農業農村工学会論文集
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86 巻 , 2 号
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研究論文
  • 中村 真人, 日高 平, 山岡 賢, 折立 文子
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_139-I_146
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/30
    ジャーナル フリー

    発酵温度が通常(35℃)より低い低温メタン発酵と消化液の液肥利用は,エネルギー効率を改善できる有望な技術であるが,低温条件が消化液の組成や肥料特性に及ぼす影響は未解明である.そこで本研究では,室内培養試験により,脱水汚泥を原料とする低温メタン発酵消化液の水田土壌施用後のメタン発生・窒素無機化特性を調査した.その結果,発酵温度が15℃の条件ではメタン発酵過程で未分解の成分が他の条件より多いため,相対的に土壌でのメタン発生量が多くなることが示された.一方,発酵温度が25℃以上であれば,分解が十分に進み,土壌でのメタン発生量は相対的に少なかった.また,消化液中の有機態窒素の無機化に伴うアンモニア態窒素の増加割合は,発酵温度に関わらず少なかった(3~13%)ことから,消化液のアンモニア態窒素分を考慮して施肥設計すればよいことが示された.

  • 川上 昭彦, 浅野 勇, 森 充広, 川邉 翔平, 渡嘉敷 勝
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_147-I_153
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    提案手法は,ステンレス製のアンカーを農業用水路表面に2箇所設置し,そのアンカーを基準としてそこから表面までの距離を測る手法である.2つの標点上に測定板を置き,測定板から標点および表面までの距離を測り,表面までの平均距離を求める.異なる時点での平均距離の差分が,ある期間に進行した平均的な摩耗深さを表す.室内実験および表面被覆された水路を対象にレーザ距離計による計測値との比較を行い,各要因が測定値誤差に与える影響を検証した.その結果,デプスゲージを用いた摩耗測定値の誤差は,表面の凹凸の小さい表面被覆水路で1回の測定に関してレーザ計測値±0.4mmと推定された.さらに,繰り返し測定3回の平均値を用いた場合の測定精度はレーザ計測値±0.3mm程度に改善する.

  • 國光 洋二, 上田 達己, 沖山 充, 徳永 澄憲, 石川 良文
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_155-I_161
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,施設の機能診断と改修・補修による老朽化施設の長寿命化を目的とする多面的機能支払交付金が,関連産業の需要を通じて地域経済に波及する効果を定量的に評価する.住民自ら整備を行う場合(自主施工)と建設業者への工事発注による場合(建設補修)の交付金支出内訳データを用いて,47都道府県の地域間産業連関表にもとづく産業連関分析を適用して後方連関効果と所得連関効果を算定した.その結果,自主施工型の方が生産波及効果の総額は小さいが,活動実施市町村内での効果発現率が高いこと,付加価値誘発額のうち実施市町村内での発現率は,交付金支出額の30~32%(自主施工)及び27%(建設補修)になることが明らかとなった.

  • 皆川 裕樹, 工藤 亮治, 増本 隆夫
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_163-I_173
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/13
    ジャーナル フリー

    複数の気候シナリオの不確実性を反映させた豪雨の模擬発生法を提案した.まず収集した気候シナリオ毎に,豪雨の発生頻度および雨量強度に見る豪雨特性を明らかにした.豪雨特性の各要素は気候シナリオ毎に異なる値を示すため,これを気候予測の不確実性と位置付けた.次に,抽出した特性値の平均と分散から出現頻度を正規分布で定義し,この分布から任意に得た値を組み合わせて不確実性を反映させた多数の疑似気候シナリオを生成させた.生成させた各々の疑似シナリオ下で豪雨群を模擬発生させた結果,将来は豪雨の発生頻度と雨量強度が共に増加する傾向が現れ,さらにその出現分布を確率的に評価することができた.本手法は,水害に加え土砂災害や貯水池危険度評価など,様々な分野における気候変動リスクとその不確実性評価のための入力値の発生手法として活用が期待される.

  • 皆川 裕樹, 池山 和美, 北川 巌, 増本 隆夫
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_175-I_184
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/13
    ジャーナル フリー

    水田域における豪雨排水に関するリスクとその不確実性の評価法を開発した.そこでは,複数の気候シナリオから抽出した豪雨特性の不確実性を確率雨量の算定に反映させ,得られた雨量値の強度分布を排水解析の入力に用いる.結果より,現在から将来の各期間において河川水位に見る洪水発生確率と水稲被害量で表す水田被害リスクの分布を得た.この分布をリスクの不確実性と定義し時系列で比較すると,将来はピーク位置や平均値が移動しており,その傾向は期間が将来になるほど,高位のRCPシナリオほど強く表れていた.さらに期待ショートフォールを指標とすることでリスク増加を定量的に評価できた.本手法によりリスクの不確実性を定量的に評価でき,防災のために喫緊に必要となる水利施設の整備規模や,中・長期的に達成すべき目標を設定できるなど,気候変動対応策の開発に役立つ情報が得られる.

  • 宮島 真理子, 吉田 武郎, 森田 孝治, 村山 香, 名和 規夫, 増本 隆夫
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_185-I_195
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/02
    ジャーナル フリー

    取水・還元が連続した鬼怒川流域において,これまで主に本川の観測点で行われてきた分布型水循環モデルの用水循環過程の検証を,取水・還元の影響がより強く現れる支川の観測点でも行った.検証の際,現行の汎用的なモデルに加え,貯水池運用で2段階,取水で4段階,用水配分で1段階の計8段階で水利施設運用に関する制約条件を段階的に与え,各段階での流量計算精度の変化から必要な制約条件をスクリーニングした.ダム操作規則や維持流量等の制約条件の貯水池運用モデルへの反映は,本川上の流量観測点の計算精度の向上に寄与した.また,モデル上の取水時期・量の設定により,本川中下流・支川の観測点での計算精度が段階的に改善された.これらの結果から,農業水利用の影響下にある流域の水循環モデル化に不可欠な情報を明らかにするとともに,現行モデルの改良の方向性を示した.

  • 長岡 誠也, 岡島 賢治, 伊藤 良栄, RAIHANUL Islam Mohammad, 渡部 健, 伊藤 哲
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_197-I_204
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/02
    ジャーナル フリー

    農業用水路壁の粗さを定量的に評価する手法として,空中超音波法は超音波の壁面からの反射波の最大振れ幅を計測することで面的な計測を可能にしている.風速による影響を検討するために,風洞装置により風を発生させ,最大振れ幅を風速毎に計測し検討を行った.風速の増加にともない最大振れ幅は減衰を示し,無風時から風速10m/sの最大振れ幅の減衰率を計算すると,滑面は4.4%,粗面(算術平均粗さRa: 0.32mm)は7.2%,粗面(Ra: 1.04mm)は11.1%となった.算術平均粗さを推定した結果,風速4m/s以下のとき算術平均粗さへの影響は小さかった.風速8m/sのとき算術平均粗さを0.1mm程度大きく推定した.反射波における理論式の提案と実測値との比較は,滑面では理論値と実測値は比較的近い値を示した.粗面では理論値に比べ実測値が散乱波の影響で小さくなる可能性があることがわかった.

  • 武山 絵美, 谷川 沙希, 才野 友輝
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_205-I_215
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

    都市計画法に基づく既存の線引きを廃止した西条市を対象に, 線引き廃止が農地転用に与える影響を検討した.その結果, 線引き廃止の影響は, 旧市街化調整区域内の2種農地に最も顕著に表れ, 賃借権設定による大規模な店舗転用や, 所有権移転による小規模分散型の住宅転用が増加した.共同住宅等への転用は, 農地を農外利用することで継続的に収入を得たい供給側(農地所有者)主体の転用であり, 農村移住者の需要に合致しない可能性が示唆された.また, 農用地区域のうち除外後に2種農地となる農地は多様な目的に転用されていた.都市計画法による土地利用規制がかからない地方都市周辺等では, 農振法・農地法が農地の生産性のみを判断材料とするのではなく, ゾーニングに基づき転用位置および目的制限を行うことができるよう, 法制度の改善が必要であることを指摘した.

  • 浪平 篤, 光安 麻里恵, 髙木 強治
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_217-I_223
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル 認証あり

    剛性モデルによるパイプラインの水理解析に対して, 非圧縮性流れの数値解析方法の一つであるHSMAC法の概念を適用し, 管路の運動方程式における圧力項, および, 分岐点の連続式のみを陰的に扱い, 他を陽的に扱う方法を提案した.この方法では, 時間発展を記述する基礎方程式が存在しない分岐点の圧力水頭の消去, 分岐点と接続する管路の流速のうち従属変数とみなせる流速の消去, 基礎方程式の再構成, といった既存の方法では必要不可欠である前処理を行わず, 管路の流速と節点の圧力水頭を同時に解くことが可能である.分岐点や管網を含み, 圧力水頭の非線形関数となる給水量が与えられている配水系統のベンチマークとなる既往の解析事例に適用した結果, 本方法は剛性モデルによるパイプラインの水理解析方法として十分な精度, 安定性, 効率を有することが確認された.

  • 中島 直久, 野田 康太朗, 守山 拓弥, 森 晃, 渡部 恵司, 田村 孝浩
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_225-I_234
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル 認証あり

    春季におけるトウキョウダルマガエルの生息場保全策の検討に向けて, 本種が冬眠から目覚めて地上へ這い出す際に残す這い出し穴の形状を特定し, ニラ畑と裸地の2圃場において這い出しの時期と, その時の地温および降水量との関連を調べた.対象地の這い出しは4月中旬~5月下旬に行われ, 2山のピークが確認された.調査日間の日平均這い出し穴数, 日最高・最低地温, 期間最大連続雨量を指標とすると, 這い出しは日最高地温が12~15℃の範囲で開始した.両圃場において日平均這い出し穴数と期間最大連続雨量との間に正の相関関係が認められた.これらの結果から, 本種は日最低地温が特定の温度以上において降雨がある場合に, 越冬を終了して地上へ這い出すと推測された.

  • 鈴木 翔, 若杉 晃介
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_235-I_241
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/21
    ジャーナル フリー

    本研究は, これまで大幅な省力がされていない水稲栽培の水管理労力を削減するために開発された遠隔制御または自動制御が可能な圃場水管理システムを導入した圃場を対象として, 圃場水管理システムが水稲栽培にかかる用水量と水管理労力に与える影響の把握を行った.その結果, 圃場水管理システムによる自動制御を行うことで人力の水管理に比べて高頻度な管理を行い, 降雨時以外は設定した水位を安定的に維持した.また人力と比較して, かけ流しを防ぐことで用水量は5割程度となり, 水管理にかかる労力を約85%削減した.圃場水管理システムを用いることによる収量への影響は見られなかった.このことから, 圃場水管理システムを導入することで水稲の収量を維持したまま, 十分な節水・省力効果を得ることが可能であることを示した.

  • 李 雨桐, 山岡 賢, 阿部 真己, 畑 恭子, 中野 拓治
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_243-I_253
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究は, 農業集落排水施設から得られた実測データに基づき, 農業集落排水施設の流入汚水量の実態把握と変動要因の検討を通じて, 設計諸元の定量化と設定について考察した.日流入汚水量には, 土地利用・立地条件が関与しており, 処理区の土地利用・立地条件を水道水量と降水量に加味することで, これらを説明変数とする重回帰推定式から日流入汚水量を精度よく推定できることを明らかにできた.時間流入汚水量の日間変動には, 管路延長, 供用率, 流入人口率が関与しており, 時間水量日変動幅とピーク係数はこれらを説明変数とする重回帰推定式から設計基準値を設定できることが示唆された.

  • 遠藤 明, 川崎 通夫, 渋谷 恵美子, 加藤 千尋, 佐々木 長市
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_255-I_263
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/21
    ジャーナル フリー

    本研究は, 国営屏風山開拓建設事業により青森県屏風山地域に造成された大規模畑作圃場において, ナガイモの塊茎障害の発生因子を特定することを最終的な目標としている.そこで, 多灌水が土壌中の水溶性イオンの時空間的な動態に及ぼす影響を明らかにするため, ナガイモ作付け圃場に, 対照区と多灌水処理区の各試験区を設置した.深暗渠が敷設された当地域の車力工区のナガイモ作付け圃場における両試験区の深度10, 30, 50, 70, 100および150 cmの土壌間隙水を採取した.そして, ナガイモ生育期間中における各深度の土壌間隙水中の水溶性イオン種成分, pH, ECの各水質項目を測定した.その結果, 降水および灌水パターンに応じた物質の溶脱と集積を受け, 対照区では8月中~下旬の深度10~30 cmにおいて100 mg/L以上のNO3-含量で推移し, 多灌水処理区では8月下旬~9月上旬の深度50 cm付近を中心に100 mg/L以上のNO3-含量にのぼることがわかった.以上のことから, ナガイモ生育期間中の降水および灌水パターンに対応する土壌中に存在する物質の時空間的動態の詳細が明らかになった.

  • 廣瀬 裕一, 後藤 眞宏, 小林 久
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_265-I_274
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/21
    ジャーナル 認証あり

    直径2,000mmの揚水水車を用いた実規模の水理模型実験を行い, 揚水性能を検討した.その結果, 揚水時に発生する損失の主な要因は筒の設置角度による損失と汲み上げた水を樋に注水する際の損失で, これらの影響が軽微な場合は筒の容積の70~80%が揚水され, 日揚水量は本論文での実験条件ではおよそ50~150m3/dであった.損失を軽微にするためには, 水受板の水没深と周速度に留意して筒の寸法を決定し, その筒の最適設置角度で揚水水車に設置することが有効である.揚水水車の回転の有無は, 揚水水車の設置で発生する堰上げ量が関係し, 設置する筒の容積が大きいほど回転に必要な堰上げ量が増し, 水受板の水没面積が大きいほど揚水水車の回転に必要な堰上げ量が得やすいことが明らかになった.以上の特性を考慮して揚水水車の導入の可否を判断できるフローチャートを作成した.

  • 坂口 敦, 村田 資治, 清水 裕太, 望月 秀俊
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_275-I_280
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/21
    ジャーナル 認証あり

    水田の高度利用化に伴い, 水田におけるムギ作やダイズ作の生育初期に生ずる湿害が問題となっている.その対策として, 暗渠排水施設のない地区, 特に中山間地域においてはチゼルプラウを使用して耕起する事で圃場の排水性を高める栽培方法が試行されている.なお, 高度利用化においては輪作体系内に水稲作が含まれており耕盤を残す必要があるため, 水田の畑地転換とは異なる.本研究においてはチゼルプラウ耕実施区と慣行区において根域深度の土壌水の吸引圧を観測し, チゼルプラウ耕が畝の土壌水の吸引圧を比較的高く維持し, 湿害緩和技術となりうる事を明らかにした.

  • 島 武男, 濱 武英, 久保田 富次郎, 吉永 育生
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_281-I_290
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル 認証あり

    熊本地域においては上水の水源として地下水が利用されており,地下水保全が重要な課題である.白川中流域に位置する大菊土地改良区の受益圃場からの地下浸透水は重要な地下水涵養源であり,その涵養量を増やすために,休閑期の転作田への湛水が行われている.これにより水稲作のみに対応した水利用から水田湛水事業に対応する新たな水利用となったが,その水利用実態は明らかでない.そこで,現地調査,数値計算,GISを用いて水利用実態を明らかにした.その結果,水利システムの中流部に減水深が大きい圃場が分布していること,6~8月に水利用量が多いことが分かった.また,上流部の受益圃場では節水的水利用が行われていることが分かった.このようにGISを活用して水利用の現状を把握することは,新たな水利用に対応するために有効である.

  • 山下 祐司, 梅本 陽平, 足立 泰久
    2018 年 86 巻 2 号 p. I_291-I_296
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    合成イモゴライトに対するフミン酸の吸着特性および吸着複合体で成形した粘土薄膜の濡れ性を様々なpH条件において評価した.pH 4.5-11.0の範囲で, イモゴライトに対するフミン酸の吸着量を得た.その結果, pHが高いほど最大吸着量が低くなることが示された.この最大吸着量のpH依存性は, pH変化にともなうイモゴライトおよびフミン酸の電荷量の変化によるものと考えられた.イモゴライトとフミン酸の混合液を濾過膜上に展開して乾燥させることで得られる吸着複合体膜に対する水の接触角を吸着実験と同様のpH条件で測定した.フミン酸を含まないイモゴライト薄膜の接触角はpHによらず約28ºであった.吸着複合体膜については, フミン酸吸着量が増加するほど接触角は増大したが, その増分はpHが高いほど小さかった.このことから, イモゴライト表面にフミン酸が吸着されるときの溶液条件に起因するフミン酸の電荷状態が吸着複合体膜の濡れ性を決定づけることが明らかとなった.

研究報文
  • 山岡 賢, 中村 真人, 折立 文子
    2018 年 86 巻 2 号 p. II_55-II_62
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/29
    ジャーナル フリー

    本報では,実験室内で実施する小規模なメタン発酵実験で生成されるバイオガスの体積を容易に測定するため,測定器を試作した.試作した測定器は2種類で,いずれも水上置換法をベースとし測定するガスの圧力を水位で大気圧であることを確認して測定する.試作器1は約100mLまで,試作器2は約450mLまで,それぞれ1回にガスの体積を測定可能である.シリンジで定量のガスを注入して同体積を試作器で測定し,測定精度を検証した.試作器1では,測定値の平均値は真値から-3.0~-4.3%のズレが生じ,標準偏差は平均値の0.3~0.8%であった.試作器2では,測定値の平均値は真値から-2.7~-3.2%のズレが生じ,標準偏差は平均値の0.3~0.7%であった.試作器1及び2は,発酵条件の異なったケース間のバイオガス発生量の比較を行う室内実験に適用できると考えられる.

  • 常住 直人
    2018 年 86 巻 2 号 p. II_63-II_68
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/02
    ジャーナル フリー

    利水の便から河川中上流域に多い農業取水堰では,経年的な下流河床低下により堰直下に落差を生じやすい.このため堰直下が洗掘されやすく,護床工の傾斜化,流失,機能不全を来しやすく,洗掘域の拡大によりエプロン陥没など堰本体被災を起こすこともある.堰本体被災に至るような大規模洗掘は低頻度の大洪水時に生じるが,その対策に資するべく,本研究では下流河床低下が問題となる農業取水堰の現地諸元を想定して,大洪水時の堰直下洗掘メカニズム,洗掘規模をフルード相似に基づく水理実験により検討した.その結果,洗掘は,堰落下流が波状流,潜り噴流の流況を交互に繰り返し,互いの流況での洗掘域を埋め戻し合いつつ,最大洗掘深を上下動させながら漸次進行していくことが明らかとなった.この経時最大洗掘深は実験式により±10%以内の精度で推定出来た.

  • 豊満 幸雄, 柳澤 静蘭, 藤原 稔, 軸園 裕介, 木下 統
    2018 年 86 巻 2 号 p. II_69-II_75
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/05
    ジャーナル 認証あり

    2001年から2016年までの16年間の都城盆地における地下水の硝酸態窒素濃度およびその変動パターン(上昇,下降,横ばい)の度数分布の経年変化,硝酸態窒素濃度が10mg・L-1を超過したことのある測点の動向についてまとめた.地下水の硝酸態窒素濃度は,高濃度の相対度数が減少し,また変動パターンは横ばいが減少し,下降が増加した.これらのことから,都城盆地における地下水の硝酸態窒素濃度は16年間で低下したと思われる.しかし,近年5年間は多くの測点が横ばい状態であると判断された.また,地下水の硝酸態窒素濃度が10mg・L-1を超過したことのある測点の64.0%が,2016年までに10mg・L-1以下に改善していた.一方,16年の期間中ほとんど10mg・L-1超であった測点が解析対象測点の2.2%,10mg・L-1超・以下を繰り返していた測点が2.8%存在していたことが分かった.

  • 加藤 幸, 加藤 千尋, 武藤 由子, 遠藤 明, 千葉 克己, 溝口 勝
    2018 年 86 巻 2 号 p. II_77-II_83
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    青森県のリンゴ園地では, 春の農作業と農地保全の観点から, 冬から春に変わる融雪・消雪期の地温が重要な意味を有する.そこで, 本研究では冬季(11月〜4月上旬)の地温分布の特性を明らかにし, この時期の地温分布と融雪・消雪期の地温の関連を解明することを目的に7年間にわたりモニタリング調査を実施した.その結果, (1) 調査園地の冬季の地温は, 雪の断熱効果によって変動が小さく0℃以上に保たれる, (2) 調査期間中の積雪下の地温は, 上層(8cm 深)<中層(32cm 深)<下層(64cm 深)のように下層ほど高くなる場合(I型)が5年間, 上層の地温がI型に比べ高く中層の地温とほぼ同じ状態が融雪期まで継続し, 上層≒中層<下層の分布を示す年(II型)が2年間認められた, (3) II型の地温分布は, 初冬の気温が高く初雪から根雪になる期間が短い場合に生じる, ことが分かった.

  • 竹村 武士, 森 淳, 渡部 恵司, 嶺田 拓也, 小出水 規行
    2018 年 86 巻 2 号 p. II_85-II_90
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル 認証あり

    水田に生息するドジョウは鳥類等高次消費者の餌として重要でその資源量は生態系保全上の関心事項である.しかし,野外水田ではドジョウ資源量の真値は不明で,推定値やサンプリングデータの取得を含めた推定方法の検証が問題となる.本研究では野外実験水田における個体数推定を実施し,推定値および適用した方法の妥当性を検討するとともに,将来の一般利用に向け簡易的個体数推定の可能性を検討した.その結果,高密度な採捕定点の設置と個体除去およびDeLury第1モデルまたはプログラムCAPTURE-mbhモデルの適用は実用的に利用可能と考えられた.また,水田周縁部のみの採捕データを用いた個体数推定からは将来の簡易化可能性を示唆する結果が得られた.

研究ノート
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