農業農村工学会論文集
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81 巻, 2 号
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研究論文
  • 田中 良和
    2013 年 81 巻 2 号 p. 115-125
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    土地改良事業計画設計基準「パイプライン」において,設計水圧を算出する場合に水撃圧の数値解析を原則としている.しかし,標準化された水撃解析プログラムはこれまで存在せず,今後,社会レベルの技術者間コミュニティにおいて信頼性の高い水撃解析プログラムを保守管理することが,パイプラインシステムの水理機能を確保するために重要である.水撃解析プログラムの保守管理には,多種類の附帯施設のモデル化の蓄積が必要である.そこで,コミュニティ内にて共有したコードを拡張する際に生じる調整に係わる保守管理の労力負担を軽減するために,オブジェクト指向開発方法に基づきプログラムを部品化してコードを拡張する方法を提案した.これにより,社会レベルにおいて技術者がブラックボックス化されていない標準的なプログラムを持続的に共有することが期待できる.
  • 田中 良和
    2013 年 81 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    農業用パイプラインの情報を記したXMLドキュメントを数値解析プログラムから効率的に読み込み,数値解析が行えるように,基礎的なデータ管理手法を提案した.具体的には,情報をXMLドキュメントに記すために農業用パイプラインの概念をRELAXによって規定し,この規定と同じ情報を扱えるオブジェクト指向言語JavaのクラスをRelaxerによって自動作成した.数値解析プログラムは,XMLドキュメントに記された情報を,これらのクラスに基づいて生成したオブジェクトを経由させてデータとして入力した.このデータ管理手法によって設計時に既に作成した各水理ユニットのファイルを再利用できるので,複数の水理ユニットの結合に伴って機能を再検討する際にデータの入力作業の労力が軽減された.
  • 武藤 由子, 加藤 希枝, 渡辺 晋生
    2013 年 81 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    水田農業の持続的発展のためには,温室効果ガスの発生といった環境負荷を低減させる水管理技術の確立が急務である.そのため,水管理条件と土壌の酸化還元状態の関係を考慮した窒素・炭素動態の予測が求められている.浸透水中の溶存酸素が土壌の酸化還元状態と窒素・炭素動態に与える影響については,近年の研究により明らかになりつつある.そこで本研究では,蒸発過程において土壌への気相の侵入が土壌の酸化還元状態に与える影響を調べる目的で,水田土壌を充填した一次元カラムを用いた蒸発実験を行った.実験の結果,地表面から離れた下層ほど,酸化還元電位が上昇するために多くの気相の侵入が必要であること,酸化還元電位の上昇の過程には,蒸発にともなうわずかな気相の侵入が強く影響することが明らかとなった.
  • ―手取川扇状地・七ヶ用水地区における用排兼用幹線水路を対象として―
    吉田 匡, 丸山 利輔, 高瀬 恵次, 能登 史和, 瀧本 裕士
    2013 年 81 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,幹線水路を用排水兼用で使用している水田用水の還元水分析法を提案し,手取川扇状地,七ヶ用水地区に適用した結果を述べたものである.用水系の幹線水路,取水堰,灌漑ブロック,これに対応した排水系の幹線水路,取水堰,排水ブロックのナンバーリングを工夫し,幹線水路への還元水量を計算したうえ,排水系の幹線水路,取水堰,排水ブロックなどの結合情報を昇順に並び替え,用水系に対応した排水系に整理し,用水の還元水の状況を分析する新たな手法を開発した.この方法を七ヶ用水地区に適用した結果,普通期の水利権水量の場合,地区全体の還元水量の割合は,取水量の59%,このうち反復利用が可能な還元水量は33%,残りの26%は最下流の堰より更に下流に流出,あるいは直接日本海に流出して,反復利用が不可能なことが見出された.
  • 橋本 禅, 有田 博之, 保高 徹生, 岩崎 有美
    2013 年 81 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,(1)除染における地域指定や優先順位の方針の整理を通じて,(2)除染において農村地域がどのように序列化されるかを明らかにすると共に,(3)農村地域の除染と生活再建においてどのような影響が想定されるか,また(4)それら影響に対する対応策の提案を行なった.国が示す除染の優先順位付けの方針は,結果的に農村地域の除染対応の遅れを引き起こす可能性が高い.仮置き場の確保や同意取得の難航は本状況を更に深刻なものとすると懸念される.また,除染の効果にも限界があり,空間線量の高い地域では除染の遅延と相まって住民の避難生活の長期化が予測される.自治体の住民意向調査からは,避難が長期化した場合,帰還率のさらなる低下が見込まれることが示唆されており,除染や復興への戦略的対応が求められる.本稿ではこれに対応する方策として,急激な人口の流出を前提としつつも除染対応を地域再編の契機として捉えた,地区レベルでの復興構想の策定を提案した.
  • Man-Kwon CHOI, Yuki HASEGAWA, Katsunori YOKOI, Shinsuke MATSUMOTO, Shu ...
    2013 年 81 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    Phenolphthalein method is utilized as the general diagnosis method on neutralization of concrete. However, this method cannot satisfy to indicate the soundness of reinforced concrete. In this research, the applicability of phenolphthalein method to the specific evaluation and prediction of neutralization was evaluated through the analytical and the experimental method. As a result, analytical estimation using image processing on pH distribution of cement hydrates was possible by multiple indicators: two concentrations of phenolphthalein solution and 0.4 % concentration of tropaeolin O solution. It was also clarified that visual inspection method using two types of indicator (1.0 % concentration of phenolphthalein solution and 0.4 % concentration of tropaeolin O solution) can give sufficient and accurate information about the relationship between the discolored pH and its depth from surface of concrete. Finally, new evaluation method was proposed for specific evaluation on neutralization of concrete considering the remaining neutralization time.
  • ―兵庫県下における老朽化ため池を事例として―
    鈴木 麻里子, 河端 俊典, 内田 一徳
    2013 年 81 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    全国に21万個,兵庫県に4万個以上あるため池の多くが老朽化という問題を抱えており,地震や台風などによって大きな被害を受けている.そこで早急な改修が必要であるが,ため池改修を実施する上で,適切なコア用土の確保が現在の課題として存在する.また,築造年代が古く老朽化したため池には,池底に汚泥が堆積しており,悪臭や貯水量低下の原因となっている.そこで,本研究では,環境に優しく安価で力学的に安定したコア用土を得るために,現場発生土である底泥土と旧堤体盛土材の再利用を検討した.底泥土と旧堤体盛土材の適切なブレンド割合を明らかにするために,混合土に対して一軸圧縮試験と透水試験を実施するとともに,生石灰や産業廃棄物であるフライアッシュの有用性を検討した.また,現場適用を考慮し,大型混練機による現場試験を実施し混合土のバラツキを評価した.各実験の結果,底泥土と旧堤体盛土材の混合土はため池コア用土として十分な強度と遮水性を有し,再利用の可能性が示唆された.
  • - A case study of a hunting group with guns and hounds in a suburban area in Ehime Prefecture, Japan -
    Emi TAKEYAMA, Mitsuteru OHNO, Yasuaki KUKI
    2013 年 81 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    The actual hunting area and ranges of hunting activities of hunters using guns and hounds are clarified and the contribution of these hunting activities on the establishment of a forest-farmland buffer zone is examined. In this study, a hunting group from a suburban area in Ehime Prefecture, targeting Japanese wild boar is examined. The landscape factors affecting hunters travelling distance is also studied. As a result, the hunting group in this study focused their activities on narrow, 600 m-wide bands around settlement. In such cases, a habitat management effect peculiar to hunting with guns and hounds can also be expected, as it keeps wildlife away from settlements and in the process generates a buffer zone along farmland peripheries. The study also shows that the burden of movement on hunters is closely related to the elevation, road conditions and degree of farmland clustering of the hunting zones.
研究報文
  • 吉川 夏樹, 宮津 進, 阿部 聡, 三沢 眞一
    2013 年 81 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    筆者らが新たに開発した低平農業地帯における田んぼダムの内水氾濫抑制効果を算定するモデルでは,氾濫流伝播の計算格子として「地形適合セル」を導入した.地形適合セルは,道路などの線状構造物や地盤標高の変化を境界とした任意多角形による自由なセル形状の設定が可能であるため,不要な計算点設置の回避が図れるほか,セルを構成する線分に標高値をもたせることによって,低平地における微小起伏を表現することができる.一方,地形適合セルは,任意多角形の幾何属性データの整理に多大なる労力と時間が必要であり,これが普及の障害となっていた.こうした技術上の課題を解決するため,筆者らはGISを利用し,計算に必要なセルの幾何属性情報等を整理する手法を開発した.本稿では,地形適合セルを導入した氾濫解析手法の概要に触れ,必要となる基礎データを提示した上で,筆者らのモデル化事例に基づいてデータの整理手法を紹介する.
  • 田中 健二, 吉田 貢士, 乃田 啓吾, 安瀬地 一作, 黒田 久雄
    2013 年 81 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 2013/04/25
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    未観測流域と定義されるメコン川流域では,将来的な人口増加および急速な経済発展により水質汚濁が懸念され,環境負荷を把握することが求められている.そこで本稿では,環境負荷を評価するため,窒素・リン排出原単位を推定することを目的とし,流域の観測点5地点での年間総排出負荷量とGISを用いた空間統計データから線形モデルを構築した.解析から得られた森林,農地,人,牛の窒素・リン排出原単位を日本の文献値と比較し,その違いを農業形態,食糧消費量,排水処理形態,畜産形態の特徴から考察した.原単位法により観測点ごとの負荷排出割合の内訳を算出した結果,下流ほど人や農地からの排出割合が高いことが示された.また,推定された排出原単位より1kmグリッドごとの排出負荷量を算出し,空間分布図を作成した.
研究ノート
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