農業農村工学会論文集
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77 巻 , 1 号
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研究論文
  • 角道 弘文, 西山 美加
    2009 年 77 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,河川における親水整備計画手法の検討に向けた基礎資料とするために,香川県まんのう町に位置する土器川中流域を事例として取り上げ,小学生以下の子どもの親水活動における流れ場の選好性について分析した.子どもの親水活動の内容,活動範囲の観察結果および水深・流速の計測結果をもとに,流れ場に対するJacobsの選択度指数を算出したところ,6歳以下では水深30cm以下,流速0.1m/s以下の流れ場の選好性が高く,選好されている流れ場は限定的であった.7歳以上では,水深が深く流速が速い流れ場での選好性が高くなっているなど,年齢による流れ場の選好性に違いがあることがわかった.
  • 小出水 規行, 竹村 武士, 渡部 恵司, 森 淳
    2009 年 77 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    日本国内におけるドジョウの遺伝特性を解明するため,ミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子の塩基配列による系統解析を行った.123市町村で採捕された444個体の配列(1,131塩基)には147ハプロタイプが存在し,これらは最節約法を用いた系統樹によってクレード(分岐群)A,B,Cに分けられた.クレードAのハプロタイプはヨーロッパドジョウ系として関東北部から北に点在し,クレードBは中国ドジョウ系として東北南部から西に分布した.クレードCは在来ドジョウ系として地域的または全国的に分布する7サブクレードから構成された.クレードA,Bの国内分布は輸入個体の人為的放流や日本列島の形成過程に伴う地殻変動に関連すると考えられ,さらに各クレードの遺伝的分岐は7.4~3.8百万年前(中新世後期~鮮新世前期)から始まったと推定された.
  • 工藤 亮治, 近森 秀高, 永井 明博
    2009 年 77 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    河道の複数観測点における実時間洪水予測を目的として,集中型流出モデルと河道流モデルを組み合わせた洪水流出モデルに,拡張カルマンフィルタおよび粒子フィルタを併用した実時間洪水予測システムを構築し,複数観測点の観測情報を用いた状態修正の効果について検討した.粒子フィルタは,アルゴリズムが容易であることや,非線形の問題にも対応できモデルを線形化する必要がないため,河道流が組み込まれたモデルに直接適用できるといった利点がある.このシステムを岡山県の吉井川流域に適用した結果,複数観測点の情報を考慮することで河道の各観測点の予測精度が改善された.また,河道流モデルが組み込まれたモデルの状態修正法に粒子フィルタが有用であることも示された.
  • 白波瀬 京子, 小林 久
    2009 年 77 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    農地を活用して飼料自給率向上に取り組む家畜飼養形態を「土地利用型畜産」ととらえ,放牧・飼料栽培をともなう『放牧タイプ』と飼料自給率が類似する耕畜複合経営の『複合タイプ』の飼料資源調達,農地利用などの実態を調査し,物質および窒素フローを作成・比較した。飼料の自給率は同水準であるものの,作成した農家別窒素フローは,両タイプで明らかに異なった。作成した窒素フローを用い,家畜飼養に投入される総窒素量に占める内部資源由来の窒素量の割合を「内部N寄与率」,外部由来の窒素量に対する内部循環の窒素量の割合を「内部循環N比」,農地・放牧地への窒素投入量と作物等による農地からの窒素取り出し量の差を「窒素負荷流出ポテンシャル」と定義し,両タイプの比較を行なった。その結果,「内部循環N比」がより大きく,「窒素負荷流出ポテンシャル」が大幅に小さい『放牧タイプ』は,内部循環に基づく窒素調達の度合いが高く,負荷流出リスクが小さい飼養形態であると考えられた。
  • 神宮字 寛, 上田 哲行, 五箇 公一, 日鷹 一雅, 松良 俊明
    2009 年 77 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤は,稲の吸汁性害虫を対象とした殺虫剤であり,育苗箱に用いる.本研究では,本薬剤がアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数,羽化行動に及ぼす影響を小型ライシメータにより検証した.各ライシメータは,フィプロニル区,イミダクロプリド区および無処理区とし,それぞれ3反復で実験を行った.アキアカネ卵は,それぞれのライシメータに300卵散布した.そして,各ライシメータ中のアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数を求めた.アキアカネ幼虫の死亡率が最も大きい値を示したのはフィプロニル区となり,羽化個体が観察されなかった.イミダクロプリド区では,フィプロニル区に比べて死亡率は低い値を示したが,幼虫の平均成長率および成虫の後翅長が無処理区よりも低下した.また,羽化異常を示す個体が無処理区に比べて高い割合で発現した.フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤の使用は,アキアカネ幼虫の大きな減少を招くことが示唆された.
  • 澤田 豊, 河端 俊典, 毛利 栄征, 内田 一徳
    2009 年 77 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    農業用パイプラインなどの圧力管曲部には内圧と曲がり角度に応じてスラスト力が作用する.著者らはこれまで,アンカープレートならびにジオグリッドを用いた軽量なスラスト対策工法を考案し,模型実験および数値解析から,その有効性ならびに抵抗メカニズムに関して検討した.本論文では,土被りおよび防護部の形状寸法を変えた模型実験を実施し,模型地盤表面の画像解析から当提案工法による地盤の破壊メカニズムについて検討するとともに,アンカープレート前方における地盤の破壊面を仮定し,破壊面に作用する力のつり合いから付加抵抗力の算定式を提案した.さらに,算定値と模型実験との比較を行った.その結果,提案算定式により当工法の付加抵抗力を精度良く予測できることが明らかとなった.
  • 岡澤 宏, 竹内 康, 左村 公
    2009 年 77 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    北海道斜網地域を流れる農業流域河川を対象に36地点で水質調査を実施し,土地利用と河川の硝酸態窒素濃度の関係を検討した.対象流域の土地利用は主に畑草地と森林で構成されていることから,この2つを検討対象とした.また,土地利用指標には,一般的に用いられる畑草地面積率に加えて,土地利用の集塊性を表す連結度指数CN(Connections Number),同一土地利用の連結性SC(Spatial Continuity)を用いた.畑草地面積率と河川の硝酸態窒素濃度との間には高い相関が見られたことから,畑草地からの窒素流出が河川の窒素汚濁に影響を及ぼしていることが確認された.また,畑草地のCN及びSCと河川の硝酸態窒素との間には正の相関,森林については負の相関がそれぞれ認められたことから,河川窒素濃度は土地利用の集塊性と同一土地利用の連結性といった集塊性とも関連があることが明らかになった.
  • 金山 素平, 山下 裕貴, 東 孝寛, 大坪 政美
    2009 年 77 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    全国有数の農業地帯として知られている有明海沿岸低平地帯において,後背地の農地等を保護する目的で築造されている干拓堤防等の盛土構造物は建設途中や建設後において,圧密沈下に起因する大きな沈下を示し,その沈下は10年以上もの長期間にわたって継続することが知られている.現地観測データに基づく地盤の沈下予測手法として,双曲線法が代表的な方法として知られており,国内外で多用されている.本研究では,早期における実測値に基づく地盤の圧密沈下予測手法の構築を目的として,2地点の実測沈下データを使用してニューラルネットワークを用いた地盤の沈下予測手法について検討した.提案する3種の学習パターンの中で,沈下速度の収束に着目した学習パターンを使用した予測値が実測値と良い一致を示したことから,適切な規則性を有するデータを学習させることにより,早期の地盤沈下予測が可能であることが分かった.
  • 村上 章, 西村 伸一, 鈴木 誠, 森 充広, 倉田 高士, 藤村 達也
    2009 年 77 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    開水路の浅い基礎の鉛直支持力問題に対して,これまでは許容支持力法が用いられてきたが,性能設計への移行が進められ,部分安全係数を用いた限界状態設計による設計が導入されている.しかし,開水路の支持力照査において,特にTerzaghiの修正支持力公式に適用する地盤パラメータに関する部分安全係数は明らかになっていない.そこで,実際の設計事例における信頼性指標を算定し,これと一致するように部分安全係数を求めた.まず,地盤パラメータの変動係数を公表されているデータから決定し,これに基づいて既設の16開水路の設計事例において信頼性解析を実施した.従来法の許容支持力度と極限支持力度とを照査することにより,妥当な目標信頼性指標を検討した.次に,目標信頼性指標を満足するパラメータの感度と部分安全係数を事例毎に評価した.最終的に,計算された部分安全係数の平均値をもとに,信頼性指標の再計算を行い,最適な部分安全係数を提案している.その結果,γc,tanφそれぞれの部分安全係数は,目標信頼性指標βtによって異なり,βt =3に対してそれぞれ,1.05, 2.50, 1.80となった.また,得られた部分安全係数を用いて実際の事例について信頼性指標の再計算を行った結果,これらの部分安全係数は妥当であることが明らかとなった.
研究報文
  • 藤居 良夫, 竹田 智晴
    2009 年 77 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    地方都市においても,生物多様性の保全や自然との共生が求められている.本研究は,冬季五輪が開催された長野市を対象に,五輪開催前後である1985年と1999年の2時期のLandsat TMデータを利用して,土地被覆変化を調べ,景観指標を用いて景観構造の変化を定量的に把握した.その結果,長野市の都市計画区域では,五輪開催前後において,人工物の土地被覆は約57%増加し,一方で,畑地は約45%,水田は約50%減少して,農用地から市街地への変化が大きいことがわかった.とくに,水田と畑地においては,各パッチが小さくなることで,パッチ面積の不均等が縮小したと考えられる.また,水田,畑地,果樹園などの農用地で分断化が起きていることが明らかになった.
  • 坂田 賢, 中村 公人, 三野 徹, 川島 茂人
    2009 年 77 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    畑地灌漑における栽培管理用水に関して,利用目的ごとの水量調査は十分ではない.本研究では,和歌山県印南町の畑地圃場を対象に,栽培管理用水の使用実態を調査した.液肥施用および消毒散布にかかる用水は,いずれも補給灌漑に包含されることが示された.一方,陽熱処理,定植および潮害防止にかかる用水は,水分補給を必要とする期間以外の使用,または計画用水量を超える使用実態が明らかとなった.陽熱処理および定植にかかる用水に対して,本地区では栽培する作物の組合せや灌水の分散化を図ることで,計画用水量の範囲内で栽培管理用水の利用が可能となることを示した.また,潮害防止にかかる用水に対しては,地区内の施設および作物の選択を考慮することにより地区全体の必要水量を抑えられることを示した.
  • 有田 博之
    2009 年 77 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    災害査定は災害復旧事業の内容・規模等を規定するため災害復旧における最も重要な作業の一つだが,新潟県中越地震において県・市町村が当面した農業生産基盤・施設分野での課題を検討した.中越地震は災害規模が大きい一方で査定作業の期間は限られたため,災害査定時に作業が最も集中した.これを緩和するため,モデル方式,標準断面方式等の簡便な査定方式が工夫されたが,作業の迅速化の一方でいくつかの課題を残した.また,災害査定においては改良的な復旧工事が地元から求められたが,従来の制度では十分には対応できないこと等が課題として表面化した.本論においては,これらの工夫がもつ長所を明らかにすると共に,いくつかの課題について解決方策の提案を行った.
  • 亀山 幸司, 谷 茂, 菅原 玲子, 石川 祐一
    2009 年 77 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,黒ボク土を用いたポット栽培試験を行い,ハクサンハタザオによる浄化技術のCd汚染黒ボク土への適用可能性を検討した.その結果は以下の通りである.(1)収穫物のCd濃度は170~750 mg・kg-1であり,ハクサンハタザオは黒ボク土においても高いCd吸収能を発現可能であることが考えられた.(2)土壌改良資材(ALC)を添加した土壌では,無添加土壌と比較して,全体のCd吸収量が少ない一方,可給態Cdは無添加土壌と同様に吸収されて減少した.(3)ポット栽培試験の測定結果を外挿して浄化所要回数を試算した結果から,ハクサンハタザオによる浄化技術は,土壌のCd濃度による適用限界が存在するものの,Cd汚染黒ボク土に対しても適用できる可能性が示唆された.ただし,今回の試算は,実際条件とは大きく異なるポット栽培試験の測定結果を外挿したものであり,試算方法の妥当性に関しては十分な検証が行われていない.このため,圃場条件下でのデータの蓄積を行い,計算に反映させていくことが重要と考えられた.
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