農業農村工学会論文集
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78 巻 , 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
研究論文
  • 橋本 岩夫, 千家 正照, 伊藤 健吾, 丸山 利輔
    2010 年 78 巻 5 号 p. 293-303
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    日本海沿岸の砂丘地露地畑におけるビニルトンネルのスイカ早熟栽培を対象に,飛砂防止と定植準備に関する栽培管理用水の実態を調べた.当地方の3~4月は,降水量が少なく,湿度が低く,風速が大きいので,畑には飛砂が発生し,とくに,日降水量が5mm未満で,4月の気象平年値を最小湿度が下回り,最大風速が超える日は,飛砂防止用水を必要とする.また,スイカ苗を活着,生育させる定植準備では,4月は地温が低いので,定植の10日前迄に透明・有孔ポリエチレンフィルムでマルチし,晴天日にスプリンクラ灌水して,日射熱でマルチ畝を蒸らし蓄熱し,定植日に地温を15℃以上にする.そのため,スイカ栽培の灌漑用水量432.7mmのうち,飛砂防止に23.6mm,定植準備に26.6mmが使われており,栽培管理用水として合計すると11.6%の50.2mmになる.
  • Akira KOBAYASHI, Takuma HAYASHI, Kiyohito YAMAMOTO, Shoichi KIYAMA
    2010 年 78 巻 5 号 p. 305-315
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    A risk analysis method of an irrigation system in an earthquake is proposed. The irrigation system consists of irrigation tanks and canals. The damage probability of the irrigation tanks and canals was obtained from both numerical simulation and actual disaster data from the Mid Niigata prefecture earthquake. The losses due to reduced crop yield, restoration and secondary disaster were considered in the risk assessment. The probability of annual peak ground acceleration was introduced from the earthquake records in Niigata prefecture. To reduce the damage probability, an enhanced foundation of canals on flat land and widening of the embankment were applied. It was found that the countermeasures for the irrigation tanks were more effective than those for the canals. In the case of a large secondary disaster of the irrigation system on flat land, the countermeasures for the irrigation system were very effective.
  • 遠藤 敏史, 常田 岳志, 井本 博美, 西村 拓, 宮崎 毅
    2010 年 78 巻 5 号 p. 317-323
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    土壌からの温室効果ガス発生量を検討することを目的としてガス透過性チューブを用いた土壌ガス濃度連続測定装置を試作した.ガス透過性チューブの素材としては,応答性の面でpolytetrafluoroethylen(PTFE),polyfluoroethylene propylene(PFEP)よりもシリコーンゴムが適していた.チューブ内に非分散型赤外線式CO2濃度変換器,酸素濃度センサーを挿入した埋設型ガスモニタリングシステム(Buried Tubing Gas Monitoring System,BT-GMS)を試作し,クロボク土壌に埋設して土中のCO2,水分量,地温を原位置で連続モニタリングした.降雨に対して土壌中CO2濃度の応答は非常に速く,最大で1.2%を超えるCO2濃度を示した.この降雨に対する応答は,夏季には著しく,他方,気温が低下する冬季に鈍いことから,雨水の浸潤前線による封入効果ではなく,土壌呼吸が主因であると可能性が推察された.
  • Abul Hasnat Md. SHAMIM, Takeo AKAE
    2010 年 78 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    An efficient and low cost method is required to improve the saline soils. Soil slaking has long been studied from the stand point of stability of aggregates. However, it has not been studied from that of salt removal. The objective of this study is to examine the contribution of slaking to desalinization of soil accompanied by land drying practice. A slaking test was carried out for evaluating the efficiency of slaking and their impacts on salt removal of salinized soil under various water contents. We prepared natural/virgin and air-dried soils to give different intensity of pre-drying. Those soils were resaturated (for air-dry soil) and well-mixed, then dried to different moisture contents (60, 50, 40, 30, 20 and 10% by weight). After 24 hours immersion in water, the soils never slaked at 60 and 50% moisture contents in natural soil whereas 88-89% of the specimens were slaked in air-dry soil under the same moisture contents. The slaking rate was highest under 30% moisture contents in natural soil. In air-dry soil 30 and 20% showed the higher slaking rate in compared to other water contents. The proportion of salt released into equilibrated water after 24 hours immersion was also high at the same water contents. Since the natural soil did not slake until 40%, drying below 30% moisture content will be effective for the removal of salt from these soils.
  • 内川 義行, 木村 和弘, 平田 あゆみ
    2010 年 78 巻 5 号 p. 331-337
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    名勝指定地や文化的景観選定地として保全を求められる棚田が増加している.畦畔除草作業は棚田の維持管理としてだけでなく,景観や植生等周辺環境へも影響をもつ重要な役割を担っている.しかし棚田の畦畔法面は複雑かつ一様でないため,除草作業の環境としては作業性・安全性等の面から課題がある.また文化財である限り,作業環境の改善に際しては現状変更の制限を受けるため,その検討に対し地域も消極的となっている.長野県千曲市の名勝「姨捨(田毎の月)」において畦畔除草作業の実態を明らかにし,これを踏まえて試験的な小段を設置,作業環境の改善について検証・検討を行った.畦畔除草の作業環境の改善策として法先足場小段のあり方を提案し,名勝指定地での現状変更を可能とした技術的・計画的条件を示した.
  • 高井 和彦, 三輪 弌
    2010 年 78 巻 5 号 p. 339-345
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    建設資材として河床の砂利が大量に採取されたり,治水上の必要性から河道掘削が行われたため,多くの河川で河床低下が進行し,堰下流の局所洗掘が問題化している事例が広くみられる.洗掘形状や深さを分析するにあたっては,河床の砂礫堆形成と河床低下量という2つの視点が重要である.砂礫堆形成と水流蛇行が再現された水路実験によって研究を進め,河床洗掘の形状と深さは,堰との相対的位置関係によって大きく異なっていることが明らかになった.洪水蛇行水流が河岸に沿う水衝部付近を横断して設置された堰において,堰下流は大きく洗掘された.また,流量の増大によって深掘れはより大きくなることがわかった.
  • 竹村 武士, 小出水 規行, 水谷 正一, 森 淳, 渡部 恵司
    2010 年 78 巻 5 号 p. 347-354
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    水域のネットワーク化により魚類個体群の再生を速やかに図っていく上で,各分断点がネットワーク化された場合の再生の過程を予測・比較し,整備箇所等の検討における定量的な判断材料としていくことは重要である.再生過程の予測には,新たな生息地への移入を予測する必要があり,そのためにも個体の移動のモデル化が必要である.そこで,本研究では標識採捕データを基に50日間を1単位期間とするタモロコ個体の移動モデルを構築した.本移動モデルは定住型個体,移動型個体の2タイプを考慮可能で,パラメータは1単位期間に相当する観察値と比較しつつ設定した.本移動モデルの妥当性検証のために求めた4単位期間後の計算値は,それに相当する観察値の再現に一定の成功を収めた.
  • 西村 眞一
    2010 年 78 巻 5 号 p. 355-360
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    フィルダムやその基礎において漏水や決壊を引き起こす原因の一つに水圧破砕が考えられる.水圧破砕は水圧により亀裂が進展することにより生じるが,亀裂の発生・進展条件を検討するうえで,築堤材や基礎部分の引張側の強度特性を知ることは重要である.硬い岩や金属などでは円柱供試体の両端に直接引張力を作用させることができるが,強度が小さい粘性土においては同様の方法を用いることはできない.そこで,本研究ではエネルギー解放率(J積分)の算定に用いた平板状供試体を使用して直接引張試験を試みるとともに,有限要素法により供試体内に生じる応力とエネルギー解放率を算出し直接引張試験に有効な供試体形状を検討した.その結果,供試体の高さと初期亀裂長を適切な値にすることにより引張強度の測定が可能であることが分かった.
  • 中西 真由美, 星野 敏, 橋本 禅, 九鬼 康彰
    2010 年 78 巻 5 号 p. 361-367
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    65歳以上人口が半数を超え,かつ社会的共同生活の維持が困難な限界集落が全国で増加している.本研究では,市町村による限界集落対策の推進に資するため,限界集落の課題共有と対策の推進を目的に設立された全国水源の里連絡協議会に加盟する市町村を対象に行政担当者の問題意識を調査し,限界集落を対象とする条例制定の可能性を考察した.その結果,回答市町村の多くは雇用や獣害等の問題が深刻で今後はソフト面の施策に重点が推移すること,また過半数は重点的に施策を講じるべき集落等の選定とそこでの施策展開を有効な策と考えているものの,議員や対象外の住民の不満等を考慮すると条例制定に消極的であることが分かった.加盟市町村は市町村が集まることで情報共有や国等への働きかけの強化を期待しており,対策の推進には国や都道府県の支援を通じて国民的合意の醸成が必要であると考える.
  • 皆川 明子, 高木 強治, 樽屋 啓之, 後藤 眞宏
    2010 年 78 巻 5 号 p. 369-376
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    農業水路における魚類の越冬場を考える上での基礎的知見を得るため,三重県松阪市櫛田川下流の農業水路を対象に,非灌漑期から灌漑開始直後にかけて魚類の移動と環境条件について調査を実施した.月ごとの総採捕数の変化から,魚類は12月まで越冬場となる深みへと集合する傾向が見られ,標識再捕獲調査の結果では,1月から2月にかけては深みからあまり移動しなかった.また,1月の種数および各魚種の生息密度と最大水深との間には正の,平均流速との間には負の相関関係が認められた.特にドジョウとメダカでは水深60cmまでは水深が大きいほど越冬に有効と考えられる.しかし,フナ属については水深に加えてカバーが必要と推察される.なお,非灌漑期に越冬場で標識した魚類は,灌漑開始後に周辺の一時的水域へと移動し,再捕によって確認された移動距離は7割以上が200m未満であった.
  • 濱上 邦彦, 森 健, 平井 康丸
    2010 年 78 巻 5 号 p. 377-384
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    浅水域を有する閉鎖性成層水域における放射冷却に基づく熱対流に関して,深・浅水域間に生じる水平方向の密度差に起因する水平対流が水温成層の消滅に及ぼす影響について検討を行った.まず,水槽実験による水温鉛直分布計測および理論的考察から混合層の発達特性について検討した結果,水平方向密度差により深・浅水域間に発生する水平対流が混合層の水温低下速度および混合層厚さの発達速度に影響を及ぼすことを明らかにした.つぎに,可視化実験による熱対流の形成・発達要因であるサーマル(密度不安定により形成される冷水塊)の特性について水深一様場との比較を行った結果,浅水域を有する水域におけるサーマルの発生頻度および発生間隔は水深一様場に比べ大きくなり,このサーマルの特性の変化が混合層の発達特性に影響を及ぼしていることを明らかにした.
  • 伊藤 祐二, 籾井 和朗
    2010 年 78 巻 5 号 p. 385-395
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    気象変化が池田湖の蒸発量,水温,熱収支に及ぼす影響を解明するために,妥当性が確認された鉛直1次元水温-熱収支解析モデルを用いて,25年間の日射量,気温,相対湿度,風速の10%の増加に対する蒸発量,水温,熱収支の感度を解析した.その結果,蒸発量を最も増加させたのは日射量であり,湖水を最も加熱したのは気温であった.日射量の場合,蒸発を促進する湖面-大気間の水蒸気圧差の拡大と大気安定度の低下が認められた.気温の場合,増大した大気放射量が湖面を強く温める状況が確認された.一方,相対湿度が高くなると,水蒸気圧差が低下したため蒸発量は減少した.この気化潜熱の減少は湖水の昇温を促したが,それに応じて増加した顕熱量が昇温を抑制した.また,風速が増すと,湖水の鉛直混合作用によって湖面では水温低下,下層では水深20 m付近を中心に昇温が認められ,加熱効果は気温に次いで大きくなることが判明した.
  • 宮田 亮, 高橋 弘, 服部 俊宏, 嶋 栄吉
    2010 年 78 巻 5 号 p. 397-404
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究では町内会を通して地域用水機能の維持管理作業を行う事例を対象に,行動科学的アプローチから現在まで維持管理作業が継続されている要因を明らかにした.その結果,1回目の参加の意思決定には「統制感」が意思決定に大きく影響するが,実際の参加には個人の置かれた立場の影響も受ける.そして2回目以降の参加の意思決定は「統制感」→「貢献」・「効用の享受」→「主体性」・「満足感」→「統制感」の循環系となっていることが明らかとなった.また,1回目の参加に対する評価と評価の変化は幾つかのグループに分けられ,1回目の参加に対する評価がその後の評価の変化に影響することが明らかとなった.
研究報文
  • 丸山 利輔, 能登 史和, 高橋 強, 土原 健雄, 田中 正
    2010 年 78 巻 5 号 p. 405-411
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    手取川扇状地における地下水汚染の一因と考えられる生活排水処理水による窒素の汚染負荷の可能性(発生源負荷)について研究した.まず,生活排水処理の方式ごとに排出負荷原単位を定め,地域毎の処理場からの放流による窒素負荷量を算定した.その結果,地域全体では年間約186tの窒素負荷量が推定され,公共下水道では,大部分が日本海に放流されているにもかかわらず,各家庭と公共下水道処理施設との接続が一部(接続率90.5%)行われていないため,窒素負荷の約58.0% が未接続によると推定された.しかも,この未接続による窒素負荷量は都市部に多いことが分かった.次に,集落排水による処理水の排出負荷が約17.9%を占め,公共下水道の未接続による戸別浄化槽(合併・単独浄化槽)の排出と併せて,地域内の排水路や地下水汚染の一因となるために,水質保全上重要であることが指摘できた.
  • 西村 眞一
    2010 年 78 巻 5 号 p. 413-418
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    フィルダムにおける水理破砕を予測するには応力やひずみの算定が必要であり,そのためには有限要素法が有効と考えられる.堤体が直線的で横断面に平面ひずみ条件を仮定できる場合には二次元解析でもある程度良い結果が得られるが,実際の農業用フィルダムの堤体は直線と曲線からなっているため,二次元平面では表せない条件が考えられる.また,横断面による二次元解析では縦断面の形状を考慮できないため,堤軸方向のひずみを正確には算定できないと考えられる.そこで,実際に漏水を生じた農業用フィルダムを対象として三次元築堤解析を行い,堤体形状や急速貯水による水理破砕の危険性について検討した.その結果,基礎の谷部や屈折部に伸びひずみによる縦亀裂が生じ水圧により発達する水理破砕の発生が考えられた.
  • 泉 完, 神山 公平, 藤原 正幸
    2010 年 78 巻 5 号 p. 419-427
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    魚類等の遡上と水理調査が実施されている岩木川取水堰の全面越流型階段式魚道において,水中TVカメラを用いて2006年と2007年に現地観測を行い,魚の遊泳行動と流況との関係について調べた.その結果,1)魚はプール中央部,上流隔壁の切り欠き背面下層部を多く利用し,下流部隔壁周辺は最も利用されないこと,2)魚は全体的にプールの底部(0~20cm)に位置し,プール内の切り欠きや潜孔の卓越流を感知して魚道プール中央部の低流速空間で自由遊泳しながら遡上すること,3)切り欠き背面から遡上していく遊泳魚は上昇流が生じる隔壁沿いと越流水脈の下面から,吸盤を持つ底生魚は隔壁や側壁にくっつきながら移動してそれぞれ遡上すること,などが明らかにされた.
  • 諸泉 利嗣, 小村 拓也, 三浦 健志
    2010 年 78 巻 5 号 p. 429-435
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    Penmanの可能蒸発量は蒸発計蒸発量に代わるものとしてしばしば利用されるが,その計算にあたっては,気温,湿度, 風速,日照時間の気象データを必要とし,発展途上国など十分な気象データが存在しない地点においては必要な気象データをすべて利用できるとは限らない.本研究は,Penman式よりも少ない気象データで可能蒸発量を推定できる式として温度法に着目し,その中からHamon式とThornthwaite式を取り上げた.世界の300地点において,温度法による可能蒸発量がPenmanの可能蒸発量に適合するように温度法に新たに地域定数を提案し,温度法による可能蒸発量の推定精度の向上について検討した.その結果,推定精度は各地点の地域定数を用いた場合が最も良かったが,気候区分ごとの地域定数を用いてもある程度の精度で推定できることがわかった.
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