日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
24 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
編集委員会より
集中治療の歴史
総説
  • 横田 泰佑, 遠藤 新大
    2017 年 24 巻 4 号 p. 383-388
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    遊離皮弁は,頭頸部癌・外傷・熱傷患者などの再建術で使用される。皮弁のモニタリングのために,術後はICUへの入室を要する。主な術後合併症は,血栓症・血腫・瘻孔・皮弁壊死であり,術後合併症の発生を認識するために,数時間おきに皮弁の評価を行う必要がある。皮弁の評価は,術後72時間行うことを推奨する報告もあるが,本邦で皮弁のモニタリング目的のみでICUに在室するのは難しいと思われる。遊離皮弁は機械的圧迫により血栓症が発生する可能性があり,安静を保つ必要がある。しかし,興奮と譫妄により安静を保てない可能性がある。現在,遊離皮弁に関する文献の多くは,後ろ向き観察研究であり,今後はランダム化比較試験が課題である。本稿では,ICU管理に必要な遊離皮弁の基本的知識について解説するとともに,問題点を考察する。
  • 鶴田 良介, 山本 隆裕, 藤田 基
    2017 年 24 巻 4 号 p. 389-397
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    睡眠は睡眠ポリグラフィによりレム睡眠とノンレム睡眠に分類される。睡眠-覚醒リズムは概日リズム機構とホメオスタシス機構の2本立てでコントロールされている。その調節にあたっては,視床下部前部に睡眠の,後部に覚醒の中枢があり,GABA(γ-aminobutyric acid),ヒスタミン,オレキシン,アセチルコリン,ノルアドレナリン,セロトニンなどの神経伝達物質とアデノシンが関与している。免疫-内分泌系も睡眠調節に関わっており,炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインはそれぞれノンレム睡眠を促進,抑制する。重症患者の睡眠の特徴は,睡眠潜時の延長,睡眠効率の低下,徐波睡眠とレム睡眠の減少,睡眠の断片化などである。環境要因も含めたICUでの治療・ケア,基礎疾患,重篤な病態が睡眠障害を引き起こす。このような睡眠障害はICU環境とケアの改善により患者の睡眠に関する満足度が上がり,せん妄の発症率が低下することが報告されている。
原著
  • 高島 尚美, 村田 洋章, 西開地 由美, 山口 庸子, 坂木 孝輔, 瀧浪 將典
    2017 年 24 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    12時間以上人工呼吸管理を受けたICU入室患者のストレス経験の実態と関連要因を明らかにするために,ICU退室前に34項目のICU Stressful Experiences Questionnaire日本語版(ICU-SEQJ)を作成し,聞き取り調査をした。その実態は,8割近くが「口渇」を,7割近くが「動きの制限」や「会話困難」,「気管チューブによる苦痛」,「痛み」,「緊張」を中程度~非常に強い主観的ストレスとして経験していた。既往歴がない,緊急入室,有職者は有意にストレス経験が強く,重回帰分析では抜管前のCRP値が最も影響を与えており,気管挿管時間,鎮痛鎮静薬投与量,痛みの訴えは弱い関連があった。96名中,気管挿管に関する7項目の記憶がなかった患者は10名でストレス経験は有意に低く,関連要因はプロポフォール使用の多さと深鎮静と高齢だった。多くのICU入室患者にとってストレス経験は厄介で,入室状況や病歴によっても異なるため,看護師はニーズを予測しながら個別的にアセスメントし,ストレス経験緩和のための介入をする必要がある。
症例報告
  • 小渡 亮介, 鈴木 保之, 大徳 和之, 福田 幾夫
    2017 年 24 巻 4 号 p. 407-411
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    小児心臓手術後の呼吸管理において,一酸化窒素(NO)やhigh flow nasal cannula(HFNC)を用いた管理の有用性が報告されている。NOは肺高血圧やFontan循環管理に,HFNCは抜管後の呼吸補助に有用とされる。一般的にNOは気管挿管下に使用されるため,NO使用のために挿管管理を継続するか否か,判断に難渋することがある。今回,HFNCとNOを併用することで,抜管時期と関係なくNOを継続し,術後の肺高血圧残存症例や,Fontan型手術後症例で循環動態を安定化し,安全な呼吸管理が可能となると考え,3例に対してHFNC-NO併用療法を行った。術前等圧の肺高血圧状態である総肺静脈還流異常症2例と,漏斗胸合併手術を施行したFontan型手術後症例1例でHFNC-NO併用療法を行い,臨床経過およびカテーテル検査や超音波検査による右心経機能評価で良好な結果を得た。症例の蓄積は必要だが,HFNC-NO療法は抜管後の呼吸管理に有用であると考えられた。
  • 柳 明男, 原 嘉孝, 内山 壮太, 前田 隆求, 小松 聖史, 早川 聖子, 柴田 純平, 西田 修
    2017 年 24 巻 4 号 p. 412-416
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC)感染による溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)に対する血漿交換療法(plasma exchange, PE)の有用性は不明である。一方,中枢神経症状発症時期と腎機能障害の関係を示した報告はほとんどない。今回,当院ICUに入室しPEを施行したEHEC感染によるHUSの小児2例,PEを施行しなかったEHECによるHUSの小児1例の経過について腎機能の推移を含め報告する。対象は当院ICUへ入室したEHECによるHUS患児3例。入室時に全例で無尿を認め,持続的血液透析濾過(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始。中枢神経系(central nervous system, CNS)障害を認めた2例に対し,消化器症状発症からそれぞれ9,10日目にPEを3日間施行。2例とも退室時にCNS障害を認めず,CHDF期間はそれぞれ9,13日間であった。CNS障害を認めなかったPE非施行例のCHDF期間は36日間であった。
  • 稲葉 正人, 髙谷 悠大, 東 倫子, 江嶋 正志, 沼口 敦, 松田 直之
    2017 年 24 巻 4 号 p. 417-420
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    Prompt法で菌液を調整しMicroScan WalkAway®で判定する手法(MW prompt)でmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に対するvancomycin(VCM)の最小阻止濃度(minimal inhibitory concentration, MIC)を測定した場合,他機種や基準比濁法で測定したMICより高く判定される危険性が指摘されている。そのため,MW promptでVCMのMICが2μg/mlと判定されたMRSA感染症に対するVCMの有効性については不明な部分が多い。今回MRSA肺炎に対しVCMで治療した11例について,MW promptで測定したMIC別の臨床的,細菌学的有効性を検討した。細菌学的有効性を認めた症例は,MIC 1μg/mlの群が3例(50%)であったのに対し,MIC 2μg/mlの群は0例であった。臨床的有効性を認めた症例は,MIC 1μg/mlの群が4例(67%)であったのに対し,MIC 2μg/mlの群は1例(20%)のみであった。今回の検討ではMW promptでMICが2μg/mlと判定された場合,VCMの有効性は過去の報告と同様に,1μg/mlの場合より低い可能性が示唆された。
短報
調査報告
  • 森實 雅司, 讃井 將満, 岩谷 理恵子, 高橋 由典, 上岡 晃一, 山香 修
    2017 年 24 巻 4 号 p. 423-425
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期病院における持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy, CRRT)関連業務の実情は明らかでない。CRRT関連業務の発生時間帯および管理体制について多施設実態調査を行った。【対象と方法】24施設において2013年1月から12月までに行われたCRRT 1,785例6,024回路交換を対象とし,初回CRRTの導入および回路交換が行われた時間帯別総数および管理体制を臨床工学技士(clinical engineer, CE)の24時間院内常駐体制(以下,CE常駐)の有無で比較した。【結果】CE常駐ありの施設は12施設(50%)であった。8~17時:17~8時の初回CRRT導入および回路交換の総数の比はそれぞれ50.4:49.6,70.6:29.4であった。CE常駐なしの施設における夜間のプライミングや返血操作は多くが医師・看護師によって行われ(P<0.05),CE常駐ありの施設に比べて実施が控えられていた(P<0.01)。【まとめ】CRRT関連業務は昼夜を問わず発生するが,CEの24時間院内常駐体制を整備している施設の割合は高くなく,CRRT関連業務に関わる職種とその実施状況はCEの夜間勤務体制に影響されていることが明らかとなった。
feedback
Top