日本集中治療医学会雑誌
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17 巻, 4 号
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今号のハイライト
総説
  • 松田 兼一, 森口 武史, 針井 則一
    2010 年 17 巻 4 号 p. 479-489
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    65年前,急性腎不全(acute renal failure, ARF)患者に血液浄化療法(blood purification, BP)を施行し,世界で初めて救命して以来,数々のBPが開発され臨床応用されてきた。現在,BPは人工呼吸療法と並ぶ集中治療には必要不可欠の治療法となっている。しかし,現在になっても,いつからBPを開始するか,持続的BPと間欠的BPのどちらが有用か,血液浄化量は大きい方が良いのか否か,血液浄化器の膜素材によって臨床効果は異なるのか,など多数の争点が挙げられ,未だ明快な回答が得られていないのが現状である。近年,ARFの診断基準が新たに示され,BPの標準化が開始されようとしている。我が国における集中治療の医療レベルは世界水準を上回っていると考えられ,データベースを構築してまとめることで,その医療レベルの高さを世界に発信し,世界の標準化の波に乗ることが可能となると考える。
原著
  • 黒木 千晴, 垣花 泰之, 中原 真由美, 安田 智嗣, 村山 裕美, 下坂 美佐子, 今林 徹, 上村 裕一
    2010 年 17 巻 4 号 p. 491-498
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    接着分子の一つであるE-セレクチンと臓器障害との関連を調べるため,ICU入室時に全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome, SIRS)の診断基準を満たし人工呼吸管理を要した52例を対象に,ICU入室24時間以内の可溶性E-セレクチン値とSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアおよび各臓器別障害との相関関係を後ろ向きに検討した。可溶性E-セレクチン値とSOFAスコアとの間には有意な相関関係が認められ(P=0.0024),各臓器別検討では呼吸障害(P/F ratio)(r=0.511, P<0.0001)に有意な相関が認められた。一方,acute lung injury/acute respiratory distress syndrome(ALI/ARDS)の病態識別能に関して,可溶性E-セレクチン,白血球数,CRP,顆粒球エラスターゼによるフィブリン分解産物(elastase digests of cross-linked fibrin, E-XDP)を検討したところ,可溶性E-セレクチンが肺障害に対して感度・特異度とも高いことが示された。以上の結果より,SIRS症例の肺障害発症に関して,接着分子の一つであるE-セレクチンが深く関与している可能性が示唆された。
症例報告
  • 井上 明日香, 伊藤 彰師, 森田 正人, 水落 雄一朗, 薊 隆文, 笹野 寛, 祖父江 和哉
    2010 年 17 巻 4 号 p. 499-503
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    傍腫瘍性辺縁系脳炎は,免疫学的機序で精神症状・痙攣・意識障害などを呈する脳炎で,肺小細胞癌や精巣腫瘍,乳癌に伴うことが多いとされている。近年,この傍腫瘍性辺縁系脳炎に含まれ,卵巣腫瘍を伴いN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体に対する抗体が陽性の抗NMDA受容体脳炎の報告がみられるようになった。抗NMDA受容体脳炎の主な治療法は腫瘍摘出術と免疫抑制療法であり,遅滞なく腫瘍摘出術を行えば神経学的予後は良いものの,完全回復には長期間を要する。今回我々は,既往のない23歳の女性で未成熟卵巣奇形腫を伴った抗NMDA受容体脳炎を発症したが,速やかに腫瘍摘出術と種々の免疫抑制療法を行い,厳重な全身管理により重篤な合併症なく改善した症例を経験した。既往のない若年女性が脳炎症状を発症した場合,卵巣奇形腫を伴った抗NMDA受容体脳炎も考慮し,腫瘍があれば早期に摘出術を検討すべきである。また,予後良好な疾患であるが故に,粘り強い痙攣コントロールと合併症予防のための厳密な全身管理が重要である。
  • 松村 洋輔, 織田 成人, 貞広 智仁, 仲村 将高, 安部 隆三, 中田 孝明, 平澤 博之
    2010 年 17 巻 4 号 p. 505-512
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    原発性硬化性胆管炎による肝硬変患者が,Streptococcus pyogenesを起因菌とした特発性細菌性腹膜炎を発症し,劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症(toxic shock-like syndrome, TSLS)に陥った。著明な高サイトカイン血症を呈する敗血症性ショックに対し,通常の敗血症治療に加え,2系列同時施行するポリメチルメタクリレート膜血液濾過器を用いた持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration involving two consoles using a polymethylmethacrylate membrane hemofilter, double PMMA-CHDF)を行い,難治性ショックから離脱し救命し得た。TSLSの病態として,スーパー抗原活性をもつstreptococcal pyrogenic exotoxinがT細胞受容体と反応する結果惹起される著明な高サイトカイン血症が考えられている。そのため,従来の治療法では制御困難な高サイトカイン血症に対して,今回施行したdouble PMMA-CHDFが有用である可能性が示唆された。
  • 鋪野 紀好, 森田 泰正, 服部 憲幸, 川口 岳晴, 上原 多恵子, 小野田 昌弘, 横田 朗, 山本 恭平
    2010 年 17 巻 4 号 p. 513-518
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    血漿交換(plasma exchange, PE),リツキシマブが無効であった難治性の血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)に対し,多剤併用化学療法が有効であった2症例を経験した。【症例1】49歳,女性。TTPに対し,PE,ステロイド,ビンクリスチン単剤,シクロフォスファミド単剤,リツキシマブ投与が無効であったが,多剤併用化学療法を施行し,a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13(ADAMTS13)インヒビターの陰転化ならびに症状の消失を認めた。【症例2】64歳,男性。TTPに対し,PE,ステロイド,リツキシマブ投与が無効であった。経過中脳幹出血を合併したものの,多剤併用化学療法により,ADAMTS13インヒビターは陰転化し,救命し得た。PE・リツキシマブが無効なTTP症例に対する多剤併用化学療法が有効である可能性が示唆された。
  • 入江 洋正, 松本 聡, 兼清 信介, 松田 憲昌, 若松 弘也, 松本 美志也, 坂部 武史
    2010 年 17 巻 4 号 p. 519-524
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    塩酸バンコマイシン(vancomycin, VCM)は,経口投与では腸管粘膜から吸収されないため血中への移行はないとされるが,血清濃度が上昇した2症例を経験した。【症例1】61歳の女性。敗血症,急性腎傷害,Clostridium difficile関連疾患(Clostridium difficile associated disease, CDAD)で,VCMの経口投与と静脈内投与,持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を行っていた。ICU入室4日目にトラフ値が33.7μg/mlであったためVCMの静脈内投与を中止したが,血清濃度の高値が持続した(中止2日後43.5μg/ml,7日後45.0μg/ml)。【症例2】63歳の女性。敗血症,CDAD,急性腎傷害でVCMの経口投与,CHDFを行っていたが,投与10日目のVCM血清濃度は10.3μg/mlであった。2症例とも腸管粘膜傷害と腎機能障害を合併していたため,VCMの腸管粘膜から血中への移行,腎からの排泄障害によって血清濃度が上昇したと考えられた。
  • 田中 進一郎, 布宮 伸, 和田 政彦, 三澤 和秀, 鯉沼 俊貴, 小山 寛介
    2010 年 17 巻 4 号 p. 525-530
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    重症肺高血圧を合併した全身性エリテマトーデス患者の人工股関節置換術の周術期管理を経験した。患者は38歳,女性。12年前に全身性エリテマトーデスを発症し,9年前に肺高血圧を指摘された。3年前から肺高血圧の増悪のため数回の入院歴があり,2年前に在宅酸素療法を導入されていた。大腿骨頭壊死による強い疼痛と日常生活の著しい制限のため,2008年4月,全身麻酔下に片側の人工股関節置換術が施行されたが,患者は全身麻酔導入後から肺高血圧と肺性心の急性増悪を来し,人工呼吸器から離脱できないまま術後2日目に死亡した。術後管理においてシルデナフィルが,その選択的肺動脈拡張作用により一過性ながら呼吸・循環動態を改善させ,肺性心の急性増悪時のレスキューとしての有効性が示唆されたが,同時に併用薬との相互作用により循環虚脱の契機となった可能性がある。
短報
レター
エラータ
調査報告
  • Takeshi Umegaki, Miho Sekimoto, Hiroshi Ikai, Yuichi Imanaka
    2010 年 17 巻 4 号 p. 555-559
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    Objective: Disseminated intravascular coagulation (DIC) is a serious complication associated with various underlying disorders, including sepsis. The aim of the current study was to investigate the status of therapy for patients with sepsis-induced DIC and to examine the association between 28-day mortality and use of anticoagulants. Methods: A multicenter cross-sectional study was performed from January 1, 2007 to December 31, 2008 in 45 ICUs in Japan. Using administrative data, 579 cases of sepsis-induced DIC were identified among patients who were admitted to an ICU, and these cases were used to assess the status of DIC therapy. The 28-day mortality was adjusted for the Critical care Outcome Prediction Equation (COPE) score, the Charlson comorbidity index and patient age, and associations with anticoagulants were then examined. Results: Protease inhibitors were used in 413 cases (71.3%), and antithrombin, unfractionated heparin, and low molecular weight heparin/danaparoid were used in 313 (54.1%), 385 (66.5%) and 201 (34.7%) cases, respectively. The overall 28-day mortality was 37%. In a Cox proportional hazards regression model, the hazard ratio (HR) of unfractionated heparin was 1.41, with a significant adverse effect on mortality (P=0.02). In a similar analysis, the HRs for protease inhibitors, antithrombin and low molecular weight heparin/danaparoid were 0.86, 0.90 and 0.88, respectively. These agents showed a tendency to reduce 28-day mortality, but the effect was not significant. Conclusions: A review of administrative data revealed that protease inhibitors were most frequently used in DIC anticoagulation therapy in ICUs in Japan. Unfractionated heparin was the only therapy to have a significant adverse effect on mortality.
  • 三田 範勝, 国元 文生, 金丸 良範, 黒澤 芙美子, 大嶋 清宏, 大川 牧生, 日野原 宏, 齋藤 繁
    2010 年 17 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    中心静脈カテーテル挿入は重症患者管理において重要な手技であるが,その施行には血気胸,感染等の重篤な合併症が存在する。群馬大学医学部附属病院集中治療部は,2007年5月より安全な体制確立に着手した。新体制移行前の院内調査では,(1)CVC施行者に制限はなく,昼夜問わず穿刺,(2)消費されるカテーテルのうち38.9%がdirect puncture型カテーテル,(3)体表ランドマーク法のみで穿刺,(4)設備不十分な病棟での施行が多い,等の問題点が挙げられた。このため,(1)インストラクター制度の導入,(2)Seldinger型カテーテルに統一する,(3)必ず超音波装置を使用する,(4)可能な限り日帰り手術室で行う,という対策案を出し,同年12月より体制を開始した。同院の中心静脈カテーテル挿入体制の現状について紹介する。
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