近年,体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)による管理を必要とする患者を中心として,集中治療を要する重症患者の病院間搬送が多く実施されている。しかし,ECMOセンターや集中治療施設が,各施設の経験に基づいた搬送システムを構築し,搬送に係る費用調整やスタッフの教育等を行っているのが現状である。本邦における標準的かつ体系的な搬送体制は存在しない。諸外国においては,複数の救急・集中治療もしくは航空医療関係の学会等から病院間搬送に係るガイドラインが発表されているものの,いずれもエキスパートコンセンサスの域を出ない。この度,日本集中治療医学会「集中治療を要する重症患者の広域搬送ガイドライン」作成委員会において,搬送におけるリスク軽減と安全な搬送体制の確立に焦点を当て,ICUから他施設のICUまで病院間搬送を実施するにあたり,搬送に必要な特殊環境医学や搬送体制の標準化を示し,さらには搬送に必要な法規・規則,教育・研究に至るまで,システマティックレビューを加えたガイドラインを作成した。