本研究では、筆者が行ったインターネットによる全国調査によって、現行の侮辱罪の法定刑がインターネット上の誹謗中傷を抑止する効果があるかを検証し、抑止効果をもつためには、インターネット上の法定刑の上限をどこまで引き上げるべきか、そして、法定刑の上限の設定にあたり、回答者の属性が影響しているかの検証を行った。
分析結果は以下のとおりである。第1に、侮辱罪の法定刑が抑止効果をもつためには、現行の法定刑では、回答者の半数か、それ以上が不十分であると考えていた。第2に、抑止効果をもつために必要な上限については、調査データから異常値を取り除いた推計において、平均値でみて、懲役・禁固では、3年程度、罰金・科料では、50万円程度という結果が得られた。第3に、罰金・科料の金額の上限に対して、回答者の年齢が影響を与えており、若年層と比べて、中高年齢層のほうが厳罰化の必要があると感じているという結果が得られた。
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