農業農村工学会論文集
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79 巻, 6 号
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研究論文
  • 坂田 寧代
    2011 年 79 巻 6 号 p. 387-392
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    山間地にある小千谷市東山地区・旧山古志村では養鯉業が基幹産業の一つであり,その生産基盤である養鯉池は2004年の新潟県中越地震で多大な被害を受けた.東山地区S集落を対象として,養鯉池の復旧実態を整理した.結果は次のようである.小規模区画の復旧に新潟県創設の田直し事業と緊急田直し事業が大きく貢献した.ただし,申請手続きの煩雑さ等の課題を改善する必要がある.養鯉業者の経営規模と転出状況でみると,転出した小規模養鯉業者では,未復旧地が多く発生した上,廃業者が出た.復興団地を集落に近い場所に造成する必要があった.
  • ― 海面処分場の底部遮水層への適用 ―
    森下 智貴, 大坪 政美, Loretta Li, 東 孝寛
    2011 年 79 巻 6 号 p. 393-399
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,鉛を含んだ純水,人工海水,焼却灰浸出液を用いて,カラム試験とバッチ試験により,塩類存在下における海成粘土の鉛吸着能力を把握することを目的として行った.また,試験から得られた遅延係数を用いて,海面処分場の底部遮水層を想定した地盤における鉛の移動予測を行い,海面処分場の底部遮水層に対する適用について言及した.両試験において,純水溶液では高い鉛保持能力を示したが,塩類を含む人工海水,焼却灰浸出液では塩類濃度が高くなるにつれ鉛保持能力が低下した.バッチ試験とカラム試験から得られた吸着等温線を用いて,海面処分場の底部遮水層を想定し,HYDRUS-1Dで鉛の移動予測を行った.鉛の初期濃度が100mg/Lの場合,バッチ試験での予測結果がカラム試験より2.7倍過大に評価された.これは,カラム試験が海成粘土の間隙構造を吸着の評価に考慮できるためである.
  • 土屋 博樹, 酒井 一人, 吉永 安俊, 籾井 和朗, 仲村渠 将, 櫻井 国俊, 新垣 裕治
    2011 年 79 巻 6 号 p. 401-409
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,沖縄県国頭村と東村でのアンケートにより赤土対策導入の現状と農家意識について把握し,モンテカルロ(MC)シミュレーションを用いた赤土流出量計算により,補填率の違いによる赤土流出量変化および対策費と赤土流出量の関係を検討した.その結果,次のことが認められた.①対策への補助体制の違いが対策導入状況に影響し,対策としてマルチングとグリーンベルトの認知が高く,導入農家が多かった.②農家の対策導入意思は,100%補填で90%以上,50%,0%では減少し,100%補填で意思の無い農家は150%補填でも意思が無かった.③両村で補填率に対する導入意思変化に差がなかった.④情報不足での赤土流出量推定値はばらつき,MCシミュレーションによる確率的把握が有効である.⑤対策費用と赤土流出量に明確な関係はないが,両者にはパレート関係にある包絡線が描け,MCシミュレーションにより費用対効果を考慮した事業計画が可能であるといえる.
  • Masayuki FUJIHARA, Noriyuki KOBAYASHI, Tatsuro NISHIYAMA, Tomoki IZUMI ...
    2011 年 79 巻 6 号 p. 411-416
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    Using an analytical solution of seepage discharge of rectangular and triangular blankets based on the Bennett model (1945), the thickness and the length of the blanket, which minimize the volume of the blanket on condition that the design seepage discharge is given, are derived as an optimum solution. Based on the decrease rate of the seepage discharge with the blanket length, it is shown that the optimum solution can be used as a design value. The optimum solution demonstrates the ratios of the optimum length, the optimum thickness and the minimum volume for triangular blanket to those for rectangular one become constant. It also shows that if the triangular blanket instead of rectangular one is employed, 31% of blanket material can be saved, keeping the same seepage discharge.
  • Noriyuki KOBAYASHI, Masayuki FUJIHARA, Tatsuro NISHIYAMA, Tomoki IZUMI ...
    2011 年 79 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    Using an analytical solution of seepage discharge of rectangular and triangular blankets proposed by Bennett (1946) and Yoshitake et al. (2011), respectively, the thickness and the length of the blanket which minimize the seepage discharge under given volume of blanket material are derived as optimum solutions and characteristics of them depending on the blanket volume are described. The results show the ratios of the optimum length and the optimum thickness for triangular blankets to those for rectangular ones are constant. The results also demonstrate that minimum seepage discharge through the optimum triangular blanket is always less than that through the optimum rectangular one under the same volume of the soil blanket.
  • 坂田 寧代, 有田 博之, 森下 一男, 吉川 夏樹
    2011 年 79 巻 6 号 p. 423-430
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    小千谷市東山地区と旧山古志村を対象として養鯉池の水源獲得の歴史的経緯を明らかにした.養鯉池が1960年代以降に急速に増加した背景には,新たな用水源の獲得と大規模ため池の造成技術開発があった.水源獲得は以下の8段階に区分できた.1)1945年以前:伝統的な食用鯉養殖と一体的段階,2)1945年以降:生産条件の悪い水田の転用段階,3)1960年代中期以降:平野部の大規模農業用ため池の利用段階,4)1970年代以降:生産調整政策下の水田転用段階,5)1970年代中期以降:天水利用段階,6)1980年代以降:既存養鯉池を借入・購入する段階,7)1990年代以降:平野部の大規模農業用ため池の再利用段階,8)2005年以降:地下水を水源とする段階.
研究報文
  • ― 山形県三郷堰地区を事例として ―
    鬼丸 竜治, 吉村 亜希子, 島 武男, 石田 憲治
    2011 年 79 巻 6 号 p. 431-439
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,農地や農業用水といった資源の良好な保全等を図る地域ぐるみでの共同活動を行う組織に対して,国による支援が行われている.そのような組織が,共同活動の一環として用排水路の維持管理を持続的に行うためには,構成員の労力負担意欲を高める働きかけが重要である.そこで本報では,用排水路の維持管理における構成員の労力負担意欲と,それへの影響要因との関係を事例地区での質問紙調査データを使って分析し,意欲を高める方法について検討した.その結果,事例地区では,労力負担意欲には維持管理に対する必要性意識が,必要性意識には地域用水機能の認知度が,それぞれ最も大きな影響を与えること,また地域用水機能の認知度を高めようとする場合,「地域用水機能を発揮させるために必要な維持管理である」という側面を強調して働きかけることが効果的であると考えられることを示した.
  • 亀山 幸司, 谷 茂, 菅原 玲子, 北島 信行, 石川 祐一
    2011 年 79 巻 6 号 p. 441-448
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,カドミウム(Cd)浄化用冬型植物としてのハクサンハタザオの黒ボク土壌の畑地への適用性を検討するため,Cd含有レベルの異なる2箇所の圃場において3箇年の栽培試験を行った.また,栽培試験においてハクサンハタザオの収穫物(地上部)の乾物重量,Cd吸収量及び土壌Cd含有量の変化について測定を行った.その結果,3作という期間内において収穫物の乾物重量は大きく変動しなかった.また,ハクサンハタザオの1作あたりのCd吸収量は,A圃場(全Cd含有量:4.9 mg・kg-1)で927-1,408 g・ha-1,B圃場(全Cd含有量:1.4 mg・kg-1)で122-259 g・ha-1であった.この吸収量は,これまで国内で報告されている浄化用植物によるCd吸収能力とほぼ同等であった.このため,ハクサンハタザオは冬型のCd浄化用植物として有望と考えられた.
  • 福田 尚人, 辻 修, 木村 賢人, 宗岡 寿美
    2011 年 79 巻 6 号 p. 449-455
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    土が凍結・凍上する少雪寒冷地域の北海道十勝地方の切土法面において,自生種草本類4種と自生種木本類3種による法面緑化試験を2005年9月に始めた.施工後,植物群落の植被率や生育状況と植物種組成の変化などを2009年10月まで追跡調査した.その結果,4月下旬から自生種草本類の出芽・萌芽が始まり,急激に伸長して7月には植被率は80%以上となった.植物種の組成では,当初2種の草種が主体であったがやがて多様な草種が目立つなど経年的な変化が認められた.また地上部現存量は,2009年10月において519~645g・m-2となった.
  • 坂本 康文, 篠塚 政則, 中村 和明, 緒方 英彦
    2011 年 79 巻 6 号 p. 457-463
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    農道の性能規定化による舗装設計の方針は,農林水産省により2005年に示されている.従前のアスファルト舗装やコンクリート舗装については,要求される性能が広く理解され,性能照査手法も概ね確立されている.他方,ほ場内農道に代表される土砂系舗装については,要求される性能の整理は行われているものの,具体的な性能指標やその数値は示されていない.そこで本研究では,土砂系舗装材料の性能照査手法を明らかにするために,土砂系舗装の路面に適用可能な幾つかの材料の物性試験を実施し,それらの材料特性を評価した.そして,従前の試験方法を応用することで,土砂系舗装材料の塑性変形抵抗性や骨材飛散抵抗性の評価,弾性係数の推定が可能であることを明らかにした.
  • 角田 裕志, 土井 真樹絵, 大平 充, 満尾 世志人, 千賀 裕太郎
    2011 年 79 巻 6 号 p. 465-468
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,岩手県奥州市胆沢区南部の北上川水系岩堰川支流の原川排水路に生息するギバチ(Pseudobagrus tokiensis)当歳魚の胃内容物分析を行った.供試個体は2009年10月29日に採捕した(n=31).分析の結果,本種の当歳個体は水生昆虫を中心とした底生無脊椎動物を主な餌としており,底生魚である本種の生態的な特徴を反映した食性であると考えられた.出現した餌項目に着目すると,ユスリカ類幼虫は全ての供試個体が摂餌しており,全餌項目の胃内容物重要度指数比の85.3%を占めた.このため,ユスリカ類幼虫は本種の当歳個体にとって重要な餌であると考えられた.
  • 竹村 武士, 水谷 正一, 小出水 規行, 森 淳, 渡部 恵司, 西田 一也
    2011 年 79 巻 6 号 p. 469-476
    発行日: 2011/12/25
    公開日: 2012/12/15
    ジャーナル フリー
    水路のネットワーク化による個体群再生の予測モデルを提案した.本モデルでは生息場としての水路を複数メッシュで表現する.メッシュ間の移動の難易度を各メッシュの属性値として与えて,分断点やその改善(ネットワーク化)レベルを数値表現する.計算機上の個体は,本モデルのサブモデルである移動モデルに従って水路内で移動を行うが,その際に生じるメッシュ間の移動の成否は数値表現された改善レベルに従う.各メッシュでは1年毎に,そこにいる個体数を基にロジスティック型増殖モデルを用いて再生産後の個体数を算出する.仮想水路系において,複数のネットワーク化シナリオ下でシミュレーションを行い,予測結果の比較方法を提案した.
研究ノート
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