再生医療は,21世紀における新しい画期的な医療としての重要な役割を担うようになるものと,大きな期待が寄せられている。外科学の世界においても,19世紀までの病巣切除術から,20世紀初めの病巣切除後の再建術の導入,さらには,20世紀半ばからの移植術の進歩,そして今世紀には,ドナー不足や免疫抑制薬からの解放を目指して,新たに再生医療が導入されようとしている。わが国で“再生医療”が認知されてまだ6~7年しか経過していないにもかかわらず,現在わが国では,再生医療の開発研究,及びその臨床応用が予期された以上の速さで幅広い展開を示しつつある。現在すでに,皮膚,骨・軟骨,歯周組織,角膜,末梢性血管・心臓,肝臓,膵臓,神経(末梢・中枢),食道等,実に多くの重要組織・臓器を対象とする再生医療の臨床応用が広範な展開を示すとともに,それに附随してかなりの数のベンチャー企業も立ち上がってきている。今後,再生医療の臨床応用,及びその実用化に関しては,加速的な発展が見込まれる。わが国における再生医療の真の発展を目指す上で重要な点は,独創的な素晴らしい研究結果が得られた時に,それを如何にして実用化に結びつけていくかということである。もう一つは,再生医療に関する積極的な啓発活動を行い,十分に社会的コンセンサスが得られるように努めることである。今回,再生医療のアプローチ(治療法)の一つとして,初めて理学療法を取り上げてその分類の中に加えた。本稿では,再生医療について可及的に簡潔な分類・整理を行うとともに,その実用化の現状,及び将来展望についても簡単に概説した。再生医療が,患者さんの病状の改善,病気の進行の予防と治療,QOL(生活の質)の向上に寄与しつつ,夢の治療を提供し,21世紀における人類の健康と福祉,そして人類の幸福に多大な貢献をなし得ることを切に望む。
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