情報通信学会誌
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29 巻, 4 号
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論文
  • 赤穂 満, 福田 豊
    2012 年 29 巻 4 号 p. 4_31-4_45
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/22
    ジャーナル フリー
    最近のグローバルな経営環境の下で、企業は多くの競合相手に勝ち抜かなければならない。激しい市場競争の中で、顧客の満足度を維持しながら高品質なサービスや商品を他社よりも早く提供するためには、1社単独で実現するには非現実的である。大企業は、自社のコア事業に経営資源を集中させ、不足する事業に他社との提携による「企業間ネットワーク」を進めることで業績を維持している。大企業と比べて、経営資源の利用において制約の大きい中小企業としては、IT活用やその効果を引き出すための施策や人材の確保などが遅れていることなども指摘されている。
    本稿では、本社が有数のグローバルカンパニーの日本支社でありながら、本社から投資を受けずに独立でオープンソース・ソフトウェアによって、企業間ネットワークを構築した事例を分析し、オープンソース・ソフトウェア導入のメリットをユーザーの立場から実証的に考察する。本事例の特徴は、「新規投資に制約のある単一事業の企業モデル」であり、中小企業や独立採算事業のモデルに共通する面がある。
    本研究において、本事例が将来の中小企業のネットワークソリューションに示唆できる要件を明らかにしたい。
  • ―Twitter日本人利用者との比較
    張 永祺, 石井 健一
    2012 年 29 巻 4 号 p. 4_47-4_59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/22
    ジャーナル フリー
    中国で最も使われているマイクロブログの新浪微博の発言を分析対象とし、Twitterの日本語利用者の発言と比較しながら、中国のマイクロブログの情報伝播過程の特徴を明らかにした。分析には、「昆布の噂」に関する発言と無作為に抽出した発言の二種類のデータを用いた。結果によると、マイクロブログにおいて日本人の方がフォローの相互性が高く、個人間のやりとりに使う傾向がみられるのに対して、中国ではリツイートの利用率が高く、リツイート回数も日本より多い。また、中国ではマイクロブログにおいて情報が影響力の高い人から低い人へと伝わる。このため、中国では人気のある発言がリツイートによって短時間で多くの人に伝達される。一方、日本では、情報は水平的に伝わる傾向がある。ロジスティック回帰分析の結果では、中国のマイクロブログにおいて画像があることと個人体験的な内容ではないことがリツイートを有意に促進していた。
  • ―日本のウェブ文化を手がかりとして
    平井 智尚
    2012 年 29 巻 4 号 p. 4_61-4_71
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/22
    ジャーナル フリー
    本論ではウェブで炎上がなぜ起こるのかという問題を日本のウェブ文化の観点から明らかにする。炎上とはブログ、ミクシィ、ツイッターなどに投稿されたメッセージの内容に対して、批判や非難が巻き起こる現象を指し、ブログの普及以後、たびたび発生している。それに伴い、炎上に対する社会的な認知も高まり、新聞、雑誌、ニュースサイトなどで言及が行われている。しかし、学術的なアプローチをとった考察は今のところ多くはなく、考察の余地も残されている。
    本論ではまず炎上の事例を歴史的に整理する。次いで、先行研究への言及をかねてフレーミング現象との比較検討を行う。この作業を通じてフレーミングと炎上の違いを示したうえで、電子掲示板2ちゃんねるの文化と、若年層が担う携帯電話の文化の両面から炎上が起こる理由の説明を行っていく。そして最後に、炎上とは対極に位置するように見えるウェブと公共性に関する考察を展開していく。
  • ―OECD30ケ国のパネルデータによる推定―
    篠原 聡兵衛, 明松 祐司, 辻 正次
    2012 年 29 巻 4 号 p. 4_73-4_85
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/22
    ジャーナル フリー
    高速大容量の通信を可能とするブロードバンドは今や経済社会の必須なインフラとなり、その普及は先頭を切る日本や韓国のみならず米国やEU等、世界各国で重要な政策課題となっている。本稿の目的は、OECD30ケ国を対象にCATV (BB)、DSL、FTTxの3技術について、2002年から2010年のデータを用いて普及要因を明らかにすることにある。これまで、FTTxを含むブロードバンド全体に関する多国間の包括的実証研究は例がないといってよい。パネルデータ分析の結果、CATV (BB) は2000年時点での放送としての受信契約数、DSLはメタル回線のアンバンドル、FTTxは事業者の光ファイバ投資への経営意欲や光ファイバ回線のアンバンドル規制がないこと、これらが普及を促進したとの結果が得られた。さらに推定された価格弾力性から、これら3技術は互いに代替的であることが実証された。このような結果は、各国でのブロードバンド普及政策の策定に当たって重要な示唆を与えるものである。
論説
  • ―基幹通信ネットワークの整備について―
    高田 義久, 藤田 宜治
    2012 年 29 巻 4 号 p. 4_87-4_101
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/22
    ジャーナル フリー
    太平洋島嶼国では、医療・教育など公共サービスが住民に十分提供されていないが、ICTを利活用することにより、散在する離島でもそれらは提供可能となり、地域の発展をもたらすことができる。しかし、地理的要因により、特にブロードバンド通信でデジタル・デバイドの解消が進んでいないことで、そのようなサービスの提供が行われている例は少ない。
    太平洋島嶼国における主な通信サービスの現状は、携帯電話の普及率は向上しているが、ブロードバンドは料金が高く普及が進んでいない。ボトルネックとなっているのは基幹通信ネットワークであり、伝送容量が比較的限定され、料金が高額なものの、広範な地域をカバーできる衛星通信と、大容量ではあるが、敷設費用が高く面的なカバーが困難な海底ケーブルがある。
    近年、従来のCバンドに加えて、小型省電力のKuバンド衛星通信がこの地域でも利用可能になったことから、各メディアの特徴と現地調査の分析を踏まえると、域外と限定された主要島嶼間は海底ケーブル、Cバンド衛星通信は主要島嶼間、Kuバンド衛星通信はその他の離島という南太平洋大学の遠隔教育ネットワーク構成が、この地域におけるネットワーク整備の方向性を示している。
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