情報通信学会誌
Online ISSN : 2186-3083
Print ISSN : 0289-4513
ISSN-L : 0289-4513
34 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 海野 敦史
    2016 年 34 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    米国の法執行機関による IMSI キャッチャーを通じた情報収集について、それが令状手続によらずに行われる場合に、米国憲法修正 4 条にいう「不合理な捜索」に該当する可能性が議論の焦点となっている。これは、①公権力が個々の通信に関する情報を直接かつ一方的に収集する、②対象となった携帯電話端末の占有者において当該収集の事実を知ること及びそれを回避することが物理的に困難である、③収集・分析対象の情報の中には端末の所在地のように利用者のプライバシーに関する利益に深く関わると認められるものが含まれ得る、などの点にかんがみ、物理的な不法侵入の不存在や誰もが容易にアクセス可能な公共の空間における電波の受信という手法等にかかわらず、「プライバシーの合理的な期待」の保護と解されている同条の趣旨に基づき、令状主義の原則の要請に服すると考えられる。このとき、米国法上、通信傍受や通話番号等記録装置の設置・使用のあり方に関する電子通信プライバシー法の規律と同様に、かかる要請を具体化する新たな立法措置が求められる中で、通信傍受でも通話番号等記録装置の設置・使用でもない固有の特質を有する新種の「捜索」として位置づけられ得る。このことは、我が国において、今後 IMSI キャッチャーが普及するか否かを問わず、技術革新に対応した新種の捜査について、その実施が各人のプライバシーの権利等の基本権又は基本権に関する法益に対する本質的な制約となり得る限り、強制処分としての立法上の位置づけの再整理が必要となるという示唆を与える。

  • 15歳青少年に対する縦断的調査のデータを基に
    齋藤 長行, 赤堀 侃司
    2016 年 34 巻 3 号 p. 13-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    今日、スマートフォンやタブレットなどの通信デバイスが青少年に普及したことにより、インターネットは彼らにとって身近なものとなっている。その一方で、様々なインターネット上のトラブルに青少年が直面するという問題が社会問題化している。本研究では、青少年インターネット環境整備法附則第 3 条に従い、定期的な青少年のインターネット環境を評価するために、15 歳の青少年を対象とした縦断的調査のデータを基に、啓発教育政策の進展について分析・評価を行った。分析・評価の結果から、1)学校や家庭における啓発教育の実施率は増加しているものの、家庭におけるその割合は未だ十分とは言えない。2)学校での啓発教育は、インターネットリテラシーを身につけさせるために寄与していることを明らかにすることができた。

  • プライバシー懸念の多様性に着目した実証分析
    高崎 晴夫
    2016 年 34 巻 3 号 p. 25-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    個人情報等の可用性と個人情報・プライバシー保護をバランスさせる新たなビジネスモデル構築という視点に立ち、パーソナライズド・サービスを巡る産業政策についてデータに基づく客観的な議論に資するため、2010 年にわが国では初めてとなる、消費者のサービス利用意向とデータ開示意向に関する大規模なWeb アンケート調査を実施した。本稿は、先行研究で触れられることの無かったプライバシー懸念の多様性に着目し、プライバシー懸念がサービス利用意向にどのような影響を与えているかを詳細に分析した。その結果、利用者が有するプライバシー懸念の中身によってサービス利用意向に与える影響度合いが異なることを含め、先行研究では見られなかった新たな知見を見出し、懸念の種類ごとに異なる事業者対応や政策対応が必要となるなどの示唆が得られた。

  • 田中 大智
    2016 年 34 巻 3 号 p. 41-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    パーソナルデータの利活用の拡大にともないプライバシー保護が重要になっているが、個人情報保護法はプライバシー保護法ではないため、企業のプライバシー保護インセンティブは不当に低くなっている可能性がある。そこで本稿では、プライバシーシールの一種であるプライバシーマークを取得している事業者のWeb サイトを調査し、「プライバシーマークを表示することによって追加的に得られる純利益が大きい取得企業ほど取得を積極的にアピールしている」という仮説を検定することで、企業の想定している「消費者のプライバシー意識」および「委託元企業の個人情報保護意識」を明らかにする。統計的手法を用いた実証分析の結果、上記の仮説は B2C 取引においては支持されなかったが、B2B 取引においては支持された。この結果は、B2C 取引において企業の想定する「消費者のプライバシー意識」は低い水準にあるが、B2B 取引において企業の想定する「委託元企業の個人情報保護意識」は高い水準にあることを示唆している。

  • 制度的同型化を端緒として
    橋本 純次
    2016 年 34 巻 3 号 p. 53-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    本稿は、制度的同型化の視座による現状分析とアンケート調査をもとに、民放地方テレビ局が自身の存在意義として捉える「地域密着」業務を行う際に直面している課題を明らかにするものである。制度的同型化の観点から、地方局には、その所在する県域において独自性を獲得するためのインセンティヴが働く。また、地方局には、「地域密着」に関する共通認識が存在している。しかしながら、規模の大きくない地方局では、住民ニーズや、受容様式の把握について、その限界を認識しながらも、視聴率分析のような、従来型の手法に頼らざるを得ない。そのため、地方局が経営判断をする際に前提となる、県域における独自性の自己評価が困難となっている。

    そうだとすると、地方局をめぐる放送政策が効果を発揮するためには、構造規制緩和のように、経営基盤の安定化を志向する制度改正と、地方局による県域住民の実情把握を可能にする政策が同時になされる必要がある。

  • モバイルゲーム産業の実証分析
    山口 真一, 坂口 洋英, 彌永 浩太郎, 田中 辰雄
    2016 年 34 巻 3 号 p. 69-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    情報通信産業の新しいビジネスモデルとして、基本機能を無料で提供し、付加機能を有料で提供する、いわゆるフリーミアムがある。フリーミアムを採用しているサービスは急増しているが、特にその中でも、非定額型のデジタル財課金のビジネスモデルであるモバイルゲームは、高収益・高成長率を達成している。しかしその一方で、実証研究は少なく、ビジネスモデルの確立途上にある部分も多い。

    そこで本研究では、モバイルゲームのパネルデータを用いて実証分析を行い、消費者の支払行動と長期売上高の関係を統計的に検証する。推定の結果、前期の有料ユーザ 1 人当たりの平均支払額(ARPPU)は、今期の売上高に非線形で有意な影響を与えていた。また、その極大値は約 11,754 円であった。このことから、長期売上高最大化という観点からは、ARPPU が約 11,754 円になるようにイベントやガチャの頻度、アイテムの価格を調整することが最適であることが示唆された。また、フリーミアムを採用しているサービスの大半がマネタイズに失敗し、サービス終了となっている現在、非定額型フリーミアムは成功手法として着目されている。本研究の結果はモバイルゲーム以外にもいえる可能性がある。

  • 2014年衆院選における候補者のTwitter投稿を対象とした報道の批判的検討
    吉見 憲二
    2016 年 34 巻 3 号 p. 81-95
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    2014 年に行われた第 47 回衆議院議員総選挙は、ネット選挙解禁後に行われた初の衆議院議員総選挙ということもあり、候補者のソーシャルメディア等のネット選挙手段の活用も大いに注目された。中でも、毎日新聞と朝日新聞は候補者の Twitter 投稿分析を記事にしており、従来の世論調査とは異なったアプローチでの報道がなされるようになっている。一方で、これらの新しいアプローチでの報道は方法論が確立されているとは言い難く、その信頼性に疑問が残る点もある。

    本研究では、発表者が独自に収集した候補者の投稿データとの比較から、報道機関による Twitter投稿分析のアプローチ及び結果について批判的に検討する。特に、毎日新聞が記事にした「自民党候補が「アベノミクス」の話題を避けた」という説に関して、その妥当性を検討する。

寄稿論文
feedback
Top