日本集中治療医学会雑誌
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5 巻, 1 号
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  • 斎藤 篤
    1998 年 5 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    細菌感染症の化学療法は,原因菌の明らかな場合の基本的な抗菌化学療法と,救命を目的に原因菌が特定される前に感染病巣での原因菌を推定し,薬剤耐性度を予測して初期治療を開始する,いわゆるempiric therapyとに大別される。集中治療領域での化学療法は後者に属することが多い。いずれの方法によるにせよ,病態や全身状態を把握したうえで,抗菌薬の体内動態や安全性を考慮して選択薬剤ならびに使用法を決定する。なお,化学療法開始後も経過を十分に観察し,可能な限り原因菌あるいは交代菌の捕捉や無効例の原因検索にも努めなければならない。
  • 土師 一夫
    1998 年 5 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症(AMI)に対する再灌流療法は閉塞した梗塞部灌流冠動脈を発症後早期に再開通して順行性血流の回復を図り,梗塞巣を縮小する治療法である。その最大の目的は急性期死亡率の改善である。本法は初期には線溶薬の冠注法によって試行されたが,大規模試験によって静注法の有用性が実証された後,AMIの初期治療として確立された。線溶薬としては現在,組織型プラスミノーゲン活性因子が繁用されている。その後,冠動脈インターベンションの発展によって,経皮的冠動脈形成術(PTCA)が再灌流療法として導入された。PTCAも大規模試験の結果,その有用性が立証されつつある。本邦では,欧米に先立ってPTCAが再灌流療法の主流である。再灌流療法は現在も方法論において発展途上にあり,新たに開発された半減期の長い線溶薬やステント留置などを中心に,その有用性が検討されつつある。
  • 坪 敏仁, 石原 弘規, 松木 明知
    1998 年 5 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    経食道心エコーは,すでに手術室では広く用いられる検査手技となっている。本論では,経食道心エコーが現在集中治療領域でいかに用いられているかを述べた。経食道心エコーは主に循環異常の把握に使用され,感染性心内膜炎や乳頭筋断裂の診断にも利用される。呼吸変化が循環動態に及ぼす影響では,呼気終末陽圧(PEEP)による変化が検討されている。呼吸器系異常では,下側肺障害の診断にも有用である。また,血管内カテーテル挿入時の補助にも有用である。経食道心エコーは,経胸壁心エコーに比して鮮明な画像が得られ,集中治療部での今後の利用拡大が期待される。
  • 柴田 雅士, 上嶋 健治, 平盛 勝彦, 遠藤 重厚, 佐藤 紀夫, 鈴木 知己, 青木 英彦, 鈴木 智之
    1998 年 5 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    マグネシウム(Mg)は細胞内へのカルシウム(Ca)流入を抑制するCa拮抗物質で,インターロイキン6(IL-6)は臓器の侵襲程度を反映するサイトカインである。心筋梗塞症(AMI)急性期に硫酸Mgを投与し,再灌流障害を示唆する現象の抑制効果を検討した。再灌流療法施行患者連続22例を,再灌流療法前に硫酸Mg0.27mmol・kg-1を静脈内投与する群11例(Mg群)と非投与群11例(C群)とに無作為に割り付け,血中Mg2+濃度とIL-6を測定した。再灌流時の現象は再灌流不整脈,12誘導心電図上のST再上昇および胸痛の増悪とした。再灌流成功は20例(Mg群9例,C群11例)で,Mg群の平均血中Mg2+濃度は投与前0.39mmol・l-1から投与後1.04mmol・l-1に上昇した。再灌流不整脈の出現率はMg群がC群より有意に低く,ST再上昇度はMg群がC群より低い傾向にあった。血中IL-6ピーク値はMg群がC群より低かった。AMI急性期再灌流療法時の硫酸Mg投与は,虚血再灌流障害から心筋細胞を保護する可能性がある。
  • 中 敏夫, 篠崎 正博, 森永 俊彦, 友渕 佳明, 栗林 恒一, 竹中 徹, 阿部 富彌
    1998 年 5 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    再生セルロース(RC)膜とポリアクリルニトリル(PAN)膜を用いた閉鎖式回路に全血を体外循環させ,炎症性サイトカイン(IL)の産生および吸着について検討した。灌流前後で血球数,血漿サイトカイン濃度および単核球(PBMC)におけるサイトカインのmRNA(messenger RNA)の発現をRT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)法を用いて測定した。灌流前後で白血球数に変化はなかったが,RC膜およびPAN膜でPBMCおよび血小板数は減少した。RC膜では血漿IL-6,IL-8は有意に上昇したがPAN膜では灌流前と変わりなかった。一方RC膜,PAN膜ともにmRNAは強く誘導されていた。これらからRC膜・PAN膜を用いた体外循環によりサイトカインは産生を刺激される。ただしPAN膜では産生されたサイトカインの膜への吸着が示唆された。
  • 丸山 美津子, 山根 育恵, 華山 亜弥, 和田 恭直, 丸川 征四郎
    1998 年 5 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,消毒用エタノールによる三方活栓消毒法を改善することである。ICU患者の静脈ルートに接続された三方活栓(活栓)を対象とした。活栓注入口およびキャップを消毒用エタノール綿で丁寧に清拭する従来の方法(清拭群)と,噴霧器で噴射する方法(噴射群)を比較検討した。消毒は活栓操作のたびに実施した。両群とも24時間使用後,活栓注入口から綿棒拭き取り法と滅菌生食水灌流で検査用試料を採取した。対象活栓からの薬剤注入回数,輸液剤糖濃度は両群間に有意差はなかった。病原細菌は清拭群の活栓(16個)から5件(31.3%),噴射群(20個)から1件(5.0%)検出され有意差(p<0.05)を認めた。真菌はそれぞれ4件(25.0%),3件(15.0%)認めた。エタノール噴射法は,真菌芽胞には無効であるが,細菌感染の防止には優れていた。
  • 大塚 将秀, 羽尻 悦朗, 武田 康二, 西川 正憲, 長谷川 英之
    1998 年 5 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肺胞蛋白症と診断し,11年間の間に左7回右6回の肺胞洗浄を行った症例を経験した。肺胞洗浄は,全身麻酔分肺挿管下で,量規定法で洗浄液を注入して行った。洗浄で症状は改善したが,その効果はしだいに減弱した。初診後10年目には間質陰影の増強と気腫状の変化が進行し,肺底部は蜂窩肺となった。その後,肺炎および両側気胸を併発し,初診後11年目に呼吸不全で死亡した。初診時の組織標本では肺胞隔壁は正常の構造を保っていたが,剖検時は気腫性嚢胞化と細胞浸潤を伴う間質の線維性肥厚が著明であった。経過中,PaO2はよく保たれていたが,%一酸化炭素肺拡散能(%DLCO)は症状の悪化に伴って低下した。病状の把握には%DLCOの評価が重要と考えられた。%DLCOは洗浄後数か月は改善し,その後悪化した。洗浄を繰り返す場合には,%DLCOの変化が参考になる可能性が示唆された。
  • 藤井 洋泉, 大谷 彰一郎, 倉迫 直子, 石津 友子, 田中 利明, 香曽我部 義則, 時岡 宏明, 大野 貴司
    1998 年 5 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome; SSSS)は一般的に乳幼児の疾患とされており,成人発症型はきわめて稀である。今回,椎体・膝関節炎を契機として発症した成人型SSSSを経験した。68歳,男性,腰痛,膝関節腫脹のため当院整形外科に入院し,第3病日より頸部,前胸部,四肢にびまん性紅斑,弛緩性水疱が出現した。Nikolsky現象は陽性であった。高熱,意識障害が出現し,呼吸・循環動態が悪化したためICU入室となった。膝関節液,動脈血より黄色ブドウ球菌を検出し,組織像は皮膚顆粒層の切断による表皮剥離であり,表皮剥脱性毒素(exfoliative toxin; ET)の産生能を認めたため成人型SSSSと診断した。乳幼児では予後良好だが,成人型は死亡率が高く予後不良であり,早期よりの強力な抗生剤投与と集中治療により救命できた。多くの成人型SSSSは免疫能低下患者に発生するが,本症例は明らかな基礎疾患の合併なく発症した稀な1症例である。
  • 中田 一夫, 嶋岡 英輝, 安宅 一晃, 福田 正子, 高木 治, 佐谷 誠
    1998 年 5 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1998/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia; APL)にneutropenic enterocolitis(NE)を合併し,敗血症性ショックに陥った症例を経験した。症例は,42歳の男性で,APLの化学療法中,白血球数が150mm-3にまで低下し,発熱,右下腹部痛を来し,さらには敗血症性ショックに陥った。この時点で汎発性腹膜炎の診断のもとに緊急開腹術を施行し,術中所見よりNEと診断した。回盲部切除を施行したが,術後も呼吸状態,循環動態ともに不安定で敗血症性ショックが遷延したため,計3回のエンドトキシン吸着療法を施行した。これによりエンドトキシン濃度は81.9pg・ml-1から14.5pg・ml-1に低下し,敗血症は著明に改善した。本疾患は悪性血液疾患の化学療法中に併発する重篤な壊死性炎症性腸炎であり,現在なお高い死亡率を有している。本症例の場合は,感染巣である壊死腸管の早期除去と,エンドトキシン吸着療法の併用が奏功し,続発する敗血症性多臓器不全を阻止することができ,救命につながったと考えられた。
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