農業農村工学会論文集
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85 巻, 1 号
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研究論文
  • — RC管を用いたひび割れ検知能力の検証 —
    兵頭 正浩, 緒方 英彦, 石井 将幸
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/14
    ジャーナル フリー
    著者らは,埋設管の新たな耐力評価手法として内面載荷法を提案している.これまでの研究では,とう性管である塩ビ管に対して内面載荷法の有効性を証明した.そこで,本研究では,不とう性管であるRC管に対して内面載荷法を適用し,その有効性を検証する.供試管は,ひび割れを想定した切込みの溝を付与したRC管である.その結果,内面に発生した溝を検知できるだけでなく,外面に発生した溝についても検知できることを明らかにした.また,ひび割れの発生位置や深さについても考察を加えることができた.本手法の適用により新たなひび割れが発生する可能性が懸念されたが,荷重—変形量の関係および適用前後における残留変形量などの観点から,その危険性は低いことを確認した.最後に,本手法は剛性の評価であることから塩ビ管(とう性管),RC管(不とう性管)ともに評価ができると考えられた.
  • 越山 直子, 酒井 美樹, 伊藤 暢男, 中村 和正
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_7-I_14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/14
    ジャーナル フリー
    北海道雨竜郡妹背牛町の地下水位制御が可能な大区画水田圃場を対象として,湛水位および地下水位の観測を行った.無代かき湛水直播栽培,移植栽培,乾田直播栽培を行ったときの同一圃場の用水量を比較した結果,以下のことが明らかになった.1)移植栽培と直播栽培では,代かきの有無により地下水位変動の傾向が異なるが,浸透量の差は小さかった.2)用水量と有効雨量の和である供給水量は,近傍の地下水位が比較的高く,浸透量が小さいことから,栽培方式ごとの差は10~30%であった.3)直播栽培における浅水管理期の用水量は,移植栽培の代かき用水量に匹敵する.4)移植栽培と直播栽培の中干しが同時期に開始される場合,直播栽培の普及がさらに進むと,中干し後の再取水の用水需要の集中が緩和される可能性がある.
  • Pengfei ZHANG, Masateru SENGE, Kohei YOSHIYAMA, Kengo ITO, Yanyan DAI, ...
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_15-I_21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/08
    ジャーナル フリー
    This study was conducted to investigate the effects of low salinity stress on growth, yield, water use efficiency (WUE), and fruit quality of cherry tomatoes cultivated under a soilless condition. The experiment was conducted using Hydroponic Power's Pot under six salinity levels (electrical conductivity (EC): 0.78, 0.91, 1.10, 1.26, 1.41, and 1.58 dS m-1), with three pots (six plants) in a completely randomized design in each treatment. The results showed that plant fresh weight, soil-plant analysis development (SPAD) value (leaf chlorophyll), and dry weight were significantly affected by salinity stress at EC = 1.58 dS m-1. Tomato yield was significantly affected by salinity stress when EC reached 1.41 dS m-1, and was more sensitive than growth variables. Fruit quality was improved with increasing salinity. Evapotranspiration was also significantly affected by salinity stress at EC = 1.58 dS m-1. However, WUE for yield (fresh fruit) and biomass were not significantly different among salinity levels. The SPAD value (leaf chlorophyll) was the most sensitive indicator for salinity stress. The salinity threshold of the tomatoes was 1.41 dS m-1 to achieve higher fruit quality and yield by using Vegetable Life A nutrient solution.
  • — 低水管理としての意義と今後の可能性 —
    杉浦 未希子
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_23-I_28
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/08
    ジャーナル フリー
    いわゆる環境用水水利権とは, 他の水利権のような河道外での排他的使用を想定しない, 河川以外の水路等への導水による特殊水利権であり, その本質は河川法が及ばない水環境を利用した, 河川管理者による河川低水管理である.河川水に対する思潮の大きな変化を受けて登場し, 生物多様性の保全と持続可能性に価値を置く新奇性と, 豊水時に限り取水が可能であり, 3年更新で最劣後の水利権である等の特異性がある.既存の土地改良管理施設(農業用用排水路)を利用した最初期の環境用水水利権では, 水質改善(希釈)を主目的とした.同施設の管理に関する知識と経験を持つ土地改良区が, なんらかの対価を受け取りつつ関与していくことは, 初期投資や管理コストを抑えながら本来の意義を発揮させうるという意味で, 水利権者である地方自治体にとっても魅力のある選択肢のひとつとなるだろう.
  • 小野 耕平, 横田 木綿, 井谷 昌功, 澤田 豊, 河端 俊典
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_29-I_35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
    地震動により液状化が生じると, 地中構造物は安定性を著しく損なう.特に, 農業用圧力管路屈曲部においては, 内水圧に応じたスラスト力が常時作用していることから, 液状化による管路周辺地盤の抵抗力の低下は管体の破損に繋がる.液状化を考慮した耐震設計手法が確立されていない現状から, 液状化時における埋設管の変位挙動と水平抵抗力の関係解明が求められている.本研究では, 異なる動水勾配下の砂質地盤内で模型管の水平載荷実験を実施し, 管の移動速度が水平抵抗力に与える影響について検討した.実験結果から, 水平抵抗力は初期有効応力に応じて異なる速度依存性を示すことがわかった.飽和地盤では, 管の移動速度の増加に伴い, 管側方受働側地盤の過剰間隙水圧が急激に増加し, 水平抵抗力が低下した.一方, 液状化地盤では, 移動速度に比例して水平抵抗力が増加することが明らかとなった.
  • 齋藤 四海智, 先崎 悠介, 米澤 千夏, 千葉 克己, 神宮字 寛
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_37-I_46
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, アキアカネ保全に向けた中干し実施日の推定を行った.まず, アキアカネの卵と幼虫の発育ゼロ点と有効積算温度を実験的に明らかにした.卵の発育ゼロ点と有効積算温度は, 入水時期ごとに早期湛水条件では発育ゼロ点5.7℃, 有効積算温度55.2日度, 中期湛水条件では発育ゼロ点5.6℃, 有効積算温度36.8日度, 晩期湛水条件では発育ゼロ点6.8℃, 有効積算温度21.7日度となった.幼虫では, 発育ゼロ点が5.6℃, 有効積算温度が909.1日度を示した.そして, 宮城県内の水田地帯を1kmメッシュに分割し, 水田水温を推定した.この水田水温と卵と幼虫の発育ゼロ点および有効積算温度から, 孵化日および10齢到達日を推定した.孵化予測日と10齢到達予測日は地図化し, 宮城県内で行われている現行の中干し開始日と比較した.以上の結果, 現在行われている中干し開始日は, アキアカネ幼虫の10齢到達前に実施されていると推察された.そして10齢到達予測日から, アキアカネの保全に考慮した中干し延期日を提案した.
  • 岡島 賢治, 西脇 祥子
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_47-I_54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/11
    ジャーナル フリー
    棚田・段畑の景観をその地域ならではのものとして特徴付けている法面には, 土羽と石積みの種別があるが, それぞれの法面は, 地域によって成り立ちが異なっている.これらの成り立ちを知ることは, 地域景観の保全において有効な情報となり, 圃場整備事業などへの活用が期待される.本研究では表層地質と法面の種別の関連性を定量的に示すことを目的とし, 全国464地区の棚田・段畑地区を対象に, 岩石区分, 地質時代区分から分析を行った.その結果, 火成岩では石積みが卓越するものの, 火山岩類では新生代第四期の後期更新世より新しい岩石では100%土羽となり, 深成岩類では風化しやすい珪長質深成岩類で27%が土羽の地区となることが分かった.堆積岩類では, 年代によってほぼ明確に土羽と石積みが分かれ, 新生代古第三紀より新しい地質で90%が土羽, 新生代古第三紀より古い岩石で97%が石積みとなった.また, 付加コンプレックス, 変成岩類ではほぼ石積みとなる.
  • 大森 圭祐, 小林 幹佳, 足立 泰久
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_55-I_62
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/11
    ジャーナル フリー
    中国新疆ウイグル自治区北部地域に位置する遊牧民定住村の灌漑農地で発生している塩類集積地3箇所を対象に, 現地調査ならびに灌漑用水と地下水の分析および標高の異なる塩類集積土壌の物理化学性の分析を行い, 塩類土壌の特徴と塩類集積メカニズムを検討した.調査地は年間降雨量に対しパン蒸発計による年蒸発量が約10倍となる乾燥地域であり, 地表面から深さ1 m未満の地下水に含まれる塩類が蒸発に伴い下層から地表近傍へ移動し析出していることが示唆された.塩類土壌は標高の高さと粘土含有量の低い順に塩性土壌と塩性ソーダ質土壌に分類され, 地表面に析出している塩の大半は溶解度の高い硫酸ナトリウムであることが確認された.
  • — 事例分析に基づいた内発的農地保全という試論の展開 —
    中島 正裕
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_63-I_75
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー
    将来的な農地の規模拡大や集約化が見込めない中山間地域の現場では, その実態に即した農地保全策が求められている.本研究では, 長野県富士見町御射山神戸地区の約18haの条件不利農地を対象に農地利用者の営農, 農地利用の変遷と獣害対策, 農地保全の新たな担い手の実態を解明した.そして, これらの調査結果に基づき同地区の農地保全戦略として「内発的農地保全」を提案し, その具現化に向けた実践支援のあり方を座談会の開催を通して検討した.座談会は3部構成で設計し, 各部の主旨に応じて調査結果と内発的農地保全に向けた6つの実践的課題を提示して情報共有と将来の意向に関する意見交換を図った.これにより住民の内発力の醸成につながる効果が確認できたとともに, 実践的課題の解決に着手する前提として地域マネジメント組織の設立など2つの実践支援の必要性を指摘した.
  • 川上 昭彦, 浅野 勇, 森 充広, 川邉 翔平, 渡嘉敷 勝
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_77-I_84
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー
    無機系表面被覆工の定量的な摩耗量の測定手法として型どりゲージを用いた簡易的な測定手法を提案する.本手法では, 標点としてアンカーを被覆面に2箇所設置し, 標点を結んだ基準線と, 型どりゲージにより記録した摩耗面に囲まれた面積を画像処理により求め, その面積を基線区間で割ることにより被覆面までの平均距離を算定する.測定に影響を及ぼす要因を明らかにするとともに, 表面被覆された水路での現地測定を行い, 高精度な測定が可能なレーザ距離計を用いた摩耗測定と型どりゲージによる測定結果を比較した.その結果, 本手法は, 表面の凹凸が小さい表面被覆された水路の摩耗測定に関しては, レーザ距離計の測定値に対する差も小さく, 簡易的な測定手法として有効であることを確認した.現場測定結果から推定した1回測定の精度は, レーザ測定値±0.4mmである.
  • ― タイ国東北部の事例 ―
    星川 圭介, Patarapong KROEKSAKUL
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_85-I_92
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では天水稲作が卓越するタイ国東北部を対象に,1950年代と2000年代の水田や畑地の空間分布をそれぞれ水文条件の空間分布と比較し,農業土地利用の変化と水文条件の関係とを分析した.水田や畑地の分布については上記2時点の地形図から抽出し,水文条件については合成開口レーダによる後方散乱係数の季節変化パタンに基づいて対象地域の農地を湿潤・乾燥・氾濫の3つに分類したものを用いた.結果として水田拡大が湿潤な土地から非冠水の乾いた土地に向けて進む全体的傾向が確認される一方で,水文条件の空間的混在度や人口の偏在,さらに氾濫常襲地における治水の進展などの要素を背景として,非冠水の水田の比率やその増加速度に大きなばらつきが存在することが示された.
  • Nguyen Dinh Giang NAM, Akira GOTO, Kazutoshi OSAWA
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_93-I_103
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    This study aims at establishing a groundwater model for the 100-meter aquifer of a coastal area of the Mekong Delta, and applying it to simulation of the groundwater heads under possible changes in rainfall and groundwater management in the future. The model, iMOD, was calibrated using historical data of groundwater level and model input requirements. It was confirmed that the calibrated model could work properly to reproduce the distribution of the groundwater table and its response. For scenario setting, several cases of future rainfall conditions for the period from 2015 to 2035 were set up based on the downscaled output from the global climate model with bias correction. For each of the combinations of climatic conditions and pumpage, model simulation was carried out to estimate groundwater tables. The results showed: (1) If the groundwater pumping stays at the same level as present, groundwater heads can maintain the present level under increased recharge from the future rainfall, whereas slight decline in groundwater heads would continue under the current rainfall; (2) If the groundwater pumping increases along with increasing water demand, significant consecutive drawdown of groundwater tables will happen. Particularly when considering some reduction in recharge due to rainfall loss and uncertainty of rainfall, groundwater depletion might be more serious; (3) Reduction in pumping rate was found to contribute much for recovery of groundwater.
  • 李 相潤, 石井 敦, 申 文浩, 谷口智之 , 佐藤 政良
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_105-I_115
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー
    韓国を対象に, 近代前期における主要河川流域の河川灌漑田の利水安全度を求め, 日本と比較してその開発過程の特性を考察した.河川灌漑田の利水安全度は, 主要河川の生起確率ごとの夏期渇水時流量によって灌漑可能な水田面積を算定し, これと文献資料より得た実際の韓国近代前期の河川灌漑田面積とを比較して求めた.結果として以下が明らかになった.1)韓国の主要河川の夏期渇水時比流量は日本と比べ極めて小さい, 2)漢江を除き水不足の年発生確率が40~90 %で利水安全度が低く, 近代前期で夏期渇水時流量をほぼ使いきって灌漑田が開発されていた, 3)漢江の利水安全度が高いのは, 治水等の問題で開発できる水田が限られたためと推察された, 4)利水安全度が低い灌漑田と天水田が多かった背景要因として, コメ需要に対する安定的な夏期渇水時流量の少なさが推察された.
  • Noriko IRIE, Naoko KAWAHARA
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_117-I_127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    Photovoltaic power (PV) facilities installed above cultivated farmland (hereafter, farming PV) have the potential to revitalise farming and rural areas. This study analysed local people's preferences and evaluations regarding potential positive as well as negative social and environmental effects caused by farming PV installation by utilising statistical methods, and implications were obtained regarding the technological development of and policies pertaining to farming PVs. Such implications were obtained not from the viewpoint of technological appropriateness but from that of social acceptability. Installation of farming PVs could be better accepted not in rural areas but on farming plots in residential and commercial areas. The needs for developing PV panels, which prevent glares caused by the reflection of sunlight, are not substantial compared to those pertaining to general PV development. The social demand for scenery-compatible farming PVs is not that large. However, it could be worthwhile to design farming PV systems that are more pleasing to the eye, including farming plots.
  • 坂田 賢, 大野 智史, 加藤 仁, 鈴木 克拓, 横山 浩
    2017 年 85 巻 1 号 p. I_129-I_135
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    地下水位制御システムは政策目標として水田への導入が推進されFOEASはその一手法である.FOEASによる栽培上の効果や土壌水分変化に関する研究が転作作物を対象にみられるが, 直播栽培などの稲作を対象とした研究は少ない.本研究では現場透水試験により地下灌漑が可能であることと, 積雪前の均平作業で十分な均平精度が得られたFOEAS圃場において, 不耕起V溝直播栽培の生育初期に地下灌漑を実施し, 視覚的に灌漑の広がりを捉えるとともに, 地下水位変化および水収支を測定した.その結果, 地下灌漑では圃場全体を均一に灌漑できる一方で, 水位制御器内の水位設定や暗渠からの距離により, 灌漑開始直後は地下水位の上昇傾向が異なることが示された.また, 水位制御器の水位設定を田面下に設定すると, 水位管理器がない圃場では直接圃場外に流出する用水が増えることを留意点として示した.
研究報文
  • 坂田 賢, 谷本 岳, 大野 智史, 鈴木 克拓
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_1-II_6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/08
    ジャーナル フリー
    北陸地方では重粘土水田が広く分布し, 排水性の向上は重要な課題である.地下水位制御システム(FOEAS)は排水を制御する機能を備えているが, 疎水材や弾丸暗渠の経年劣化による排水性の低下が懸念される.本研究では新潟県燕市のFOEAS圃場において, 現場透水試験と地下水位測定によりFOEAS整備で施工された弾丸暗渠の排水性を評価した.現場透水試験から, 踏圧等により弾丸暗渠のベーシックインテークレートの低下がみられるものの, FOEAS整備の際に施工され9~11年が経過した弾丸暗渠の排水性は, 比較のために再施工した弾丸暗渠と同程度に良好であった.また, 降水時の地下水位変化から, FOEAS施工時の弾丸暗渠は, 本暗渠および再施工した弾丸暗渠と同等の排水性を維持しており, 汎用農地に求められる計画暗渠排水量の標準値を満たしていると考えられる.
  • 浪平 篤, 中田 達, 中嶋 成樹, 重盛 玲二, 樽屋 啓之
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_7-II_15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー
    長野県の梓川右岸地区では, 水路床高の大きく異なる急勾配の無圧トンネルを合流させて暗渠に放流する合流施設を整備しなければならないが, 現場条件から既存の合流施設を適用できない.そこで, 下水道事業で整備される多段自由落下式高落差工に倣い, 3段のステップによって支線からの流れを十分に減勢させながら落下させた後に, 本線の流れに合流させる新たな合流施設を考案し, その水理模型実験を行った.減勢効果は, 支線からの流れの影響を受けて本線からの流れが阻害されることにより本線内の頂部に頻繁に衝突する大きな波立ちが発生するか否かと, 下段ステップからの流れが合流施設の下流側壁面に衝突するか否かに着目することで評価できた.
  • 川邉 翔平, 浅野 勇, 森 充広, 川上 昭彦
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_17-II_23
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/05
    ジャーナル フリー
    農業用コンクリート開水路の補修工法として,無機系表面被覆工が多く施工されている.しかし,無機系表面被覆工の中性化深さの供用環境による差や空間的なばらつきについては明らかにされていない.これらに関する知見は,今後の中性化深さのモニタリングに際する調査位置や調査点数を決定するための重要な基礎データとなる.本研究では,施工後約3年経過した実水路の無機系表面被覆工を対象に,中性化深さの多点調査を行った.その結果,中性化深さは正規分布を仮定でき,その変動係数は20-40%であること,水路側壁の気中部と水中部では,気中部の中性化深さが大きいこと,などが示された.また,本調査結果に基づくと,中性化深さを信頼度95%,誤差20%で得る場合には,サンプル数を9以上とする必要があると推定された.
  • 池浦 弘, KEOKHAMPHUI Khaykeo, 藤巻 晴行, 安西 俊彦, INKHAMSENG Somphone
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_25-II_33
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
    ラオス国ビエンチャン県北西部農山村の未耕作水田において,乾季の畑作利用を目的に播種時に残存する土壌水分の有効性と灌漑の効果を検討した.無灌漑のダイズ栽培では,土壌水分は播種後約3週間で生長阻害水分点まで減少し,ダイズの収量は低く,残存土壌水分だけでは作物栽培に不十分であった.土壌水分の変化から試算された用水量,間断日数を適用した翌年の灌漑栽培試験では,ダイズ収量はラオスの平均単収の約1/6であった.試算した用水量は総量では蒸発散量とほぼ一致したが,栽培中期は蒸発散量を下回った.また,灌漑時に根群域の土壌水分が圃場容水量まで回復しない一方で,灌漑後に地下水位が上昇を示すこともあった.圃場は粘性土であり,その表面には亀裂が発達しており,灌漑強度が強い場合には亀裂を通じた選択流により浸透損失が増加し,灌漑の効果を低下させることが示唆された.
  • 山岡 賢, 中村 真人, 折立 文子
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_35-II_44
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本報では,メタン発酵施設(「施設」)の建設後,農地での消化液の散布・施用量が施設計画で想定された消化液の生成量と年間収支が取れるようになるまでの期間(「立上げ期間」)の施設での原料の受入量の設定などの運営計画の策定を検討した.検討に当たっては,施設での物質収支を年単位及び日単位で算定する評価ツールを作成して試算を行った.試算によると,施設の運転開始時期(月日)は,当該年の農地への消化液の散布・施用開始前であれば,消化液の散布・施用を当該年に実施でき有利と考えられた.一方,立上げ期間に8年と長期間を想定した試算では,運転開始数年間のメタン発酵槽のCODCr容積負荷が設計時の値の半分未満となった.このケースでは,メタン発酵槽を2槽に分けて消化液の液肥利用の普及に応じて,1槽ずつ整備するような対応が示唆された.
  • 佐々木 薫, 秦 二朗, 諸泉 利嗣
    2017 年 85 巻 1 号 p. II_45-II_52
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    高速道路では, 冬期に路面の凍結を防止するために塩化ナトリウムを主成分とする凍結防止剤が散布されている.凍結防止剤は, 車両等によって道路沿線に飛散し, その濃度に応じて植物への生育阻害をもたらす恐れがある.本研究では, この塩化ナトリウムが農作物や農地土壌及び農業用水へ影響を与える閾値を整理し, そして, 高速道路沿線の農地土壌への塩化ナトリウムの飛散浸透量や農業用水への流入量を調査し, 農地土壌や農業用水に与える影響を評価した.その結果, 道路端1.5m畦部において塩素濃度が90mg·kg-1と閾値400mg·kg-1の23%, 交換性ナトリウム飽和度が16.3%と閾値20%の81.5%であった.また, 農業用水は, 農繁期で電気伝導度が0.15dS·m-1と閾値0.3dS·m-1の50%であった.何れも, 閾値以下であり, 農地土壌や農業用水への影響は極めて少ないことが明らかになった.
研究ノート
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