農業農村工学会論文集
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83 巻 , 1 号
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研究論文
  • 大堀 忠至, 飯田 俊彰, 久保 成隆
    2015 年 83 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    この研究は,再現期間が200年,500年といった極めて大きな確率水文量の推定精度を向上することを目的に,気象庁の気象観測所のうち83箇所の年最大日雨量を用いて解析を行ったものである.一般化極値分布関数の3つの母数のうち形状母数と呼ばれる母数kの値は83観測所のうち71箇所で-0.2~0.0の範囲にあり,地域ごとにあるいは日本全域において一定値に収束する傾向にあることを見出した.また母数kを固定することにより,大半の観測所で一般化極値分布関数が,適合性に優れ安定性も実用上許容できる範囲に収まることが判明した.これにより,資料数が十分でない観測所においても,母数kの値に地域の代表値あるいは全域代表値(k=-0.1)を用いることにより,今までより高い精度で確率水文量を推定することが可能となった.
  • 加藤 千尋, 西村 拓
    2015 年 83 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,降水量に関する気候モデル予測値を,気候変動下の農地土壌水分移動予測計算に適する,日単位よりも細かい時間分解能に合理的にダウンスケールする手法を検討した.一般に気候モデル予測値は月単位として出力され,時間分解能の細密化はデータの変動性の増大を伴う.これに対し本研究では,weather generatorを用いることによって統計的に生じ得る複数の時系列データを生成し,増大する時間変動性を再現した.月単位の降水量予測値に対して単純に(30×24)時間で割って算出した1時間降水量予測値を土壌水分移動予測計算に用いた場合は,土壌水分予測結果は計算対象期間を通してほぼ一定であったのに対し,weather generatorを用いて時間ダウンスケーリングを施した降水量予測値を用いた場合は,将来の降水パターンの変化に伴う過湿あるいは過乾燥となる期間や頻度の変化を予測できた.
  • 黄 琬惠, 橋本 禅, 星野 敏, 九鬼 康彰
    2015 年 83 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    台湾では,2000年に土壌汚染対策に関する法律の制定と同時に,農用地土壌汚染対策事業が着手された.2010年の法改正により,従来の土壌汚染対策の不備の多くが改善された.他方,農用地の土壌汚染対策については,対策後の作付け回復が目標に位置づけられておらず,対策後に農地の長期休耕や耕作放棄の問題が生じている.本研究では,台湾国内で汚染サイトが最も多い彰化県を事例とし,対策事業後の農地利用の現状把握と,作付けの回復に影響を与える地理的要因の解明を,現地調査と地理情報の解析により試みた.その結果,(1)調査対象農地521地点のうち作付けを回復した農地は3割に達していないこと,(2)都市的土地への立地や周辺部における汚染米検出サイトの存在は,汚染対策後の作付けの回復を遅延させる傾向があること,(3)周辺に水田が多い地域では作付けが回復されやすいことが示された.
  • 茨田 匠, 井谷 昌功, 澤田 豊, 河端 俊典
    2015 年 83 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    昭和24年に土地改良法が制定されて以降,開発・造成が進められてきた農業用水の供給に関わる基幹的な用排水路の総延長は約4万5千kmにのぼる.近年,これらの施設では老朽化が進行し,更新時期を迎えているものが増加してきているため,この膨大なストックに対して機能保全を目的とした効率的な機能診断手法の構築が急務である.本研究では,これらの水路施設において,地中構造物であるパイプラインとして過半数以上使用されているダクタイル鋳鉄管を例として取り上げ,現状の診断手法と課題をとりまとめた.また,ダクタイル鋳鉄管に発生する劣化の大勢を占める腐食の形態を分析し,腐食部を模擬した試験体を作製して横波共振法による損傷検出実験を実施した.その結果,試験体に作製した模擬損傷と健全部の測定波形を比較することにより,模擬損傷部の検出が可能であることを確認した.また,測定波形のパワースペクトル量を用いて分類する劣化度評価についても考察を行い,その有効性を明らかにした.
  • 水間 啓慈, 西村 伸一, 柴田 俊文, 珠玖 隆行
    2015 年 83 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    地震や集中豪雨による農業用ため池の決壊は,下流域に大きな洪水を発生させ,農業水利施設の中で最も甚大な被害を生じさせる事象の一つである.このため,土地改良施設のリスクを評価しその機能を保全しようとする際に,ため池が決壊した場合の被害額を事前に想定することは非常に重要となる.一方,国が定める被害額算定手法は複雑であり,様々な資産データの収集・整理に多大な労力や時間を必要とする.そこで本研究では,ため池が決壊した場合の氾濫域における被害額を算定する簡易な手法を提案する.提案する手法は,対策を講ずる地区の選定時等に実際に適用できるよう容易に入手可能な資産データのみを用いることとした.3池の氾濫解析結果に提案する手法を適用し被害額を算定した.その結果,規定の方法と大差無く被害額を算定できたことから,提案する手法は有用との結論が得られた.
  • 木村 匡臣, 纐纈 光, 飯田 俊彰, 久保 成隆
    2015 年 83 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    本論文では,水田内に規則的に配置された多数の稲株の間を蛇行して流れる,田面水の平面2次元流の実用的な計算手法の確立を目標に,小さな領域を対象とした微視的な計算と,1区画の水田全体を対象とした巨視的な計算の2種類を組み合わせたモデルを提案する.前者の手法では,細かな非構造格子計算メッシュ(約1cm)を用いた有限体積法により稲株の周囲の流れ場を計算した.さらに,得られた流れ場を1m四方の領域において平均化し,巨視的に見たときの抵抗係数と流向,流速,水深との関係を明らかにした.後者の手法では,比較的粗い構造格子計算メッシュ(1m)を用いて,各メッシュでの抵抗係数を流況に応じて割り当てながら計算を行った.最後に,比較的広範囲(10m四方)の領域を対象に,2種類の手法による流れ場の計算結果を比較することにより,提案したモデルの有効性の検証を行った.
  • 國光 洋二, 中田 摂子
    2015 年 83 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    近年の公共事業費予算の削減を受け,農業農村整備資本の老朽化が懸念される.本稿では,事業種類別に農業農村整備の社会資本ストックを定量化する手法を示し,手法の適用により,資本ストック水準と将来の必要投資額を分析した.その結果,①老朽化施設の除却に関し,サドンデスと現実の施設残存状況に近いワイブル分布による除却関数について比較し,後者の方が資本ストック減少期の減少スピードが遅くなること,②全体に占める田整備資本の割合が最も大きく,他の事業種以上に資本ストックの維持が困難なこと,③将来の必要投資額が時系列的に大きく変動し,その変動はストックマネジメント施策を採用しても緩和できないこと,④田整備の必要投資額のピーク時期が都道府県毎に異なること,が明らかとなった.これらの結果から,ストックマネジメント施策に関する政策的課題を考察した.
  • 周藤 将司, 緒方 英彦, 兵頭 正浩, 土居 賢彦
    2015 年 83 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    動弾性係数の評価に用いる一次共鳴振動数をJIS基準に基づいて測定するためには,規定の形状・寸法の供試体が必要である.したがって,実構造物の動弾性係数を評価するためには,コアを採取しなければならない.本研究では,現地非破壊試験によって一次共鳴振動数の測定を行うための新たな測定方法の提案を目的として,それぞれ独立した振動発生機部と波形収録装置を同一表面に設置した測定方法の精度,実構造物に対する適用性について検討した.検討結果からは,提案した測定方法によって既存の試験機と同等の精度で一次共鳴振動数を評価することが可能であることが明らかとなった.また,本測定方法は水利構造物に特徴的な面的広がりのある壁状部材に対して有効であることが確認され,既往の測定方法と同様に内部変状を評価できる手法であることを明らかにした.
  • 井谷 昌功, 藤田 信夫, 澤田 豊, 有吉 充, 毛利 栄征, 河端 俊典
    2015 年 83 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    液状化が発生した地盤では埋設パイプラインの被害は甚大なものとなる.しかしながら,液状化地盤におけるパイプラインの挙動は未解明な部分が多く,その耐震設計手法を体系的に確立するには至っていない.特に,農業用パイプラインなどの圧力管路の曲管部では内水圧によりスラスト力が常時作用し,曲管背面の受働土圧などで安定するように設計されるが,液状化時にその抵抗力が減少することまでは考慮されていない.本研究では,液状化地盤においてスラスト力を受ける管の水平抵抗力に着目した模型実験を実施した.その結果,液状化時には管の水平変位量が大きくなり,水平抵抗力が大きく減少することがわかった.また,液状化時の水平方向地盤反力係数は飽和時の1/7から1/8に低下することが明らかとなった.
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