農業農村工学会論文集
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77 巻 , 2 号
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研究論文
  • 岡島 賢治, 田中 忠次, 張 善姫, 小松 宜紘
    2009 年 77 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    止水矢板の浸透破壊事故のような問題は小規模ではあるが,多発している.これらの問題に対し止水矢板周辺地盤の変形量と破壊に至る水頭差に関しての有効な予測方法の確立が求められている.本研究では止水矢板及び周辺地盤の破壊のメカニズムを解明することと,現在実務設計に用いられているTerzaghiの方法の再検討を目的とする.そこで,本研究では密度の異なる固定矢板背面地盤の定常流浸透破壊の実験を行い,弾塑性有限要素法による崩壊解析を適用した.本研究では有限要素法による浸透解析により得られた浸透力を外力として弾塑性有限要素解析法に入力するという手法をとり,その有効性を確認した.また,空間的に固定されている矢板に関して,緩詰め地盤以外ではTerzaghiのプリズムが矢板背面地盤の浸透破壊メカニズムを充分表現できないことが分かった.
  • 須戸 幹, 三木 俊和, 増田 佳昭
    2009 年 77 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    代かき,移植時に水田から流出する濁水の流出特性を明らかにするために,琵琶湖に流入する代表的な農地排水河川である宇曽川流域の約4haの水田群において,排水路末端で流量,SS濃度とSS流出負荷量および目視による作業進捗状況の調査を行った.春作業時のSS濃度と流出負荷量には2つのピークが認められた.前半のピーク(前期流出)は,水田への入水が開始された直後から,代かきで畦畔浸透や田面水の漏水が抑制されるまでに流出するSS成分が原因と考えられた.後半のピーク(後期流出)は,前期流出の抑制後,移植までに落水口からの溢水や移植前の強制落水などで流出する成分が原因と考えられた.春作業期に排水路末端から流出した通常のSS画分(>1.0µm)は71kg/ha/d,微細なSSを含む画分(>0.3µm)は104kg/ha/dであった.これまで行われてきた代かき・移植時の濁水対策は,主として人為的に制御が可能な後期流出に対してであったが,今後は前期流出に対する対策の立案も重要であることが示された.
  • 古賀 あかね, 瀬口 昌洋, 郡山 益実
    2009 年 77 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    有明海奥部干潟域における底質(深さ0~4cm)の脱窒菌数の場所的分布は,干潟の特性や季節によって大きく異なった.夏季の底質の脱窒菌数は,最奥部の泥質干潟で平均約18,000MPN/g-dryと多く,逆に東岸域や西岸域の砂質及び砂泥質干潟では平均約1,700MPN/g-dryと少なかった.また,底質の脱窒菌数と含泥率との間に高い相関性が見られ,脱窒菌数は含泥率の増加に伴って増大した.一方,泥質干潟における脱窒菌数の鉛直分布は,特に夏季にEhが0mV前後となる底質表層(深さ0~2cm)を中心に多かった.しかし,夏季以外の季節では、脱窒菌数は減少した.さらに,泥質干潟における脱窒速度は経時的に大きく変化した(0.35~13.86mg-N・m-2・d-1).また,泥質干潟の脱窒活性は,脱窒菌数の他に生息環境要素や基質濃度によって大きく左右されると推察された.
  • 有森 正浩, 遠藤 泰, 小林 孝至
    2009 年 77 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    岩手県北部に位置する奥中山高原では4~5月の風が特に強く,風食により高原野菜などの被害が生じている.風食の実態を把握するため2005~2007年の3年間,現地の圃場において4~5月の飛土量,風速,土壌水分の観測を行った.その結果,土壌表面の含水比が28 % 以下となり,日最大風速が8 m・s-1 以上となる日には,耕地や作物に被害を与えるような規模の風食が生じ,そして3日程度の連続干天で土壌表面の含水比は28 % 近くに低下することが分かった.これらをもとに過去30年間の4~5月の気象データから,連続干天期間とその間の風速を調べ,過去の風食の発生状況を推定した.その結果,この地域で風食はほぼ毎年生じる現象であり特に4月中旬から5月上旬に起こり易く,1日のうちで飛土量が多くなるのは午前11時から午後3時で,朝・夕・夜間には起こりにくいことが示された.
  • 小渕 敦子, 西村 拓, 溝口 勝, 井本 博美, 宮崎 毅
    2009 年 77 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    黒ボク土を用いて地表面燃焼下における土壌中の温度,体積含水率,炭素・窒素含有率の変化を測定した.土壌試料を内径15cmの素焼土管に充填し,地表面で炭を6時間燃焼した.燃焼中の地表面温度は600~700℃になった.湿った土では土壌温度は95~100℃まで上昇し,しばらく停滞し,その後再度上昇した.乾燥した豊浦砂では土壌温度の停滞はなく,連続的に,より急激に上昇した.このことから,温度の停滞は土壌水分蒸発に伴う潜熱消費によるものと考えられる.土壌温度が100℃を超える深さは燃焼時間の平方根に比例して深くなった.これは,燃焼開始時の初期体積含水率が大きいほど,地表面における燃焼の影響が及ぶ土層が浅くなることを示唆している. 電気炉を用いた燃焼試験では,500℃以上で土壌の炭素・窒素含有率はそれぞれ0.4, 0.1 g kg-1より小さくなった.一方,地表面を燃焼した土壌カラムにおいては,土壌温度上昇に伴って炭素・窒素含有率は低下したものの,土壌温度700℃においてもそれぞれ20, 1.0 g kg-1を超える,炭素,窒素含有率を示した.
  • 馬渕 和三, 平松 研, 板垣 博
    2009 年 77 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    アユの魚道等遡上時に見られる跳躍行動に注目し,ビデオ画像として撮影するとともにその画像を解析することにより水面下での行動と跳躍後の軌跡を確認した.実験室内,現地水路ならびに既設魚道における跳躍実験,現地床固工における跳躍観測の結果,アユは跳躍時に,いわゆる助走行動として,水面方向に加速しながら泳ぐ傾向は見られるものの,その遊泳速度にはかなりの変動があり,実際に跳躍に寄与している遊泳は水面直下での極めて短時間に限られることが明らかとなった.また,跳躍前のプールの水深の違いが跳躍方向の角度,跳躍の高度として現れること,大きすぎる水深はむしろ跳躍あるいは遡上の契機を喪失させている場合があることが確かめられた.さらに,今回の実験および観測の結果を基に,アユは跳躍前のプールに20cm 程度の水深があれば小さな段差程度を越えるだけの跳躍が可能であることを導いた.
  • 乃田 啓吾, 大澤 和敏, 池田 駿介, 小沢 聖
    2009 年 77 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    沖縄地方では近年,過度の赤土流出が問題となり,農地における侵食抑制対策が求められている.本研究では,沖縄地方における基幹作物であり,主要な土砂発生源の一つであるサトウキビ畑を対象として,同一条件下での土砂流出試験を行った.その結果,不耕起,間作栽培,植生帯の各種対策要素の土砂流出削減率は,対照区と比較して,それぞれ89%,45%,17%であった.さらに,これらの対策要素を取り入れた形の栽培方法として,不耕起状態で行うサトウキビ株出し栽培及び減耕起植え付けと間作を取り入れたサトウキビ春植え栽培を考え,それらの土砂流出試験を実施した.その結果,各栽培試験区における土砂流出削減率は,対照区と比較して,それぞれ85%,69%であった.これらの栽培方法を統合したサトウキビ栽培サイクルは,圃場における侵食抑制には有効であると評価できる.
  • Fumiyoshi KONDO, J. Kenneth TORRANCE
    2009 年 77 巻 2 号 p. 163-173
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    The sedimentation and self-weight consolidation processes of thoroughly disturbed soft marine clay are relevant both to land reclamation work and to sediment accumulation on tidal flats of coastal lowland plains. The influences of grain-size distribution, iron oxide content and organic matter content on these processes and the final water contents of a low-activity mud were investigated at water contents from 500 to 6,000% over salinities ranging from 30 to 0.5g/L. Particle size distribution had a large effect; specifically, the lower the clay content the more rapid the differentiation of an upper sediment boundary and the self-weight consolidation of the accumulated sediment. Iron oxide addition had little effect on these characteristics for this low activity clay. Peroxide destruction of the original organic matter suggested that it had a mildly flocculating effect; the addition of 5% organic matter, in the form of fulvic and humic acids, had a dramatic dispersing effect and inhibited sediment accumulation and consolidation for all conditions tested. The experiments indicate that use of dredged mud with low organic matter content, lesser clay contents and lesser swelling clay content, applied at the lowest water content that is feasible, will provide for the most rapid sedimentation and self-weight consolidation in reclamation projects.
  • 村上 章, 西村 伸一, 鈴木 誠, 森 充広, 倉田 高士, 藤村 達也
    2009 年 77 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    土構造物の設計基準が性能設計仕様に改訂されてきており,限界状態設計法が導入されている.本研究の目的は,信頼性設計法側面から限界状態設計法を捉え,開水路基礎の支持力問題に対してレベルII信頼性設計法を適用することにある.本文では既設の複数の水路を対象として信頼性解析を実施し,従来法で設計された水路の安全性を,信頼性設計概念の一つである信頼性指標により評価している.その結果として,計算された信頼性指標は砂質系の地盤に対して5.0以上,粘性土地盤でも3.0程度と非常に大きく,現行設計法がかなり安全側にあることが明らかとなった.
  • 服部 俊宏, 高松 利恵子
    2009 年 77 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    大規模牧場の資源流動とそれに基づく窒素収支を明らかにすることにより,そこでの環境への負荷を軽減させるためのあり方を検討した.調査対象は,周年飼育を実施している青森県内の4公共牧場である.各牧場において,「牧場」「土壌」を集計単位として,年間の資源流動を把握することにより窒素収支を明らかにした.
    牧場を単位とした窒素収支は,いずれの牧場でも搬入超過であり,土壌単位の窒素収支でも,いずれの牧場も投入過多である.面積当たりの牧場窒素蓄積量の削減には配合飼料や化学肥料の搬入削減が,面積当たりの土壌窒素蓄積量の削減には,施肥の削減や投入/産出比を精緻に管理することがそれぞれ必要であるということが示唆された.
  • 藤澤 和謙, 村上 章, 西村 伸一
    2009 年 77 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    土塊の内部を流れる浸透水によって土粒子の侵食が生じた場合,水みちが形成され,フィルダムやため池に代表される水利土質構造物ではパイピング崩壊に至る可能性がある.これまでに土内部の侵食については実験的な研究がほとんどであり,解析手法の発展が遅れているのが現状である.本研究の目的は,土の内部において生じる侵食を記述できる解析手法を提案することにある.本論文では侵食速度(単位時間の間に単位面積当たりから侵食によって流体に取り込まれる土粒子の体積)を用いて土内部の水の流れと土粒子の侵食・輸送に関する支配方程式を導出し,それらの方程式を数値的に解く方法が提案される.提案された手法を用いた解析結果から,本手法によって既往の実験結果を良好に再現できることが明らかとなった.
  • 上野 和広, 長束 勇, 石井 将幸
    2009 年 77 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    機能低下したコンクリート水路では,その機能の回復を図るために補修工法が適用され始めている.しかし,ひび割れ上に敷設された補修材料には,ひび割れ幅の変動に起因した割れが生じ,再び機能低下する可能性が高い.本研究では,そうした補修後における機能低下を防止するため,補修材料にひび割れが発生した場合においても要求性能を確保するための材料として複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(HPFRCC)に着目した.HPFRCCおよびモルタル供試体にひび割れを発生させ,透水試験を行った結果,ひび割れ分散性を有するHPFRCCからの漏水量はモルタルと比較して大きく低減することが明らかとなった.また,ひび割れ幅が小さい場合には漏水量が徐々に減少し,水密性が回復することが確認された.
研究報文
  • 土原 健雄, 吉本 周平, 石田 聡, 今泉 眞之
    2009 年 77 巻 2 号 p. 207-217
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    農薬の簡易な測定法であるELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)法の原理や測定法について整理するとともに,土壌カラムを用いた鉛直浸透試験,沖永良部島での地下水農薬調査にELISA法を用いた農薬測定法を使用し,地下水質モニタリングにおいて,農薬(フェニトロチオン)のスクリーニングのみならず,濃度の定量にも適用が可能であることを示した.土壌カラム試験より,農薬は非吸着トレーサーに比して遅延して鉛直浸透することが示された.また,沖永良部島では,農薬散布が集中するとされる時期から4ヵ月後であっても,地下水中で農薬が検出された.農地から地下水面までの農薬の到達の遅れ,あるいは地下水中の残留といった農薬の挙動を明らかにするためには,農薬が散布された時期から継続して水質をモニタリングする必要があり,そのような経年的な調査において,ELISA法による農薬測定法が適用可能である.
  • 三春 浩一, 田中 良和, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄
    2009 年 77 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 2009/04/25
    公開日: 2010/11/01
    ジャーナル フリー
    農業水利施設の長寿命化に向けて,各種構造物の機能診断および性能照査型設計手法の技術開発が進められている.構造劣化した水利構造物は,目視点検等により構造状態を把握し,健全度を評価することが可能である.一方,長大な農業用水路をシステムとして取り扱う場合,構造性能の他に水理および水利用的な性能の診断・評価を加えた農業水利システム独自の性能設計体系が必要である.本報では,水田かんがい地区の用水路システムを対象に総合的な機能診断調査に有効な水路カルテを作成し,課題解決の優先度を評価した診断事例を示した.
研究ノート
誌上討議・回答
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