本稿では書籍・電子書籍の発行後、累積利益が最大となるまでの期間を「商業的寿命」と定義し、その分析を行った。まず、書籍の発売後の経過時間と販売冊数の関係を「販売関数」として定義し、販売関数を用いて、売上額、製作コスト、印税額、在庫コストを考慮した出版者の利益を「利益関数」として定式化した。利益関数から,個別の書籍がどのようにその商業的寿命を迎えるのか分析を行い、商業的寿命後に出版社と著作権者の間に利益相反が発生することを示した。
次に著作権者と著作物利用者という社会的効用の視点から、各書籍・電子書籍の出版期間の終了時に著作権者が著作権を放棄した場合、著作権者の効用には変化がないが利用者の効用は大きくなることを示した。
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