情報通信学会誌
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38 巻, 3 号
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論文
  • ─再配達の有料化の実現可能性に関する調査研究─
    塚原 康博
    2020 年38 巻3 号 p. 1-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では、インターネット通販の拡大を背景とする宅配クライシスの問題を取り上げ、それをもたらした要因、それを解決もしくは緩和するための方策を考察した。本研究では、さまざまな方策のうち、再配達の有料化に注目し、その実現可能性について、全国調査の結果を基に検討した。この調査の結果から、再配達を有料化すると、多くの回答者に行動変容が生じ、1 回目での受け取りが増えるので、再配達の削減が期待できる。また、有料化の導入に際しては、多くの回答者が再配達の配送料に対して支払う意思を示している。有料化における配送料の金額設定に関しては、回答者による支払い可能な金額の最頻値、中央値、平均値が参考になるが、配達される品物の金額が10000 円以内のケースにおいて数百円程度であると考えられる。有料化で得た収入は、宅配ボックスの設置数の増加や配送員の増員などに活用できる。全国調査の結果から再配達の有料化は実現可能であり、宅配クライシスを緩和する効果は得られると期待できる。

  • 大場 吾郎
    2020 年38 巻3 号 p. 15-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

    The present study explores issues regarding the expansion of Japanese broadcast-related content business in the Chinese video streaming market, based on data gathered from a series of interviews with practitioners at Japanese broadcasters and Chinese platformers. Japanese broadcasters have viewed China as a promising but tough market for many years due to its institutional barriers along with low profitability, but have recently sought a way to utilize rapidly developing Chinese video streaming services in their growth strategy. This study is focused on the opportunities and risks in the Chinese video streaming market perceived by Japanese broadcasters as well as the value of Japanese broadcast content for Chinese platformers. It is argued that Japanese broadcasters are fully aware of risks specific to the Chinese market and have an issue with how they can take part in original content production by the Chinese video streaming platformers in response to the demand for stories and projects from the platformers.

  • ─「万引き」との比較から─
    松木 祐馬, 西川 開, 向井 智哉
    2020 年38 巻3 号 p. 29-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

    近年、違法ダウンロードの取締りは社会的に大きな関心を集めている。それをめぐる議論では、違法ダウンロードは「人のもの」を盗むという点で万引きと同じ程度に取り締まるべきであるというレトリックが提示されている。本研究はこのレトリックに着目し、著作権法について特別の知識を持たない一般の大学生が、違法ダウンロードに対してどの程度の刑罰を求めるかを万引きとの比較から検討することを目的とした。大学生282 名から得られたデータを対象にベイズ推定によって違法ダウンロードに対する量刑判断と万引きに対する量刑判断がどの程度異なるかを比較したところ、万引きに対しては約半年程度長い懲役刑が求められることが明らかにされた。本研究の結果は、違法ダウンロードと万引きを同視する上述のレトリックは一般市民の意識の上では必ずしも受け入れられていないことを示唆している。このような差が生じた理由について、保護客体の相違の観点から考察を行った。

  • 海野 敦史
    2020 年38 巻3 号 p. 39-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/02
    ジャーナル フリー

    憲法35 条1 項が要請する住居不侵入等確保権及び私的領域不侵入確保権の保障をプライバシー等に対する実体的権利の保障と解することは合理的であるが、その場合、あらゆる公権力の行使に令状手続が要求されるのかという問題が残る。しかし、同条項に基づく令状主義の要請は、基本権又は基本権法益に対する本質的な制約となる捜索等の行為に向けられており、語義としての「侵入、捜索及び押収」の類型に属する行為であっても、制約の度合いが比較的軽微な行為である捜索等近似行為に対しては及ばない。これに対し、住居不侵入等確保権等の保障が及ぶ射程については、プライバシー等の侵害の可能性にかんがみ、捜索等に厳密に限られるわけではなく、捜索等近似行為にも及ぶ。一方、令状主義の要請は、捜索等を正当化する要素の中心を占めるものの、当該要素は憲法上必ずしも令状主義のみに収斂するわけではなく、令状手続とは別の合理的な手続が法律上設定されることも予定されている。特に、非刑事手続においては、捜索等の行政目的が特定されていることや、対象者が自ら適切な範囲に捜索等の実施を調整する余地が残されているため、令状主義を絶対視する必要性は乏しい。したがって、住居不侵入等確保権等の保障と令状主義の適用範囲とは、常に連動するわけではなく、少なくとも捜索等近似行為の実施に際して切断される。それに加え、捜索等の実施に際しても、憲法13 条に基づく「公共の福祉」の確保の必要性に照らし、令状主義が例外的に切り離される可能性を残している。

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