農業農村工学会論文集
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77 巻 , 5 号
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研究論文
  • 西村 眞一
    2009 年 77 巻 5 号 p. 469-474
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    フィルダムで生じる水圧破砕の原因の一つである亀裂の発達条件を検討する上で,築堤材や基礎部分の引張側の強度特性を知ることは重要である.硬い岩などでは円柱供試体の両端をチャックで固定し,直接引張力を作用させることができるが,岩に比べ強度が小さい粘性土においては同様の方法を用いることはできない.そこで,本研究では圧縮試験に用いる円柱型供試体をI字形に成形し,試作した引張試験用ペデスタルを用いて引張力を直接作用させる引張試験を行った.また,有限要素法により供試体内部に生じる応力を算出し,直接引張試験に有効な供試体形状について検討した.その結果,I字形状からさらに中央部のみを細くした供試体で良い結果が得られた.
  • 有森 正浩, 遠藤 泰, 小林 孝至
    2009 年 77 巻 5 号 p. 475-481
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    風食を防止するには灌水によって表層の土壌水分を保つ方法がある.しかし具体的な方法は計画基準などでも明確にされていない.このため気象条件や灌水にともなう土壌表面の水分変動を予測できるモデルを用い,岩手県奥中山高原を事例として,いくつかの灌水方法についてシミュレーションを行った.その結果,間断灌漑では短い間断日数になるため灌水回数が著しく多くなり必要水量も増え現実的ではないことが分かった.これに対し乾燥が進んだときだけ十分な灌水を行う方が灌水労力の効率性などから有利であることが分かった.この方法については,灌漑施設容量が確保できれば,散水が強風の影響を受けることを考慮した場合でも実用可能であることが示された.また風食防止を計画に加えると,水源量よりもファームポンド及び送配水系の施設容量の増加率が大きくなることが分かった.
  • 渡部 恵司, 森 淳, 小出水 規行, 竹村 武士
    2009 年 77 巻 5 号 p. 483-489
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    圃場整備に伴いコンクリート化された水路において,転落後に脱出できずに死亡したカエルが頻繁に観察される.本研究では,コンクリート化の影響を受けやすいとされるトウキョウダルマガエルについて,水路への転落時の行動特性並びに脱出しやすいスロープの傾斜角及び水理条件(水深・流速)を明らかにした.本種が容易に登れるスロープ傾斜角は30°以下と考えられた.また,水深・流速が小さく個体が自由に移動できる時にはスロープに到達した個体は少なかったが,後脚が水路底に届かない水深または流速が大きい時には個体が定位しにくく,スロープへの到達・脱出が促された.一方,本種の流れに対する遊泳能力は低かったことから,流速ではなく水深を調整して定位しにくい条件にするとともに,対策工周辺では流速を極力小さくする必要がある.
  • 緒方 英彦, 佐藤 周之, 服部 九二雄
    2009 年 77 巻 5 号 p. 491-500
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    供用中の水利コンクリート構造物では,表面に骨材が露出しているために超音波探触子を密着することができず,超音波法による各種診断を適正に行うことができないという問題がある.本研究では,この問題を解決する手段としてコンクリート表面に媒材を塗布する方法(塗布法)を考案し,塗布する媒材として超速硬セメントペーストとエポキシ粘土が適していることを確認するとともに,媒材を塗布した下でコンクリートの超音波伝播速度を評価する方法を明らかにした.また,反発度法についても検討し,骨材が露出した水利コンクリート構造物で反発度を求める際の打撃箇所と評価式について提言した.
  • 滝澤 倫顕, 村上 章, 西村 伸一, 村上 賢治
    2009 年 77 巻 5 号 p. 501-507
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    ため池底泥の農地客土材としての使用を前提とし,まさ土へのため池底泥の添加が植物の出芽・生育へ及ぼす影響について実験的に検討した.具体的には,無処理の底泥と,高分子系凝集剤を添加して脱水処理したため池底泥のそれぞれについて,その物理・化学的性質を明らかにするとともに,ため池底泥の添加がコマツナの発育に及ぼす影響について検討した.
    その結果,1)ため池底泥を10%添加すると出芽に適した保水性となること,2)まさ土への底泥添加量が10%程度まででは生育に大きな差異がないこと,3)脱水処理したものは,無処理のものと比べて凝集剤の影響で生育が向上すること,4)底泥中の無機成分は生育に影響を与えないこと,などが示された.結果として,ため池底泥の10%程度までの培地への混合は,その生育に及ぼす影響を考えても十分に可能であると言える.
  • 武田 育郎, 福島 晟, 宗村 広昭
    2009 年 77 巻 5 号 p. 509-516
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    間伐遅れの針葉樹人工林の流域における水文流出の特徴を,同時に測定した対照流域の水文流出と比較することによって明確にし,また,調査期間中に行われた間伐が流域の水文流出に与える影響を,日単位の水文データを用いて評価した.その結果,森林で間伐を行うと基底流量のレベルが上昇し,この主要な要因は,樹木の伐採による蒸発散の減少と考えられた.そして,この基底流量の上昇は,間伐遅れの流域では少なくとも3年継続したが,対照流域では,1年程度で元にもどった.また,降雨日における流量は,中小規模の出水では,間伐遅れの流域の方が対照流域よりも多くなる傾向にあったが,大規模な出水では,このような傾向はみられなかった.一方,渇水時の流量については,間伐の影響のない期間では2つの流域の間で明確な差異はみられなかった.
  • 木村 匡臣, 島田 正志, 外川 喜一郎, 田中 忠次
    2009 年 77 巻 5 号 p. 517-524
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    開水路システムにおける1次元非定常流解析手法の中から,数値振動を抑制する流束制限機能を含み,水利施設を含む内部境界条件や,流量や水深を与える外部境界条件の設定が容易であると考えられる時空間的保存法を取り上げ,簡便で内点計算と同様のアルゴリズムを用いる境界部計算法を提案する.さらに,水路勾配の変化部における計算アルゴリズムに工夫を加えることにより,常流から射流への遷移部や跳水の部分においても数値振動を発生せずに安定して計算可能な手法を開発した.また,壁面で反射する段波の解析結果と理論解との比較,勾配の変化する水路における本解析手法による定常流水面と逐次水面追跡法による水面形との比較をおこなうことにより,手法の検証をおこなった.
  • 足立 一日出, 吉田 修一郎, 大野 智史, 小原 洋
    2009 年 77 巻 5 号 p. 525-532
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    作付け履歴が異なる重粘土水田の低水分領域(-0.4MPa~-40MPa)の含水比と水ポテンシャルを測定した.含水比(%)を水ポテンシャル(-MPa)のべき乗関数で近似し,近似関数の係数a(-1MPaの含水比)およびべき乗数bの差異を解析した.前作が畑作物のほ場で採取した生土のaおよびbの絶対値 | b |は,前作が水稲のほ場で採取した生土の値よりも小さかった.しかし,前作の栽培作物によるこのような保水特性の違いは,生土を風乾処理することにより消失した.さらに,生土と風乾処理土との間でのaおよび | b |の差は,水稲の連作によって拡大し,逆に畑作物の連作によって縮小する傾向が見られた.これらの特徴から,生土と風乾処理土との間でのaおよび | b |の差によって重粘土水田での畑転換・復田による乾湿履歴が推定できることを示した.
  • 若杉 晃介, 藤森 新作
    2009 年 77 巻 5 号 p. 533-540
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    圃場面を緩傾斜化させた傾斜化圃場は,転換畑における表面排水と地表灌漑を迅速かつ効果的に行える技術であるが,造成の過程で生じる切土と盛土が営農に与える影響が懸念されている.また,造成には運土作業が伴うため作業時間増大が予想され,大規模土地利用型農業を展開する担い手への負担増も懸念される.そこで,傾斜化圃場の三相分布を調べたところ,盛土部と切土部での固相率の差は確認されず,経年変化による盛土部の沈下や均平精度の低下もなかった.また,造成後の土壌硬度は表層部で高い値となったが,作物の栽培には影響ないことが分かった.なお,傾斜化圃場の造成はレーザーレベラー走行を効率化させることで,通常の整地と同等の作業時間に短縮することができ,圃場面傾斜化技術の低コスト・省力化を実現することができた.
  • 小渕 敦子, 溝口 勝, 西村 拓, 井本 博美, 宮崎 毅
    2009 年 77 巻 5 号 p. 541-547
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    森林火災後,土壌の表層下で撥水性が発現することが知られている.温度上昇に伴って気化した有機物の土中温度勾配に沿った下方への移動が撥水性土壌層発生の原因と言われているが,この時の土中酸素雰囲気に注目した研究は少ない.本研究は,フィールドにおける地表面燃焼実験,土壌カラムを用いた土壌表面加熱実験,酸欠条件・有酸素条件下におけるマッフル炉燃焼実験を行い,撥水性発現機構を検討した.酸欠条件下でマッフル炉加熱した試料は,地表面燃焼実験,カラム土壌表面加熱実験で見られた炭素・窒素含量の変化や撥水性の発現と類似した結果を示した。マッフル炉加熱において酸欠条件の時,土壌温度が300℃を超えると撥水性を示し,また,温度が600℃を超えても炭素分を有し,C/N比は温度上昇に従って増加した.一方,有酸素条件下では,土壌の炭素含有率は400℃以上でほぼゼロになり,C/N比は温度上昇に従って減少し,撥水性は消失した.このことから,地表面燃焼下における土壌の撥水性発現には酸欠条件下で変化する有機物が寄与していると推察される.
  • 伊藤 祐二, 宮本 英揮, 筑紫 二郎
    2009 年 77 巻 5 号 p. 549-558
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    時間領域反射法(TDR)に基づき,水中に設置したプローブのロッド先端から堆積土砂表面までの高さhsedと水の電気伝導度σwの同時測定法を確立するために,σw= 0.005~0.103 S m-1の間の4条件で各々の測定精度を調べた.hsed計測には,プローブに与えたステップパルスの水中部のみの伝播時間twに基づく部分伝播法(PPM),またはロッド全体の伝播時間ttに基づく全伝播法(WPM)を用いた.σwは,評価したhsedとプローブで計測されるロッド周囲の電気伝導度σtから求めた.計測したhsedσwは,WPMよりPPMの方が高い精度を示した.これは,伝播過程でのパルスのエネルギー損失がttの誤差を拡大したことに加え,tthsedに対する感度が低いためと考えられる.また,エネルギー損失の理論に基づきhsed-σw計測に適用できるロッドの最大長Lmaxを評価した.その結果,日本の一般的な河川水(σw= 0.013 S m–1)の場合,Lmaxは約4 mであることが明らかになった.
  • 森井 俊広, 竹下 祐二, 井上 光弘, 松本 智
    2009 年 77 巻 5 号 p. 559-565
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    土のキャピラリー・バリアは,砂層とその下部に礫層を重ねて傾斜させた単純な構造の土層地盤をいう.圃場斜面に砂と礫からなるキャピラリー・バリアを造成し,土中水分量と降水量を約4ヶ月にわたって計測した.下層の礫層内の水分量変化を上部の砂層のそれと比較し,両層の間の傾斜した境界面に沿って,浸潤した雨水が効果的に補足されるのを確認した.計測より,境界面に沿った流れが礫層へ浸潤し始める破過現象を示唆する結果を得た.土の不飽和水分特性と地盤の構造条件に基づいて,破過が生じるまでの限界長の大きさを推定した.これを計測結果と比較することにより,これまでに公表されている限界長の予測式の妥当性を確認した.限界長は地盤の構造形状と材料を選択する際の重要な設計パラメータとなるため,キャピラリー・バリアを用いた斜面減災工の開発に向け貴重な知見を得たことになる.
研究報文
  • 柿野 亘, 水谷 正一, 後藤 章
    2009 年 77 巻 5 号 p. 567-575
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    既往の栃木県小貝川上流部の谷津群の調査で明らかになった魚類の生息環境条件に基づいて3段階の空間スケールを考慮した生息環境モデル仮説をたて,他の谷津でも適用できるか検証するため同県の小貝川,大川,桜川水系に属する9つの谷津で調査,検証を行った.その結果,大空間スケールの水域特性は魚種ごとの生息分布を,中空間スケールでは環境傾度がヌマムツとホトケドジョウの生息分布と生息密度を,小空間スケールでは魚種によって環境因子が定性的に生息密度を規定している可能性があることが検証された.以上をもとに,魚類の生息環境条件を捉えるための生息環境モデルを提示した.さらに,本モデルにおいて大空間スケールの生息分布を規定している生息環境条件が中・小空間スケールの生息分布,生息密度を規定している生息環境条件に優先する可能性を指摘した.
  • 山下 正, 塩沢 昌
    2009 年 77 巻 5 号 p. 577-583
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    沖縄の島尻地区では,下水処理水を再生し農業利用しようとしているが,海面下に敷設された下水管の破損部分からの塩水地下水の浸入により下水処理水の塩化物イオン濃度が高い.これを下げるには,下水管の更生を行い塩水地下水の浸入を防ぐことが考えられる.これを土地改良事業等の計画に盛り込むには,下水管の塩水地下水浸入区間の総延長を把握する必要がある.本研究では,まず,塩水地下水が浸入する可能性のあるマンホール等での測定により,下水の塩化物イオン濃度や流量等を明らかにした.次に,塩水地下水が浸入している典型的な範囲の塩水地下水浸入区間長を求め,塩水地下水浸入量の比率により全体の塩水地下水浸入区間長を推定した.さらに,一般に利用出来る塩水地下水浸入区間長の推定手法について考察した.
研究ノート
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