では加算過程の波形に離散定常ウェーブレット解析を適用することにより,ABR 速波成分は 10 回程度の加算で得られることを示す.また,蔵本モデルを適用することにより,ABR 緩徐波成分が自発脳波と同期して得られることを報告する.