農業農村工学会論文集
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研究論文
  • 森井 俊廣, 伊藤 広明, 小田 里司
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/14
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    N値が0~8の範囲の中位から非常に軟らかい粘土地盤における木杭を対象に,極限支持力の精度よい算定方法を,杭の押込み試験の結果に基づき検討した.木杭の極限支持力は周面摩擦力と先端支持力の和で与えられる.いずれも粘土の非排水せん断強度に依存するため,圃場整備事業等で実施された一軸圧縮試験の結果を分析し,N値から非排水せん断強度を推定できる関係式を提案した.この関係式を用いて支持力公式により極限支持力を算定したところ,杭の押込み試験で測定された第2限界抵抗力と比べ9割程度の算定精度となった.さらに,木杭に特有なテーパーの効果を考慮すると,ほぼ1対1に対応する算定結果となった.これより,提案したN値と非排水せん断強度の関係式が支持力算定にあたって実務的に有用であること,木杭の支持力算定では特有のテーパーを考慮すべきことを明らかにした.

  • 坂井 勝, 今井 翔馬
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_9-I_16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル 認証あり

    蒸発法を用いて,土壌クラスト層の水分移動特性の推定を行った.クラスト層と下層の非クラスト層から成るクラスト成層土試料と,クラスト層を取り除いた下層土試料を圃場から不撹乱で採取し,蒸発実験を再現する様に数値計算による逆解析を行った.この時,まず下層土試料から非クラスト層の水分移動特性を推定し,次に成層土試料に対する逆解析からクラスト層の水分移動特性のみを推定した.非クラスト層に比べ,クラスト層の空気侵入圧は低く,飽和近傍の透水係数も低い値を示し,クラスト形成による大きな間隙の閉塞を反映した水分特性曲線と不飽和透水係数が推定された.一方,低マトリックポテンシャル領域では,非クラスト層と同程度の水分移動特性を示した.広い水分飽和度の範囲でクラスト層の水分移動特性を推定する上で,蒸発法の有用性が示された.

  • Tomotaka SATO, Kodai YAMADA, Mai MASUTANI, Hirotaka SAITO, Yuji KOHGO
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_17-I_28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    Elasto-plastic analysis methods for saturated and unsaturated soils that can account for temperature effects have not been well established. The main objective of this study was to develop a numerical method for elasto-plastic analysis of saturated and unsaturated soils that can consider the temperature dependence and to validate the model. A model with a new material parameter accounting for such temperature dependence observed in the results of isotropic consolidation tests of unsaturated soils was coupled with the existing saturated and unsaturated elasto-plastic model. Triaxial compression tests conducted under different temperatures for silt with different densities (loosely and densely packed) were simulated using the proposed coupled model. As for the loosely packed specimen, the model reproduced well that the strength of the critical state was not affected by temperature. As for the densely packed specimen, while it was simulated that the shear strength became smaller at higher temperature, there were discrepancies between observed and simulated values. Although the smaller volumetric strain (i.e., expansion) at higher temperatures was well simulated, the simulation overestimated that at lower temperature. It could be corrected at some extent with the introduction of the shear band concept.

  • 團 晴行, 足立 忠司, 廣内 慎司, AGODZO Sampson
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_29-I_36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル 認証あり

    ガーナ内陸低湿地では,農民自らの技術で造成が可能で,かつ持続的に維持管理できる低コスト水利施設の開発が求められている.このため,用排水路や畦畔といった水田水利施設に被覆植物を植栽する補強技術の開発に取り組んだ.土壌表面硬度は無植生が7.3~27.8mmと大きく変動しており,土壌水分は草種によるが植生工の有無に関係なく4.3~37.1%と幅広く変化している状態を把握した.また,湛水時の場合も洪水時の場合も共に,無植生に比べると植生工を施工した施設は崩壊耐性が有意に大きく,浸水崩壊に対する土木構造物の力学的性質を補強できることを示した.さらに崩壊度の小さい順に,オキナワミチシバが4.71g,イヌシバが2.07g,ギョウギシバが2.05gと根の新鮮重が供試体に多く含まれていたことから,根重の多寡によって崩壊耐性を定量的に把握できる可能性を示した.

  • 小林 大樹, 登尾 浩助
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_37-I_43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/18
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    透水性の改善による水田の畑地転換推進の実現のために,粘性土壌の乾燥亀裂に関するメカニズムの解明が求められている.本稿では土壌表面の変位・ひずみを面的に計測可能なデジタル画像相関(Digital Image Correlation,DIC)法を用いて,容器に充填した飽和土壌の乾燥過程を経時的に解析することで,土壌の水理特性への影響が大きい亀裂幅の成長メカニズムを研究した.変位解析の結果,隣り合う亀裂ブロック同士の距離が広がることで亀裂幅が広がることを明らかにした.さらに,主ひずみ解析の結果,亀裂ブロックの収縮は,亀裂面からの蒸発に起因すると考えられる亀裂ブロック辺縁部の強い収縮が原因であることがわかった.加えて,亀裂ブロックの形成により,その中の土粒子の拘束方向が亀裂ブロックの中央部方向に限定されるため,亀裂ブロックが収縮する方向へ乾燥収縮が発生した.

  • 横地 穣, 関本 幸一, 井上 京
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_45-I_52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    石狩川下流域に位置する篠津泥炭地に敷設された農業用管水路を対象に,縦断的な変状の実態把握と不同沈下の定量的な評価を行った.管水路敷設から調査時までのおよそ20年間における管水路の沈下量は5 ~ 44 cmであった.道路横断部や水管橋接続部など特殊な敷設環境にある区間を除き,沈下は管路全体で一様に生じていた.一方,管体にかかる荷重が増加する道路横断部や,杭基礎によって管体が拘束されている水管橋との接続部分では,管路に大きな不同沈下が生じていた.不同沈下によって生じた管路の変状には設計上の許容量を上回るものもあり,漏水事故等の発生が懸念され,実際にもこれまでに漏水事故の起きた箇所があった.不同沈下の発生が見込まれる箇所では,継続的に管路の状態の監視を行い,漏水等の事故を防ぐ対策を立てる必要がある.

  • 森 洋
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_53-I_61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル 認証あり

    トラップドア部の繰返し載荷モードによる鉛直土圧挙動とせん断帯の発達状況を,単調載荷モードでの実験結果と比較・検討した.テーパー状の繰返し載荷モードの場合,主働領域でのピーク最小値と残留値は単調載荷モードよりも大きく,また,受働領域でのピーク最大値は単調載荷モードと同程度となるが,残留値は小さくなった.同一変位量による繰返し載荷モードでは,同一変位量が大きくなるに従って,鉛直土圧比(σv/σv(0))のループ状勾配は小さくなり,同一変位量±0.7mm付近で最大値を示す傾向にあった.繰返し載荷モードによるせん断帯は主働モードで見られるアーチ状のせん断帯と,受働モードで見られる扇状に広がる外側へのせん断帯が,交互に鹿の角の様に上方へ向かって発達した.

  • 山下 みずき, 伊藤 健吾, 乃田 啓吾, 千家 正照
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_63-I_74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    汚水処理施設から塩素処理水を受容する水路において,残留塩素が魚類,貝類に及ぼす影響について調査を行った.処理水流入点の直下では残留塩素濃度は0.1~0.2mg/L程度の値を示し,約500m下流地点においても0.03mg/L程度の値を示した.魚類の生息状況調査の結果,塩素処理水の流入による負の影響は見られなかった.また,標識再捕獲法によってタモロコの移動状況について検討した結果,高濃度塩素帯によるタモロコの移動阻害(バーチャルダム)は確認されなかった.一方,コドラート調査の結果,本調査水路において貝類は残留塩素の影響を強く受けていることが明らかになった.処理水流入点より上流と比較して,下流ではカワニナ類,シジミ類及びヒメタニシの生貝の個体数は少なかった.イシガイ科二枚貝の生貝は上流でしか確認できなかった.

  • 上野 和広, 森山 翼, 川邉 翔平, 森 充広, 石井 将幸
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_75-I_81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル 認証あり

    コンクリート構造物で生じる既設コンクリートの炭酸化と表面粗さが,無機系補修材料とのせん断付着強度へ与える影響を室内試験で評価した.その結果,母材コンクリート表面の算術平均粗さの増加に伴ってせん断付着強度が高くなることを確認した.母材コンクリート表面の算術平均粗さとせん断付着強度の関係は,母材コンクリートへ促進中性化作用を与えた場合でもほぼ同一であった.そのため,本研究で採用した試験条件の範囲内では,母材コンクリートの炭酸化がせん断付着強度へ与える影響は,表面粗さによるものと比較して小さいと考えられる.また,JIS R 5201の「強さ試験」に準拠して作製したモルタルを母材として求めたせん断付着強度と比較した結果,このモルタルのように表面が平滑な母材を用いて供試体を作製した場合,安全側のせん断付着強度が得られると考えられた.

  • 王 博涵, 毛利 栄征, 小野 尚二, 鈴木 和志, 田中 忠次
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_83-I_91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
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    平成30年北海道胆振東部地震では,大きな地震動によって大口径パイプラインが甚大な被害を受けた.導水路沿線の軟弱な土質が深く堆積する特異な地盤の地域では,多くの個所でパイプの離脱や浮上などが発生した.特に曲管部は,埋戻し地盤,及びパイプの大きな変状により継手部の離脱が生じている.

    本研究では,北海道厚幌導水路の二条配管されている曲管部を対象として,地震時の曲管の移動量予測と埋戻し材の力学的特性の影響を明らかにすることを目的として,二次元の動的弾塑性有限要素法解析を実施した.その結果,埋戻し地盤が地震時に強度低下することを考慮することによって曲管の地震による移動量を適切に予測できることを示した.

  • 時吉 充亮, 日野林 譲二, 河端 俊典, 栗山 卓
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_93-I_99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル フリー

    泥炭地盤等に用いられる農業用パイプラインでは,管偏平や不同沈下による継手の抜け,漏水,管の切断といった事例が続いている.そのため,このようなパイプラインには,不同沈下等が発生しても融着によって継手が一体化でき,かつ管軸方向の地盤追従性を合わせ持つポリエチレン管が有効である.中でも,ガラス繊維強化ポリエチレン管(以下,PE-GF管という)は,管周方向の剛性がポリエチレン管より高いことから管厚を薄く設計することができ,コストダウンの観点からも適用研究が進められてきた.しかし,PE-GF管は,短繊維ガラスで強化した管であるため,管軸方向の追従性について曲げ性能限界を把握する必要があった.そこで,本報では実管路を地上に配置した状態で水平曲げ試験を実施し,その変形特性を確認した.その結果,管軸方向許容曲率半径60DD:管外径)が期待できることが明らかとなった.

  • 弓削 こずえ, 阿南 光政, 藤木 豊, 平川 晃
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_101-I_110
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,培土によって畝の断面形状が変化する畑地において消費水量を精度よく求めるための土壌水分測定ならびに土壌水分動態解析の領域設定の最適な手法を提案することを目的とする.培土によって畝の断面形状が作物の生育に伴って変化するネギ圃場を対象に,土壌水分状態を観測するとともに畝の断面形状変化を考慮に入れて土壌中の水分動態解析を行った.解析結果より,培土によってかさ上げされた部分では,まとまった降雨後も土壌水分が少ない状態にあることが明らかになった.畝高を固定したシナリオの下で生育期間を通した体積含水率を予測したところ,畝の高さを段階的に変えて計算した結果とほぼ同様の結果が得られた.計算によって得られた体積含水率を用いて土壌水分減少法によって消費水量を求めたところ,畝高固定シナリオと畝高変化シナリオの下で算定した結果は概ね一致していた.

  • 柴野 一真, 島本 由麻, 鈴木 哲也, 西田 浩之, 大嶋 雅光, 飯塚 一成, 道下 翔吾
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_111-I_121
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/07
    ジャーナル 認証あり

    材料損傷の同定は,コンクリート構造物の維持管理において重要な技術課題である.近年,コンクリート損傷は,新たな研究開発指標と力学特性との関係から定量的な評価が試みられている.筆者らは,コンクリートの損傷度評価指標を各種応力場においてAE法により構築している.AE法は弾性波を受動的に検出する有用な技術の一つである.本研究では,AEエネルギ指標を用いて道路擁壁より採取したコンクリートコアによる損傷度評価を試みた.供試対象はひび割れが顕著に顕在化していた.検出したAEを力学特性と比較した結果,損傷蓄積との密接な関連が示唆された.載荷初期のAEエネルギの頻出は,応力ひずみ曲線から算出されるひずみエネルギとの密接な関連が示唆された.このことから,建設当初の物性値が不明であったとしてもAEエネルギ指標により定量損傷度評価が可能であると考えられる.

  • 櫻井 伸治, 松尾 奈保, 堀野 治彦, 中桐 貴生, 中村 公人
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_123-I_130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/07
    ジャーナル 認証あり

    重金属汚染土壌でも安全に農作物を生育させるために,有機質土壌改良資材(資材)を使った重金属の作物への移行抑制(不動化)技術が注目されている.本研究では,土壌(砂丘砂または水田土)と牛ふん堆肥,鶏ふん堆肥,稲わら,さらに稲わらを1,3ヵ月腐熟させた試料の計5種類のいずれかを混合させた後,銅,カドミウム,鉛を添加したバッチ実験を実施し,各金属を化学形態別に分画し,各態の濃度を測定することで,不動化効果を比較,検討した.その結果,資材の中で牛ふん堆肥が最も高い不動化効果を有すること,腐熟度を進行させた稲わらを投与することで銅の不動化が増大することが示された.さらに,重金属の化学形態をみると,金属種間で不動化メカニズムは異なることが示された.総じて,陽イオン交換容量が高く,水溶性有機物含有量が少ない資材が不動化に有効であると示唆された.

  • 亀山 幸司, 久保田 幸, 北川 巌, 岩田 幸良
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_131-I_138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,P2O5やZnが不足する黒ボク土に対して,熔リンを施用した場合との比較から,鶏ふん炭の施用がコムギの生育や土壌化学性に及ぼす影響についてポット栽培試験により検討した.熔リンを施用した場合と比較して鶏ふん炭の施用は土壌の可溶性Zn,Cuを有意に増加させた.また,熔リン処理と鶏ふん炭処理の違いによる土壌pHや可給態P2O5への有意な影響は確認されず,P2O5施用量が同量の場合,鶏ふん炭は熔リンと同等のpH中和能やP2O5補給能を有することが示唆された.従って,鶏ふん炭が炭素貯留資材としてだけでなく,P2O5補給資材,微量要素供給資材として有用であることが示された.ただし,鶏ふん炭を多量に施用する場合には,土壌交換性K,Ca,Mgの大幅な増加により,土壌の塩基バランスを損なうリスクに留意する必要があると考えられた.

  • 金森 拓也, 有田 淳一, 浅野 勇, 川邉 翔平, 青柳 邦夫, 河端 俊典, 澤田 豊, 森 充広
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_139-I_148
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    粗骨材寸法が大きい高強度なコンクリート材料にも適用できる回転式水中摩耗試験装置を開発した.本研究では,開発した装置において,安定した流況が発生し,かつ大きな摩耗作用が生じる試験条件を実験的に検討した.結果として,①水深40cm・回転速度70rpmの条件で安定した水流が発生すること,②短角柱状(19×19×20mm)の研磨材を用いることで大きな摩耗力が働くことが確認された.また,コンクリートやモルタルを対象とした促進摩耗試験から,供試体に発生する摩耗の特徴を検証した.その結果, 異種材料が隣接する供試体配置では,材料が切り替わる直下の供試体で異種材料間の影響を受ける可能性が示唆された.一方,このような異種材料間の影響を軽減するためには,同一材料の流下距離を長くとることが有効であることも確認された.

  • ―マルチスペクトルカメラ搭載UAVによる評価―
    金子 大輝, 柿本 健吾, 柏木 淳一, 谷 宏, 山本 忠男
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_149-I_156
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    本研究では大区画水田を対象にUAV画像から水稲のタンパク含有率の推定モデルを作成した.タンパク含有率と植生指数との相関を調べた結果,最も高い相関係数を示したのは,出穂後38日のGNDVIであった.出穂後38日のGNDVIを用いて単回帰分析した結果,推定精度は良好であった.推定モデルを用いて作成したタンパク含有率推定マップから,タンパク含有率は圃場整備前の区画に応じて明瞭に異なり,切土部よりも盛土部で高くなることが示された.タンパク含有率と同様に,土壌の可給態窒素量は切土部よりも盛土部で多くなった.以上のことから,本対象圃場では,圃場整備に伴う可給態窒素量の偏りによってタンパク含有率の差が生じたと考えられる.また,UAVを用いることで圃場整備によるタンパク含有率への影響を観測できる可能性が示唆された.

  • 皆川 裕樹, 宮津 進
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_157-I_165
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    水田用の落水枡と田んぼダム用の落水量調整器具の組み合わせを6通り想定し,それぞれの機能を評価した.まず水理実験を通じて,流出量計算に用いる各器具の流量係数を推定した.次に,各器具の流量係数を設定した一筆水田モデルを構築し,そこに100~500mm/3dの範囲で9通りの雨量規模を設定した模擬豪雨を入力して,流出量及び田面水深の変化を計算した.その結果,全ての器具で流出量のピークカット機能が発揮されたが,ここで用いた一体型の器具は100~150mmの時に特に効果が高く,分離型の器具は300mmの雨量規模で効果が最大化した.同時に,田面水深の上昇と逓減についても器具毎の特徴を評価できた.田んぼダム実施の際には,防災効果を期待する降雨規模を設定すると共に,現地水田の状況を把握した上で,適切な器具選択と設置方法を事前に検討することが望ましい.

  • 高瀬 恵次, 藤原 洋一
    2022 年 90 巻 1 号 p. I_167-I_173
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル フリー

    本研究では集中定数型水循環モデルを構築し,2015年5月に手取川上流域で生じた大規模な斜面崩壊に伴う高濃度濁水が扇状地の地下水位に与えた影響を検討した.濁水発生前の水文データに基づいて地下水位変動を再現するモデルパラメータを同定した後,そのモデルパラメータを用いその後の地下水位変動を計算した.その結果,濁水発生前の2015年4月まで計算地下水位は実測値にほぼ一致するが,濁水発生直後から実測値が計算値に比べて急激に低下し,その後数年間を経て両者の差がほとんど解消されていることを示した.このことは,濁水発生後に水循環モデルには反映されない現象が発生したことを意味し,これまでの研究成果と併せて,実測地下水位の低下は濁水による河川からの伏流および主に水田からの浸透の減少によるものと判断された.

研究報文
  • 遠藤 明, 今川 貢, 上平 章弘, 杉山 憲雄
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_1-II_8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    青森県上北地域は土壌物理性が良好な黒ボク土が広く分布し,ナガイモやゴボウ等の根菜類の一大生産地域として知られている.著者らは黒ボク土のナガイモ畑圃場において,ナガイモ栽培の際にトレンチャーを用いて形成する植え溝の土壌理化学性を把握した.また,ナガイモ成育期間中の植え溝における土壌硬度計測と,フィールドモニタリングシステム(FMS)を用いて土壌水分および電気伝導度の推移を深度別に計測するとともに,収穫時にナガイモ塊茎の観察と品質調査を実施した.ナガイモ収穫時の11月上旬の10,30,60 cm深では,土壌圧縮による乾燥密度の増加の影響を受けたことで,5月中旬と比較して飽和透水係数は減少,また,乾燥密度は約1.2倍に増加した.さらに,30 cm以深の土壌硬度は時間経過とともに増加したことから,約半年間の成育期間を経て,植え溝における土壌物理性の変化が明らかになった.30,60,100 cm深の土壌水分飽和度は増加傾向にあり,95 cm以浅において土壌水が溜まりやすいことが示唆された.土壌水分の観測結果から,塊茎が成育肥大期に3日間程度の過湿状態に晒されたものの,収穫時のナガイモ塊茎に腐敗や奇形は認められなかった.以上のことから,FMSを用いた土壌環境観測を行うことにより,従来不明であったナガイモ成育期間中の土壌水分および土壌間隙水の電気伝導度の増減挙動が明らかになった.

  • ―東北地方の水田灌漑地区における事例研究―
    武馬 夏希, 中矢 哲郎, 浪平 篤, 樽屋 啓之
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_9-II_18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    水田灌漑のための用水路系において,上流側の開水路と下流側のパイプラインを調整池が接続している地域を対象に,調整池が上流側の水利用に及ぼす影響を評価した.対象地域では,用水スケジュール策定において調整池への流入量を削減し,その削減量を開水路受益地に再分配している.これにより開水路受益地の用水量を平均から最大約20%増加させ,水利用の弾力性を向上させている.また日々の運用上では,あらかじめ上流側で多く取水することで調整池の流入量を可能な限り減少させておき,調整池の急激な水深低下等の場合のみ流入量を臨機応変に増加させている.この運用手法により地区全体で水利用の弾力性を更に向上させることができる.本運用手法を用いることで,水需要が逼迫する時期には,調整池により24時間を超えた需給調整が行われていた.

  • 鈴木 哲也, 長崎 文博, 小林 秀一
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_19-II_28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    ジャーナル 認証あり

    近年,腐食した鋼矢板護岸の長期耐久性と補修品質の向上が技術的課題として議論されている.筆者らは,パネル被覆工法の一つである鋼矢板‐コンクリート複合材を開発し,既存施設に適用している.本報ではパネル被覆工法を対象に現地踏査を試み,変状実態とその防止対策を考察した結果を報告する.検討の結果,補修施設では地下水の滲み出しとパネル材表層のひび割れが確認された.補修箇所の変状発生を抑制するためには,実環境を考慮した地下水処理対策とひび割れ抑制を考慮した施工対策が必要であることが明らかになった.

  • 廣瀬 千佳子, 廣内 慎司, 山田 雅一, 岡 直子, 降籏 英樹, 堀野 治彦
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_29-II_41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    カーブナンバー法は,日降雨量とその降雨が発生したときの土壌状況等から決まるカーブナンバー(CN)の値から直接流出高を計算する方法であるが,適用する条件によっては精度が良くなく,アメリカ国農務省や研究者により簡易な修正が提案されている.ガーナ国北部州の既存ため池を対象として,簡易な修正のうちa)標準のCNを用いた方法,b)平均CNを用いた方法,c)先行降雨を考慮に入れた方法,d)初期遮断比を変更した方法,についてCNの適用性を検討したが,いずれの手法も直接流出高の再現性が良くなかった.このため,アフリカで比較的容易に入手可能な雨量データを用いた重回帰分析によりCNを推定するモデルを考案し,検証を行った.この結果,日降雨量の自然対数,旱天日数,降雨強度を用いたモデルのNSE(Nash-Sutcliffe efficiency)は0.74となり,満足な結果を与えるモデルとなった.

  • ― 発酵不良に陥る条件と窒素添加による改善の可能性 ―
    中村 真人, 柴田 浩彦, 折立 文子, 蒲地 紀幸, 山岡 賢
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_43-II_51
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル フリー

    集排汚泥の混合割合を重量比50%とし,生ごみと,C/N比が36.1と比較的高い食品廃棄物であるすだちの搾りかすの割合を変化させた6条件で混合メタン発酵試験を行い,すだち搾りかすの混合割合が発酵の安定性に及ぼす影響を把握した.その結果,すだち搾りかすの混合割合が小さい場合にはメタン発酵は順調に進行したが,すだち搾りかすの混合割合が20%より大きい場合には,pHやバイオガス発生率の低下が見られ,発酵不良に陥った.発酵不良となった条件の原料に尿素を添加したところ,メタン発酵は順調に進行したことから,発酵不良の原因は窒素不足であることが明らかとなった.原料段階での尿素の添加(本研究では重量比で0.1%添加)は,発酵の安定性向上だけでなく,発酵残渣である消化液の窒素濃度上昇による消化液の肥料価値の向上や散布作業の効率化につながる.

  • 北村 浩二
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_53-II_64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    ICT自動給水栓の導入を決めた農家の期待と不安について,質的研究の手法であるSCATを用いて分析した.ICT自動給水栓への期待としては,①水管理の在宅での遠隔操作,②データの可視化による水管理の操作ミスの削減,③全圃場での最適な時間での水管理の実現,④水管理作業の省力化,⑤水管理に要する人件費の削減,があることが明らかとなった.不安としては,①輪番灌漑の継続的な実施の必要性,②ICT自動給水栓の盗難・破損・故障,③データ送信の不具合,④ICT自動給水栓やスマートフォンの作動不良,⑤ICT自動給水栓の着脱の困難性,⑥代かきや間断灌漑といった複雑な水管理への不適応,が明らかとなった.また,ICT自動給水栓を導入しても,農家は稲の生育状況の確認のための田廻りの必要性を感じていることも明らかとなった.さらに,これらに対する検討課題についても考察した.

  • ― 住民参画による維持管理が継続する滋賀県甲良町北落地区を事例に ―
    廣瀬 裕一, 中島 正裕, 新田 将之
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_65-II_75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル 認証あり

    農業水利施設高度利用事業によって農業水路の親水機能を発現した滋賀県甲良町北落地区を対象に,現在の住民の農業水路に対する選好性・非選好性を決定する要因を解明することを目的に,評価グリッド法を用いたインタビュー調査を行った.その結果,選好性・非選好性の決定に影響を及ぼす要因は,水路が存在すること,水路への入りやすさ,景観を配慮した整備の程度,水路のコンクリート化の程度,水量,生物種の数,水路の美化に取り組む人の存在,ゴミの量,水のきれいさ/汚さ,ヘドロ・藻類の多さ,水路沿いの道幅,渇水時の水利用の自由度であった.これらの要因が農業用水の地域用水機能や高温の緩和,安全性,住民による水路の管理の程度等に対する判断に影響して,情緒や必要性,利便性,安心感等の評価に影響して選好性や非選好性を決定することが明らかになった.

  • 吉本 周平, 土原 健雄, 白旗 克志, 久保田 富次郎, 石田 聡
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_77-II_83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル フリー

    大雨時に農業用水源となる河川で発生する放射性セシウムの流出を検知する手法として,防水容器に封入したNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いた測定システムを構築し,現地観測した.その結果,河川水位上昇時にはバックグラウンドの遮蔽効果によるピーク計数率の低下が,まとまった降水後には濁水中の放射性セシウムによるとみられるピーク計数率の上昇が観察された.また,解析で得られた放射性セシウムの2つのピークの計数率の比やピークの関心領域と検出器温度の関係が既往の知見と整合的であったことから,本研究での測定が妥当であったと判断された.さらに,平滑化2階微分によるピーク計数率の顕著な変化の検知方法を提案した.この方法はリアルタイム測定に適用可能であり,パラメータ調整や濁度など他の指標を組み込んだ統合的評価によって検知精度の改善と水管理上の有用性の両立が見込まれる.

  • 福本 昌人, 篠原 健吾
    2022 年 90 巻 1 号 p. II_85-II_92
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/21
    ジャーナル フリー

    暗渠排水の計画に資するため,Sentinel-2衛星データと圃場区画データを用いて水田の排水性の良否を圃場毎に判定する手法を開発した.判定対象は,麦が作付けられていない稲収穫後の圃場の区画ポリゴンである.まず,近赤外バンドの区画平均がある閾値以上の区画ポリゴンを未耕起状態と判定し,除外する.次に,残った区画ポリゴンのうち,短波長赤外バンドの区画平均がある閾値未満のものを排水不良,それ以外を排水良好と判定する.2021年2月21日(大雨の6日後)のSentinel-2衛星データによる判定結果を,2021年2月20日の航空写真を目視判読して判定(田面の全体が湿っていれば排水不良)した結果と照合したところ,全体の正答率(面積ベース)は84%であった.本手法は,田面の乾湿状態を判定指標にしているので,大雨から衛星撮影日までの日数によって判定結果が変わるという欠点がある.

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