農業農村工学会論文集
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80 巻 , 4 号
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研究論文
  • 高橋 直己, 北村 義信, 清水 克之
    2012 年 80 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    魚道内の遡上環境と同様に,魚道に至る経路の環境は遡上する生物にとって重要な要素であると考えられる.本研究では,アユ用魚道と越流堰における遡上状況,堰下流部と魚道周辺の流況特性,および遡上期における堰越流部水深の変動を総合的に考察し,異なる河川流況下での越流堰下流部における遡上状況と遡上環境の評価を試みた.調査地点の流向と流速分布より,アユの遡上が活発になった越流部水深9.7cmの状態では,左岸側越流堰中央部から河川中央側にアユの選好流速が発生し,左岸魚道からの距離が20mから40mの範囲にアユが集まりやすい流況が形成されると考えられた.また遡上期を通して越流部水深の変動を求めた結果,本遡上状況調査時のような河川水位の上昇が例年6月以降に断続的に発生しており,河川流況の観点から最盛期以降でも遡上状況調査に適した日を選定できる可能性がある.
  • 太田垣 晃一郎, 長谷川 雄基, 鈴木 哲也, 松本 伸介, 佐藤 周之
    2012 年 80 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    コンクリート水路の摩耗は,水理性能の指標である粗度係数に影響を与える可能性があり,機能保全には水路通水面の情報収集が必要となる.本報では,コンクリート水路表面状態の簡易で統一的な数値情報の取得を目的として,デジタルスチールカメラで撮影した画像を三次元化し,得られた数値データの再現性及び推定した粗度係数の妥当性について検討した.模型板を対象とした検討結果から,レーザー変位計で測定した二次元の実測値と比較し,画像解析結果の再現性が良好なことを明らかにした.カメラの有効画素数は,凹凸の再現性に影響し,画素数の大きい方の再現性が高かった.また,有効画素数に関わらず,換算粗度係数はほぼ同じ値となった.実コンクリート水路を対象とした解析結果から,表面形状を精度よく再現できることを確認した.
  • 國光 洋二, 中田 摂子
    2012 年 80 巻 4 号 p. 319-326
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    農業農村整備予算が大幅に減少する中で,ストックマネジメント(ストマネ)による社会資本ストックの維持・保全が課題となっている.本稿では,ストマネ施策による施設の長寿命化を考慮して社会資本ストックを推計するモデルを提示し,モデルを用いて基幹農業水利施設に関する資本ストックの動向を明らかにする.モデルは,事業費との関連性が明確なPI法(恒久棚卸法)をもとに,ストマネ施策による「施設実耐用年数の長期化効果」と「旧施設の再利用(reuse)効果」を定量化できる点に特徴がある.モデルによる推計の結果,日本全体の農業水利資本ストックは,農林水産省が公表する施設再建設費から推計した水利資産の動きとは異なる動向を示した.また,将来の資本ストック水準を予測した結果,ストマネ施策の評価や農業農村整備に関する課題が明らかになった.
  • 角田 裕志, 滝口 晃, 山本 康仁, 満尾 世志人
    2012 年 80 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    魚類およびエビ類のため池内における植生帯および水深方向の空間利用を把握する目的で,岩手県奥州市胆沢区南部のため池において調査を行った.調査では5属種の魚類とスジエビが採捕された.アカヒレタビラは春に主に底層を利用しており,繁殖による利用の可能性が考えられた.ヨシノボリ属とスジエビは表層と底層の両者において採捕され,ため池内を広く利用していた.ドジョウは主に底層を利用していた.魚類およびエビ類の空間利用は採餌生態や繁殖生態と関係があると考えられ,各種の生態的特徴を反映したと考えられた.魚類やエビ類の生息場所として水生植物帯だけではなく開放水面も利用されていることが確認され,ため池に棲む水生生物の生息場の保全には多様な環境の維持が必要であることが示唆された.
研究報文
  • 長谷川 雄基, 杉山 基美, 佐藤 周之, 野中 資博
    2012 年 80 巻 4 号 p. 333-340
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    農業用コンクリート開水路の一般的な補修工法として,表面被覆工法がある.本研究では,コンクリート水路におけるひび割れ幅の変動量を調査するとともに,耐アルカリガラス繊維ネットを用いた表面被覆工法のひび割れ拘束効果を検証した.調査の結果,同規模のコンクリート水路のひび割れ幅の変動特性は,無筋構造とRC構造で大きく異なることを確認した.とくに,無筋水路におけるひび割れ幅の季別の日変動量は,RC水路における季別の日変動量よりもはるかに大きくなった.両側面に背面土が存在しない小規模水路においては,東西方向に延びる水路であっても,水路の南面と北面のひび割れ幅の変動量は同程度であった.耐アルカリガラス繊維ネットを使用することで,表面被覆材にひび割れの変動を拘束する効果を付与することができ,表面被覆材の表面に発生するひび割れを抑制できることがわかった.
  • 有森 正浩, 遠藤 泰, 林 春奈
    2012 年 80 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    畑地灌漑事業の適切な評価に必要な検討資料を得るため,岩手県奥中山高原の牧草畑を事例として,タンクモデル法を用いて過去33年間(1978~2010年)の4~9月における表層40cmの土壌水分量の経年変化と旱害発生頻度の推定を行った.その結果,土壌水分量の経年変化として,制限土層で成長阻害水分点を下回る土壌水分量の低下は,そのほとんどが1978~1999年に発生していたことが分かった.旱害発生の頻度については,地域的に被害を顕在化させたような比較的規模の大きな旱害は,制限土層の水分量が成長阻害水分点を8日以上連続して下回る場合に発生し,33年間で6ヶ年の頻度で発生していたことが示された.ただし旱害の発生があった時期は偏って分布しており,なかでも被害の大きな旱害は全て1978~1999年に発生しており,2000年以降の11年間では発生していないことが分かった.
  • 勝山 達郎, 内村 求, 樽屋 啓之
    2012 年 80 巻 4 号 p. 349-355
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    農業水利施設の大半を管理する土地改良区は,混住化,農業者の減少・高齢化等でその管理能力が低下する中で,住宅地の排水等農地以外への対応が求められ,農村の9割を占める非農業者が参加する新たな仕組みの検討が課題である.このため,農業者に特化した土地改良区制度において,非農地に受益の費用負担を求める特定受益者賦課に焦点をあて,これまで管理中の土地改良区で導入事例がないという困難性とそれに内在する課題を指摘した.その上で,2009年に本賦課が導入された河北潟干拓土地改良区で,その課題の解決策と実現に至った手法等を解析し,意思決定の5ステップ・モデルの提案など多様な主体の参加と特定受益者賦課のあり方を考察した.
  • 山岡 賢, 柚山 義人, 中村 真人, 折立 文子
    2012 年 80 巻 4 号 p. 357-365
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    著者らは,前報で開発したメタン発酵消化液の輸送・散布作業の計画策定を支援するモデルの機能の拡張を図った.拡張した機能は,(1)消化液の輸送を担うバキュームカー(VC)の台数を任意に設定できるようにしたこと,(2)メタン発酵施設と農地の間に消化液を貯留する施設(中間貯留槽)を設けた場合の輸送・散布作業に対応できるようにしたことの2点である.さらに,これらの機能を用いたモデル条件による試算を実施して,輸送距離に応じてVC及び散布車の待機時間が最小となるようにVCの台数を設定することや輸送距離が約10km以上であれば中間貯留槽を設置することによって,消化液の輸送・散布作業に要する労務量や燃料消費量が軽減できるケースがあることを明らかにした.
研究展望
  • 竹村 武士, 水谷 正一, 森 淳, 小出水 規行, 渡部 恵司, 西田 一也
    2012 年 80 巻 4 号 p. 367-373
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
    土地改良法における環境配慮の原則化から約10年が経過した.本稿ではここ十数年の水田域魚類研究について「評価」を軸にレビューした.「評価」は環境配慮を順応的に実施していく上で不可欠の要素である.HEP等に用いられるSIモデル研究ではモデルの複雑化が進むとともにモデルは非公開であることが多く情報の集約化とその公開が課題と考えられた.また,水域の分断は大きな問題である.このため移動生態など知見の蓄積が進むようになり最近ではネットワーク状態を評価する,あるいはその評価に繋がりうる研究も出てきた.同時に対象とする空間スケールにも広がりが生まれてきた.生息場の空間配置を考慮した評価などそれぞれの課題を整理した.
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