農業農村工学会論文集
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81 巻 , 3 号
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研究論文
  • 吉迫 宏, 小山 潤, 小川 茂男, 福本 昌人
    2013 年 81 巻 3 号 p. 205-214
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    谷池型ため池群流域である広島県椋梨川上流域において,貯水位観測と洪水流出モデルの作成を行い,対象流域におけるため池群の洪水緩和効果を評価するとともに強化策を考察した.6月上旬と9月上旬の貯水位観測の結果から洪水期間中のため池群は少雨年を除いて満水に近い状態にあること,中央集中型降雨と後方集中型降雨を用いたシミュレーションの結果から後方集中型降雨に対する場合と中央集中型降雨においても空き容量が小さい場合には下流河川の基準点に対して発揮される洪水緩和効果は小さいことを示した.対象流域におけるため池群の活用による下流域への洪水緩和効果の発揮にあたっては,ため池への洪水調節容量の付与が必要である.
  • 松林 周磨, 吉田 貢士, 塩沢 昌, 友正 達美, 山下 正
    2013 年 81 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    近年,登熟期の高温により水稲の品質が低下する高温障害が発生しており,その抑制策の1つに水管理による田面冷却がある.しかし,それら水管理が水温,葉温に及ぼす影響を定量的に把握するためには,大気-植生-水塊における熱移動を物理的に表現可能なモデルが必要となる.そこで本研究では,灌漑水温や水量等の条件から水田内の水平方向の水の流れによる移流熱移動を求め,さらに気象条件から算出される鉛直方向の熱フラックスを計算し,水田内の水温・葉温を予測する水田内温度予測モデルを構築した.構築したモデルは宮城県と熊本県の観測圃場で実測された水温・葉温と比較することにより検証を行った.モデルによる計算値は,水温・葉温ともに実測値とよく一致した.
  • 山本 仁, 岡澤 宏, 竹内 康, 村上 由貴
    2013 年 81 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    2001年に改正リサイクル法が制定され,石炭火力発電所から発生する石炭灰の一種であるクリンカアッシュにも適用された.クリンカアッシュは多孔質な物質であるため,水質浄化材としての利用が期待されているが,窒素に関する報告は極めて少ない.本研究では水田から流出する窒素の抑制を目的とし,カラム試験によりクリンカアッシュの窒素除去効果を検討した.本実験では,クリンカアッシュを水田排水のフィルター材として利用することを想定しており,クリンカアッシュの透水性が窒素除去に対する重要な要因となる.クリンカアッシュの透水性は粒径組成の指標であるD20で推定することができる.そのため,クリンカアッシュの粒径組成が異なる4種のカラムを作製し,窒素除去能との関係を検討した.その結果,どのカラムも実験初期にクリンカアッシュの窒素吸着能が高く,経過日数とともに効果が減少していくことが明らかとなった.また,クリンカアッシュの粒径が小さいほど,窒素吸着量は大きくなることが明らかになった.
  • 森 洋
    2013 年 81 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    杭状改良タイプを想定した複合(互層)地盤における剪断強度特性を,寒天材料を用いた一軸圧縮試験と弾完全塑性体モデルによる弾塑性有限要素解析で検討した.地盤改良率を50%とした寒天材料による一軸圧縮試験では,改良体の敷設方向の違いによる強度の差異を定量的に再現できる可能性を示した.また,今回採用した弾塑性有限要素解析でも,改良体の敷設方向による強度の差異等の影響を,要素試験レベルで示すことができた.
  • 吉田 武郎, 増本 隆夫, 堀川 直紀, 皆川 裕樹
    2013 年 81 巻 3 号 p. 235-244
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    土地利用・耕作状況が異なる地目からの水文流出過程を表現する分布型水循環モデルを構築するとともに,それを耕作水田・耕作放棄水田が主体の流域に適用して,そこでの流域水循環と水田管理状態の相互関係を評価した.まず,時間間隔1日の長期流出計算により解析対象の降雨発生時のモデル状態量を得て,これを短期流出計算のモデル初期値とした.次に,時間間隔10分の短期流出計算を行った結果,構築したモデルにより,出水時の流量ピークと逓減や試験流域間の短期流出特性の違いをよく再現できることを示した.さらに,降雨発生時のモデル状態量の比較から,試験流域間で短期流出特性に違いが生じた降雨時には,耕作放棄水田があるメッシュの飽和帯からの余剰地表流量が耕作水田のそれより大きく,この差が試験流域間の短期流出特性の違いの一因であると推察された.
  • 堀 俊和, 毛利 栄征, 土橋 和敬, 高橋 浩, 前田 和亨
    2013 年 81 巻 3 号 p. 245-256
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    ため池は,貴重な水資源であるが,老朽化が進み,豪雨による被害が数多く報告されている.一方,国,地方の逼迫した財政状況から,従来の全面改修によらない簡易な改修工法の開発が求められている.本研究では,アクセスが悪く,従来では改修が困難であった中小規模のため池を対象に,豪雨時のすべり,堤体越流時の法面侵食を防止すると同時に,経年的な上流斜面の波浪侵食を防止することを目的として,遮水性および耐侵食性を持つ薄層の被覆を堤体表面に設置する対策方法の効果検証を行った.小規模模型を用いた降雨実験,大型模型を用いた越流実験と波浪侵食実験,実物大降雨実験により,被覆層の降雨浸透抑制,越流侵食防止,波浪侵食防止の機能を検証し,豪雨対策および波浪侵食対策としての有効性を明らかにした.実物大施工試験の結果,施工性,経済性にも優れていることが分かった.
  • 角道 弘文, 高橋 一将, 千賀 裕太郎
    2013 年 81 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    総合的な治水対策の一環として農業用ため池の活用が考えられる.本研究では,ため池の必要貯水量の算定にもとづき,流出調整に資する空き容量を期別に設定し,この空き容量によって自己集水域からの流出がどの程度調整されるかについて検討した.すなわち,利水目的の貯水管理計画手法である「渇水要貯水量曲線法」を適用することによって,農業用水として確保すべき渇水要貯水量を求め,流出を抑制しうる空き容量を期別に設定した.過去のデータより一連の積算降雨が100mm以上であった降雨を対象に,実管理を模擬した運用方式との比較を行ったところ,本研究の方式による流入量の流出調整量は大きく,とくに灌漑期における流出調整効果は顕著であった.
研究報文
  • 岡島 賢治, 鏑木 諒, 安瀬地 一作
    2013 年 81 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,農地石垣の被災形態の分類と被災要因に関して,国内12箇所の現地調査と聞き取り調査をもとに分類と分析を行った.被災形態は農地石垣の変状と崩壊に分けて分類した.また,被災要因を素因と誘因に分けて分析した.農地石垣の持つ崩壊の素因は,開墾時限られた材料と技術に頼るしかなかった施工上の素因と農地における営農上の素因という農地特有の性質によるところが多かった.農地石垣の被災の誘因は,一般的な法面の被災要因である豪雨・長雨の他に強風や農機の導入,獣害など農地特有の誘因もあることが明らかになった.一方で,地震の影響は小さいとの聞き取り結果が得られた.以上の被災形態の分類と被災要因の分析を行った上で,崩壊に至るパターンの推測を行った.これらのパターンは,農地特有の素因と誘因に起因するものも多いが,今後科学的に検証される必要がある.
  • 藤井 秀人, 藤原 洋一, 星川 圭介
    2013 年 81 巻 3 号 p. 271-278
    発行日: 2013/06/25
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル フリー
    メコンデルタの洪水常襲稲作地域であるベトナム国アンジャン省を対象に,稲3期作化のためのフルダイク(輪中堤防)の進展による水文環境への影響を調べた.対象地域のフルダイク地区(農地内への洪水流入を完全に防ぐ地区)とセミダイク地区(夏秋作収穫後に洪水が農地内に越流する地区)について,住民や行政機関から聞き取り調査を行い,フルダイク化進展前と進展後における衛星画像とメコン河(ハウ川,ティエン川)の水位変化からフルダイク化が周辺の水文環境に与えた影響を分析し,以下の知見を得た.1)フルダイク内農地の土壌肥沃度の低下,病虫害の多発,水路水質の悪化が生じている,2)アンジャン省の南側下流地点カントーの水位が近年上昇傾向にある,3)アンジャン省西側のキエンジャン省や北側のカンボジアではフルダイクの影響とみられる洪水の長期化傾向が認められる.
研究ノート
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