粘土質土壌の土粒子表面物性の一側面としての,水蒸気吸着法によるいわゆるH
2O比表面積について,各種土壌別(非火山灰下層土,火山灰表土,火山灰下層土)の特徴,CECや吸着カチオン種との関連,コンシステンシー限界との対応関係などについて実験的な検討を行った。
得られた結果は次のように要約される。
1.脱水過程のH
2O比表面積を平均的にみると,火山灰表土で最も大きく200~320m
2/gであり,次いで火山灰下層土150~340m
2/g,非火山灰下層土は最も小さく70~160m
2/9であった。脱水過程と吸湿過程のH
2O比表面積の減少率は,非火山灰下層土では約30%の値を示すのに対し,火山灰土壌の表土と下層土はともに50%前後の値を示し,火山灰土壌の水蒸気吸着のヒステリシスは大であった。
2.H
2O比表面積とSchofield法によるCECとの関係において,非火山灰下層土と火山灰表土ではほぼ直線関係が認められたのに対して,火山灰下層土では一定の関係は認められなかった。
3.単一カチオン吸着土としてのNa土とCa土の水蒸気吸着特性を比較すると,非火山灰下層土では吸着カチオン依存性が存在するのに対し,火山灰表土と下層土はほとんど変化は認められず,土粒子のカチオン吸着基の質的差異の反映とみなされる。
4.土・水系の力学的転移点としてのコンシステンシー限界とH
2O比表面積の関係において,LL,PL,SLについては,H
2O比表面積とほぼ直線関係が存在するが,水中沈定容積については,土粒子の荷電特性とH
2O比表面積の両者が関与している。
謝辞 本研究の実験の一部を担当した北海道大学農学部土質改善学教室専攻生の大沢正人君に感謝の意を表する。
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