農業農村工学会論文集
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80 巻 , 5 号
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研究論文
  • 長嶋 真人, 長野 宇規
    2012 年 80 巻 5 号 p. 375-381
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    国内の短距離食料輸送において消費燃料の最小化は従来2地点間の最短距離経路の選択問題として扱われてきたが,日本は地形が急峻であり,道路勾配も大きく影響すると考えられる.本研究は道路勾配と自動車燃料消費量の関係を求め,これをもとに2点間を最短距離・最小燃料消費量・最短時間で結ぶ経路を導出するアルゴリズムを開発した.そして近畿の2府4県を対象に3つの経路を比較することで,道路勾配の考慮による短距離食料輸送の燃料消費最小化の効果を検証した.その結果,最短距離経路は地域の起伏度に応じて自動車の燃費が変化し,距離が燃料消費量の一律指標にならないこと,走行距離が長くても道路勾配の小さい経路選択を行うことが最小負荷となるケースがあることが明らかになった.食料輸送における最小燃料消費の追究には,道路勾配の考慮が重要であることを明らかにした.
  • 福本 昌人, 吉迫 宏
    2012 年 80 巻 5 号 p. 383-390
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    高解像度衛星データを用いて水田の土地被覆を判別する手法を提案した.その手法は,画像分類と目視判読を組み合わせたものである.まず教師付き分類法で画像分類を行い,次にその土地被覆の分類画像に水田区画データを重ねて区画毎に分類結果を集約し,1次判別を行う.最後に目視判読によりその判別結果のチェックと修正を行う.目視判読で判断がつかない場合には1次判別結果を採用する.平坦な水田地帯においてWorldView-2衛星データ(解像度50cm,8バンドのパンシャープン画像)を用いて本手法で水田の土地被覆を判別し,踏査データを用いて判別精度を検証した.7月21日の衛星データを用いた判別では,1,527枚のうち1,517枚の区画が正しく判別され,判別精度は99.3%であった.8月23日の衛星データを用いた判別では,1,158枚のうち1,143枚の区画が正しく判別され,判別精度は98.7%であった.
  • 辻 英樹, 塩沢 昌, 西田 和弘
    2012 年 80 巻 5 号 p. 391-399
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    台地畑流域の降雨流出機構を把握し, その洪水緩和機能の大きさを定量評価するために, 千葉県銚子市にある流域面積1.60 haの台地畑流域において降雨量・流出流量・地下水位を実測した. ピーク降雨強度が8 mm・(10 min)-1以上の時に降雨強度が浸透能を超えて表面流出が生じたと推定され, 強度が8 mm・(10 min)-1以下の時は, ピーク降雨強度に対するピーク流出高の比は0.08~0.39であった. 台地上部の地下水位が0.3 m程度以上上昇する頻度は年に2~3回程度であり, 台地下部ではこれより頻繁に地下水位が地表面付近まで上昇した. さらに流域の流出特性をタンクモデルで表現し, 流域の浸透能とピーク流量緩和時間τ50を定量指標として本流域の洪水緩和機能を評価した. 本流域におけるτ50の値は6.4 hとなり, これは茨城県つくばみらい市における灌漑期水田の5.1 hより大きく, 非灌漑期の8.4 hより小さな値となった.
  • 吉田 武郎, 増本 隆夫, 堀川 直紀, 飽津 博史, Vinliam BOUNLOM, Boulaythong KOUMPHONH
    2012 年 80 巻 5 号 p. 401-408
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    低平河川周辺の大規模な氾濫過程を流域水循環の一過程として分布型水循環モデルに導入し,下流低平地帯での氾濫が頻発する流域に適用した.導入した氾濫モデルでは氾濫域を河道に接続した一つの遊水池として扱い,氾濫域の水収支式と下流端の運動方程式から氾濫水位を日単位で計算する.まず,氾濫モデル構築のために全球高解像度地形データが有用であることを確認し,構築したモデルによる5年間の計算を行った結果,氾濫モデル導入により下流の低平水田地帯における大規模かつ長期間におよぶ氾濫現象の全体像が把握できることや,大出水時のピーク流量とその発生時期の再現性が向上することを示した.また,中流域や支流河川の下流域における比較的継続時間が短い氾濫現象のモデル化には,それぞれの地点で氾濫過程を導入する必要のあることが分かった.
  • 藤澤 和謙, 西村 伸一, 中谷 亜友美, 村上 章
    2012 年 80 巻 5 号 p. 409-416
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    水の浸透作用によって砂の骨格が破壊し,噴砂が生じる浸透破壊に関するこれまでの研究では,主に浸透破壊の生じる動水勾配や浸透流速を把握することに焦点が置かれてきた.しかし,浸透破壊後の地盤や土構造物の状況を予測するには,浸透破壊時の土粒子の輸送現象を把握する必要がある.本研究では,鉛直上向きの浸透による浸透破壊の際に,浸透流によって運ばれる砂の挙動を実験的に調査した.実験においては,浸透破壊時の浸透水と砂粒子の流出量を分離して測定し,動水勾配と共に浸透流速と砂粒子の移動速度を計測した.その結果からは,透水係数を用いた砂と浸透水との相互作用モデルを用いれば,材料の違いによらず,鉛直方向の力のつり合いによって良好に砂の移動速度を推定できることが明らかとなった.
  • 辻 盛生, 山田 一裕, 平塚 明, 菊池 福道
    2012 年 80 巻 5 号 p. 417-424
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    植栽水路水質浄化施設の酸化装置として間欠鉛直流式人工湿地(VF湿地)を返送過程に組み込み,その能力の評価を行った.その結果,VF湿地において5~15L・s-1・m-2の流下速度があり,CECが20cmol・kg-1以上で,ろ材設置1週間から1ヶ月の間にNO2-N濃度の上昇が見られるろ材において高い酸化能力を示した.このことから,ろ材へのNH4-N吸着→硝化細菌による硝化→ろ材からの溶脱というプロセスが,約45分の自動サイフォン作動サイクルの中で行われることが示唆された.VF湿地によって硝化が進んだ流出水を,排水流入口付近に返送することで,脱窒による窒素除去が見られた.間欠鉛直流式人工湿地は,適したろ材を用いることで,省エネルギー型水質浄化酸化装置として有効である.
  • 若林 孝, 村上 章, 珠玖 隆行
    2012 年 80 巻 5 号 p. 425-435
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    近接施工の際には,設計段階でどの程度の被害が予測され,対策工を施せばどの程度の効果が期待できるかを定量的に評価した上で対策工を決定することが重要である.本研究では,近接施工の管理基準値としてリスクに着目し,データ同化に基づいた新たなリスク評価手法の構築を試みる.はじめに,近接施工に伴う地盤挙動の予測手法として,弾塑性構成モデルを用いた土-水連成有限要素法に着目し,実観測値を用いてその有効性を実証した.その後,予測精度の向上を目的に,シミュレーションモデルと観測値を組合せるデータ同化を適用し,近接施工における地盤の変形挙動評価,及びリスク評価への適用性について考察した.その結果,粘性土地盤を対象とした近接施工問題について,土-水連成弾塑性有限要素解析は,精度良く変形予測ができることを確認した.また,粒子フィルタを用いたデータ同化により,実観測値を説明しうる弾塑性パラメータが同定できること,及び粒子フィルタの計算アルゴリズムを近接施工のリスク評価に応用できることを示した.
  • 岡島 賢治, 東谷 和輝, 石黒 覚
    2012 年 80 巻 5 号 p. 437-443
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    堰基礎地盤の浸透破壊に対する安定性の検討には,実際の破壊事例に基づいたCreep理論が用いられている.この問題に対して,既往の研究から,Creep理論ではなくTerzaghi法が有効であることが示唆された.しかし,Terzaghi法の有効性は豊浦砂でしか検証されていない.そこで本研究では,粒度分布の揃った3種類の硅砂を用いて間隙比を統一した地盤を作成し堰基礎地盤の浸透破壊の模型実験を行い,Terzaghi法及び既往の理論との比較から粒径の効果を検討した.その結果,前述の理論が粒径の大きな粒子の結果を表現できないことが明らかとなった.また,間隙が大きくなると地盤に働く浸透力が減少する可能性を示唆した.そこで,地盤の間隙をモデル化することで粒径の影響を表現した修正Terzaghi法を提案した.実験結果との比較から,本提案手法が破壊水頭差を精度よく予測することがわかった.
研究報文
  • 皆川 明子, 髙木 強治, 須戸 幹, 小谷 廣通, 岩間 憲治, 金木 亮一
    2012 年 80 巻 5 号 p. 445-454
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    農業水路に魚類の越冬のための深みを造成し,深み造成前後で物理環境条件および魚類相を比較した.調査を行った3地点のうち1地点は2008年から深みが存在していた.残る2地点のうち1地点には堰上げにより30cmの深みを1か所,他の1地点には掘削により水深60cmの深みを2か所新設し,後者では一方を「カバー有」,もう一方を「カバー無」とした.また,採捕個体には調査の時期と深みによって異なる標識を付け,越冬個体の移動について調査した.その結果,越冬期である12月および越冬後の3月には,深みを造成した地点では深み造成後に種数,生息密度,多様度指数の増加が見られた.また,「カバー無」と比べて「カバー有」の深みで生息密度が高くなり,標識個体のうち深み間を移動したものは全て「カバー無」から「カバー有」の深みへの移動であり,魚類の越冬に対してカバーが有効と考えられた.
  • 鬼丸 竜治
    2012 年 80 巻 5 号 p. 455-464
    発行日: 2012/10/25
    公開日: 2013/10/25
    ジャーナル フリー
    近年,高齢化・混住化の進行等により用排水路の維持管理に必要な労力が脆弱化し,非農家住民に労力負担が要請されている.彼らの労力負担行動を促進するためには,行動を促す適切な要因に働きかけることが重要である.そこで本報では,働きかけが可能な要因に着目して,労力負担行動と影響要因との関係(労力負担構造)を非農家住民800人から得た質問紙調査データと構造方程式モデリングを用いて分析した.その結果,労力負担行動には労力負担意欲と労力負担能力が,意欲には労力負担の必要性意識等の要因が,さらに必要性意識には農業用水に関する知識が,それぞれ影響を与えるという構造のモデルを示した.モデルの適合度指標のうちGFIは,適合が良いとされる0.9以上の0.901,またRMSEAは,適合が妥当とされる0.08以下の0.052であり,モデルが現実のデータに適合していることが確認された.
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