農業農村工学会論文集
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2008 巻 , 257 号
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  • Henintsoa ANDRY, 山本 太平, Velu RASIAH, 深田 三夫
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 409-417,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    酸性化した土壌の表面流出と土壌流亡の発生の物理的メカニズムについてはあまり理解されていない。本研究では, 擬似的に調合された酸性土壌の斜面に人工降雨を与え, 地表面流出と土壌流亡を促す要因を検討し, その物理的メカニズムを明らかにすることを目的とした。鳥取県東伯地方で採取された粘土質土壌に, 自然排水条件下で濃縮された硫酸を施用し, 2種類のpHを有する酸性土壌を擬似的に調合した。風乾状態の擬似的酸性土壌及び未処理土壌 (粒径2mm以下) を平均乾燥密度1.35gcm-3で詰めて人工の斜面をつくり, 降雨シミュレータを用いて強度30および60mmh-1の降雨を与えて小規模の土壌流亡実験を行った。経過時間に伴い地表面流出水を採取し, 土壌濃度と流出水量の時間的変化を求めた。
    地表面流出水量および流出土量の時間的変化はS字タイプの曲線で表すことができ, 時間的に3段階 (I, II, III) に分けることができる。降雨強度が60mmh-1の場合, 流出土量は1段階では0.0-0.056kgm-2h-1, II段階では0.12-1.69kgm-2h-1, III段階では0.20-2.53kgm-2h-1の範囲であり, 土壌の酸性度が高くなるにつれて増加していった。酸性度が増すと土壌表面の湛水深が増加し, 土壌団粒径の分布も変化することがわかった。このことから, I段階で土壌表面にクラストが形成されて目詰まりが進行し土壌流亡量が増加したと推測される。II段階における土壌流亡量の増加は, 浸潤前線の進行の低下で透水性が減少することに起因する。III段階における流亡土量の増加は, 土壌団粒径の分布の測定結果から, 土壌間隙の目詰まり, 土壌崩壊, 大きな間隙径を有する土壌割合の低下などによる飽和透水係数の減少に起因する。
  • 濱 武英, 中村 公人, 川島 茂人, 三野 徹
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 419-425,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 琵琶湖岸の水田群での水量, 水質の調査結果をもとに, 普通期晴天日における循環取水率と窒素およびリンの差し引き排出負荷の関係を推定した.その結果, 窒素の差し引き排出負荷は, 必ずしも循環取水率の増加によって単調に減少するわけではないことが示された.これは, 排水の窒素濃度の増加分が流出する水量の減少分を打ち消すためである.一方, リンでは, 循環取水率の増加による差し引き排出負荷の削減効果が現れやすいことが示された.また, 揚水量のうち水田に導水されない余剰な水量の割合が低くなることで, 差し引き排出負荷は循環取水率に関わらず常にマイナスとなることがわかった.
  • 兵頭 正浩, 桑原 智之, 佐藤 周之, 野中 資博
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 427-433,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    停滞・閉鎖性水域の内部負荷対策のひとつとして覆砂工法が採用される. しかし近年では, 天然砂の資源枯渇が危惧されており, 将来に渡って容易に施工できる工法とは言い難い. 本研究では, 産業廃棄物である解体コンクリート微粒分を機能性覆砂材という形で再資源化し, 底泥から溶出するリンを指標として溶出抑制効果の有無を検討した. その結果, 機能性覆砂材から溶出したカルシウムが環境水中のリンを固定化することが明らかとなり, 一般的な覆砂工法により得られるリン酸イオンの溶出抑制効果に加えて, 化学的観点からもリン酸イオンの溶出抑制効果を期待できることが示された. 機能性覆砂材はリン溶出抑制効果を有していることから, 天然砂と比較して覆砂厚を薄層化することが可能であることが示された. また, 機能性覆砂材から溶出する有害物質濃度は環境基準値以下であり, 安全性を確認できた.
  • 武山 絵美, 九鬼 康彰
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 435-441,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    和歌山県の市町村を対象としたアンケート調査から, 各市町村の獣害対策選択行動の違いによる獣害対策の背景と課題を明らかにし, 求められる行政支援策について考察した. その結果, 柵など物理的防除を優先する市町村では, 耕作放棄地の多さが獣害対策に強い影響を及ぼしていることがわかった. 獣害が農家の高齢化や農地管理など農業集落が抱える他の課題と一体をなしており, 獣害対策を含む総合的な課題の解決が求められる. 一方, 駆除を優先する市町村は大規模果樹栽培地域に多く, 一部の担い手に負担の偏った不安定なシステムにより獣害対策が展開されている. 被害農家の自己防衛意識不足や連携不足が指摘されており, 共同実施体制の構築を含めたソフト的な支援策が必要であると考えられた.
  • Meldi SINOLUNGAN, 甲本 達也, 近藤 文義, 趙 宇清
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 443-449,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ボルトランドセメントと石灰は建設材料および軟弱地盤の改良材として不可欠なものであるが, その製造過程において大量の二酸化炭素を排出するといわれている. そこで, セメントと石灰の使用量を減少させ, 結果として二酸化炭素の排出量を減少させることが可能な新しい建設および地盤改良材が強く求められるようになってきた. 近年, ジョセブ・ダビドビッツによって人工アルミノ珪酸材料に属するジオポリマーが開発され, 主にボルトランドセメントの代替材料として重金属によって汚染されたスラッジの固化処理に使用されている. しかしながら, 掘削水路などのライニング用建設材料としての軟弱粘土の力学性改良のためのジオポリマーに関する研究はこれまでのところほとんど行われていない.
    本研究においては, フライアッシュと呼ばれる石炭灰をフィラー (充填材) として使用した. また, 溶液状の珪酸ナトリウムをアクティベータ (活性材) として使用した, ジオポリマーは, これらのフィラーとアクティベータを混合することによって得られ, 佐賀平野の劣化したクリークからの掘削泥土と混合することによって軟弱有明粘土の固化処理に用いた. 固化特性を明らかにするために, フライアッシュをベースとしたジオポリマーの混合割合を様々に変化させた泥土の力学的および化学的特性について検討した. また本研究においては, 発電所から産業廃棄物として排出されるフライアッシュを有効利用し, 資源としての再利用を図ろうとするものである.
  • 坂田 賢, 中村 公人, 三野 徹
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 451-457,a1
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    低平地水田地区において, 転作田が存在することにより, 隣接する水稲が作付されている圃場の水収支に及ぼす影響および地下水位変化にっいて調査を行った. 灌漑初期の最初の灌水では水田から転作田方向へ地下水が移動する傾向がみられた. 原因として, 転作を5年以上続けることで, 水移動が容易な間隙が増大していることが考えられる. その結果, 灌漑初期の減水深は転作田に隣接する圃場の方が水田に挟まれた圃場より大きくなった. 灌漑普通期では転作田と接する畦畔における漏水管理の成否により減水深に違いが生じた. ただし, 灌漑普通期における減水深は土壌構造の違いに大きく依存し, 営農者の畦畔管理により畦畔浸透抑制が十分に可能な圃場であれば, 転作田の影響はほとんどないことが明らかとなった.
  • 吉田 修一郎, 足立 一日出, 谷本 岳
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 459-464,a2
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    施工後の年数が経過した暗渠では, 疎水材位置の低下や, 耕転, 代かきによって形成される耕盤により, 排水機能が施工直後より大幅に低下することが問題となっている. 本研究では, 水稲連作田における暗渠排水速度を長期間実測すると同時に, 当該ほ場の乾湿状況, 亀裂の進展, 疎水材の深度を把握し, 暗渠排水能力の季節的・経年的な変化とそのメカニズムを解析した. 暗渠の排水能力は, 代かきや収穫時の踏圧による土壌の撹乱や圧縮, 乾燥収縮による亀裂の発達, 膨潤や目詰まりによる亀裂の閉塞に対応し, 季節的に変動した. また, 疎水材位置の低下やその上部土層の通水性の悪化により, 暗渠の能力は, 経年的に低下することが確認された. また, 施工後年数が経過し, 排水能力が低下した暗渠でも, ほ場を乾燥させることにより亀裂が深部に発達し, 一時的に排水能力は向上するが, 排水が進むと再び悪化することが示唆された.
  • 白 艶梅, 猪迫 耕二, 梁 銀麗, 井上 光弘, 田熊 勝利
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 465-471,a2
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    黄土高原における中国式温室 (CSG) 内の灌漑されたキュウリ圃場における水収支を経験的水収支モデルで解析した. まず, 現行の灌漑方法を解析した結果, 生育期間後半における土壌水分量の増加が認められ, 節水の余地があることが明らかとなった. 次いで, キュウリの生育ステージを3つに分けるシナリオと生育ステージを2つに分けるシナリオをそれぞれ3っずっ設定し, 灌漑シミュレーションを実施した. その結果, 作物ステージIの1回の灌漑水量を45mm, 間断日数を38日, ステージIIでは44mm, 15日, ステージIIIでは43mm, 13日とするシナリオで, 全灌水量と灌概回数がそれぞれ352mm, 8回で最小となり, 総水量, 灌漑回数の観点から最適となることが示された. 以上より, CSGにおける現行の灌漑方法は, 間断日数と灌漑水量を最適化することで改良できることが明らかとなった.
  • 田渕 俊雄
    2008 年 2008 巻 257 号 p. 473-478,a2
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    湖沼水質保全計画においては流域の各発生源から排出される排出負荷量をもとに各種対策が計画されている, しかしながら排出負荷量の中には本来自然界に存在する負荷量も含まれており, それをバックグラウンド負荷として認識して汚濁負荷量から除外する必要がある. そうでないと山林流出水に含まれているような窒素・リンも汚濁負荷量であるかのように誤解され, 適切な対策が取られない恐れも生じる. そこで霞ヶ浦, 琵琶湖, 諏訪湖, 手賀沼, 印旛沼・児島湖の6湖沼について,「バックグラウンド負荷を配慮した汚濁負荷量」の算出を行った. その結果, 諏訪湖や琵琶湖などの自然負荷の多い湖沼では汚濁負荷量の発生源別割合が排出負荷量の割合とは大きく異なり, 点源の汚濁負荷量の割合が増大した.
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