症例は49歳男性で,急性骨髄性白血病に対し,化学療法,ステロイドパルス療法施行後,侵襲性アスペルギルス(以下Asp)肺炎による急性呼吸不全によりICU入室となった。人工呼吸管理開始後12日目,突然,不整脈,ST上昇,完全房室ブロック,心停止を呈した。カテコラミン投与後,一時的ペースメーカーを挿入し,血圧,心拍数を維持したが,翌日,血圧が低下し,心不全,低酸素血症が進行し死亡した。剖検の結果,Aspによる多臓器障害を認め,特に,心臓では心筋梗塞を伴う心筋炎を認め,心筋内に多発,広範囲に,また一部心外膜にまで,膿瘍,壊死を認めた。Asp心筋炎は,特徴的症状,所見がなく,多くは剖検後に診断されるため,生前診断,治療に困難を有し,いったん発症すると致命的な病変である。このような全身性Asp症で,何らかの心電図異常を認めた場合,Asp心筋炎の可能性を念頭におくべきである。
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