農業農村工学会論文集
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2008 巻, 253 号
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  • 高木 東, 塩野 隆弘, 中野 政詩
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 1-9,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農地におけるリル網のリルリンク特性や地形則に関する研究は, リル網の形成が農地からの流出土砂量に及ぼす影響を解明し, かっまたリル網からの流出土砂量を予測するモデルを開発するうえで不可欠である.本研究では, 水系網に関するリンクの概念を用いて, 農地に形成されたリル網のリルリンクの幾何学的特性や勾配特性にっいて調べた.この結果により, これらのリル網について,(1) 外部および内部リルリンク長の確率分布がガンマ分布であること,(2) リンクマグニチュード理論が任意のリンクマグニチュードのリルリンク数を予測するのに有効であったこと,(3) サブ集水域内の平均総リルリンク長は当集水域内の直下流のリルリンクのマグニチュードの1次関数によってよい精度で予測されたこと, および (4) いくつかのリル網では, リルリンクの平均勾配がリンクマグニチュードの初等関数で近似的に表せたことを明らかにした.
  • 高木 東, 塩野 隆弘, 中野 政詩
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 11-20,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農地に形成されたリル網からの豪雨による土砂生産量を予測する手法を開発した. この手法は, リンクマグニチュードの関数でリルリンクの特性値をパラメータとして持つリル網の幾何学的モデルを, すでに提案された土砂生産量の予測モデルに結びつけることにより開発された. この幾何学的特性モデルを現地に形成されたリル網に適用した結果, 当モデルの有効性が示された. 本研究の結果により, 対象となるリル網がよく発達しておりしかもリル網内のリルにおける正味の侵食強度が侵食支配型の場合に, 本研究で開発された予測手法が有効であることが示された. この予測手法では, リル網を構成するすべてのリルリンクにおいて侵食量を計算する必要がない. 従って, 適切なリルリンクの特性値が与えられれば, 本予測手法を用いることにより, 煩雑な計算や完全なリル網図は不要となる.
  • 小林 俊也, 足立 泰久
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 21-26,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    モンモリロナイト粒子の表面に吸着するイオン種やその濃度と形成されるフロックの構造との関係を明らかにするために, 単一フロックの沈降実験を行い, 凝集の化学的環境条件に対応させ, フロック構造を記述する際のスケーリング則とその比例定・数を整理した. 検討した電解質溶液はNa ClおよびCa Cl2である. フロック径500μm以上ではフラクタル次元が暫増することが明らかとなった. また, 外液のCa Cl2の濃度が1.0×10-1M以下のとき, フロック径の増大に伴うスケーリング則の比例定数の増加が確認され、 薄片状のモンモリロナイト粒子が密に詰まった構造単位を取るか, あるいはその構造単位の大きさが大きくなることが示された. また, この影響は外液のp Hが高いほど顕著であった.
  • 赤江 剛夫, 中尾 千晶, 史 海濱, 張 義強
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 27-33,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    河套灌区全域の塩分収支計算によると灌区は毎年170万トンの全溶解性塩を蓄積している. 一方, 灌概技術者や農家は近年, 灌区の塩類化は改善されていると認識している. 加えて, ランドサット画像の解析結果は, 近年塩害地の面積が縮小していることを示している. 本研究の第一の目的は, 用水路水, 地下水, 排水路水および土壌を系統的に採水し, その陽イオン組成の分析を通じて, この謎を解明することである. 土壌については水溶性陽イオンと交換態を含む非溶解性陽イオンの両方を分析した. その結果, 灌概水中のカルシウムは土壌中に沈殿するため, 土壌表層に集積し, 排水路に排水されるのはもっぱらNaイオンであることを確認した. 第2の目的はナトリウム収支に基づく除塩用水量, LRNaを新たに提案し, 灌区全域に適用してブロック別除塩用水量と塩類化リスクを評価することである. 2005年のLRNaは0.12と見積もられ, この値は同年の排水量割合0.11とほぼ一致した. このことは, 灌区全体において現状でナトリウム収支が達成されていることを示すとともに, 新しい除塩用水量, LRNa;が既存の除塩用水量よりも実際の塩類化をよく表すことを示している. 加えて, NaイオBン収支に基づいて, 支線排水路ブロックごとの塩類化リスクを評価したところ, 灌区中部でリスクが高いことが分かった.
  • 小林 晃, 高橋 涼介, 青山 威康, 渡部 大輔
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 35-44,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用ダムでは長期にわたって供用されてきたフィルダムが多く, その機能診断が重要な課題となっている. 本論では, フィルダムの機能診断のうち, リップラップ材調査の省力化を目的として, 画像解析によるリップラップ材の現状把握手法を開発した. デジタルカメラで撮影されたカラー写真のRGBデータを用いて, 最尤推定法と最大事後確率を用いて石部と影部を区別し, 石部を塊毎にグループ分けする手法を開発した. これにより, リップラップ材の粒径分布を推定できることを示した. また, 岩級分類した一部のデータを用いて, RGBデータから最尤推定で分類を再現することも試みた. その結果, 現地で把握したデータとは若干異なるが, 十分参考となるデータを抽出できることが分かった.
  • 渡辺 一生, 星川 和俊, 宮川 修一
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 45-52,a1
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, タイ国東北部の天水田集落・ドンデーン村における, 近年の区画改変の推移を明らかにすると共に, その改変が水稲生産へ与えた影響について検討した. 水田区画改変の推移を捉えるため, 現地調査及び空中写真・衛星画像判読から1981年, 1992年, 2005年の水田区画を確定した. この結果, 各年の水田区画数は8,401, 7,312, 2,885区画へと区画統合が進み, 1981年から2005年までに平均区画面積は約3倍に拡大した. また, 本地域特有の凹地状でノングと呼ばれる地形の水準測量及び水稲作柄状況調査結果から, 区画改変が水稲生産へ与えた影響として,(1) 小区画で生産性が不安定だったノング高位部では, 水条件の改善・緩和によって生産性が向上したこと,(2) 逆に, これまで生産性が高かった低位部では, 冠水害を受け易い区画が増加したことが明らかとなった.
  • 安中 武幸, 川島 麻里枝, 花山 奨
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 53-59,a2
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    砂の撥水性が水文循環や土壌浸食に影響を与えることは良く知られている. しかし, 機水性に至らない範囲のぬれ性の違いが砂層での降下水浸入に及ぼす影響は良く分かっていない. 砂層のぬれ性とフィンガー流路の先端速度および幅との関係を明らかにするため, みかけの接触角の異なる試料砂を作成し降雨浸入実験を行なった. 先端速度はみかけの接触角50°~75°でほぼ一定となること, 流路幅はみかけの接触角72°程度で最小となることが示された. また, 先端速度は降雨強度が大きい程大きくなるが, 流路幅は降雨強度が大きく変化してもその変化は小さかった. 流路幅の実測値に既存の推定式を適用し考察を行なった. 推定値は実測値とかなり良い適合を示したが, みかけの接触角720程度で最小値を示すという特徴は説明できなかった.
  • 長野市における事例
    藤居 良夫, 渥美 浩和
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 61-70,a2
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    冬季五輪開催都市である長野市を対象にして, 市街化区域外である都市縁辺部において農振除外, 農地転用, 開発許可の動向を調べ, 開発許可と関係性のある要因の抽出と開発許可の空間的特性を把握し, 土地利用の規制における問題点と課題を検討した. その結果, 土地利用の変化は, 冬季五輪の開催に伴う施設の建設や交通網整備の影響を強く受けており, とくに行政主体で行われた農振除外と公的転用が長野市におけるスプロール化を促進させたこと, 農振除外や農地転用は地域全体の土地利用の計画性を考慮することなく行われ, その後の土地利用の規制に対しても不備であること, したがって, 市域全体にわたる包括的な土地利用制度が必要であることなどがわかった.
  • 森 充広, 藤原 鉄朗, 齋藤 豊, 増川 晋, 渡嘉敷 勝
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 71-78,a2
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利施設の機能診断では, 本来施設が発揮すべき性能と既存施設の現状性能との差を評価した上で, 補修や補強による延命化を図るのか, 更新するのかを決定することが要求される. そのためには, 農業水利施設に発生している変状が経年的に進行するかをモニタリングし, 性能の低下を適切に評価することが不可欠である. 筆者らは, 開水路や水路トンネルの変状をデジタル情報として迅速かつ効率的に記録できる農業用水路壁面画像連続撮影技術および水路トンネル覆工背面の地山強度を簡易に測定できる技術を開発した. 規模や形状の異なる農業用水路において実証試験を行った結果, 本調査システムは, 農業用水路の壁面情報を効率的かつ高精度に記録できること, また水路トンネル覆工背面の情報を簡易に把握できることが示された.
  • 石井 敦, 佐久間 泰一
    2008 年 2008 巻 253 号 p. 79-84,a2
    発行日: 2008/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    棚田は, そこで水稲が継続的に作付けされていなければ, 良好に保全されているとは見なされない. 日本の場合, 谷地田と違ってほとんどの棚田は灌概田で, 畑や牧草地と違ってその保全には灌概すなわち灌概施設とその操作・維持管理が必須である. 本稿では棚田保全に必要な灌概に着目し, 各種の事例を分析した. 棚田においても水利施設は平坦地と同様に, 上流から貯水池, 河川・渓流, 取水工, 導水路, 配水路, 分水路, 田越し灌概, 排水路等があること, 取水してから棚田群に至るまでの導水路・配水路・分水路は灌概面積に対して長く, 維持管理に多大な労力を要すること, 少ない取水口から多数の棚田に配水する田越し灌概は配水操作に技能と労力を要すること, 個々の棚田では畦畔の草刈りや漏水防止等に要する労力が大きくなること等を示した.
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