日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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3 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鎮静方法を中心に
    杉本 匡弘, 藤野 裕士, 西村 信哉, 萩平 哲, 池田 恵, 川瀬 朋乃, 妙中 信之, 吉矢 生人
    1996 年 3 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    先天性気管狭窄(congenital tracheal stenosis; CTS)6例の術後管理を経験し,術後鎮静に関して多少の知見を得たので報告する。術後10日目までは吻合部の安静を保ち気道出血を防止するため筋弛緩薬を併用した深い鎮静が重要と考えられた。10日目以降は調節性が優れているイソフルランを加え,気管支鏡(以下BFS)を用いて積極的に肺理学療法を施行し呼吸器合併症を防止した。抜管前後は気管気管支軟化症,気道分泌物過多,呼吸筋疲労を抑え抜管を成功させるために引き続き鎮静を必要とする症例が多かった。抜管前後の鎮静方法については未だ十分に確立できておらず,さらに症例の経験・研究が必要と考えられた。
  • 玉川 進, 大平 猛, 小川 秀道, 村田 克介, 和田 政彦, 大竹 一栄, 窪田 達也
    1996 年 3 巻 4 号 p. 269-272
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ウエルパス(R)(エチルアルコール(80%)+塩化ベンザルコニウム(0.2%))を誤って吸入した後,間質性肺炎をおこした症例を報告する。症例は72歳男性。2年前に左肺全摘を受けている。胃全摘術施行後5日目,ウエルパス(R)5ml程度を超音波ネブライザーにて吸入した。翌日胸痛を訴え,4日後には熱発し,7日後には呼吸不全となった。胸部X線写真では間質性肺炎像を認めた。経過中に二度の抜管を試みたが急速なPaO2悪化により再挿管を余儀なくされた。多臓器不全に陥り1ヵ月後死亡した。ウエルパス(R)吸入が間質性肺炎の原因となりうるか,ラット肺へのウエルパス(R)投与実験を行った。投与後5日目には細気管支を中心とした線維化がおこった。これは,本症例での間質性肺炎が,ウエルパス(R)によのであることを裏付ける成績であった。
  • 浜川 俊朗, 長田 直人, 田中 信彦, 近藤 修, 鬼塚 信, 高崎 真弓
    1996 年 3 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ミルクの誤嚥で油脂性肺炎に罹り,慢性呼吸不全になった6ヵ月の乳児に1年間におよぶ人工呼吸管理を行った。現病歴,検査所見より外因性油脂性肺炎と診断した。最初,圧支持換気(pressure support ventilation; PSV)で呼吸指数は7から3へ改善した。腹臥位による肺理学療法を行い,間欠的強制換気で人工呼吸器からの離脱を4ヵ月間に3回試みたが成功しなかった。中心静脈栄養で,敗血症を合併したため経管栄養に変更し,体重は6,150gまで増加した。これに伴い,on-off法で離脱を開始し,7ヵ月で離脱が完了し354日間の人工呼吸管理を終了した。PSV,on-off法による離脱,腹臥位,および経管栄養が有用であった。
  • 金子 教宏, 金重 博司, 鈴木 一
    1996 年 3 巻 4 号 p. 277-281
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    抗コリンエステラーゼ(抗ChE)剤である臭化ジスチグミンにより,急性呼吸不全をきたした1例を経験した。症例は70歳,男性で,1991年より前立腺肥大症のため臭化ジスチグミン(ウブレチド(R))15mg・day-1を服用していた。不安定狭心症のため冠動脈バイパス術を施行し,術後3日目より臭化ジスチグミンの内服を再開した。術後5日目より呼吸困難が出現し,呼吸性アシドーシス(pH7.186,PaCO286.4mmHg)を呈したため人工呼吸管理を行った。臨床症状が有機リン中毒と類似し,ChEは91(正常値3000~6500)IU・l-1と著明に低下していた。呼吸不全の原因は臭化ジスチグミンの偶然の投与中断による,コリン作動性クリーゼのための急性換気不全であることが判明した。抗コリン剤は重篤な急性呼吸不全をきたす可能性があり,その使用には十分注意すべきである。
  • 山部 一恵, 赤池 雅史, 加藤 道久, 多田 文彦, 山田 博胤, 荒瀬 友子, 神山 有史
    1996 年 3 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性。開頭腫瘍摘出術を施行した2ヵ月後に,突然,意識障害,血圧低下をきたした。低酸素血症,右脚ブロック,肺動脈圧の上昇,肺血流シンチグラムで灌流欠損像が認められ,急性広汎型肺血栓塞栓症と診断した。人工呼吸器を用いた呼吸管理と血栓溶解療法を行ったが肺酸素化能の改善は不十分であり,5ppmの一酸化窒素(NO)吸入を開始した。PaO2/FIO2比はNO吸入により164から194まで上昇し,30分間の吸入中止により90前後へ低下した。また,肺動脈圧と肺血管抵抗はNO吸入により低下した。本例は,肺血栓塞栓症の急性期においてNO吸入療法が肺酸素化能や肺高血圧の改善に有効であることを示した。
  • 藤村 直幸, 荒川 穣二, 稲垣 尚人, 辻口 直紀, 小瀧 正年, 表 哲夫, 古瀬 勉, 並木 昭義
    1996 年 3 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    34歳男性,分裂病にて通院加療中,フルフェナジン投与を契機とし悪性症候群を発症した。横紋筋融解症を合併し,血清CPK(49.7×104IU・l-1),およびミオグロビン(Mb:15×104ng・ml-1)の極度の異常高値をきたした。高Mb血症に対して,マニトールおよびフロセミドの持続投与と同時に,乳酸加リンゲル液により細胞外液の補充を行うwash-out療法を施行した。Wash-out療法により,血清Mb,CPKは劇的に低下し,急性腎不全の発症を回避することができた。悪性症候群に伴う横紋筋融解症に対しては,発症早期よりwash-out療法を行えば,重篤な合併症である急性腎不全の発症を予防できることが示唆された。
  • 佐藤 俊, 伊藤 淳, 堀之内 節, 皆瀬 敦, 松川 周, 橋本 保彦
    1996 年 3 巻 4 号 p. 293-298
    発行日: 1996/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,男性で,上行性胆管炎に敗血症,呼吸不全を併発した。心拍数,心係数の増加,酸素摂取率の低下,混合静脈血酸素飽和度の上昇,乳酸アシドーシスがみられた。組織が酸素負債により低酸素状態に陥っていた。フルルビプロフェンアキセチル投与後,体温低下とともに血圧,心拍数,心係数,酸素供給量が減少しドブタミンを併用した。ICU入室時に比較して,酸素摂取率が増加し,混合静脈血酸素飽和度が低下した。乳酸アシドーシスも解消し,組織酸素代謝が改善した。酸素供給量を正常域を越えたレベルに維持し,非ステロイド性消炎鎮痛薬により細胞の酸素需要を抑制することが,敗血症時の組織酸素代謝を改善する一助になりうると考えられた。
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