日本集中治療医学会雑誌
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21 巻, 1 号
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今号のハイライト
総説
  • 長谷川 隆一, 志馬 伸朗
    2014 年 21 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia, VAP)は気管挿管・人工呼吸に伴って生じる院内肺炎である。VAP発症ゼロは可能だろうか。近年さまざまなVAP予防策が検討され,いくつかのケアを組み合わせた「バンドル」の有効性が示されている。本邦でも日本集中治療医学会から5つの項目からなる「VAPバンドル」が公開されている。バンドルの効果を判定するにはサーベイランスが重要だが,サーベイランス診断と臨床診断に解離があるため,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention, CDC)はVAP診断にこだわらない新たなサーベイランス基準“ventilator-associated event(VAE)”を公開した。バンドルの普及はパラメディカルを中心とするチーム医療に依存しており,チームアプローチにより予防・診断・治療のレベルを上げることで,VAPを減らし患者の予後改善が可能と思われる。
原著
  • 古市 由紀, 難波 志穂子, 寺澤 紘子, 二丹 愛里, 福田 妙子, 尺田 峰
    2014 年 21 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    【目的】救急集中治療領域では褥瘡発生のハイリスク状態にある患者が多い。我々は看護師によるチームでの褥瘡予防対策を行ってきた。今回,患者の褥瘡発生に関わる要因を検討することで褥瘡予防対策の効果を検証した。【方法】岡山大学病院高度救命救急センターに入室した379人の患者を対象とした。看護師によるチームでの褥瘡予防対策を行った患者203人を介入群とし,それ以前の患者176人を対照群とした。介入群と対照群の褥瘡発生率を比較し,ならびにリスク要因についても検討した。【結果】褥瘡発生者数は,対照群20名(11%),介入群は9名(4%)と,褥瘡発生率は減少していた。ロジスティック解析によりアルブミン値と骨突出が褥瘡発生のリスク要因であり,看護師によるチームでの褥瘡予防対策は褥瘡発生リスクを減少させることが明らかとなった。【結論】看護師によるチームでの褥瘡予防対策は,褥瘡発生率の減少に有効である。
  • 穂満 高志, 辻 義弘, 吉岡 正訓, 藤堂 敦, 人見 泰正, 浅川 徹也, 水野(松本) 由子
    2014 年 21 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    【目的】ネブライザの取り付け位置の工夫が,フロートリガー時の回路内定常流によるエアロゾル損失を抑え,ネブライザ運搬効率を上げると仮説を立て,新たな超音波ネブライザの取り付け位置を提案するために生体外モデルでの検討を行った。【方法】挿管チューブの先端と呼気側回路にそれぞれフィルタを接続し,ネブライザをYピース手前に取り付けた従来法と,Yピースと挿管チューブの間に取り付けた提案法の2種類の模擬回路を作成した。薬液ユニットに10%食塩水10 mlを入れ30分間噴霧させた。噴霧前,噴霧30分後のフィルタの質量を測定し到達率と損失率を求めた。【結果】提案法のエアロゾル到達率は,従来法と比較して有意に高値を示した。また従来法のエアロゾル損失率は,提案法と比較し有意に高値を示した。【結語】提案法は,新たなネブライザ取り付け位置の有用性を示した。
症例報告
  • 寺田 統子, 上原 健司, 田邉 優子, 後藤 隆司, 鷹取 誠, 多田 恵一
    2014 年 21 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome, OHSS)は排卵誘発薬により血管透過性亢進をきたす医原性疾患である。OHSSに対し血管透過性を定量的に評価した報告はなく,今回,連続心拍出量測定装置PiCCO®(Pulsion Medical Systems, Germany)を用いて評価したので報告する。症例は30歳,女性。不妊治療により妊娠しOHSSにて加療中,胸腹水が増加し入院11日目に心肺停止となった。蘇生後,高PEEPを併用した人工呼吸管理を開始した。ICU入室時,肺血管外水分量係数24.8 ml/kg,肺血管透過性係数5.8と著明に増加していた。呼吸・水分管理を行い,PiCCO®測定値の正常化とともに呼吸状態は改善し,入室4日目には人工呼吸器を離脱した。PiCCO®による血管透過性の定量評価は,OHSS患者の病態理解に有用と考えられた。
  • 佐藤 隆平, 宮川 哲夫
    2014 年 21 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia, VAP)は,人工呼吸器装着患者で高頻度に発症する院内感染症である。本研究はVAP発症に影響すると考えられる因子のうち,体位変換がVAP発症を減らすという仮説を検証した。2008年1月から2010年9月の昭和大学病院救急センター病棟入院患者を対象に後方視的観察研究を行った。その結果,最終対象者は111例であった。VAP発症群は32例(28.8%)であり,非発症群に比べ輸血総量が多く,輸血,経腸栄養,筋弛緩薬持続投与の実施患者の割合が高い傾向にあった。多重ロジスティック回帰分析から,人工呼吸器装着期間の延長はVAP発症を増やし,気管挿管から24時間以内の体位変換回数の増加はVAP発症に影響するとは言えなかった。本研究の結果から,気管挿管から24時間以内の体位変換回数の増加はVAPに対する予防効果を認めなかった。
  • 垂石 智重子, 上松 友希, 酢谷 朋子, 高田 基志, 鈴木 照
    2014 年 21 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    若年2型糖尿病に合併した糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoasidosis, DKA)により心停止を来した症例を経験した。症例は35歳,男性。2型糖尿病に対し内服治療を受けていた。全身倦怠感を訴え近医に往診を依頼した。診察中に意識消失したため当院救急外来に搬送された。到着後心停止となったが,31分間の心肺蘇生にて自己心拍が再開しICU入室となった。ICU入室時,著明な高カリウム血症と低ナトリウム血症,高血糖を認め,さらに浸透圧利尿による血液濃縮を認めた。軽度低体温療法を施行しつつ,血糖,電解質補正および循環管理を行った結果,第13病日に症状改善し,ICUを退室した。2型糖尿病は本来ケトーシス抵抗性であるが,本症例では清涼飲料水の多飲により,いわゆるソフトドリンクケトーシスを引き起こし,それに伴うアシドーシスなどが誘引となり高カリウム血症を来し心停止に至ったと考えられた。
  • 城 祐輔, 田中 誠, 北島 龍太, 酒井 正憲, 新村 大輔, 小浦 貴裕, 浦中 康子, 根岸 耕二
    2014 年 21 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は21歳男性。感冒様症状が先行した急性心筋炎の診断で当院へ搬送された。来院時心原性ショックを認め,人工呼吸管理下に大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping, IABP),カルペリチド,ステロイド短期大量投与を開始した。しかし第12病日に心停止となり,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入した。また脳保護を目的に脳低温療法を開始した。その後順調に経過し,第16病日にPCPSより離脱に成功したが,第24病日と第29病日に左鼠径部の血管縫合部より拍動性の出血を認め,2度の緊急血管形成術を行った。送血カニュレーションを行った左浅大腿動脈は感染に伴い一部壊死しており,同部位を切除した後に欠損部位に対して右下腿より採取した大伏在静脈をパッチとして被覆し再建した。切除標本の病理組織像では感染した動脈壁に炎症細胞の浸潤を認めず,高用量ステロイド投与の影響等が考えられた。慎重にリハビリテーションを行い,第73病日に独歩退院した。
短報
レター
委員会報告
  • 日本集中治療医学会小児集中治療委員会
    2014 年 21 巻 1 号 p. 67-88
    発行日: 2014/01/01
    公開日: 2014/01/22
    ジャーナル フリー
    小児に発生する敗血症性ショックを含む急性臓器不全を伴う重症敗血症は,集中治療管理を必要とする重篤な病態である。本論文は,小児重症敗血症診療に関して日本集中治療医学会小児集中治療委員会が作成した専門家の合意意見書である。本意見書は,2012年に発表されたエビデンスに基づくSurviving Sepsis Campaign guidelines(SSCG2012)を参考にし,日本の現状を勘案した事項を取り入れて作成された。同委員会が日本の小児集中治療室を対象に行った小児敗血症レジストリの結果も参考にした。また,関連各学会やパブリックコメントの意見を取り入れ,一部関連学会より推薦を頂いた。本論文は,日本初の小児重症敗血症に関する意見書であり,臨床現場で適切に活用されることで,小児重症敗血症患者の転帰改善に寄与することが期待される。
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