日本集中治療医学会雑誌
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8 巻, 4 号
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  • 佐和 ていじ
    2001 年 8 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    III型分泌システムとは,近年,多くのグラム陰性菌において,共通して新しく同定されてきている蛋白分泌システムである。細菌は,標的とする真核細胞への表面接触ののち,このシステムを通じて,細菌蛋白を真核細胞の細胞質内に直接打ち込む。打ち込まれた細菌蛋白は,真核生物の細胞内シグナリングを修飾し,細菌はこれにより宿主の免疫を逃れる。近年,緑膿菌においてもIII型分泌システムが同定された。緑膿菌は,このIII型分泌システムを通じてexoenzymeを直接標的細胞の細胞質内に打ち込む。III型分泌システムを通じて細胞毒性を発揮できる緑膿菌株は,急速な肺上皮細胞壊死,全身播種,そして敗血症を誘発できる。緑膿菌のIII型分泌システムは,緑膿菌性肺炎における急性肺損傷,敗血症の病態形成に関わっている。
  • 宮坂 陽子, 岩坂 壽二
    2001 年 8 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    集中治療の現場においては,失神発作や心室細動で収容される例は日常的である。特発性心室細動とは明らかな器質的心疾患がなく心室細動をきたすものを言う。そのサブグループとして,正常境界型心電図と診断せざるをえない右脚ブロック様心電図に加え,右側胸部誘導のST上昇といった特徴的な12誘導心電図所見を示すBrugada症候群の存在が約10年前に報告された。本症候群は中壮年の男性に多い突然死の原因であり,また植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator, ICD)により確実に予後の改善が期待できるとされる。つまり,集中治療室において,失神発作や心室細動で収容されたBrugada症候群は明らかな器質的心疾患を認めないだけに,心電図波形の特徴や変化に診断のきっかけがあり,そのことが有効な治療法の選択につながる。したがって,より多くの医師への啓蒙が本疾患による不幸な突然死を抑止する最大の方策であると考えられる。
  • 相引 眞幸, 川口 秀二, 河井 信行, 小倉 真治, 前川 信博, 長尾 省吾
    2001 年 8 巻 4 号 p. 317-324
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    心拍出量を維持した脳低温療法の外傷性脳損傷(TBI)に対する効果を検討した。対象は,連続した低温療法施行31例(hypothermia群)と,他の治療は同様で連続した常温管理群13例(normothermia群)である。低温療法の適応は,来院時Glasgow Coma Scale (GCS)8点以下でCT所見陽性例。両群間に,年齢,性別,来院時GCSなどに差はなかった。低体温群では,3~4日間内頸静脈温を32~33℃台に調節した。低温療法中の循環抑制に対しては,膠質液負荷と,ドブタミン投与を行った。Hypothermia群では,低体温期の心係数は,normothermia群の入院3日間のそれと差がなかった。心係数の維持とともに内頸静脈酸素飽和度は上昇したが,脳圧は逆に低下した。TBIの予後良好例は,hypothermia群で71%(31例中22例),normothermia群で31%(13例中4例)であった(Chi-Square test, P<0.05)。我々の心拍出量を維持した脳低温療法はTBIの予後を改善した。
  • 七戸 康夫, 住田 臣造
    2001 年 8 巻 4 号 p. 325-332
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    侵襲時に発現する熱ショック蛋白(heat shock protein, HSP70)に注目し,敗血症による小腸のHSP70誘導とHSP70による敗血症性小腸組織傷害の軽減を検討した。ラット盲腸結紮穿刺(CLP)腹膜炎モデルを用い,36時間後に犠死せしめ抗HSP70抗体を用いて免疫組織染色を行った。さらに温熱曝露(heat stress, HS)または亜ヒ酸ナトリウム(sodium arsenite, SA)を与えた後にCLPを行ったHS-CLP群,SA-CLP群の小腸組織傷害の程度をCLP群と比較した。CLPによって小腸絨毛先端にHSP70が強く誘導された。小腸にHSP70を発現させる至適なHSは42℃15分間,SAの投与量は6mg・kg-1であった。HS-CLP群,SA-CLP群はCLP群と比較して,小腸傷害が軽減された(P<0.05)。ラット腹膜炎敗血症の際に小腸にHSP70が発現し,またHSP70の前誘導により小腸組織傷害が軽減され,敗血症治療の検討課題となりうることが示唆された。
  • 森村 尚登, 谷口 英喜, 後藤 正美, 中村 京太, 清水 誠, 山口 修, 磨田 裕, 杉山 貢
    2001 年 8 巻 4 号 p. 333-340
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ICUにおいて持続鎮静に抵抗した症例の臨床経過を検討し抵抗性に影響する因子を明らかにすることを目的とした。デザインは観察ケースコントロール研究。1995年6月から1998年1月までに救命救急センターICUに収容した1,165例中16歳以上で気管挿管および人工呼吸下に持続鎮静された70例(45±2歳,男性53例,女性17例)について臨床像を調査し,持続鎮静抵抗群(14例)と非抵抗群(56例)の2群に分類して比較検討した。持続鎮静抵抗群ではICU滞在日数,人工呼吸器管理日数が長い症例,全身炎症反応性症候群(SIRS)症例,フルニトラゼパム使用例,持続血液浄化施行例,ステロイドとエリスロマイシンの長期使用例が有意に多かった。持続鎮静抵抗性の発現に影響するのは,鎮静開始早期は炎症の持続または感染の併発による代謝性因子,開始2週間前後においては前者に加え集中治療長期化による中枢性因子であることが示唆された。今後は対象疾患および鎮静薬の使用条件を一定とした前向き研究が必要である。
  • 松岡 博史, 押川 満雄, 吉村 安広, 成尾 浩明, 谷口 正彦, 濱川 俊朗, 高崎 眞弓
    2001 年 8 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    術後気管膿瘍瘻による急性呼吸不全に対し,ドレナージの工夫と体外膜型肺(ECMO)を用い救命できた1症例を報告する。症例は54歳の男性。食道癌で食道亜全摘術を受けた。術後第5病日に気管内より膿汁が多量に排出され,直後にP/F ratioが47mmHgに低下した。下大静脈送脱血でECMOを開始した。ECMO補助中の人工呼吸は,FIO20.6以下でSpO295%以上に保った。術後第9病日の気管支鏡検査で気管分岐部直上に縦隔内膿瘍との交通を認めたため,気管チューブ内を通した細い経皮的経肝胆嚢ドレナージ用カテーテルと,背部からのドレナージを行った。ドレナージによるエアリークを減らし,陽圧換気ができるように,ドレーンの持続吸引を行わずチューブ先端を水中に入れるなどの工夫をした。徐々に膿汁の流出が減少し呼吸状態が改善し,術後第13病日にECMOから離脱し,術後第33病日に気管チューブ内ドレーンを抜去した。術後第40病日に人工呼吸器より離脱し,翌日一般病棟に退室した。
  • 松島 吉宏, 高瀬 凡平, 広岡 伸隆, 浜部 晃, 上畑 昭美, 里村 公生, 大鈴 文孝, 栗田 明
    2001 年 8 巻 4 号 p. 347-349
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脳梗塞による知覚麻痺と同部位の血管内皮機能低下を認めた症例を経験したので報告する。症例は45歳男性,磁気共鳴画像(magnetic resonance imagings, MRI)検査で左中大脳動脈領域に脳梗塞像,右上下肢で知覚麻痺を認めた。冠動脈造影で左前下行枝近位部に完全閉塞を認めた。Flow guidewireを左冠動脈回旋枝および左右上腕動脈に留置し,アセチルコリン持続投与にて血流量を測定し,血管内皮機能を検討した。冠動脈,左上腕動脈で血流量は2.4および1.5倍に増加したが,右上腕動脈(麻痺側)では増加が認められなかった。知覚麻痺が局所的な血管内皮機能低下に関与すると示唆された。
  • 近藤 美重, 山口 俊一郎, 大納 哲也, 有村 敏明
    2001 年 8 巻 4 号 p. 351-354
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    24歳,男性のシンナー常用者がシンナー吸入後,多尿,脱力にて来院し,著明な低K血症,心電図異常とアニオンギャップ正常な代謝性アシドーシスを認めた。尿酸性化障害はみられなかったが,シンナーに含まれるトルエンの代謝産物の尿中馬尿酸の高値を認めた。病態としてトルエン中毒による尿細管性アシドーシスが考えられた。トルエン中毒では,遠位型の報告がほとんどである。近位尿細管性アシドーシスは,HCO3-の再吸収障害を本態とし,HCO3-低値時や,NH4Cl負荷試験などのように主として遠位尿細管から分泌される酸の過剰負荷時には尿酸性化が確保される点が遠位型とは異なる。本症例では,第25病日に施行した塩化アンモニウム負荷試験の結果からも,近位尿細管性アシドーシスが示唆され,その遷延化が確認された。トルエン中毒による腎尿細管障害は,遠位尿細管にとどまらず,また不可逆的変性をきたす可能性がある。トルエン中毒時には,近位尿細管性アシドーシスも念頭におく必要があると思われた。
  • 藤井 洋泉, 賀来 隆治, 大橋 一郎, 中塚 秀輝, 松三 昌樹, 片山 浩, 森田 潔, 平川 方久
    2001 年 8 巻 4 号 p. 355-359
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    免疫抑制薬による腎障害は,臓器移植後の重大な副作用の1つである。ヒト心房性利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide, hANP)は,腎輸入細動脈拡張作用と,メサンギウム細胞弛緩作用により尿量を増加させ,腎保護的に作用する。我々は,従来の治療に抵抗した急性腎機能障害にhANP投与が著効した3症例を経験した。hANP投与は臓器移植後の難治性急性腎機能障害に対して試みるべき治療と考える。
  • 大家 宗彦, 丸川 征四郎, 井上 貴至, 細原 勝士, 上野 直子, 久保山 一敏
    2001 年 8 巻 4 号 p. 361-363
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    有効な治療法がない疾患に対して,遺伝子組み込み治療や,アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療が研究され,一部はすでに臨床治験が行われている。救急集中治療でしばしば経験する急性重症膵炎は有効な治療法のない予後不良な疾患の1つである。そこで,試験的研究としてラット急性膵炎モデルを用いて遺伝子治療の有効性を検討した。Sprague-Dawleyラット11匹を対象にNFκB decoyオリゴヌクレオチド(NFκB DON),ノンセンスオリゴヌクレオチド(NFκB NON),コントロールとして生理食塩水を経動脈投与した後,セルレインを投与して急性膵炎を誘発し,膵炎の指標として血中のアミラーゼおよびリパーゼ活性を測定した。その結果,NFκB DON投与群の血中アミラーゼおよびリパーゼ活性はコントロール群に比べて有意に抑制された。NFκB DONはNFκBに結合し標的遺伝子の発現をmRNAレベルで抑制するのであるが,セルレイン誘発急性膵炎モデルにおいては完全ではないが膵炎の発症を抑制した。この結果は,NFκB DON投与が急性膵炎の新しい治療法になりうることを示唆すると考えられる。今後,急性膵炎発症後における効果,副作用などについて検討が必要である。
  • 山口 亜紀子, 岩坂 日出男, 松本 重清, 鵜島 雅子, 永谷 美紀, 早野 良生, 野口 隆之
    2001 年 8 巻 4 号 p. 365-366
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 胸郭内血液量を中心に
    吉田 仁, 石原 弘規, 安田 忠伸, 坂井 哲博, 岩川 力, 大川 浩文, 坪 敏仁, 松木 明知
    2001 年 8 巻 4 号 p. 367-368
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 升田 好樹, 今泉 均, 四十物 摩呼, 佐藤 守仁, 浅井 康文
    2001 年 8 巻 4 号 p. 369-370
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
  • 2001 年 8 巻 4 号 p. 377
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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