農業農村工学会論文集
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87 巻, 2 号
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研究論文
  • 鈴木 麻里子, 松家 武樹, 横山 瑞海, 松下 晴彦
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_143-I_148
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー

    コンクリート用骨材として用いられる砕石, 砕砂の製造は, 乾式と湿式の2種類に分類され, 乾式方法で製造する際には多量の砕石粉が副産される.砕石粉は2009年にJIS A 5041で規格化されているが, その利用法や比表面積に関する内容などが論じられていない.そこで本研究は, 製造方法の異なる砕砂2種類(乾式砕砂, 湿式砕砂)と比表面積の異なる3種類の砕石粉を組み合わせたモルタルを作製し, テーブルフロー試験により流動性を比較した.その結果, 砕石粉の比表面積の差異はモルタルの流動性に影響を及ぼし, 特に比表面積の大きな砕石粉は, モルタルの流動性を著しく低下させることが明らかとなった.砕石粉の比表面積を限定することで, JIS A 5005に定められている砕砂の微粒分量の最大9 %という上限値を緩和できる可能性が示唆された.

  • 岡島 賢治, 長岡 誠也, 伯耆 匠二, 伊藤 良栄, 近藤 雅秋
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_149-I_157
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー

    三重県の宮川用水では末端の給水栓においてタイワンシジミによる閉塞問題が生じている.この閉塞問題対策として宮川用水土地改良区ではサイホン部での排泥操作による排出作業を行っている.本研究では途中で池を経由する国営1号幹線水路および池を経由しない国営2号幹線水路に着目し, 作成したタイワンシジミの成長曲線からパイプライン内のタイワンシジミの成長を考察した.その結果, 厳寒期を除く時期にタイワンシジミが再生産している可能性を示した.また, 排出作業時に採水して水質分析を行った.その結果, 経由池がクロロフィルa濃度, 溶存酸素濃度を上昇させる効果を有し, パイプライン内のタイワンシジミの生息に適した水質環境を供給していることを示した.また, パイプライン内にタイワンシジミが生息していることで灌漑期間半ばまで下流の全窒素, 全リン, CODが上昇することを示した.

  • 伊藤 浩三, 丸山 利輔
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_159-I_167
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー

    蒸発散量の推定において異常値の新しい定義を提案するとともに, その定義を熱収支ボーエン比法(Bo法)に適用した結果について述べている.すなわち, 異常値を供給熱量(Rn-G)のα倍より大きい潜熱(lE)または顕熱(H)と定義する.その時のボーエン比(Bo)の範囲を異常な範囲とし, αごとに, 異常な範囲を数学的に示している.その結果, この異常値の定義はBoが-1の近傍で発生する異常値と等価であることを誘導している.また, 異常値の定義を実際の資料に適用した結果, ①灌漑計画や水資源計画に必要な月別蒸発散量を求めるためには, α=1.0∼3.0にとればよいこと, ②異常値の発生は, 昼間よりも夜間に多いというこれまでの知見を確認したこと, ③これまで提案されているBo法の異常値の範囲が, 本研究で提案した方法によって, 概略, 統一的に表現できること, を示している.

  • ― 異常値を処理した場合の事例 ―
    丸山 利輔, 伊藤 浩三
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_169-I_178
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー

    本研究は, 実測資料を逆解析法とBowen比法(BO法)及び渦相関法に適用し, 潜熱(lE)と顕熱(H)を求め, その特徴と問題点を検討したものである.いずれの方法にも先に提案した, 異常値の定義{α|Rn-G|<|H|, |lE|}を適用した資料に基づいて解析を試みた.その結果以下のことが示された.①作物生育期間では時間単位のlEHの変化は3方法(逆解析法ではα=1.0の場合)とも相互に極めてよく一致した.②3方法の中の任意の2方法の組み合わせにより日単位のlE 及びHを比較した結果, 年間でも作物生育期間でもlEについては相互によく一致した.③3方法の月別変化を比較したがα=1.0の場合には3者のlEは比較的よく一致した.④異常値の割合はBO法が最も多く, 逆解析法及び渦相関法は少なかった.⑤以上の結果, 水資源計画や灌漑計画に必要な月別蒸発散量は, 上記 3方法とも十分な精度で推定できる.

  • 多田 正和, 伊藤 邦夫, 齋藤 稔, 森 也寸志, 福桝 純平, 中田 和義
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_179-I_187
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/19
    ジャーナル フリー

    ナゴヤダルマガエルの越冬場所に影響を及ぼす環境要因の解明を目的として, 岡山県倉敷市内で本種が高密度に生息する地区の慣行水田と休耕田の各1筆で野外調査を実施した.その結果, 越冬個体の大半(35個体中34個体)が休耕田で確認された.越冬個体の在/不在(1/0)を目的変数, 各コドラートのカバー率・草高・土壌pH・体積含水率・間隙率・土壌硬度を説明変数として一般化線形モデル(GLM)により解析した結果, 土壌硬度・カバー率・草高の二乗項が最良モデルで選択され, 土壌硬度には有意な負の効果が認められた.水田で本種の越冬場所を創出する上では, 土壌硬度と田面の植物の存在が重要になると考えられた.

  • 林 暁嵐, 瀬田 千夏, 吉田 貢士, 前田 滋哉, 黒田 久雄
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_189-I_195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/07
    ジャーナル フリー

    流入窒素濃度と温度から水田の窒素除去速度を推定する窒素除去式がある.本研究は,窒素除去速度の推定方法を窒素除去式の窒素除去係数の温度変数に着目して改良することを目的とした.調査圃場は関東地方の谷津田谷頭部に設置した浸透がない無植生の通年湛水水田で,2015年1月から約2年間の窒素除去速度調査を行った.温度変数を試験区水温,土壌深さ別地温(0~10cm),アメダス時間気温を用いた平均積算時間気温とし,窒素除去速度の各計算値と実測値の関係をR2値で評価した.その結果,土壌深さ10cm地点の地温と調査時刻から40時間前までの平均積算時間気温のR2値が高かった.さらに,温度補正係数D=1.3を導入すると,窒素除去速度を精度よく推定できることがわかった.

  • 石黒 覚, 山中 正善
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_197-I_204
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/04
    ジャーナル フリー

    夏季のアスファルト舗装路面の高温は, 舗装の耐久性低下だけでなく都市部におけるヒートアイランド現象の一因ともいわれている.このため, 遮熱性舗装などの環境に配慮した舗装技術が求められている.本研究では, かき殻や廃瓦などのリサイクル材を細骨材に用いたジオポリマーモルタルを利用し, これらを開粒度アスファルト舗装表面の空隙に充填して遮熱性を付与する舗装工法を提案した.幾つかの試験舗装を施工して夏季の路面温度を測定し, 温度上昇に対する抑制効果を調べた.この結果, かき殻を細骨材としたジオポリマーモルタルを充填した場合において, 温度上昇抑制効果が最も大きく, 舗装路面の最高温度は密粒度アスファルト舗装に比べて約11℃低下した.

  • 有田 博之, 内川 義行
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/03
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の広域に亘る集落の津波被害に対する災害復旧の取り組みでは, 集落の高台移転等の大規模な地域対策が行われ, 土地利用の再編が進んだ点に特徴がある.復旧関連事業は, 開発用地として広大な農地を転用した.これらは, 土地利用の空間変化としてみれば, 住居用地が津波被害の回避を目的として位置移動したに過ぎない.農地は一連の土地利用変更の中で保全・補償される必要があるが, 現状では行われていない.新規開田の抑制方針が維持されているのが主因だが, 地域全体の土地利用を管理するという視点が欠落している.本論では, 農地の資源保全および土地利用管理の観点から, 災害復旧において, 一定の条件を満たす場合に開田を認める「選択的開田」を提案する.

  • 高瀬 恵次, 徳増 実
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_211-I_218
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/03
    ジャーナル フリー

    地下水は貴重な水資源の1つであり, その保全と管理は重要な課題である.しかしながら, 地下水は地表面下の流れであるため, その流動特性や水収支構造を把握することは容易ではない.本研究では, 愛媛県西条平野を対象として, 地表領域, 中間帯領域および地下水帯領域からなる集中定数型水循環モデルを構築し, 同平野の水収支を解析した.まず, 降雨, 河川流量, 地下水位の観測値, 工業・生活・農業用地下水取水量に関する資料などに基づき基本となる水収支要素のデータを作成した.そして, それらをモデルに入力して地下水位の日変動を推定し, 実測地下水位の変動を再現するようにモデルパラメータを同定した.その結果, 計算地下水位と実測地下水位はよく一致し, 本モデルが同平野の水循環構造をよく表現していると判断された.

  • 西田 和弘, 塚口 直史, 柴田 里子, 吉田 修一郎, 塩沢 昌
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_219-I_226
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/03
    ジャーナル フリー

    低温・低窒素濃度の灌漑水を用いた掛流し灌漑試験を実施し, 水稲の登熟期の掛流し灌漑が玄米タンパク質濃度および白未熟粒割合に与える影響を調べた.その結果, 掛流し灌漑実施水田では, 水口に近いほど玄米タンパク質濃度が低くなり, また, 玄米タンパク質濃度が低いほど白未熟粒割合は高くなった.これらのことから, 低温・低窒素濃度の灌漑水を用いた掛流し灌漑は, 稲の窒素吸収量を減少させる可能性があること, これにより米の外観品質を悪化させる可能性があることがわかった.掛流し灌漑による米の品質向上メカニズム, 最適な水管理法を明らかにするには, 従来考えられている水田・水稲の温度環境への影響だけでなく, 窒素環境への影響, 水田の窒素環境を介した米の外観品質への影響についても検討する必要があると考える.

  • 岩田 幸良, 中川 文男, 相田 信幸, 名和 規夫, 宮本 輝仁, 亀山 幸司, 菖蒲 淳
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_227-I_237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    畑地灌漑がカキの果実重量に与える影響を調べるため, 新潟県佐渡市羽茂地区のカキ圃場において, ドリップ灌漑を実施した試験区と灌漑を実施しない対照区を設け, 灌漑の有無による土壌水分量の推移や果実の品質の違いを調査した.2017年と2018年の2年間の調査の結果, 灌漑を実施することで, 出荷できない等級Sの果実が発生するリスクを減らし, L以上の等級の果実の個数割合を10%程度増加させる効果があることが確認された.また, カキの根群域が広いため, 幹から1.2 m 程度離れた地点に灌水チューブを設置しても灌漑効果が期待できることが明らかになった.さらに, カキについては畑地灌漑計画で用いられるpF3.0を生長阻害水分点とし, 主要根群域全体でpF値がこの値以下になるように灌漑することで, 干ばつ年でも安定して大きな果実が収穫できると考えられた.

  • ― 畑地用水計画の高度化に向けた土壌水分動態解析の適用例 ―
    弓削 こずえ, 阿南 光政, 平嶋 雄太
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_239-I_249
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究は, 少量頻繁灌漑圃場において土壌水分状態や水フラックスを評価し, これに基づいて消費水量を精度よく定量化することを目的とする.まず, HYDRUS 2D/3Dを用いて少量頻繁灌漑圃場における灌漑後の土壌水分動態を予測するシミュレーションモデルを構築した.本モデルの妥当性を検証し, 土壌水分特性パラメータや境界条件などの入力データを得るために, ミニトマトが栽培されているビニルハウスで現地観測を行った.本モデルによって水フラックスを計算した結果, 対象圃場では, 灌水後の土壌水分の下向きへの移動は表層付近のみで生じており, 深い層における重力水の排水はほとんど生じていないことが明らかになった.また, 水平方向の土壌水分の変化が極めて小さいため, 一次元的場を対象とした消費水量算定方法の適用が可能であることが示唆された.

  • —新津郷地区を例として—
    光安 麻里恵, 浪平 篤, 吉田 修一郎
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_251-I_259
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー

    低平地における開水路からポンプ直送方式の2段揚水かんがい地区の一例として, 新津郷地区を対象に, 機場を統合し配水槽式のシステムに再編したときのかんがい排水エネルギーの削減効果を算定した.現況では用排合わせて5,278 MWh, 理論仕事量ベースでは3,576 MWhのエネルギーを消費しているが, 再編後は理論仕事量ベースで現況の41%に当たる1,465 MWhのエネルギーを削減できる可能性を示した.削減に最も有効な対策は, 配管の改良で, 削減可能量の約7割に貢献する.本地区のような低平地では, 水管理労力の軽減のために機場を統合しても, その他の対策と組み合わせることでかんがい排水エネルギーを削減できることを明らかにした.

  • 寺家谷 勇希, 吉田 貢士, Sritumboon SUPRANEE, Srisutham MALLIKA, 前田 滋哉, 黒田 久雄
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_261-I_269
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー

    本研究では, タイ東北部を対象に人口分布・土地利用・営農の違いが考慮可能な水資源・窒素負荷量推定モデルを構築・適用し, 1 km解像度での窒素排出負荷量の空間分布を推定すること, 立地や水文条件に応じた土地利用別の排出負荷量の偏在を示すこと, 施肥量増加に伴う窒素排出負荷量への影響を評価することを目的とした.降雨流出解析には完全分布型TOPMODELを用い, 降雨流出解析から得た各土地利用メッシュの水収支と窒素動態モデルを用いて, 窒素排出負荷量を推定した.構築したモデルの計算結果は河川流量と窒素排出負荷量の季節変動を精度良く再現した.その結果, 森林からの窒素排出負荷量は0.11~6.9 kg・ha-1・year-1の範囲に分布し平均0.81 kg・ha-1・year-1, 農地からの窒素排出負荷量は0.15~13 kg・ha-1・year-1の範囲に分布し平均2.5 kg・ha-1・year-1であった.市街地は0.15~41 kg・ha-1・year-1と幅広く分布し平均6.5 kg・ha-1・year-1で, 森林や農地と比べて窒素排出負荷量は高いことを示した.

  • 硲 昌也, 間宮 聡, 毛利 栄征, 有吉 充, 田中 忠次
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_271-I_280
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー

    社会基盤施設の老朽化によって, 当初設計時の期待された機能を発揮できないことで重大な事故や障害に至る事例が増加しており, トンネルやパイプラインに内挿されたパイプが, 外水圧の作用で座屈破壊した事例では, 水利システム全体が機能しなくなるなどの重大な事態に至っている.一般的に既設のトンネルやパイプラインに挿入される更生管は, 中込材の注入によって既設施設内での安定性を確保するが, 中込材の効果やその要求性能は, 十分に解明されていないのが現状である.本論では既設の施設内に設置した更生管を対象として, 外水圧作用下での模型座屈実験を実施し, その突発的な破壊現象を明らかにした.具体的には円形更生管の自由座屈形態ならびに拘束座屈形態の2種類に関する更生管の座屈挙動を確認した.また, 馬蹄形更生管の座屈強度を明らかにした.

  • 武藤 由子, 堂山 貴広, 中西 真紀, 渡辺 晋生
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_281-I_288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー

    体積含水率(θ)の異なる黒ボク土で硝化のバッチ試験を行い, 測定したアンモニア態窒素(NH4-N)の減少と硝酸態窒素(NO3-N)の増加を一次反応式で表した.硝化の反応速度定数(µ)はθの高い条件で大きかった.また, 一次元カラム蒸発実験で, 硝化と水分移動に伴うNH4-NとNO3-Nの挙動を調べた.硝化によってNH4-Nは全層でほぼ消失し, 生成したNO3-Nが蒸発による水分移動で上層に移動した.NH4-N消失量は, θが高い実験の初期で多かった.次に, カラム蒸発実験の結果を数値計算で再現した.この時, 定数µを用いた計算によりカラム実験を概ね再現できたが, バッチ試験の結果を考慮してµθの関数として与えると再現性が向上した.また, 土壌微生物活性の指標であるATP量はµの大きい条件で大きく, 比較的測定が容易なATP量からµを推定できる可能性が示された.

  • 竹内 真一, 籾井 和朗, 肥山 浩樹
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_289-I_296
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー

    本研究では, 種子島のサトウキビ圃場の土壌水分, 茎内流速および現地気象観測に基づいて, 消費水量, 蒸散量および基準作物蒸発散量の評価を行った.秤量法とポトメータ法による実蒸散量との比較から, ヒートパルス法によるサトウキビ蒸散量測定のための検定定数として1.3が妥当であることを実証した.8月において, 圃場内のサトウキビ1本あたりの日蒸散量が, 最大548cm3/d(水深単位で6.7mm/d)となることを, ヒートパルス法による直接測定により明らかにした.一方, 消費水量を算定するための土壌水分減少量は, 4.3mm/dであった.両者の比較から, 蒸散による水分消費が50cm以深の下層からの毛管補給により補われていること, および, 深層部の根の吸水によることが推察された.また, 基準作物蒸発散量とサトウキビの蒸散量には, 高い線形関数関係が成り立つことを示した.

  • Charoen JIRARATCHWARO, Yutaka SUZUKI, Norihide SAHO, Siaw ONWONA-AGYEM ...
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_297-I_302
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

    A Mini Portable Pressure Head (MPPH) type Rainfall Simulator was developed for investigating runoff, sediment and infiltration from the soil in laboratory. The raindrops were produced from 175 pieces of φ 0.34 mm needles which were embedded under the drop former. The uniformity coefficient of the simulated rainfall was 84.3%. The drop velocity 5.2 m s-1 and kinetic energy was 0.263 J m-2 s-1 for rainfall intensity of 70 mm h-1.

    The investigations of runoff, sediment discharge and infiltration were conducted using the Andosol soil with the average dry bulk density of 0.58 × 103 kg m-3 and the volumetric moisture content at the field capacity of 0.39 cm3 cm-3. The simulation was set for the rainfall intensity of 70 mm h-1 on the lysimeter surface at 5% slope. The runoff and infiltration samples were collected each 10 minutes during the experiment of 100 minutes.

    The runoff occurred about 98 ± 44.5 seconds after the rainfall simulation started and rapidly increased to be 52 mm h-1 while infiltration outflow occurred after 60 minutes with average flow of 17 mm h-1. The average sediment concentration in discharge water was about 5.99 g L-1 and cumulative sediment discharge was about 3.81 t ha-1 h-1. The developed rainfall simulator was able to produce useful datasets for runoff, infiltration and sediment discharge.

  • 島本 由麻, 萩原 大生, 鈴木 哲也
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_303-I_311
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/03
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    植物の水ストレス応答を弾性波により検出する手法の一つとして, AE法が利用されている.植物の水ストレス評価におけるAEの発生源は水ストレスに起因する気泡運動である.AE計測による植物の水ストレス評価を実用化するためには, この気泡運動起源である突発型AEのみを抽出する必要がある.本論では, ウェーブレット変換による特徴量およびレーリー・プレセット方程式による推定周波数を用いて, 4種類の検出波の判別を試みた.検討の結果, ウェーブレット変換より求めた重心時間, 重心周波数, 信号強度比とレーリー・プレセット方程式による推定周波数を指標とすることで, 突発型AEとその他の検出波を明確に判別できることが明らかになった.

  • ―大気環境保全機能の強化を付加した圃場整備事業の実現に向けて―
    石川 雅也, 飯田 俊彰
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_313-I_325
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/03
    ジャーナル フリー

    主要な温室効果ガス(CH4とN2O)排出の低減機能を強化することを目的とした汎用化水田による浸透試験を行った.その結果, 積雪寒冷地での従来型還元田の実測値と比べて, 1/5から1/3程度の低い値が観測された.地球温暖化係数(GWP)から算出したCO2相当量(等価量)を検討した結果, 透水性の高い火山灰土整備水田では, 適度な浸透強度を常に有するのではなく, 浸透水がほとんど生じない基盤構造を有し, 必要時に迅速な灌水と落水が可能な水田構造が, 主要な温室効果ガス(CH4とN2O)排出量の低減と水稲生育に有効であることが示唆された.わが国の圃場整備技術は, 温室効果ガス排出量の低減強化という新たな価値が付加された農業基盤創成技術として実現されることが期待できる.

  • ― 新潟県上越市三和区の事例 ―
    矢挽 尚貴, 風間 十二朗, 玉井 英一, 山本 忠男, 井上 京
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_327-I_338
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/11
    ジャーナル フリー

    新潟県上越市三和区で,同時期に実施された圃場整備事業7地区を対象に,事業実施前後の担い手の規模拡大状況を調査した.三和区はほぼ全域で圃場整備が実施され,大区画化やパイプライン化などの省力化技術が導入されたことにより,経営体の農地選択の自由度が高まったとみられるが,規模拡大した担い手は,以前から耕作を行っていた事業地区内で耕作地を拡大したが,耕作を行っていなかった事業地区での新たな規模拡大はほとんど行っていないことが明らかとなった.大規模な担い手は,事業実施前から広域的に耕作地を拡大しており,圃場整備を契機に担い手の規模拡大が加速した.一方,広域的な規模拡大に伴う耕作地の分散や水管理の自由度低下などの課題も発生している.このような状況から,圃場整備計画では,広域的な担い手の規模拡大状況を考慮した事業地区設定や土地利用調整が必要である.

  • 上野 和広, 森本 由利子, 石井 将幸, 長束 勇
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_339-I_348
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/11
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    異なる材料間のせん断付着強度を一面せん断試験で評価する際の載荷条件を明確にするため,一面せん断試験によるせん断付着強度の評価と,4点曲げ強度試験による曲げ付着強度の評価を実施した.表面が平滑でない母材コンクリートへポリマーセメントモルタルを打ち継いだ供試体に対し,クランプ間距離を1~7 mmに設定した一面せん断試験を実施したところ,試験結果に大きな相違は生じなかった.これより,付着界面の曲げ剥離の防止を目的にクランプ間距離を狭く設定したとしても,せん断付着強度の評価へ与える影響は小さいと考えられた.また,様々な条件の付着界面を対象に,曲げ付着強度とせん断付着強度の比を求めた.求めた比の値と一面せん断試験の載荷条件から,一面せん断試験で付着界面にせん断剥離を発生させるための「付着界面と上クランプの間の距離」の条件を示した.

  • 有吉 充, 田中 良和
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_349-I_356
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/11
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    内圧が作用した硬質塩化ビニル管の長期性能を評価するため,農業用パイプラインとして現場で30年以上利用された管を対象に,破損した管の破面解析,管内圧の現場計測,掘出した管の偏平試験及び外圧疲労試験を実施した.破面解析では,疲労破壊に特徴的なビーチマークやラチェットマークが観察された.現場では頻繁な内圧変動が生じており,破損管は内圧変動により疲労した可能性が高いことが分かった.掘出し管の偏平試験では,50%たわみ時でも亀裂は生じず,30年以上使用した管でも偏平性能の顕著な低下は見られなかった.外圧疲労試験では,疲労強度が繰返し負荷応力の大きさに特に影響を受けること,許容応力程度でも疲労すること,口径の違いで疲労強度が異なる可能性があることなどが分かった.

  • 澤田 豊, 眞木 陸, 神信 浩一, 谷本 幹夫, 中澤 博志, 河端 俊典
    2019 年 87 巻 2 号 p. I_357-I_363
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    近年, 刃金土不足などにより, ジオシンセティッククレイライナー(GCL)を用いたため池改修が増加しているが, その設計手法は確立されておらず, 長期性能も検証されていない.本研究では平成17年度にGCLにより改修されたため池を対象にその遮水機能の保持を検証するとともに浸潤線の位置を検討するため, 堤体内および池内の水位を約1年間現地計測した.また, 当現場を対象に, FEM浸透流解析を実施し, 浸潤線の位置推定に関して解析の適用性を検討した.現地計測結果より, GCLの遮水機能は十分に保持されていることが明らかとなった.また, 本計測期間内に生じた豪雨により, 浸潤線は1m以上上昇することが明らかとなった.さらに, FEM解析と現地計測結果は比較的良好な一致を示した.GCL無しの解析結果との比較からGCLによる浸潤線低下ならびに漏水量減少が示された.

研究報文
  • ― 2004年新潟県中越地震を契機とした山古志木籠ふるさと会を事例として ―
    坂田 寧代
    2019 年 87 巻 2 号 p. II_93-II_98
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/07
    ジャーナル フリー

    農村地域において復興過程でどのように社会関係が形成されたかという事例の蓄積は,防災減災対策の検討材料となるのみならず,縮減化する農村地域の価値を見直すことにもつながると考えられる.本報文では,2004年新潟県中越地震を契機として結成された山古志木籠ふるさと会を事例として,2016年度に実施した参与観察・聞取りをもとに,都市住民と協働した復興・振興モデルを示した.被災した家屋や小学校などが整備され,都市農村交流,集落連携,被災地間交流が生じた.これらを実現に導いたのは,組織運営の「自由さ」と関係者の「思い」であることが明らかになった.

  • 岡島 賢治, 長岡 誠也, 伯耆 匠二, 伊藤 良栄, 近藤 雅秋
    2019 年 87 巻 2 号 p. II_99-II_105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/03
    ジャーナル フリー

    三重県宮川用水の末端給水栓においてタイワンシジミによる通水阻害の被害が報告されている.このような状況で, 先行研究で宮川用水国営1号幹線水路において, タイワンシジミが管の継手部の窪みに生息していることが報告された.これを受け, 本研究では, 被害報告が少なく, 流速, 管径といった条件の異なる宮川用水国営2号幹線水路で管内調査を行い, タイワンシジミの生息状況の分析などを行った.それらの結果を先行研究と比較するとともに, パイプラインの管勾配や継手部形状による生息数の違いなどを検討した.その結果, 被害報告の多寡によらず継手部で6,000個体/m2程度の高密度なタイワンシジミの生息が確認された.受口下流となる継手部は, タイワンシジミの堆積を抑制する形状となること, 管勾配が10°を超えるような継手部ではタイワンシジミが堆積しなくなることが分かった.

  • 竹村 武士, 森 淳, 渡部 恵司, 嶺田 拓也, 小出水 規行, 石﨑 周
    2019 年 87 巻 2 号 p. II_107-II_112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/03
    ジャーナル フリー

    水田に生息するドジョウは鳥類等高次消費者の餌として重要で, その資源量は生態系保全上の関心事項である.著者らは既報で, 実験水田全体に設けた高密度な採捕定点, 採捕個体除去およびDeLuryまたはプログラムCAPTUREを適用した個体数推定実験を行い, 実用的推定値が得られたこと, 周縁部の採捕データのみからの推定に検討価値が認められたことを報告した.これを受け, 本研究では, 将来の一般利用に向け実験水田内に踏み入ることなく採捕可能な周縁部に2m間隔の採捕定点を設け, それによる個体数推定の可能性および更なる採捕定点数削減による省力的な簡易推定可能性を検討した.その結果, このような方法による個体数概数レベルの推定可能性が示唆された.

  • 亀山 幸司, 宮本 輝仁, 岩田 幸良
    2019 年 87 巻 2 号 p. II_113-II_121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー

    昨今, 圃場における水管理の省力化や作物の高品質化等のため, 土壌の水分状態を監視して作物に灌水するシステムの導入が検討されている.このシステムの導入を検討する上で, どの位置の土壌水分を基準に管理するのが妥当かを検討する必要があると考えられる.Time stability概念に基づいて代表地点を選出する手法は, この問題を解決する可能性がある.そこで, 我が国の農地において特徴的な黒ボク土圃場(畑圃場)と水田転換畑圃場(水田圃場)を対象に, FieldScout TDR300を用いて表土(0~20 cm深)の複数地点の土壌水分測定を経時的に行い, その結果にTime stability概念に基づいて代表地点を選出する手法を適用した.TDR300による圃場内の複数地点の測定値に対して, 地点毎の平均平方二乗誤差を算出し, 地点間で比較することにより, 圃場内で平均的な土壌水分を示す代表地点を選出できることが確認できた.

  • ―組合員数と農地面積に着目した分析―
    鬼丸 竜治
    2019 年 87 巻 2 号 p. II_123-II_132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    農業水利施設を管理する土地改良区の組合員が大規模経営体と小規模農家へ二極分化した場合, 総代の選出に従来の一人一票制を用いると, 人数で大半を占める小規模農家の推す候補者が選ばれやすくなる.そのようにして小規模農家と同様の意見の総代が増えると, 総代会の議決において, 農地面積で大半を占める大規模経営体の意見が適切に反映されない恐れが生じる.そこで, 組合員の意見を平等に反映させるため, 二極分化が進んだ土地改良区における総代選出方法の課題を, 先行研究の知見をもとに定性分析した.その結果, ①一人一票制から, 組合員が各々1個の選挙権に加え各自の耕作する農地面積に応じた個数の選挙権を行使するやり方に変更する, ②その際, 「組合員数を換算した選挙権数の総和」と「農地面積を換算した選挙権数の総和」を等しくする, という対策の検討が課題であることを示した.

研究ノート
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