農業農村工学会論文集
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81 巻 , 4 号
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研究論文
  • 中野 拓治, 安元 純, 寺澤 春菜, 名和 規夫
    2013 年 81 巻 4 号 p. 283-291
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    琉球石灰岩分布地帯である沖縄本島南部地域地下水の硝酸性窒素について,現地観測データ等から時空間的動態を把握し,その形成要因を考察した.調査地域の硝酸性窒素は,正規確率分布によく適合しており,環境基準値(10mgL-1)を若干超過するような濃度水準となっている.硝酸性窒素には,地下水流動に伴った上流から下流に向けた窒素負荷源が影響しているとともに,地下ダム築造で形成された地下水流動場に起因する流入・混合作用と希釈・脱窒作用が関与していることを確認できた.硝酸性窒素の経年変化には,農地からの窒素負荷による影響が示唆されるとともに,周年濃度変化には地下水位変動が影響していることを明らかにすることができた.
  • 北村 立実, 吉尾 卓宏, 山本 麻美子, 塚本 威, 黒田 久雄
    2013 年 81 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    茨城県はレンコンの出荷量が全国1位であり,レンコン作付面積の約90%が霞ヶ浦湖岸沿いの市町村に分布している.本研究では霞ヶ浦湖岸ハス田地帯で上流部の川尻川から堰上げによって取水し,田越し灌漑を実施している地区を対象に負荷量調査を実施した.そして,水収支や物質収支を求めることで,湖岸ハス田地帯からの負荷排出機構や原単位について検討した.その結果,地区排水の95%は霞ヶ浦や川尻川に流出しており,揚水による地区排水の再利用は5%程であった.また,耕作期間におけるCOD,T-N,T-Pの排出負荷量はすべての項目で代かき・植え付け期で最も大きくなった.本調査地区の差し引き排出負荷量はCODで45.59 kg・km-2・d-1,T-Nで2.97 kg・km-2・d-1,T-Pで2.22 kg・km-2・d-1となった.代かき・植え付け期に灌漑方法を改善することで負荷を効果的に削減できると考えられた.
  • 近藤 康行, 権田 豊, 野村 愛
    2013 年 81 巻 4 号 p. 301-308
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    改良型の電極「電極ユニット」を装備した小型魚用魚カウンターを使用して,利根大堰の3号魚道を遡上する小型魚の計数実験を行った.魚カウンターの精度検証のため,魚カウンターで計数した遡上数を,電極ユニットをビデオカメラで撮影した画像から計数した遡上数で除して1分間毎のカウント率を算出した.電極ユニットを通過する魚数が50尾/min未満の場合,魚カウンターによる計数精度を表すカウント率は90%程度と高かったが,50尾/min以上の場合,電極ユニットに複数の魚が同時に侵入する同時遡上が発生し,カウント率は60%と低下した.同時遡上が発生した場合でも精度よく計数できるように,同時遡上発生時のカウント率を補正する補正式を考案した.今回の調査結果に補正式を適用すると,同時遡上が発生した場合でも,数十分間毎の遡上数は約100%のカウント率で計数可能であることを示した.
  • 九鬼 康彰, 武山 絵美, 東口 阿希子
    2013 年 81 巻 4 号 p. 309-317
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    獣害対策の一手法として近年,農家の高齢化に対応し軽量化が図られた金網フェンスの設置が進んでいる.住民施工による設置が獣害対策事業の一般的な形態となりつつある中で,柵の効果が持続可能であるためには維持管理の内容や体制が重要となる.そこで本研究では維持管理に関する農家の意識をアンケート調査から把握し,柵の導入に際して考慮すべき点を考察した.和歌山県有田川町K地区の農家61人の回答から日常的な管理作業の重要性は等しく認識されていたが,管理道路の確保や維持管理の合理化について未設置集落及び非リーダー層の認識が低いことが明らかになった.また将来的な人手不足への対応については,リーダー層でも重要性の評価は低いことが分かった.柵の導入時には設置後の地区の社会構造の変化やそれを反映した維持管理体制について学習する機会を取り入れる必要が示唆された.
  • 今泉 眞之, 奥島 修二, 塩野 隆弘, 石田 聡, 吉本 周平, 鎌田 雅美, 千田 善秋, 友口 勝, 中 達雄
    2013 年 81 巻 4 号 p. 319-331
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    耕起した放射能汚染水田土壌を除染するために,濁水回収システムを組み込んだ土壌攪拌工法を開発した.濁水回収システムは,トラクター後方に設置した3列ノズルと真空バキューマからなる.パイロットスケールで,代かき除染回数の除染効果への影響試験1(サクションホース長:50m)と30a圃場への適用性試験2(180m)を行った.試験1では,代かき2回目まで土壌の放射性Cs濃度は急激に低下したが,それ以後の濃度低下は低調であった.希釈効果を考慮した除染率は35~40%/9回代かきで,放射性Cs濃度の濃縮率は最大で2.6倍である.試験2の除染率は約15%/4回で,濃縮率は1.7倍である.試験2の低い除染率と濃縮率の原因は,サクションホース長が試験1より長いことによる吸引力の低下である.本システムを現地適用するには,ノズル先端で細粒土の回収率を更に高くするとともに,濁水回収量を増加させ,放射性Csの濃縮率を向上させる必要がある.
  • 望月 秀俊, 竹田 博之, 松森 堅治, 奥野 林太郎, 亀井 雅浩
    2013 年 81 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    近年,普及が加速度的に進む地下水位制御システム(FOEAS)は,暗渠に地下灌漑機能と地下水位調節機能を付加することで,湿害と干ばつ害の両方に対応したシステムである.本研究では,FOEASの排水機能と給水機能を評価するために,2011,2012年ダイズ作付け期間中に,FOEAS区(設定水位-30cm)と対照区(FOEASは設置するが,入水を止め,水位制御器を取り外す)の深さ別の土壌水分量を,圃場全体をカバーするように継続測定し,変動を解析した.その結果,平年並み以上の降雨であった2か年のうち,2011年には両区の土壌水分量に差はなかったが,2012年には20cm以深でFOEAS区の方が高かった.また両年両区とも良好な排水性を示した.これは,FOEASの補助孔(弾丸暗渠)のためであると判断された.また,給水機能が発揮されたことも確認されたが,FOEASによる水分制御のダイズ増収効果は確認されなかった.
  • 石井 将幸, 野中 資博, 吉岡 裕次, 沖田 和士
    2013 年 81 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    構造物の信頼性照査に関する国際基準と国内基準の両方が,信頼性設計法を基礎に置いた限界状態設計法を設計手法の中心に据えることを決定した.そこで本研究では,現場打ちRC開水路に対して信頼性設計法による安全性照査を行うことを将来的な目標に置いて,曲げ耐力における重要な設計変数である有効高さの標準偏差を求めるための調査と分析を実施した.RC開水路の側壁を対象としたはつり調査を実施して壁厚とかぶりの大きさを測定し,複数の壁体やバレルにおいて差異が生じているかを検討した.その結果,同じ現場でも壁体が変わると施工精度に変化がみられる事例があること,壁厚の施工精度と比べて鉄筋位置の施工精度はかなり劣ること,などが明らかになった.そして現時点における有効高さの標準偏差として,10.1mmという値を得ることができた.
  • 有吉 充, 毛利 栄征, 堀 俊和, 松島 健一, 上野 和広
    2013 年 81 巻 4 号 p. 349-357
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    農業用パイプラインは,耐用年数を超える施設が年々増加しており,老朽化が進行している.こうした施設を効率的に保全し,老朽化に伴う破損事故を未然に防止するためには,構造的な安全性を適切に評価することが必要である.しかし,現在一般的に行われている単純な断面変形の計測であるたわみ量の調査などから,構造的な安全性を正確に評価することは難しく,定量的に評価できる新たな照査手法が求められている.そこで,本研究では,曲率半径の変化を計測して,パイプの横断面に生じる曲げひずみを推定する手法を開発した.溶接鋼管を対象とした模型実験により,曲げひずみが1,000μ以上ある場合,その手法は80%以上の精度で曲げひずみを推定でき,定量的且つ簡便に曲げひずみを推定できることを明らかにした.
  • 栗原 周平, 多田 明夫, 田中丸 治哉
    2013 年 81 巻 4 号 p. 359-368
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,面積12.82haの山林小流域を対象に,約23ヶ月の10分間隔の流量と15分間隔の水質データを用いて期間中の流域からの総流出負荷量を推定し,その確からしさについて評価した.具体的には,溶存イオンのK+,Cl-,Na+を対象とし,等間隔サンプリングと既往の負荷量算出方法を組み合わせて総流出負荷量を推定・評価した.その結果,USGS Load Estimatorの7パラメータモデルを回帰式に用い,対数変換された流出負荷量に対し最小二乗法を適用し,composite法をバイアス修正法に採用した方法が最も偏りの小さな推定量を与えた.しかし,この方法を用いても特定の項目・抽出間隔においてブートストラップ法により構成された95%信頼区間が総流出負荷量の真値を含む割合が,信頼水準より小さかった.今後はより偏りの小さいサンプリング方法と負荷量算出方法を模索する必要がある.
研究報文
  • 竹下 伸一, 柳原 志代, 稲垣 仁根
    2013 年 81 巻 4 号 p. 369-375
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,狭小な湿原における地表面の乾湿状態に影響を与える蒸発散量について検討するために,局所的な微気象環境を反映する蒸発計を用いて蒸発量を観測し,その特性を考慮して考察を行った.宮崎県川南町の川南湿原植物群落にて蒸発計蒸発量の多点観測を実施した結果,蒸発計蒸発量の地点による差異は設置地点の日射量の到達具合,地表面の乾湿状態としての地下水位の高さに影響を受けていることが示された.そこで,蒸発散量と蒸発計蒸発量について,日射量および地表面の乾湿との関係性を整理し,観測値を考察したところ,川南湿原の蒸発計蒸発量の分布は補完関係に沿った形で現れていることが示唆された.加えて日当たりが良く地下水の高い湿原の蒸発散量を示唆する値を得ることができた.
  • 西村 眞一, 平松 研, 大西 健夫, 吉山 浩平
    2013 年 81 巻 4 号 p. 377-383
    発行日: 2013/08/25
    公開日: 2014/08/25
    ジャーナル フリー
    水圧破砕の原因となる亀裂の発生条件を検討するうえで,築堤材や基礎部分の引張側の強度特性を知ることは重要である.硬い岩などでは円柱供試体の両端をチャックで固定し引張力を直接作用させることができるが,岩に比べ強度が小さい粘性土においては同様の方法を用いることはできない.そこで,I字形に成形した平板状供試体の中央の一部を矩形にくり抜くことにより,応力がほぼ均等に作用する部分を持つ供試体形状を有限要素法により検討した.さらに火山灰質粘性土でその供試体を作成し,ひずみの測定にデジタルカメラによる画像計測を用いた直接引張試験により伸びひずみを測定した.その結果,強度の弱い土においても直接引張試験による連続的な応力とひずみの測定を可能とした.
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