情報通信学会誌
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38 巻, 1 号
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論文
  • ─米国法上の議論を手がかりとして─
    海野 敦史
    2020 年 38 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/27
    ジャーナル フリー
    近年の監視型情報収集の発展に伴い、憲法上、結社のプライバシーを保護する意義が増しているが、その保護のあり方をめぐる解釈論の蓄積は些少である。学説上、憲法21 条1 項に基づく結社の自由の一環として結社のプライバシーも保護され得るとされてきたが、その保護の程度は明確にされていない。この点に関し、米国法上の関連する議論を参照しつつ考えると、憲法21 条1 項に基づき結社のプライバシーが保護されるのは、結社の結成や意思形成等に対する不当な妨害の防御に必要と認められる範囲内においてであり、かかる観点から、構成員の名簿の強制的な提出等は正当な理由が認められない限り禁止される。ところが、インターネット経由で容易にアクセス可能であるオープンな情報の集積・解析は、プライバシーに対する脅威となるものではあっても、必ずしもかかる「不当な妨害」には該当せず、憲法21 条1 項に基づく保護を受けない可能 性が高い。他方、憲法35 条1 項に基づく「私的領域に侵入されることのない権利」からは、結社としての団体自体の「私的領域」が保護されることにより、その活動の相当部分の把握に対する脅威も補完的に防御され得ると考えられる。なお、憲法13 条に基づき「自己情報コントロール権」が保障されるという通説的な考え方は、これが個人の人格的自律に根ざすものである限り、結社自体に対してそのまま援用され得るわけではないと考えられる。よって、結社のプライバシーは、憲法21 条1 項及び憲法35 条1 項により重層的に保護されると解することが妥当である。
  • 松前 恵環
    2020 年 38 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/27
    ジャーナル フリー
    今日、子どもによるスマートフォンの利用の拡大や「スマート・トイ」の普及等により、子どもの個人情報を巡り様々なリスクが生じている。個人情報保護法制において、個人情報を保護するために重要な役割を果たしているのは、情報主体の「同意」であるが、子どもは一般に同意能力を欠くか不十分であると解されており、子どもの個人情報の処理にかかる「同意」のあり方が問題となる。米国の COPPA 及び EU の GDPR では、同意能力を付与する子どもの年齢を定め、それ以下の子どもの個人情報の処理については親権者等の同意取得が義務付けられており、近時、規制が強化される傾向がある。日本でも、同意能力を認める子どもの年齢に関する規範的な検討と、子どもの年齢確認や親権者等の同意取得を行うための方法に関する実際的な検討を進めるべきである。
寄稿論文
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