農業農村工学会論文集
Online ISSN : 1884-7242
Print ISSN : 1882-2789
ISSN-L : 1882-2789
78 巻 , 3 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
研究論文
  • 東野 英昭, 本嶋 秀子, 尾崎 益雄, Mursan Anwar
    2010 年 78 巻 3 号 p. 141-150
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    開発途上国の農村では,安全な水の確保が緊急の課題である.ダム建設や井戸の掘削など,水源開発を主体とする従来の公共事業による水環境整備は,高額の費用と時間を要し,全ての住民が便益を享受できる訳ではない.便益を享受できない地域では,代替手段として,現存の水資源の高度利用によって水不足に対応する必要がある.小規模な設備と簡易な技術で水資源の高度利用を実現すれば,開発途上国の農村の持続的発展に有効である.研究対象地のインドネシア国西ヌサテンガラ州で行った現況調査では,肉牛飼育の拡大,薪採集による森林の荒廃が原因で水環境が悪化している状況を確認した.本論文では,調査結果と水資源の高度利用による水環境整備計画の概要を示す.
  • 北川 巌, 竹内 晴信, 小谷 晴夫, 千葉 佳彦
    2010 年 78 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    資材を用いない穿孔暗渠としてカッティングドレーン工法を開発した.カッティングドレーン工法には,土中60~90cmの任意の深さに,掘削縦溝の横に空洞を構築する基本工法の横穴型と,掘削縦溝の直下に空洞を構築する補助工法の直下穴型があり,土壌条件に応じて使い分ける.カッティングドレーンは,土中の空洞を通水孔として余剰水を圃場外に排除する暗渠としての排水機能がある.本工法は泥炭土と低地土,台地土,黒ボク土に対して適用できる.ただし,適用条件は,埋木のない泥炭土,石礫がなく,深さ50~100cmの砂含量が65%未満の土壌とした.本工法は,施工効率が0.8 km h-1とトレンチャによる穿孔暗渠より速く,施工費が10m間隔での穿孔の敷設で1haあたり72 千円と安価である.
  • 正田 大輔, 河端 俊典, 内田 一徳
    2010 年 78 巻 3 号 p. 157-165
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,鉛直と水平の組み合わせ荷重下における凹凸形状をもつ部分拡幅杭の支持機構の解明と極限支持力を算定することである.その基本的な支持機構を把握するために,拡幅形状の異なる金属製模型杭を用いた水平と,鉛直・水平組み合わせ載荷実験ならびにDEM解析をそれぞれ実施した.さらに,本実験ならびに解析結果から,水平土圧の深度方向分布を仮定し,組み合わせ載荷時の水平極限支持力について算定を行った.その結果,水平載荷時において,水平方向の投影面積が大きい杭が最も大きな支持力を発揮することがわかった.また組み合わせ載荷時においては,鉛直荷重の増加に伴う凸部底面の押込みの効果により,水平支持力が増加することがわかった.さらに,凸部底面の押込みの効果を考慮した提案土圧分布は,実測の土圧分布を精度よく表現した.
  • 竹下 伸一, 鈴木 研二
    2010 年 78 巻 3 号 p. 167-174
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,高分解能衛星画像(IKONOS)を用い,2時期のNDVIに着目して湿原地表面の状態変化を植生指数変化座標として整理し,6つのパターンに分類した.これを用いた湿原地表面の状態変化の検出を宮崎県の小規模湿原(川南湿原植物群落)にて実施し,実際の湿原の概況や地下水位との対応関係を検討したところ,地表面における人為的な改変を的確に抽出でき,さらに,画像の取得日直前に記録された大きな降雨イベントの影響で湿潤となっていた地表面について,異なる2時期に観測された画像間の湿潤の度合いの差異を検出することができた.なお,衛星画像の解析に際して,観測日前の降雨データなどの地表面状態の履歴を示す補足的なデータの活用が重要であることがわかった.本提案手法は,平易でかつ実践的であるため,湿原管理に有効な手法である.
  • 北村 立実, 黒田 久雄, 山本 麻美子, 根岸 正美, 田渕 俊雄
    2010 年 78 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦湖岸には水田が広く分布し,そこからの排水は主として堤脚水路を通して直接霞ヶ浦へ排水される。一方,灌漑用水としては湖水が使用されているが,同時に排水の再利用もされている.本研究では灌漑期における霞ヶ浦湖岸水田地区の用排水機場を利用する地域を対象に水収支と物質収支を求めることにより,湖岸水田地区の循環利水機構を検討した.その結果,用水の約57%が排水の循環利水で占められていた.COD,T-N,T-Pの物質収支から霞ヶ浦への排水負荷量から霞ヶ浦からの取水負荷量を引いた差し引き排出負荷量はCODで-25 kg・ha-1,T-Nで-2.4 kg・ha-1,T-Pで-0.07 kg・ha-1となり,3成分とも排水負荷量よりも取水負荷量の方が大きかった.これには灌漑システムにおける排水の循環利用による負荷削減効果が大きく寄与していた.
  • 前畑 政善, 大塚 泰介, 水野 敏明, 金尾 滋史
    2010 年 78 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    水田内で育てた幼魚(当歳魚)を中干し期に排水口から回収する場合,水田内にしばしば多くの魚が取り残される.本研究では,水田内残存魚をできるだけ少なくするための効果的手法を探るため,ニゴロブナ幼魚を使って,一般的な圃場整備が行われた水田における幼魚の排水口からの脱出状況(実験I),および幼魚が給水口と排水口の両側から脱出できるようにした水田での脱出状況(実験II)を調べた.実験Iでは中干し開始3日目以降も水田内に多数の幼魚(全脱出魚の39.1%)が取り残されること,実験IIでは,大半の幼魚(全脱出魚の99.8%)が給水口側から脱出することが確認された.以上の結果,水田内残存魚を減じるには,まず給水を止めた状態で排水口から脱出させ,次に給水によって給水口側に誘引された幼魚をトラップ等で捕獲する等の方法をとることが有効であると考えられた.
研究報文
  • 瀧本 裕士, 村島 和男, 橋本 岩夫, 丸山 利輔
    2010 年 78 巻 3 号 p. 189-198
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,河北潟流域から流出する全窒素と全リンの負荷量を推定し,併せてその負荷削減対策を検討した.流域からの流出量の推定には,複合タンクモデルを用いた.まず,河北潟流域内の小河川である大宮川流域に複合タンクモデルを適用し,解析精度を検討した上に,モデル定数の決定を行った.続いて,河北潟全流域にこのモデルを適用した.流量を推定した結果,観測値と推定値は良く一致し,複合タンクモデルは流量の再現性も良好であり,負荷量を推定する際に有効なモデルであることが確認された.水質負荷の推定には原単位法とLQ式法を用い,全窒素,全リンの流出量を推定した.1998~2002年間の推定によると,河北潟は,原単位法では,全窒素で約678t year-1,全リンで92.2t year-1 の負荷を受け,LQ式法では,全窒素で,661t year-1, 全リンで31t year-1の負荷を受けると推定された.これによって,河北潟流域の市街地、農地、山林などの土地利用が水質負荷に大きく関与していることが分かった.さらに全窒素の負荷について原単位とLQ式による方法を比較検討し,両者が高い相関にあることを示し,次に山地流域について水田用水の反復利用による負荷削減効果を評価した.
  • 高木 東, 小川 茂男, 平 瑞樹
    2010 年 78 巻 3 号 p. 199-207
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    傾斜農地などに形成・発達したリル網を構成するリルの流路長に関する特性量や流路長の地形則について調べた.対象としたリル網について,リル網の基本的地形特性量である平均外部および平均内部リルリンク長lex, linを求め,これらの特性量とリル網のソース(谷頭)数との関係,および特性量間の大小関係を調べた.ソース数が29以上のリル網では,大半のリル網で,lexlinがともに2~5mの範囲に収まり,さらにソース数が50以上のリル網では,ほとんどのリル網でlexlinはほぼ等しかった.さらに,河道網に関する地形統計則の理論を援用して,lexlinをパラメータとする主流路長および全リル流路長に関する統計則の式を提示した.実測データによりこれらの式の有効性を検証した結果,対象リル網に対するこれらの式の有効性が明らかになった.
  • 石谷 哲寛, 瀬口 昌洋, 郡山 益実
    2010 年 78 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,有明海奥部西岸域において夏季小潮時を中心に形成され,この海域の生態系や漁業に悪影響を及ぼしている貧酸素水塊について,現地観測データ及び2層ボックスモデルにより,貧酸素水塊形成に及ぼす物理的及び生化学的要因の影響について明らかにすることを目的とした.有明海奥部の貧酸素水塊の形成時間率は,底質の含泥率やCODの高い西岸域において高かった.また,この海域の貧酸素水塊は,密度躍層の形成される小潮時において発生,拡大した.しかし,観測年により貧酸素水塊の分布や規模に違いが見られた.さらに,対象海域における貧酸素水塊形成の有無には,底層のDO消費率が他の物理的及び生化学的要因に比べて,常に強く影響した.
  • 神宮字 寛, 上田 哲行, 角田 真奈美, 相原 祥子, 齋藤 満保
    2010 年 78 巻 3 号 p. 219-226
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,フィプロニル系殺虫剤を播種時と移植時に施用した水田において,育苗箱施用殺虫剤がトンボ科アカネ属におよぼす影響を調査した.さらに薬剤の散布時期の違いが害虫防除効果におよぼす影響について検証した.圃場実験では,移植時処理区,播種時処理区および無処理区をそれぞれ3区画ずつ,合計9区画の実験区を用意した.水田のフィプロニル最高濃度値は,播種時処理区で1.20ppb,移植時処理区で1.45ppbを示した.フィプロニルを散布した区では,無処理区に比べてアキアカネの羽化個体数が大きく減少することが明らかとなった.また,その影響はアキアカネ以外のトンボ類にも及び,移植時処理区では無処理区に比べ,アカネ属とアオイトトンボ科のトンボ成虫が減少した.アキアカネの羽化個体数,アカネ属幼虫および他のトンボ類成虫の出現個体数から,移植時処理に比べると播種時処理では,殺虫剤によるトンボ類の減少がわずかに抑えられた.
  • 山岡 賢, 柚山 義人, 中村 真人, 折立 文子
    2010 年 78 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    本報では,小規模メタン発酵施設の運転管理における安全衛生保持について,研究施設(山田バイオマスプラント)での事例及び関係法令等の既存文献に基づいて考察した.廃棄物を取扱う点など小規模メタン発酵施設と比較的類似する農業集落排水施設(「集排施設」)での維持管理と比較すると,集排施設では浄化槽法に基づく資格や許可を得た専門技術者が維持管理の各作業に携わるのに対して,小規模メタン発酵施設では日常的な維持管理作業に携わるための資格等が無く,作業者の安全衛生への意識のばらつきが懸念される.小規模メタン発酵施設は,労働安全衛生法の各種規定を直接適用されることはないが,同法の安全衛生管理の趣旨は尊重すべきである.本報は,小規模メタン発酵施設に潜在する危険要因を認識した安全衛生対策を施設設計及び維持管理に活かすためのものである.
研究ノート
feedback
Top