日本集中治療医学会雑誌
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23 巻, 5 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
原著
  • 秋山 類, 齊藤 修, 池山 貴也, 今井 一徳, 中山 祐子, 水城 直人, 新津 健裕, 清水 直樹
    2016 年 23 巻 5 号 p. 549-553
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    【目的】小児ECMO(extracorporeal membrane oxygenation)院内搬送の現状を分析する。当院での搬送体制を踏まえて搬送上の問題点を把握する。【対象・方法】2010年3月から2013年8月までECMO管理中に搬送した症例を診療録から後方視的に検討した。【結果】11症例で17回の院内搬送を行った。月齢中央値は7か月28日[11日~7歳8か月],体重中央値4.8[2.6~22]kgであった。重篤な合併症としては搬送中のECMOフロー低下が1例あった。搬送時の準備物資で対応し搬送完了した。その他には重篤な血栓性・出血性合併症はなかった。搬送前後では有意に体温が低下した。【考察】フロー低下した症例は,搬送前から出血に対して輸血するもバイタルサインが不安定であった。搬送時に重量が重い温水槽を取り外したため,搬送前後で体温が低下したと考える。【結語】今後は,搬送用加温器の導入などの物資面を含めた搬送の体系化が必要である。
  • 渡辺 伸一, 大野 美香, 森田 恭成, 鈴木 秀一, 染矢 富士子
    2016 年 23 巻 5 号 p. 554-560
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    【目的】大腸穿孔患者の退院時の歩行自立の可否と腰部主要筋の断面積との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】調査対象は,外科で大腸穿孔に対して緊急開腹術を施行し,術後ICU管理を行った63症例のうち,除外基準に相当する31例を除いた32例に対し,歩行自立群(n=21)と歩行非自立群(n=11)の2群に分類した。【結果】ロジスティック回帰分析にて歩行自立と関連する要因として抽出された項目は,APACHE IIスコア,転帰,大腰筋面積の1日当たりの変化率であった。【結論】ICU管理中での大腰筋断面積の低下はICU退室後の歩行能力の獲得に対して悪影響を及ぼす可能性があるため,できる限りICUでの早期離床を目指し,離床が困難な症例については,ベッド上で行える筋力トレーニングを積極的に行うことで,大腰筋の筋力低下を予防する必要があると思われた。
  • 稲葉 基高, 澤野 宏隆, 林 靖之, 甲斐 達朗
    2016 年 23 巻 5 号 p. 561-566
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    【目的】我が国の高齢化は急速に進行しており,救命救急センターに搬送される超高齢者も増加している。ADL(activities of daily living)不良や認知症も多く,ICUでの治療の適応を迷う場合もある。今回,集中治療を要した超高齢者の転帰と予後因子について検討した。【方法】2009年1月~2011年12月に救命救急センターICUに入院した90歳以上の非外傷性疾患の患者66人を対象に,患者背景,入院後の手術・処置,転帰を後方視的に調査した。【結果】年齢の中央値は92歳で,来院時にliving willを確認できた例は皆無であった。転帰は在院死19人,退院19人,転院28人であり,転退院した47人の6か月後,1年後の生存率はそれぞれ74.3%,54.7%と不良であった。単変量解析では男性,認知症,ADL不良,施設入所者が,多変量解析では男性とADL不良が予後規定因子であった。【結論】超高齢者の集中治療の適応に関しては年齢のみで判断することはできず,患者本人と家族の意思および患者背景を汲みながら症例ごとに慎重に方針を決定する必要がある。
症例報告
  • 庄司 高裕, 原田 裕久, 松井 淳一
    2016 年 23 巻 5 号 p. 567-570
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    上腕骨骨折後に腋窩上腕動脈仮性瘤を形成し,さらに血腫による胸郭運動障害,呼吸不全を合併した稀な症例を経験したので報告する。症例は88歳の女性。転倒し左上腕骨近位端を骨折,整形外科にて観血的整復固定術を施行。翌日より貧血の進行あり,術後7日目にショックと呼吸不全を認め,造影CT施行。左腋窩上腕動脈損傷による仮性瘤破裂と巨大血腫による胸郭運動障害を認め,同日当科にて全身麻酔下で損傷血管のコイル塞栓術と血腫除去術を施行。術後経過は良好であった。術前全身状態が不良のため,interventional radiology(IVR)手技を応用した低侵襲治療にて救命し得た。
  • 鈴木 銀河, 一林 亮, 横室 浩樹, 吉原 克則, 本多 満
    2016 年 23 巻 5 号 p. 571-574
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    Reversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)を合併したHELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelet count)症候群の1症例を経験したので報告する。症例は39歳,2経妊1経産の妊婦で妊娠経過に異常はなかった。妊娠22週4日に心窩部痛で受診し,痙攣を来した。検査の結果,HELLP症候群と診断して緊急帝王切開術を施行した。ICUで呼吸,循環管理を行ったが,術翌日に瞳孔不同が出現し,頭部CTで著明な脳浮腫を認めた。頭部MRIで後頭葉白質を中心に著明な浮腫を認めRPLSと診断。Magnetic resonance angiography(MRA)で血管の攣縮像を認めた。グリセリン製剤,マグネシウム製剤を投与し,積極的平温療法を行った。治療経過は良好で,術後15日目に一般病棟へ転棟した。MRIおよびMRAで所見の改善を認め,現在後遺症は認めていない。
  • 大塚 恭寛
    2016 年 23 巻 5 号 p. 575-578
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    症例はクローン病に対しステロイド療法を含む集学的治療中の43歳男性で,左下肢痛を主訴に当科を受診。肛門周囲膿瘍を中心とした会陰部から左側の臀部・大腿・下腿に及ぶ発赤と握雪感を伴う腫脹を認め,血液検査にて炎症反応と急性腎傷害所見を,CTにて会陰部から左下腿まで筋膜沿いに広がる皮下ガス像を認め,フルニエ壊疽の広範な下肢ガス壊疽への進展と診断。緊急切開排膿・debridementを行い,膿の細菌培養検査にて非Clostridium性ガス壊疽(混合感染)と診断。術後は連日の創内洗浄,完全中心静脈栄養,経肛門イレウス管による便ドレナージ,メロペネム・免疫グロブリン投与,ステロイドカバーを行い,第8病日に左大腿の膿瘍再切開を要したが以後の経過に著変なく,切開創に対する自家皮膚移植の後,第247病日に退院した。
  • 稲田 雄
    2016 年 23 巻 5 号 p. 579-583
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    Lemierre症候群に対する抗凝固療法の是非にはいまだに議論があるが,しばしば併用され,出血の合併症もなく比較的安全であるとされている。今回,Lemierre症候群の治療に抗凝固療法を併用し,その経過中に大量肺出血をきたした稀な症例を経験したため報告する。患者は既往歴のない18歳の女性。急性咽頭炎の症状の後に,発熱,頸部痛,増悪する呼吸困難が現れたため来院。入院時の頸部と胸部CTにて,左顔面静脈と左内頸静脈内の血栓,びまん性肺塞栓を認めた。また,血液培養でFusobacterium necrophorumが陽性であった。抗菌薬に加えてエノキサパリンによる抗凝固療法を開始し,入院7日目に抗凝固薬をリバーロキサバンに変更した。しかし,11日目に大量の肺出血を起こし,大量輸血と挿管・人工呼吸管理を必要とした。肺塞栓を合併するLemierre症候群に対し抗凝固療法を併用する際には,肺出血のリスクを考慮すべきと考えられた。
短報
レター
調査報告
  • 石川 幸司, 加瀬 加寿美, 川端 和美, 吉田 亜子, 高岡 勇子, 早川 峰司
    2016 年 23 巻 5 号 p. 601-604
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー
    【目的】集中治療領域における終末期ケアに関する看護師の役割認識と実践上の課題を明らかにする。【方法】終末期医療に関する施設独自の指針を有するA病院ICU・救急部に勤務する看護師を対象に終末期ケアに関する質問紙調査を実施し,結果を分析した。【結果・考察】看護師の役割として認識していたことは,現状理解の促進,家族の意思を医師に伝える調整役,思いの傾聴などであった。 日本集中治療医学会が策定した「集中治療領域における終末期患者家族のこころのケア指針」に照らし合わせると,代理意思決定支援という家族の権利擁護に対しての役割認識が不足していた。また,臨床経験と終末期ケアの役割認識や実践内容は関連していた。
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