農業農村工学会論文集
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81 巻 , 6 号
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研究論文
  • 若林 孝, 珠玖 隆行, 村上 章, 田口 清隆
    2014 年 81 巻 6 号 p. 489-501
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,小規模で工期が短い工事においても適用可能な,粒子フィルタと土-水連成弾塑性有限要素法に基づいた観測施工法を新たに提案し,その有効性について実際の工事を対象に検証する.はじめに,小規模工事において詳細な地盤解析を実施する場合に想定される経済的・時間的課題を考慮し,物理試験結果に基づいた簡易土質定数推定法,および計算効率の高い超一様分布列を用いた観測施工フローを示す.その後,提案フローの有効性を検証するため,観測データに基づいた粒子フィルタによるパラメータ同定を行い,再解析結果と実測値の比較により同定パラメータの精度検証を行う.さらに,残留沈下の確率分布の推定結果に基づいて対策工の選定(意思決定)を行う.その結果,提案法は設計段階で解析に必要な地盤定数が不十分な場合の意思決定にも適用できることを示した.
  • 伊藤 夕樹, 田中 良和, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄, 加治佐 隆光
    2014 年 81 巻 6 号 p. 503-511
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    用水路系での用水不足の状況や要因を客観的かつ定量的に把握することは,対策実施の優先度を決定する上で重要である.本研究では,調整池を含む長大用水路系からの用水供給に対する需要者の満足度合い,及び水利用に対する評価項目(充足性,信頼性及び深刻度)の指標値を空間及び時間軸で区切られた区分毎に整理した.この結果,1)満足度合いが低い区間では,支線水路での取水量の総量不足及び不足日が生じていること,2)この取水量不足の要因として,用水の利用が集中する時間帯での幹線水路の流量に対する信頼性不足が挙げられること,3)対策実施の優先度を判定する上で,信頼性と深刻度に対する評価指標の併用は重要であることが示された.また,本論文では,幹線水路の流量を用いて概略診断を実施し,詳細診断をすべき区間を抽出した.この診断手法は,コスト削減の観点から有効と考えられる.
  • 宮本 英揮, 伊藤 直樹, 間瀬 淳, 徳本 家康, 筑紫 二郎
    2014 年 81 巻 6 号 p. 513-519
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    広帯域インパルス信号を用いた時間領域透過法(TDT)による砂中の体積含水率(θ)および電気伝導度(σw)の同時計測の可否を検証した.信号の減衰が著しい極端な高電気伝導度条件(σw = 1.19 S m-1θ ≥ 0.32 m3 m-3)を除き,TDT波形のピーク点の時間からθを,また振幅からσwをそれぞれ決定することができた.従来の時間領域反射法(TDR)と比べて計測の自由度が高く,また単純な解析アルゴリズムで信号解析を実施できるTDTは,土中のθおよびσwの同時計測手法として有用であると考えられる.
  • 山下 祐司, 田邊 洋祐, 足立 泰久
    2014 年 81 巻 6 号 p. 521-525
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    分画分子量30,000 - 100,000(SHA),あるいは100,000 - 300,000(LHA)のフミン酸を様々なNaCl濃度で酸性条件下のガラスビーズ充填カラムへ流し入れ,その流出量の経時変化から破過曲線を得た.全ての条件において,破過曲線の立ち上がり後,相対濃度(流出濃度/流入濃度)は漸近的にある一定値へ収束し,NaCl濃度が増加するとともにその収束値は減少した.破過曲線で得られた相対濃度の収束値から,フミン酸の無次元沈着速度定数を算出し,さらに衝突係数を求めることで,フミン酸のコロイド安定性に対する分画分子量の影響を評価した.NaCl濃度と衝突係数の両対数プロット(安定度曲線)から,両フミン酸において急速沈着領域と緩速沈着領域の境である臨界沈着濃度(CDC)が明確に現れること,分画分子量の大きい方が緩速沈着領域における曲線の傾きは急峻であること,CDCLHA,pH3 = 0.73 M,CDCSHA,pH3 = 1.46 Mで分画分子量の小さなフミン酸のCDCが高いことが明らかとなった.
  • JIRIGALA , 大西 健夫, 千家 正照, 天谷 孝夫, SAMDAN Shiirev-Adiya
    2014 年 81 巻 6 号 p. 527-534
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,モンゴル国の4つの牧畜区を代表するホブド県,アルハンガイ県,ドルノド県,ウムヌゴビ県について,主要な家畜である羊を対象とし,家畜の斃死率と気象要因との関係を統計解析することによって,気象条件の変動による家畜被害の地域特性を明らかにした.解析の結果,①4県に共通して冬季の豪雪による家畜被害が発生すること,②高温乾燥地域のウムヌゴビ県では夏季の高温少雨によって牧草の成長が悪くなり冬季に多くの牧畜が餓死すること,また春秋季の冷雨による被害が発生していること,③降水量の少ないホブド県とウムヌゴビ県では3月の降水量の減少によって冬季の飲用水が不足すること,④最も気温の低いアルハンガイ県では,冬季の気温低下の影響によって多くの家畜が凍死すること,⑤ドルノド県では4月の長期間の暴風雪によって被害が発生すること,などが示唆された.
  • 中野 晶子, 森下 智貴, 大坪 政美, 東 孝寛, 金山 素平
    2014 年 81 巻 6 号 p. 535-541
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,異なる2種類の現地土,おんじゃく土と黒ボク土を用いたベントナイト混合土に対して,塩類を含んだ鉛溶液に対する混合土の鉛の吸着特性について評価した.その結果,両試料ともに塩類の影響を受けて鉛の吸着能は低下し,とりわけ,おんじゃく混合土では,イオン交換態の鉛吸着量が低下した.黒ボク混合土は,おんじゃく混合土に比べて鉛の吸着能が高く,これは含有主要鉱物のアロフェンの緩衝作用により,プロトンの増加に伴うpHの低下が抑えられたことが大きく寄与している.処分場底部の粘土ライナー層を想定し,移流分散式による鉛の浸出予測を行った結果,塩濃度が高いほど鉛の移動速度は速くなった.黒ボク混合土はおんじゃく混合土に比べて3倍程度浸出速度が遅くなり,鉛の保持には黒ボク混合土が有利であることを確認した.
  • 伊藤 夕樹, 田中 良和, 向井 章恵, 樽屋 啓之, 中 達雄, 加治佐 隆光
    2014 年 81 巻 6 号 p. 543-552
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    複雑な用水路系では,ある地点での送配水の信頼性低下の原因は,別の地点にある可能性がある.本論文では,水路上の複数の地点における水利的故障(流量などの実績値が規定値を下回る状態)が空間的に連続しているか否か,及びこの故障による作物栽培への影響度を分析することにより,用水路系の信頼性低下に対する各地点の影響度を把握する手法を示した.また,上流水位制御方式を採用する幹線水路に対して,この手法を適用した.この結果,この水路の信頼性の低下に大きな影響を及ぼす地点は,いくつかに限定されることを示した.以上のことから,本論文で示した手法は,優先的に詳細診断及び保全対策すべき地点の選定において有用であると考えられる.
  • 庄嶋 芳卓, 秋葉 正一, 加納 陽輔
    2014 年 81 巻 6 号 p. 553-563
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    非鉄金属スラグは,非鉄金属精錬によって副生する循環資材であり,その代表的なスラグである銅スラグやフェロニッケルスラグ(以下,FNS)はコンクリート用骨材として既にJIS規格化され,利用されている.しかしながら,これらの生成過程や粒径,形状によっては利活用が困難なものもあり,特にFNS微粉末の多くは有効利用されないままとなっている.一方,集塵ダストとして発生する微粉酸化鉄は,消石灰と配合した安定処理材(以下,Fe石灰)として九州地方を中心に利用されているが,強度発現性に関しては経験的な要素が強く,究明すべき点が多い.本研究では,FNS微粉末の安定処理材としての利活用を提案し,九州地方の特殊土に対する改良効果について,Fe石灰による強度発現性および環境安全性,経済性と比較検証した.この結果,FNS微粉末の土質安定処理材としての有用性が認められた.
  • 長束 勇, 村尾 弘道, 松本 拓, 石井 将幸
    2014 年 81 巻 6 号 p. 565-571
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    水路トンネル覆工背面に空洞が存在する状況を再現できる載荷装置を試作し,空洞が存在することによるひび割れ発生のメカニズム,空洞の有無・大きさによる覆工の耐荷力の差異を調べた.さらに載荷試験終了後,覆工の補強工法の一つである裏込注入工法の有効性について検討した.その結果,スプリングラインのひび割れは,地圧が作用した際,反力の取れない天端が覆工外面方向へ変位し,それに伴い左右側壁が覆工内面方向に変位することにより発生すること,天端覆工背面に空洞が存在すると覆工の耐荷力が著しく小さくなること,空洞が大きいほど耐荷力は小さくなり最初のひび割れ発生後に脆性的に破壊が進む危険性があること,空洞に適切な裏込注入を行えば覆工がほぼ元の形状に復元でき所要の耐荷力を発揮できる可能性があること,が明らかとなった.
研究報文
  • Wataru KAKINO, Tomoyuki NAKAMURA, Masakazu MIZUTANI, Gen-ichi NAKAKUKI ...
    2014 年 81 巻 6 号 p. 573-579
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    Estimation of the population size of oriental weather loach (Misgurnus anguillicaudatus) was attempted using the removal method and the mark-and-recapture method in paddy plots in Kaminokawa City, Kawachi County, Tochigi Prefecture in 2007 and 2008. Removal surveys were conducted four times in each of the three study sites (950 m2, 950 m2 and 1,000 m2 in area) established in two paddy plots from 15 June to 6 August, 2007. The mark-and-recapture surveys were done twice in each of two sites (1,900 m2 and 1,000 m2) established in the two paddy plots from 15 June to 3 August, 2008. The estimated population size (population density; individuals per 1 m2) excluding unreliable estimation values, by the two methods ranged from 538 (0.54) to 1,526 (1.61). Based on these results, several proposals on the estimation method of the loach in paddy fields are given.
  • 森 洋
    2014 年 81 巻 6 号 p. 581-586
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震により,東京港埋立地で得られた地震観測記録を基に,埋立地盤の震動増幅特性等を検討した.基盤深度の増加に従って,地盤の特性値(地盤の固有周期に相当する値)は概ね線形に増加した.最大加速度の増幅率と地表面での卓越周波数は,地盤の特性値が増加するに従って減少する傾向にあった.また,ピーク加速度応答スペクトル比も,地盤の特性値が増加するに従って減少する傾向にあったが,卓越周期は増加する傾向にあった.
  • 宮本 輝仁, 塩野 隆弘, 亀山 幸司, 井口 三郎, 盛永 一美, 田中 和博, 長谷川 昌美
    2014 年 81 巻 6 号 p. 587-594
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    キャパシタンスセンサーが土壌水分測定に広く利用されるようになってきた.この新しい土壌水分測定技術の畑地灌漑の計画基礎緒元の算定のための適用性を確認するため,2011年と2012年の7月から9月までキャパシタンスセンサーとテンシオメータを用いて土壌水分測定を行い,それぞれの測定法で得られた土壌水分量を比較した.その結果,キャパシタンスセンサーは湿潤時においてはテンシオメータと同等の計測が行えること,pF3.0以上の乾燥時においても作物による吸水を含めた土壌水分の変動をとらえられることが確認された.更に,計画基礎緒元の算定を行った結果,キャパシタンスセンサーでは乾燥時の消費水量の算定が可能なこと,キャパシタンスセンサーの実測値をもとにした総容易有効水分量(TRAM)はテンシオメータの場合とほぼ同様のものが得られることが確認された.以上より,操作性が簡便なうえ,乾燥時にも測定可能であり,維持管理も容易なキャパシタンスセンサーは畑地灌漑の計画基礎緒元の取得にも有用な測定法となると考えられた.
  • 田村 昭典, 西脇 淳子, 軽部 重太郎
    2014 年 81 巻 6 号 p. 595-600
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    茨城県南部土壌と代表的な粘土鉱物へのセシウム(Cs)の吸着と脱着の特徴を,安定同位体133Csを用いて調べた.Cs濃度1 mg L-1のCsCl溶液約27 mLを1.0 gの土に添加すると,霞ヶ浦ヘドロは添加したCsの97%,黒ボク土表土は88%を吸着した.その後水で3回洗浄すると,黒ボク土表土の場合Cs吸着量は82%に,さらに1M KClで3回洗浄すると75%に低下した.用いたKの濃度が農地のそれより3桁高いことを考慮すると,施肥等による土壌からのCs溶出は少ないと考えられた.Cs初期濃度0.01~10 mg L-1の範囲で分配係数(Kd)を比較した結果,黒ボク土,霞ヶ浦ヘドロのKdは,初期濃度が低くなるほど上昇した.実際の汚染土壌中の137Csの濃度はこれより数桁低いことから,放射性Csは今回の実験結果よりも強く土壌に吸着されていると考えられた.
  • 髙木 東, 籾井 和朗, 肥山 浩樹, 伊藤 祐二
    2014 年 81 巻 6 号 p. 601-608
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
    特殊土壌が分布する南九州豪雨地帯の畑地集水域における降雨流出特性の解明は農地保全上重要である.本研究では,シラス,国頭礫層および琉球石灰岩を基盤とする畑地集水域における流出特性を,米国農務省提案のHフリュームを用いた流量観測に基づいて検討した.シラス台地クロボク土壌の集水域のピーク流出係数は最大で0.096,ビニールマルチを施した場合は,被覆率45%のときに最大で0.50の高い値を示した.徳之島国頭礫層上の集水域のピーク流出係数は,最大で0.45,一方,同じ島内の浸透性の高い琉球石灰岩層上の集水域では,最大でも0.033という非常に低い値を示した.洪水到達時間は概ね10~30分の値をとり,集水域の違いやビニールマルチの有無などによる大きな相違はなかった.本研究で対象とした集水面積5 ha未満の畑地集水域では,洪水到達時間と平均有効降雨強度に強い相関はなかった.
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