日本集中治療医学会雑誌
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16 巻, 3 号
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今号のハイライト
総説
  • 射場 敏明, 真弓 俊彦
    2009 年 16 巻 3 号 p. 255-262
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    最新の臨床試験結果には,重症セプシス治療のスタンダードに再考をうながすものも多い。例えば,強化インスリン療法の有効性には,the Efficacy of Volume Substitution and Insulin Therapy in Severe Sepsis (VISEP) studyにより疑問符がつけられ,ステロイドのショックに対する有用性に関しては,the Corticosteroid Therapy of Septic Shock (CORTICUS) studyにより否定的見解が優位となっている。また,免疫グロブリンに関しては,有効性を否定するthe Score-Based Immunoglobulin G Therapy of Patients with Sepsis(SBITS) studyの結果が発表される一方で,有効性をサポートするシステマティックレビューも複数発表されている。活性化プロテインCに関しては,重症例における有用性が再確認される一方で,軽症例では無効であることや出血性有害事象の増加が認知されるようになってきた。このように重症セプシスの治療は,新たなエビデンスの追加によってむしろ混迷を増しているようにも見受けられる。折しもSurviving Sepsis Campaignガイドラインは2008年に改訂版が公表されたばかりであるが,重症セプシスの標準治療は,不安定なエビデンスによっているものも多く,今後も再考が必要であろう。
解説
  • 小竹 良文, 佐藤 暢一
    2009 年 16 巻 3 号 p. 263-272
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    重症患者管理において心拍出量測定による酸素供給量の評価は有用であるとされてきた。これまで心拍出量の標準的な測定方法は肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法であったが,最近,低侵襲心拍出量モニタが注目されている。これらのモニタの評価にあたっては,精度の評価が重要となる。異なるモニタから得られる結果の一致度を検討する手段としては,相関分析や回帰分析よりも,Bland-Altman分析が適切である。Bland-Altman分析を適切に解釈するためにはいくつかの注意点が存在する。特に一致度の許容範囲をあらかじめ定義しておくことが望ましいとされているが,基準は確立されておらず,モニタの特徴に合わせた評価が必要である。また,繰り返し測定によって1人の対象から複数のデータを収集することが一般的になりつつあるが,この場合は特殊な統計学的処理を必要とする。本稿では自験例を示しながら,これらの点に関して解説を加えた。
原著
  • 東島 潮, 寺尾 嘉彰, 一ノ宮 大雅, 田辺 孝大, 三浦 耕資, 福崎 誠
    2009 年 16 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】中心静脈血の炭酸ガス分圧(venous carbon dioxide tension, PVCO2)と動脈血の炭酸ガス分圧(PaCO2)の較差(DCO2)は,心係数(cardiac index, CI)と心拍出量(cardiac output, CO)の値にかかわらず強い負の相関関係があるとの報告があるが,DCO2がCIの代わりになり得るかを検討する。【方法】対象は中心静脈カテーテルが挿入されてICUに入室した患者20症例である。ICU入室の翌日にPaCO2とPVCO2およびCOを測定し,その結果からDCO2とCIを算出した。【結果】CIとDCO2間の有意な相関関係は,正常心拍出量の患者(CI≧2.5 l·min−1)(r2=0.003,P=0.87)では認められず,低心拍出量の患者(CI<2.5 l·min−1)(r2=0.509,P=0.03)においてのみ認めた。【結論】DCO2はCIの代わりにはならない可能性が示唆された。
  • 唐木 千晶, 笠原 群生, 清水 直樹, 六車 崇, 齊藤 修, 齊藤 一郎, 中川 聡
    2009 年 16 巻 3 号 p. 279-288
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    劇症肝不全に対する血液浄化療法などの内科的治療,肝移植などの外科的治療は近年発展してきている。しかし小児劇症肝不全は症例数が少なく,血液浄化療法など内科的治療の適応や効果判定,肝移植の適応は明らかではない。そこで,国立成育医療センターにおいて,2年間で経験した小児劇症肝不全10症例を,集中治療管理・生体肝移植適応の2点から検討した。10症例中生存は8症例で,うち生体肝移植に至った症例は7症例であった。今回の検討より,小児劇症肝不全は発症早期からの集中治療の介入が重要であること,また急速に悪化し肝移植に至る前に死亡している症例もあると考えられた。このことからも,肝移植が施行可能な施設での発症早期からのmultidisciplinaryな医療チームによる集中治療管理が,小児劇症肝不全の転帰の改善に重要であると思われる。
症例報告
  • 高田 基志, 山本 拓巳, 井上 智重子, 酢谷 朋子, 新家 一美, 鈴木 照, 土肥 修司
    2009 年 16 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    患者は67歳,女性。めまいと嘔吐を主訴に経過観察入院となったが,入院3日目に胸部不快感とSTの上昇を認め,緊急心臓カテーテル検査が実施された。冠動脈に有意狭窄はなかったが,心尖部の収縮低下を認め,たこつぼ心筋症と診断された。ICU入室時,頻脈を認めたため,ランジオロールにて心拍数のコントロールを試みた。また悪心・嘔吐に対してドロペリドールを投与したところ,急激な血圧低下と頻脈を来たした。急速輸液とフェニレフリン投与は無効であった。ランジオロールを増量したところ,血圧の上昇を認めた。プロプラノロール内服によりランジオロールを漸減でき,入室3日目に一般病棟に転床した。しかし後日イレウスを来たし,不幸な転帰をとった。病理解剖の結果,褐色細胞腫が判明した。本症例の左室壁運動異常の原因は過剰カテコラミンによる微小循環障害と推察された。またランジオロール投与は左室壁運動を正常化し,循環動態を改善したと考えられた。
  • 柏木 静, 三上 敦子, 土屋 智徳, 西沢 英雄
    2009 年 16 巻 3 号 p. 295-298
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性。腎結石に対して経皮的腎砕石術が施行された。術翌日より血圧低下,血小板数および凝固能の低下,呼吸状態の悪化をきたしたためICUに入室し,敗血症性ショックと診断された。急性呼吸促迫症候群も併発したが,抗生物質投与,人工呼吸管理,カテコラミン投与などにより全身状態は徐々に改善し,入室10日目に人工呼吸器より離脱した。経皮的腎砕石術後の敗血症性ショックの合併は非常に稀であるが,その原因として結石内細菌の存在と,腎盂内圧上昇に伴う細菌の血管内への混入が考えられている。低侵襲な手術である経皮的腎砕石術後にも敗血症性ショックを合併し得ることを念頭において,術後管理を行う必要があると考えられた。
  • —血清CK高値で急性腎不全発症は予測できるか?
    牛尾 修太, 武居 哲洋, 伊藤 敏孝, 竹本 正明, 村上 知幸, 岩本 彩雄
    2009 年 16 巻 3 号 p. 299-303
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ピーク血清CK値が50,000 IU·l−1を超える横紋筋融解症例の大多数が,急性腎不全を発症するとされる。我々は,低ナトリウム血症とエタノール誤飲をそれぞれ原因とし,ピーク血清CK値がそれぞれ541,300 IU·l−1,621,912 IU·l−1と著しい高値を呈した重症横紋筋融解の2症例を経験した。細胞外液の大量輸液にて尿量の確保に努め,慎重に腎機能をモニターしたが,経過中一度も腎不全を合併することなく軽快しえた。2症例のAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアは,それぞれ11点,2点と軽症であり,経過中にsystemic inflammatory response syndrome(SIRS)を合併したのは2症例とも入院初日のみであった。横紋筋融解症における急性腎不全の発症は,筋融解の程度よりもAPACHE IIスコアに示される発症時の重症度や,その後のSIRSの持続に示される全身性炎症反応の期間に依存している可能性が示唆された。
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