農業農村工学会論文集
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80 巻 , 1 号
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研究論文
  • 大坪 政美, 小西 一貴, 真玉 洋彰, 東 孝寛, 金山 素平, 高田 雄三
    2012 年 80 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    近年,海域や陸域における油汚染は深刻になりつつある.ピートモスは油の吸着材として有用な材料である.本報告ではカラム試験を使ってピートモスの灯油保持特性を調べることにより,ピートモスの油吸着材としての性能を評価した.比較のために油吸着材として活性炭,珪藻土,およびポリプロピレンも用いた.カラムに詰めた油吸着材の吸油・脱油試験の結果から,ピートモスは他の材料に比べて高い位置により多量の灯油を保持することがわかった.これは,ピートモスが他の材料に比べて強い力で油を吸引し,一旦保持された油は放出されにくいことを示している.また,単位容積および単位質量の吸着材が保持する灯油量はともに,ピートモスが最大であった.このようなピートモスの高い灯油吸着能は,繊維質の単体中に7~12μm程度の孔隙が多数存在し,その表面が凹凸に富み,油が特異的に吸着されることに起因していると推測した.
  • 吉田 武郎, 増本 隆夫, 工藤 亮治, 谷口 智之, 堀川 直紀
    2012 年 80 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    広域水田灌漑地区における水循環と貯水池管理を組み込んだ用水配分・管理モデルを開発するとともに,それらを実装させた分布型水循環モデルを構築した.その中で,用水配分モデルは河川から灌漑地区への取水,水田への灌漑供給量の推定,河道への還元過程を定式化したアルゴリズムを有し,農業水利施設データベースから抽出した農地の空間分布と施設諸元を用いて作成した灌漑地区ごとに適用できる.他方,貯水池管理モデルは,日本の灌漑用放流の特性を考慮し,頭首工地点の河川流況と灌漑地区の需要量から放流量を決定する.これらのモデルの開発ならびに統合により,河川,貯水池,水田灌漑地区の相互作用や,把握が困難な河川から灌漑地区への実取水量,水田供給水量,河道への還元量等が定量的に評価でき,流域水循環の変化が農地水利用に及ぼす影響評価への展開が可能になった.
  • 吉田 武郎, 増本 隆夫, 堀川 直紀, 工藤 亮治
    2012 年 80 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    熱収支法に基づいた積雪水当量および融雪量推定モデルを構築するとともに,約1km四方のメッシュの分布型水循環モデルに組み入れ,代表的な暖地積雪流域である関川流域に適用した.構築したモデルは降水量,気温,風速,日照時間データから日単位で積雪・融雪を計算でき,さらに,衛星画像から抽出した冠雪域を用いてモデル中のパラメータを推定することにより山間部等の積雪深の観測値が少ない地域へも適用できる.モデル適用の結果,局所的な降雪の影響を受ける地点を除けば,各メッシュの積雪水当量計算値は観測値との推定誤差約200mm以内に収まることや,積雪・融雪時期の計算流量が,積雪時期の流量低下と,融雪時期の流量の立ち上がりおよびピークと良く一致することが分かり,構築した積雪・融雪モデルが流域全体の積雪・融雪現象を高い精度で再現することが示された.
  • 工藤 亮治, 増本 隆夫, 吉田 武郎, 堀川 直紀
    2012 年 80 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    各種の農地水利用過程を考慮した分布型水循環モデルおよび全球気候モデル出力を利用した農業用水や農業用施設に対する定量的な温暖化影響評価法を構築した.ここでは,ダウンスケールおよびバイアス補正を行った全球気候モデルの出力値を分布型水循環モデルに入力することで農業水利用に対する温暖化の影響評価を行う手順を示した.次に,豪雪地域に属し灌漑主体流域である関川流域を例として一連の手法を適用し,具体的な影響評価を行った.その結果,3-5月の融雪流出量の減少によるダム貯水量の減少,主要な頭首工地点における取水量の減少,受益地の末端圃場における農業用水配分量に不均衡が起こる可能性が示され,本研究で提示した影響評価法により農業水利用に対して具体的な温暖化影響評価が可能となることが分かった.
  • 大久保 天, 秀島 好昭, 主藤 祐功, 近江谷 和彦
    2012 年 80 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    分散型電源の大量導入に向けて,電力系統に与える影響を抑制するため系統への逆潮流を行わないバイオガスエネルギー利用として,バイオガスを精製したバイオメタンを貯蔵・運搬し,地域の需要家にてエネルギー利用を行う方法を検討した.本研究では,乳牛1,000頭のふん尿処理規模のプラントより製造されたバイオメタンをプラントから離れた需要地においてコージェネレーションの原燃料に利用するモデルを数理計画法に基づき定式化し,その場合の温室効果ガス排出削減量を最大とする最適なプラント運転方法について試算した.その結果,プラントは熱需要に応じたガスエンジンの運転を行い,その発電以外の電力は系統から購入,不足の熱はガスボイラーにより供給する運転方法が最適解として得られた.また,この場合,1日約500Nm3のバイオメタンを地域の需要家へ供給可能と試算された.
  • 森 充広, 渡嘉敷 勝, 森 丈久, 中矢 哲郎
    2012 年 80 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    近年,電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた面分析により,長期間供用された農業用コンクリート水路表層の劣化機構の研究が進められている.しかしながら,得られるEPMAデータには,セメントペースト部と骨材部の両方のデータが含まれているため,セメントペースト部の劣化深さなどの定量的な情報が得られなかった.そこで,EPMAデータのケイ素とアルミニウムの濃度を用いて,セメントペースト部のデータのみを分離する方法を試行した.その結果,セメントペースト部のデータを効率的に分離でき,劣化判定に必要となるカルシウムや硫黄の深さ方向濃度分布が得られた.
  • 坂田 寧代, 吉川 夏樹, 三沢 眞一
    2012 年 80 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    2004年の新潟県中越地震で被災した長岡市山古志地区M集落を対象として,養鯉池の復旧事業の実施状況を整理し,未復旧地の立地特性を分析した.結果は次のようである.経営規模で養鯉業者を分類した階層すべてに対して,新潟県創設の田直し事業は貢献した.しかし,小規模養鯉業者では未復旧地が多く発生した.また,区画面積が小さい,道路からの距離が離れた,地形勾配が大きい,標高が高い区画で,復旧されない傾向があった.未復旧地の発生を抑えるためには,平常時から養鯉池の施設機能条件と立地条件を整えることが必要である.
研究報文
  • 伊藤 祐二, 郡山 益実, 宮本 英揮, 瀬口 昌洋, 筑紫 二郎
    2012 年 80 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    時間領域反射法(TDR)に基づいて周期的変動水位の安定した計測を行うため,TDRケーブルテスターのノイズ除去機能を活用した水位計測実験を実施し,同機能の有効性を評価した.風雨や水流などによる水面変動を再現するために,パドルを用いて実験水路内に波動場を創出し,TDRプローブ先端からの水位の変動を計測した.ノイズの除去レベル(NFL)を低く設定した場合,水位計測時に得たTDR波形に時間的なゆらぎが認められた.一方,NFLを高くすると,TDR波形のゆらぎが抑制され,そのゆらぎはNFLを最高値の128に設定することによって概ね解消できた.NFL= 128の場合に得たTDR波形から水位hTDRを評価したところ,水位が高い場合にhTDRは水面変動場の平均水位haveと一致した.また,低水位で生じたhaveに対するhTDRの誤差は,have-hTDR関係に基づく1次式で修正できることを確認した.
  • 藤井 秀人, SUPHANCHAIMAT Nongluck, 小田 正人, 藤原 洋一
    2012 年 80 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    東北タイの天水農業地域における圃場溜池の整備がコンケン市郊外の村の農業の多様化に与えた影響について,圃場溜池の水利用実態をもとに分析し以下の知見を得た.1)ノンセン村では雨季の稲作,サトウキビ,キャッサバを主体とした農業がまだ主流であるが,圃場溜池が整備されて以降,溜池を利用した養魚の急速な普及,野菜や果樹への溜池の利用が進展し,溜池が農業多様化の推進に大きな役割を果たしていることが認められた.2)溜池の普及により家畜(牛と水牛)の飼育方法が変化し,夜には家に連れ帰られていた家畜(牛と水牛)が,昼夜ともに農地に放牧されるようになった.3)溜池の水量については規模の小さい圃場溜池にもかかわらず,乾季においてもほとんどの池が「十分」あるいは「ほぼ十分」と回答しており,溜池の水が無くなるほど大量に利用されている池は少ない.
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