地表薄層流による黒ばくの侵食は複雑である。土壌侵食過程には雨滴による土の分離, 輸送と地表薄層流による土の分離, 輸送という4過程がある。土壌侵食を解明するうえで4過程を分割して研究することは重要である。また, それらに及ぼす種々な因子について多くの実験を系統だてて行い, 明らかにしていかねばならない。ここに, 地表薄層流による土の分離と輸送という問題のみを取上げ, Kalinskeの掃流砂量式を利用して黒ぼくにおける侵食量の無次元表示を試みた。また, 重回帰分析を用いても同様に定量的解明に務めた。この論文にて明らかにしたことは以下のようである。
黒ぼくの侵食において, その侵食量と砂量は一次の直線関係にて示され, 勾配が14%以上では砂量が流出土の大半を占めている, そして, 土粒子が団粒として流出している。それゆえに, 掃流砂量式の適用を考え, 黒ぼくの侵食量について無次元表示を試み, 黒ぼくに関する室内, 野外での実験式を示している。また, 地表薄層流による黒ぼくの侵食量は砂量を考慮すると, Kalinskeの曲線とおおむね一致する。いくつかの変数を考える時, 掃流力, 流速, 土の平均粒径, 水深が地表薄層流による侵食において用いられる最も重要な因子である。重回帰分析による黒ぼくの侵食量予測式は (11) 式にて表わされる。重相関係数は0.964である。そして, 掃流力因子は侵食量変動の約76%に寄与している。
流速は流量, 斜面長および斜面勾配の3変数による重回帰式にて予測できる。
なお, 本論文では地表流去水を薄層流として解析を行ったが, 実際の侵食は特定部分に流れが集中して起るのが普通であり, この点は今後検討してゆきたいと考えている。
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