日本集中治療医学会雑誌
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23 巻 , 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 小坂 誠, 吉田 愛, 大江 克憲
    2016 年 23 巻 6 号 p. 625-631
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    集中治療室の生体情報モニタとして,心電図とパルスオキシメータは必須である。心電図は心臓の電気的活動を示すが,パルスオキシメータは血管容積脈波(plethysmogram)から脈拍数およびSpO2を測定する。SpO2はSaO2と違い動脈血採血の必要がなく,非侵襲的である。SpO2は赤色光と赤外光を用いた吸収分光法(absorption spectroscopy)で測定するが,種々の測定障害がある。特に脈波の検出が難しい末梢低灌流と体動では,測定精度が低下する。これらへの対策はメーカーによって異なり,表示されたSpO2値の解釈には,測定原理への理解が必要である。またSpO2には透過型と反射型の測定形式があり,前額部で測定する反射型はショック・低体温時にも動脈の拍動が維持され,酸素飽和度の変化への反応時間も透過型より短い。よって,末梢低灌流や体動がある集中治療室の患者の測定には反射型が適している。
原著
  • 阿部 世紀, 庄司 康寛, 佐藤 公則, 天笠 俊介, 北村 真友, 笠井 正志, 松井 彦郎, 中村 友彦
    2016 年 23 巻 6 号 p. 633-640
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    【目的】小児の重症急性細気管支炎に対してヘリウム酸素混合ガス(heliox)を吸入させることにより,PICU滞在期間を短縮可能か,heliox吸入療法の安全性とともに前方視的に検討した。【方法】2012年11月から2014年12月までに急性細気管支炎の疑いでPICUに入室し,人工呼吸管理を受けた2歳未満の患者に,helioxを投与した(H群)。ヒストリカルコントロールとして,2010年4月から2012年3月までの同様の患者を選択した(C群)。【結果】H群は10例,C群11例であった。PICU滞在期間はH群4.7±1.1日,C群8.6±2.8日で,H群が有意に短かった(P<0.005)。同様に気管挿管期間は,H群3.8±1.4日,C群7.6±2.8日で,H群が有意に短かった(P<0.005)。バイタルサイン,血液ガス,血液生化学および血液一般検査に異常変動はなく,有害事象もなかった。【結論】Heliox吸入療法は,安全に重症急性細気管支炎患者のPICU滞在期間と気管挿管期間を短縮できる可能性がある。
症例報告
  • 麻喜 幹博, 磯貝 俊明, 田中 博之, 手島 保
    2016 年 23 巻 6 号 p. 641-646
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    急性心筋炎の中には経過中に循環動態が破綻し致命的となる劇症型心筋炎が存在し,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入して急性期をいかに乗り切れるかが重要となる。しかし,急性心筋炎自体が稀な疾患であり,治療成績を詳細に述べた報告は少ない。今回,当院で2003年4月から2013年11月までに経験した急性心筋炎18例について,年齢・性別・入院時バイタルサイン・入院時検査所見・入院後の治療法・院内予後について調査した。経過中に心原性ショックを呈した急性心筋炎8例中,循環動態破綻によりPCPSが必要と判断された劇症型心筋炎は6例であった。2例は来院直後に心停止に陥り,3例は来院後6時間以内に心原性ショックを呈した。1例は入院6日後に心原性ショックを呈した後に循環動態が破綻した。急性心筋炎のうち,入院後早期に心原性ショックに陥る症例はPCPSが必要となる可能性が高いと考えられた。
  • 平井 昂宏, 貝沼 関志, 林 智子, 長谷川 和子, 青山 正, 水野 祥子, 鈴木 章悟, 西脇 公俊
    2016 年 23 巻 6 号 p. 647-650
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome, PRIS)は,プロポフォール使用中に横紋筋融解,急性腎傷害(acute kidney injury, AKI),乳酸アシドーシス,脂質異常症などを来す症候群である。早期にPRISを疑いプロポフォール中止によって救命できた一例を経験した。症例は44歳の男性,スタンフォードA型大動脈解離に対して弓部置換術を行った。術後にプロポフォールを用いて鎮静を行っていたところ,血液生化学検査でCKが15,247 IU/lまで上昇し,AKI,乳酸アシドーシスを認めたためにPRISを強く疑った。プロポフォールの投与中止によりCKは速やかに減少し,AKI,乳酸アシドーシスも改善した。後に撮影されたCTで大腿から臀部の筋内に高吸収域を認め,横紋筋融解後の変化があった。プロポフォールの長期投与中はCK,pH,乳酸値などを定期的にモニタリングし,PRISを疑った場合は早期に他の鎮静薬への変更が必要であると考えられた。
  • 中野 貴明, 竹本 正明, 塚田 幸絵, 仲野 達, 川端 雄一, 宮崎 真奈美, 稲村 宏紀, 浅賀 知也
    2016 年 23 巻 6 号 p. 651-654
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    てんかん重積状態はしばしば意識障害を臨床像とした非痙攣性てんかん重積状態(nonconvulsive status epilepticus, NCSE)であることがある。NCSEは診断基準がなく,臨床像を表現する脳波異常が認められた際に診断が可能であると考えられている。Arterial spin labeling(ASL)はMRI検査で得られる非侵襲的脳灌流画像である。痙攣重積状態の局所脳血流上昇が,このASLにて確認可能であることは報告されている。今回,意識障害患者のASLにて局所脳血流上昇が確認され,NCSEの診断に至った症例を経験した。適切な抗痙攣薬の投与に伴い臨床症状の消失,および脳波の改善を認めている。よって,今回の症例から,NCSEの診断において緊急で脳波検査が施行できない場合,ASLをMRI検査時に行うことで診断の補助になると考えられた。
  • 木下 喬公, 端野 琢哉, 矢部 光一郎, 藤原 周一
    2016 年 23 巻 6 号 p. 655-659
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)感染症では多彩な症状が発現するが,その中の肝炎が劇症化することは稀である。今回我々は,HSV感染から劇症肝炎・ウイルス関連血球貪食症候群に陥った一例を経験したので報告する。症例は26歳,女性。発熱・全身倦怠感を主訴に,他院に急性肝炎の診断で緊急入院した。肝機能障害が改善せず,加療目的で当院消化器内科に入院となり,翌日,全身管理目的にICU入室となった。入室時,身体所見および血液検査所見より劇症肝炎,血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome, HPS),DIC(disseminated intravascular coagulation)と診断し,血漿交換療法・ステロイド大量療法・免疫抑制療法を開始した。ウイルス抗体検査および肝生検の免疫染色の結果でHSV感染によるものと診断し,抗ウイルス薬投与も追加した。以上の治療が奏功し,入室後13日目にICU退室となった。HSV肝炎の劇症化は稀ではあるが,治療の遅れは予後に影響を与える。HSV劇症肝炎が疑わしい場合には,早期に生検を考慮することも必要である。
  • 加藤 晶人, 池田 哲也, 神野 崇生, 森嶋 啓之, 長島 梧郎
    2016 年 23 巻 6 号 p. 660-665
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症や深部静脈血栓症はD-dimerが上昇することが多く,卵円孔開存に伴う奇異性塞栓症の原因となる。D-dimer上昇が軽度であったために塞栓源精査が遅れ,繰り返す脳梗塞で原因追究できた卵円孔開存の一例を経験した。症例は52歳,男性。左後下小脳動脈領域の脳梗塞にて入院後,6日目に右視床梗塞,8日目に左椎骨動脈急性閉塞を認め,血栓除去術を施行した。回収された血栓から塞栓症と診断し,経食道心エコーで卵円孔開存を認め,さらなる検査にて深部静脈血栓症,肺塞栓症が判明し,抗凝固療法を開始した。卵円孔開存による奇異性塞栓症は近年提唱されたembolic stroke of undetermined source(ESUS)に含まれ,塞栓源精査は必須である。脳梗塞によりD-dimerが軽度上昇するが,その中に肺塞栓症や深部静脈血栓症もあることを考慮すべきと考えられた。
  • 町野 麻美, 若松 正樹, 開田 剛史, 森 康一郎, 白 晋
    2016 年 23 巻 6 号 p. 666-669
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    【目的】末梢血白血球数(WBC)が著増する類白血病反応(leukemoid reaction, LR)の臨床的意義をICU入室患者において遡及的に検討した。【対象と方法】最近4年間にWBCが3万/μl以上を呈した患者の基礎疾患,検査所見,転帰などを調べた。【結果】LRは46例に認め,基礎疾患から,感染群(31例)と非感染群(15例)に大別された。前者のうち24例で起因菌が同定された。後者は腹腔内出血6例,心肺蘇生後4例などであった。年齢,WBC最高値,LR持続日数,担癌患者数,ステロイド使用数は感染群で有意に高値であった。好中球の核左方移動は両群とも約87%に認めた。半年後の死亡率に差はなかった(感染群51%,非感染群60%)。【結語】LRはICU入室患者の約2%に発症し,基礎疾患は感染症が多く,非感染例の約2倍を占めた。ICUでのLR発症には,感染症の有無を問わず,予後不良を念頭に置いた全身管理が肝要と考えられた。
短報
調査報告
  • 平井 克樹, 大平 智子, 武藤 雄一郎
    2016 年 23 巻 6 号 p. 679-681
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    熊本県下の小児重症患者診療に携わる全ての診療科(15病院24科)を対象として,2010年に生じた16歳未満の小児重症患者の調査を行った。回答率は96%,小児重症患者は386人で,ICUへ入室した小児重症患者において,予定入室は160人,緊急入室114人であり,一般病棟管理92人,院外心肺停止患者20人であった。熊本県における小児重症患者の発生率は,16歳未満人口1,000人あたり1.44人で,日本では25,200人/年の小児重症患者が発生すると推測された。これらの発生率は海外や日本の既報告と同等であり,今後,日本でのPICU必要病床数の根拠になりうると考えられた。
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