日本集中治療医学会雑誌
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23 巻, 1 号
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編集委員会より
集中治療の歴史
今号のハイライト
総説
  • 阿部 幸恵
    2016 年 23 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    21世紀を生き抜く実践力を有する人材の育成は,世界的な教育全般の課題である。特に,医療者教育は知識重視からcompetency重視の教育へと改革が進んでいる。シミュレーション教育(simulation-based education, SBE)は,学習者の知識と技術の統合により実践力を強化する教育としてその効果が世界的に実証されている。近年,本邦でも各施設でこの教育への関心が高まり,ハード・ソフト双方の整備が進んでいる。SBEは学習者中心の教育であることから,指導者には学習者の自主性を引き出す指導技術を有することが現在求められている。本稿では,SBEを展開する上での基本的知識を解説するとともに,世界および本邦でのSBEの実践・研究の動向を概観する。
原著
  • 菊田 正太, 西原 正人, 佐野 博之, 鍋谷 まこと
    2016 年 23 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    【目的】Respiratory syncytial virus(RSV)感染症では,初療時に呼吸状態が維持できている場合であっても,後日に重度の呼吸不全に至ることがある。基礎疾患のないRSV感染症において,入院後の呼吸状態の増悪に関わる因子を検討する。【方法】2011年1月~2013年9月に淀川キリスト教病院に入院したRSV感染症87例を入院後に非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV),体外式陽陰圧式人工呼吸(biphasic cuirass ventilation, BCV)の持続陰圧を含む人工呼吸管理を要した呼吸器群と対照群に区分し,初療時の患者背景,現症,検査所見について後方視的に比較検討した。【結果】多変量解析の結果,静脈血のHCO3,胸部X線検査での異常所見が入院後の人工呼吸管理を予測する独立した危険因子として検出された。【結論】基礎疾患のないRSV感染症において,初療時に静脈血液ガス分析でのHCO3高値や胸部X線検査で浸潤影,無気肺,過膨張といった異常所見を認める症例では入院後に人工呼吸管理を要する可能性が高く,厳重な管理を要する。
  • 土川 洋平, 小林 聖典, 清水 美帆, 林 和寛, 貝沼 関志, 碓氷 章彦
    2016 年 23 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    【目的】大血管手術患者におけるICU-acquired delirium(ICU-AD)発症に術前認知機能が関連するか否かを検討した。【方法】対象は待機的に大血管手術を行った65例とし,ICU-AD発症群と非発症群に分類した。年齢,性別, BMI,既往歴,mini-mental state examination(MMSE)スコア,手術情報,気管挿管時間,ICU滞在日数,術後合併症,鎮静・鎮痛薬の有無について2群間で比較検討した。【結果】ICU-ADの発症率は27.6%であった。ICU-AD発症群の術前MMSEスコアは非発症群と比べ有意に低値を示した(25.1±3.9 vs 27.9±2.1,P<0.01)。ロジスティック回帰分析にてICU-AD発症の予測因子は術前MMSEスコアが抽出された。またreceiver operating characteristic(ROC)curveでは術前MMSEスコアのカットオフ値が26.5点〔area under curve(AUC)74%,95%CI 0.580~0.891,P<0.01〕であった。【結論】大血管術後患者において,術前MMSEスコア26点以下がICU-AD発症の予測因子となることが示唆された。
症例報告
  • 萩原 信太郎, 上野 剛, 濱崎 順一郎, 山口 俊一郎, 有村 敏明
    2016 年 23 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性。倦怠感を主訴に近医受診し,血清Na 114 mmol/lと低Na血症を認めた。意識障害および呼吸不全が出現したため当院紹介となり,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion, SIADH)の診断でバソプレシン2受容体拮抗薬トルバプタンを開始した。6時間ごとに評価を行い,血清Na 4~10 mmol/l/dayで上昇し,第5病日には意識障害も改善した。トルバプタンの内服を継続し,3ヶ月以上の経過で重篤な副作用なく,Na値も安定して経過した。トルバプタンは自由水の排泄を増加させて低Na血症を改善するため,従来の治療に比べ患者負担が少なく,SIADHの原疾患治療中および緩和ケア期の対症療法として有用な可能性がある。
  • 田村 佳久, 宮庄 浩司, 山下 貴弘, 石橋 直樹, 大熊 隆明, 米花 伸彦, 柏谷 信博
    2016 年 23 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    Lemierre症候群は遷延性細菌感染による咽頭炎と,内頸静脈の血栓性静脈炎を呈し,肺などの様々な臓器にも転移性の血栓を生じる重篤な感染症である。稀な疾患であるが,本疾患が疑われる症例に対しては,早期に複合感染を想定した広範囲抗菌薬による治療を開始して炎症巣の拡大・転移を防止することが重要である。今回,発熱,呼吸困難,左内頸静脈血栓,およびFusobacterium necrophorumなどの嫌気性グラム陰性菌による菌血症を呈し,両側の胸水および膿胸を伴うLemierre症候群の1例に遭遇した。抗菌薬療法により全身状態は改善し,線維素溶解薬の胸腔内投与によるドレナージにより膿胸を有効に治療し得た。本疾患は早期の適切な治療が重要であり,膿胸を合併する場合,線維素溶解薬の胸腔内投与によるドレナージの施行は試みる価値のある治療法であると考えられる。
  • 柏木 友太, 鈴木 昭広, 丹保 亜希仁, 川田 大輔, 西浦 猛, 小北 直宏, 藤田 智
    2016 年 23 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    Ia群抗不整脈薬シベンゾリンを含む処方薬を過量服用し,心停止を来した症例を経験したので報告する。症例は10歳代後半,男性。家族に処方されていたシベンゾリン100 mg 30錠,バルプロ酸200 mg 118錠,ブロチゾラム0.25 mg 28錠,イブプロフェン100 mg 34錠を自宅で服用した。内服から70分後に当院救命センターへ搬送された。心電図は完全右脚ブロック波形であったが当初循環は保たれていた。しかし,来院15分後より心室頻拍(ventricular tachycardia, VT)となり,やがてpulseless electrical activity(PEA)となった。心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation, CPR)に反応しないため経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入した。ICU入室後,血漿交換を行い加療したところ徐々に心拍出量が増加し,第10病日に後遺症を残さず独歩退院となった。過量服薬によるIa群抗不整脈薬中毒は稀であるが,作用機序に基づく治療法を知っておく必要がある。重症例では急激な循環不全に至る可能性があり,機械的補助循環の導入を考慮した初療対応や適切な血液浄化法の選択が求められる。
  • 岡野 雄一, 堀 耕太, 大木 伸吾, 岡野 博史, 大塚 尚実, 奥本 克己, 井 清司, 浅井 栄敏
    2016 年 23 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    急性喉頭蓋炎は,気道閉塞の危険がある救急疾患であり,救急現場では,緊急気道確保の要否の判断が求められる。しかし気道確保の適応基準は,未だ明らかではない。今回,気道確保を要する急性喉頭蓋炎の臨床像を明確化するため,当院に入院した急性喉頭蓋炎患者について後方視的観察研究を行った。62例を調査し,気道確保は10例(16.1%),その中で外科的気道確保は6例(9.7%)あり,症状出現から48時間以内に救急外来で施行された。気道確保群は非気道確保群と比較し,単変量解析にて,喫煙歴,喉頭感染の既往,糖尿病など7項目で有意差を認めた。多重ロジスティック回帰分析にて,気道確保に影響を与える因子は,喫煙歴,発語困難,時間外受診の3項目であった。急性喉頭蓋炎の診療には気道緊急リスクを評価し迅速に気道確保ができる管理体制が必要であるが,本研究の結果からは,喫煙歴,発語困難,時間外受診が気道確保の関連因子であることが示された。
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