日本集中治療医学会雑誌
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19 巻, 4 号
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今号のハイライト
総説
  • 山口 修
    2012 年 19 巻 4 号 p. 569-577
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    現在の集中治療医学の最重要課題の一つが,敗血症の克服である。しかし,これまでの多くの臨床研究の中で明確な有効性を証明できた治療戦略は少なく,対象患者の選定基準が原因の一つとされる。感染が原因で全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome,SIRS)状態にあれば,敗血症と定義される。しかし,SIRSの診断基準は特異性に乏しく患者の重症度や病態を反映していない。そこで,腫瘍学の世界のTNM分類にならい提唱されたのがPIRO scoreである。Pはpredisposition(背景,素質),Iはinsult/infection(侵襲/感染),Rはresponse(反応),Oはorgan dysfunction(臓器障害)を意味し,各々のカテゴリーをスコア化して敗血症の進行度を分類しようとするものである。各カテゴリーを構成する内容は,重症敗血症,市中肺炎,院内肺炎などでモデルが提唱され,実際の患者の予後を良く反映することが証明されつつある。このPIRO scoreにより重症度を均質化した臨床研究が期待されている。
  • 飯島 毅彦
    2012 年 19 巻 4 号 p. 578-585
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    出血性ショックに対する晶質液の大量投与は1960年代に始まった。その概念は“fluid resuscitation”と呼ばれるように蘇生の方法であったが,外科手術の輸液法として解釈された。その後,機能しない細胞外液(non-functional extracellular volume, nfECV)の存在が提唱され,third spaceという概念に発展した。そのリーダーであったShiresやMooreは大量投与を警告していたにもかかわらず,大量輸液療法が普及し,現在でも引き続き行われている。しかし,大量輸液による体重増加と合併症の発生率の関連が示されたことから見直しが行われ,nfECVの存在も否定され,third spaceの概念も揺らいでいる。「浮腫で水を盗られる」のではなく「輸液が浮腫を作る」という考え方の方が妥当である。術中に投与されたナトリウムの排泄には数日かかることがから,ナトリウムの負荷に注意すべきである。
  • 井澤 純一, 内野 滋彦, 讃井 將満
    2012 年 19 巻 4 号 p. 586-594
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    敗血症治療薬として上市されたリコンビナントヒト活性型プロテインCは,敗血症性ショックを対象にした最近の研究において死亡率の改善効果を示すことができず,全世界の市場から撤退した。発売から10年が経過しているが,当初からその安全性・有効性に関しては多くの物議を醸し出していた。2001年に発表された第III相大規模試験は,製造元であるEli Lilly and Company社がスポンサーであり,プロトコールの修正,研究のearly termination,多くのサブグループ解析が行われたことなどに対し種々の批判を受けた。同社のSurviving Sepsis Campaignに対する利益相反も問題視されていた。我が国の集中治療領域において存在する,未だエビデンスが不確定な治療法を認識し,我々が今後どのようにエビデンスに対して向き合うべきか,この失敗から学ぶべきであると考える。
  • 高見沢 恵美子
    2012 年 19 巻 4 号 p. 595-602
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    Evidence-based practice(EBP)は,よい成果をもたらしコストベネフィットのある,患者のニーズに合った質の高いケアを効果的に実施することを目指している。クリティカルケア看護学分野における過去5年間の英文文献をレビューした結果,以下のことが明らかになった。クリティカルケア看護分野の雑誌に記載されていたEBPモデルは13モデル8編で,EBPモデルを研究に使用していた論文は4編であった。クリティカル看護分野で最も多く使用されていたのはIOWAモデルであり,実際にこのモデルを使用しEBPの効果が研究されていた。クリティカルケア看護分野の雑誌に複数回記載されたEBPモデルに使用されているEBPプロセスは,エビデンスによって回答可能な臨床的疑問の明確化,臨床的疑問を解決するエビデンスの検索と収集,エビデンスの評価,臨床経験・患者の価値観・施設の状況を考慮したエビデンスの統合,エビデンスの実施・有効性の評価であった。
原著
  • 梅垣 岳志, 西 憲一郎, 波多野 貴彦, 岡本 明久, 浜野 宣行, 山崎 悦子, 阪本 幸世, 新宮 興
    2012 年 19 巻 4 号 p. 603-608
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    リコンビナントトロンボモジュリン(recombinant thrombomodulin, rTM)は抗凝固,抗炎症作用の両面において注目されている。我々は敗血症性disseminated intravascular coagulation(DIC)症例を対象に,rTMとダナパロイドナトリウム(danaparoid sodium, DS)の臨床効果を後向きに比較検討した。2006年1月から2010年12月にかけて調査を行い,急性期DICスコアが5点以上,もしくは4点かつ血小板スコアが3点の症例にrTMを使用し,DSはrTM使用基準と合致する症例を抽出した。症例はrTM使用33例とDS使用40例であった。rTM群は血小板数が治療開始4日目以降に有意に改善した。アンチトロンビン(antithrombin, AT)値はrTM群とDS群で4日目に有意に上昇したが,D-dimer値は両群とも有意な変動はなかった。rTM群はDS群より長期予後が良好であった(P<0.01)。しかし,28日死亡率に対して有意な影響はみられなかった。
  • 小林 秀嗣, 内野 滋彦, 遠藤 新大, 岩井 健一, 齋藤 敬太, 讃井 將満, 瀧浪 將典
    2012 年 19 巻 4 号 p. 609-615
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    【目的】急性肺傷害に対するシベレスタット投与は,欧米での研究で長期予後の悪化が示された。当施設は2007年より使用を原則中止し,今回この治療方針の変更が敗血症性急性肺傷害の予後に影響していないかを検証した。【方法】2007年1月前後21カ月間に,敗血症性急性肺傷害の診断で24時間以内に人工呼吸を要した成人ICU症例を前期群64例,後期群36例で比較した。【結果】両群の患者背景に差はなかった。シベレスタットは前期群54例(84.4%),後期群4例(11.1%)に使用された。28日ventilator free days,ICU滞在および入院期間,院内死亡率に有意差はなかったが,人工呼吸期間は後期群で有意に短かった。院内死亡率に対する多変量解析では,前期群に比べ後期群のodds ratioが0.269(P=0.028)であった。【結論】シベレスタット使用中止で敗血症性急性肺傷害の予後は悪化しなかった。
  • 伊藤 武久, 飯田 有輝, 河邨 誠, 坪内 宏樹, 川出 健嗣, 辻 麻衣子, 野手 英明, 松永 安美香
    2012 年 19 巻 4 号 p. 616-621
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    【目的】心臓手術後のリハビリテーション遅延因子を明らかにする。【方法】対象は心臓手術症例のうち胸骨正中切開法によるアプローチでかつ人工心肺装置使用下で行われた待機手術55例。術後歩行練習開始が4日目以内の者を順調群,5日目以降の者を遅延群とし,年齢,body mass index(BMI),喫煙歴,心臓手術歴,術前合併症の有無,術前New York Heart Association(NYHA)class,左室駆出率,術後肺合併症の有無,術後ノルエピネフリン使用の有無,挿管期間,体外循環時間,呼吸筋力,疼痛,interleukin(IL)-6およびrapid turnover protein濃度について2群間で比較検討した。【結果と考察】順調群と遅延群においてNYHA,術後ノルエピネフリン使用の有無,体外循環時間,挿管期間,IL-6,プレアルブミンで有意差を認めロジスティック回帰分析にて遅延因子にNYHA,術後ノルエピネフリン使用,挿管期間,体外循環時間が抽出された。【まとめ】リハビリテーション遅延にNYHA,術後循環動態,挿管期間,体外循環時間が関係しており,手術侵襲に伴う炎症による影響が背景にあることが示唆された。
症例報告
  • 吉田 真一郎, 田辺 美幸, 升田 好樹, 今泉 均, 山 直也, 巽 博臣, 後藤 京子, 浅井 康文
    2012 年 19 巻 4 号 p. 623-627
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    肺胞出血を合併したChurg-Strauss syndrome(CSS)の一例を経験した。本症例は,肺胞出血に伴う呼吸不全に,播種性血管内凝固症候群,脳内出血を合併していた。ステロイドパルス療法で一旦改善した肺胞出血が再燃したため,血漿交換療法を行ったところ急速に改善し,救命することができた。ステロイド抵抗性CSSの治療として,免疫抑制薬の使用が推奨されているが,臓器障害を合併する重症CSSの死因はほとんどが感染症の合併によるものである。本症例から,重症CSS治療では,感染症の発症および悪化を招く可能性がある免疫抑制療法以外の治療法として,病態形成に関与する炎症性メディエータ除去の有用性が示唆され,血漿交換療法は有効な治療法となり得ると考えられた。
  • 光岡 明人, 吉岡 早戸, 前川 隆明, 岡田 一郎, 霧生 信明, 井上 潤一, 小井土 雄一
    2012 年 19 巻 4 号 p. 628-632
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性。交通外傷にて救急搬送され,腹腔内出血の診断にて緊急手術を施行した。術後9日目に呼吸状態の悪化を認め,両側の肺動脈塞栓,および腎静脈上から腎静脈下に至る下大静脈血栓を併発した。既往の心房細動の血栓予防として未分画ヘパリンを使用しており,ヘパリンと血小板第4因子複合体抗体が陽性であったため,ヘパリン誘発性血小板減少症により血栓が形成されたと判断した。また,敗血症を併発し,血液培養にてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出された。画像診断にて明らかな感染源が指摘できず,血栓が母地となり化膿性血栓性静脈炎(suppurative thrombophlebitis)を併発し,感染経路として中心静脈カテーテルが関与した可能性が高いと考えた。ヘパリン投与により血栓症が生じ,化膿性血栓性静脈炎が生じることを念頭に置く必要があると考えられた。
  • 山田 友子, 中川内 章, 谷川 義則, 垣内 好信, 前田 祥範, 松岡 良典, 荒木 和邦, 坂口 嘉郎
    2012 年 19 巻 4 号 p. 633-637
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    【目的】中心静脈カテーテル(central venous catheter, CVC)によるカテーテル関連血栓症(catheter-related thrombosis, CRT)の発症頻度と経過,発症要因,合併症と転帰を調査した。【方法】2009年11月~2010年11月にCVCを用いた患者を対象に,超音波を用いCRTを観察した。【結果】CRTの頻度は患者100人中67人,カテーテル205本中107本(52%)であり,大腿静脈に比べ内頸静脈で多かった(63%対28%,P<0.001)。CRT発症群では,非発症群に比べ感染性併発症を多く認めた(67%対45%,P=0.04)。中心静脈カテーテル関連血流感染症は,CRT非発症例に比べ発症例で多く合併した(9%対1%,P=0.008)。ICU滞在日数はCRT発症群で延長したが死亡率に有意差はなかった。【結論】CRTは52%と高頻度に発症し,感染症との関連性が示唆された。
  • 鯉沼 俊貴, 布宮 伸, 和田 政彦, 田中 進一郎, 小山 寛介, 安田 是和
    2012 年 19 巻 4 号 p. 638-643
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    合併症のICU管理や手術を要するClostridium difficile(CD)感染症(CD infection, CDI)は劇症型CDIと呼ばれ,死亡率が高く,結腸亜全摘が推奨されるが,術後死亡率も高く,手術適応や時機,術式が問題である。69歳男性が中毒性巨大結腸症を呈した劇症型CDIを罹病し,敗血症性ショックと高腹腔内圧により多臓器不全を呈した。外腸瘻造設による減圧で一旦は外科治療奏功の指標とされるlactate(Lac)5 mmol/l未満に低下したが,すぐに再増悪した。再手術では右半結腸切除に加え,大量小腸切除も要した。医療関連感染または残存結腸からのバクテリアルトランスロケーションやCDI再燃による重症敗血症,短腸症候群による肝不全などが原因と考えられる多臓器不全により,術後45日に死亡した。劇症型CDIへの外科治療は,結腸亜全摘の時機を逸さないことが重要である。
  • 畠山 淳司, 中野 実, 高橋 栄治, 鈴木 裕之, 蓮池 俊和, 仲村 佳彦, 針谷 康夫, 大西 一徳
    2012 年 19 巻 4 号 p. 644-649
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    ツツガ虫病はダニが媒介するリケッチア感染症であり,稀に重症化する。症例は64歳,女性。入院9日前にキノコ狩りに出かけた後に頭痛と39℃台の発熱を認めた。その後,意識障害と呼吸不全も発症し,他院から転院となった。敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群,急性呼吸窮迫症候群を伴う多臓器不全の状態であり,ICUに入室した。経過中2度にわたり出血性胃潰瘍から出血性ショックとなり,内視鏡下緊急止血術を要した。病歴と特徴的な皮疹からツツガ虫病を疑い,ミノサイクリンを投与したところ,全身状態は改善した。第10病日以降も認知機能低下と性格変化が持続し,髄液蛋白の増加も認めたため,ツツガ虫病による脳炎と診断した。第27病日に脳炎は改善し退院した。ツツガ虫病の主な病態は血管内皮細胞障害による血管炎と考えられており,多臓器不全のみならず,今回見られた多発胃粘膜障害と脳炎も血管炎に伴う病態であった可能性が考えられた。
  • 佐藤 幸子, 乙め 公通, 照屋 愛, 山口 怜, 安保 佳苗, 中村 京一, 山本 公三, 高橋 幸雄
    2012 年 19 巻 4 号 p. 650-654
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    Proteus症候群は,世界でおよそ100件の報告しかない稀な疾患であり,全身臓器の過成長をきたす先天性過誤腫を特徴とする。今回,我々は,本症候群による椎体と背筋群の過成長に伴う側彎と胸郭変形が原因で,進行性の気道狭窄をきたした症例を報告する。症例は11歳,男児。喘息治療で入院中に重度の呼吸困難を呈し,気管挿管,人工呼吸管理となった。胸部CTにて気管と両側気管支の狭窄を認めた。保存療法では人工呼吸器離脱が困難であったため,気管切開後,胸郭変形に対して胸骨挙上法(Nuss法)と胸骨柄切除術を施行した。術後は人工呼吸器の設定を軽減でき,人工呼吸補助のままではあるが小児病棟へ退出できた。胸部CT所見でも気管・気管支狭窄部の改善を認めた。しかし,その後も胸郭変形が進行し,約2ヶ月後に肺炎が契機となって死亡した。胸郭変形への外科的治療により気管・気管支狭窄は改善したものの,本症例においてはその効果は一過性であった。
  • 田中 進一郎, 布宮 伸, 和田 政彦, 鯉沼 俊貴, 小山 寛介
    2012 年 19 巻 4 号 p. 655-660
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    血管内リンパ腫は,腫瘍細胞が種々の臓器の小血管内腔のみで増殖する悪性リンパ腫の稀な亜型で,通常,急速進行性で予後不良の疾患である。臨床症状は多彩かつ非特異的で,その可能性を疑わない限り診断は極めて困難である。今回,治療抵抗性ショックを呈したが血管内リンパ腫の診断に至り救命できた1例を経験した。症例は79歳の男性。食欲不振と発熱を初症状として発症し,激しい腹痛とショックを呈して当院に搬送された。当初,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショックを疑い試験開腹を行ったが,明らかな異常を認めなかった。術後ICUに入室して治療を継続したが,ショックと高乳酸血症が遷延した。末梢血に芽球を認めたため,入室2日目と9日目にそれぞれ骨髄穿刺検査とランダム皮膚生検を行い,血球貪食症候群を伴う血管内リンパ腫の診断が確定した。患者はステロイド大量投与と化学療法によりショックから離脱し,入室19日目に一般病棟に退室した。
  • 小嶋 大樹, 石井 生, 阿部 真悟, 上村 亮介, 清水 平
    2012 年 19 巻 4 号 p. 661-665
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    成人の急性壊死性脳症にて劇的な転機を辿った症例を経験した。症例は既往の無い24歳男性。発熱,意識障害およびショックの精査・加療目的に搬送された。入院当日より肝機能障害,腎不全,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation, DIC)が急速に進行し,集学的治療を開始したが入室2日目に大後頭孔ヘルニアを発症した。脳CTで急性壊死性脳症に特徴的な脳幹,両側小脳,視床にlow density areaを認めた。脳低体温療法,ステロイドパルス療法,マンニトール投与等を行ったが,ICU入室4日目には脳波が平坦化し,ICU入室14日目に高カリウム血症による心室性不整脈で死亡した。成人の急性壊死性脳症では多臓器不全が急速に進行する場合もあり,留意する必要がある。
  • 七尾 大観, 木村 康宏, 三ツ本 直弘, 青木 真理子, 荻ノ沢 泰司, 西澤 英雄, 野上 昭彦
    2012 年 19 巻 4 号 p. 666-670
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性。心臓脂肪腫による心室性不整脈に対して植え込み型除細動器が留置されていたが,ventricular tachycardia(VT)stormとなった。アミオダロン,ニフェカラント,リドカイン,ランジオロールなどの抗不整脈薬,鎮静薬投与の上での抗頻拍ペーシングや除細動が無効であったため,心臓交感神経抑制目的に胸部硬膜外麻酔を施行したところ,その停止に成功した。薬物やカテーテルアブレーション治療に抵抗性のVT stormに対する,胸部硬膜外麻酔の有効性が示唆された。
  • 白源 清貴, 松本 聡, 松田 憲昌, 若松 弘也, 安木 康太, 松山 法道, 藤井 康彦, 松本 美志也
    2012 年 19 巻 4 号 p. 671-675
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で,既往に慢性骨髄単球性白血病と慢性腎不全(血液透析中)があった。鼠径ヘルニア手術を行い,周術期に貧血のため赤血球濃厚液(red cell concentrates, RCC)を輸血した。術前の不規則抗体は陰性であったが,術後7日目に抗E抗体が陽性となり,輸血したRCCはE抗原陽性であった。溶血所見はなかったが,遅発性溶血性輸血副作用が発症した際には致命的となり得るため,E抗原陽性赤血球の除去目的で赤血球交換を行った。持続緩徐式血液浄化装置と血漿分離器を用いて,血液を血漿と血球に分離後,血漿を返血し,血球は廃棄してE抗原陰性のRCCを輸血した。赤血球交換施行後にはE抗原陽性赤血球は減少し,その後も輸血副作用を来すことなく経過した。本症例のように慢性腎不全を合併し,抗原陽性の残存赤血球が多い場合には,溶血所見はなくても赤血球交換を含めた早期の対応を考慮することが望ましい。
  • 西山 由希子, 荒木 歩, 長井 友紀子, 樋口 恭子, 飯島 克博, 堀川 由夫, 伊地智 和子, 田中 修
    2012 年 19 巻 4 号 p. 676-680
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/04/01
    ジャーナル フリー
    巨大結腸症により肺塞栓症を発症し呼吸停止および循環虚脱に至ったが,救命しえた症例を経験したので報告する。患者は67歳女性,半年前より腹部膨満があり,1週間前から全身倦怠感が出現し,近医へ向かう途中で意識消失,呼吸停止,循環虚脱に陥った。近医による用手換気で呼吸と意識が回復し,当院へ搬送された。来院時に著明な腹部膨隆と両下肢浮腫を認めた。胸部単純X線で巨大な結腸のガス像により心臓が右へ圧排されている像が,胸腹部造影CTで両側肺動脈の陰影欠損を認め血栓と考えられた。下部消化管内視鏡で消化管の減圧を行い,抗凝固療法と血栓溶解療法を開始した。第4病日に肺動脈の血栓は縮小傾向が見られ,第19病日に退院した。待機的に結腸全摘を行い,良好に経過している。肺塞栓症の塞栓源の90%以上が骨盤内静脈であり,本症例では,脱水に加え消化管拡張による腹腔内圧上昇のため血流が停滞し,肺塞栓症が発症したと考えられた。
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