農業土木学会論文集
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1988 巻, 134 号
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  • 代かきの研究 (I)
    長利 洋
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 1-7,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    漏水防止の一般的な手段であるトラクタによる代かきを取上げて,代かきの不均一性を解析した。
    代かきを構成する代かき作用として,代かき機による代かき撹拌とトラクタ車輪が加わる踏圧撹梓の代かき作用に分けた。代かき作用と降下浸透の関係から,代かきの作用内容により降下浸透抑制効果には差があることが分かった。さらに代かき時のトラクタの軌跡から,圃場内の代かき作用の分布を解析した結果,代かき作用は作用回数・分布とも不均一であることが分かった。
    以上のことから,代かきを均一な作業としてとらえることは適当でなく,代かきは代かき撹拌作用と踏圧撹拌作用の組合せ作用であるといえる。
  • 農業地域における生産力評価に関する基礎的研究 (III)
    長 智男, 黒田 正治, 星川 和俊
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 9-18,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌水分条件の相違が植物生産・生長に及ぼす影響を検討するため,本研究では多様な水分コントロール下でのダイズを用いたポット栽培実験を行った。その結果,各生育ステージでの総蒸散量は乾物生産量とよく一致すること,また土壌水分ストレスによる葉面積の生長抑制量は総蒸散比(水ストレス下での累加蒸散量/水ストレスを受けない場合の累加蒸散量)によって,.一次関数として説明されることが明らかになった。以上から,総蒸散量と葉面積生長量は水ストレスが存在する場合の植物生産力,生長を表す有効な指標となることが確認された。
  • 農業地域における生産力評価に関する基礎的研究 (IV)
    星川 和俊, 長 智男, 黒田 正治
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 19-26,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,前報のダイズのポット栽培実験結果から,土壌水分が不足する場合の蒸散量推定法を検討した。これは葉面積とポテンシャル蒸散量,葉面積比と総蒸散比の各関数関係,ならびに土壌水分不足下での蒸散量低減則を用いて,植物の生育段階に応じた蒸散量と葉面積の生長量を推定していく方法である。本法を用いて,前報の多様な水条件をもつ実験値を推定した。推定値は実験結果とよく一致し,その有効性が確認された。次に,この蒸散量推定法と潜在生産力評価法を併用することによって,地形,気象条件に加えて,土壌水分条件も考慮した生産力評価への可能性を示した。
  • 國武 昌人, 加来 研
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 27-34,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    調整池として作られた鉄筋コンクリート製ファームボンドの壁体に,漏水を生ずる大きさのひびわれが発生したので,現地調査を行った。
    ひびわれ発生の主原因は,既打設,既硬化のファームポンド底部コンクリートによる壁体下部の拘束によって,収縮が妨げられたためと考えた。
    次に,有限要素法で数学モデルを作成し,コンクリートの収縮による応力と破面を計算し,実測のひびわれと比較して,数学モデルの有用性を明らかにした。
    さらに,ひびわれ対策として,数学モデルでひびわれを確認した後,収縮目地を設けてひびわれをコントロールし,その後防水工を施工する方法を提案した。
  • 南九州におけるクロボク土壌を例として
    山村 善洋, 長 智男, 黒田 正治
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 35-44,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    南九州クロボク火山灰土壌を対象に水分変動調査を行った。土壌水分動態を考慮するために,土壌内でのフラックスの方向をトータルポテンシャル勾配に基づいて決定した。クロボク土壌では,潅漑または降雨の後,重力降下が長期間継続することが顕著に認められた。計画設計基準によると,消費水量は原則として土壌水分減少法に基づいて決定される。この方法で得られる水量は一般に実際の消費水量よりも多いと指摘されている。その理由は,クロボク土壌の場合,重力降下水量が土壌水分減少法により算定される値に多量含まれているからである。したがって,消費水量の算定に際して,土壌水分減少量から重力降下水量を除くべきであることを指摘した。
  • 新垣 雅裕
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 45-50,a1
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    団粒の形状特性を評価したあと,団粒の収縮特性を土壌水分のpFとの関係で考察し,団粒の内部構造の面から議論した。
    乾燥途上にある個々の団粒を拡大鏡で観察し,その形状因子(幅,長さ,高さ)を求めた。これにより団粒は収縮過程において形の相似性を保つことを示した。団粒の体積とpF値の関係は一般に折れ点をもって直線で表される。これに基づき,団粒の収縮挙動が団粒の大きさ,およびpF値の領域(pF≦4.2,4.2<pF)の二者の関係で定まることを明示した。またこのような特徴は,団粒構造の階層性によって定性的に説明できることを示した。
  • 井上 久義, 長谷川 周一, 宮崎 毅
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 51-59,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文は,乾燥亀裂と弾丸暗渠を有する粘質土圃場の横浸透の量的評価と流れの物理的性質について述べたものである。試験は,圃場に設けた長さ500cm,幅150cmの不撹乱土壌ブロックを用いて行い,これを流れる水のフラックスを測定した。この結果,(1)圃場の透水係数は100cm3コアの値より4~6オーダ高い値を示す,(2)深さ35cmにある弾丸暗渠を主に水が流れる場合には,ダルシー則の適用は必ずしも保証できないが,亀裂部分のみを水が流れる場合には,ダルシー則を適用し得る,(3)弾丸暗渠を主に流れる場合には,ブロック長の影響を受けるが,亀裂のみを流れる場合には,水の流れ方はブロック長によりほとんど変化しない,などが明らかになった。
  • 土壌アルベドの日変化機構に関する研究 (III)
    新庄 彬
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 61-68,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ビーズ面での反射量を定量的に取扱う基礎式に2次反射効果を加味した。これに基づき,・同一色の小ビーズ面上に同一他色の大ビーズを散布する場合,散布量の増大に伴い反射量の増減という変化が測定されるが,アルベド日変化という観点からみれば,その測定量は何ら無関係であることを明らかにした。
    結論として,アルベド日変化は表面の2次反射効果に支配され,その特徴は表面特性量の相乗的効果によるといえる。しかし,この結論は土壌の反射機構とは幾分異なる。その原因として,ビーズ面は正反射が支配的であるが,土壌層は拡散反射や後方散乱という反射形態をも有することが挙げられる。
  • 杉山 博信, 角屋 睦, 永井 明博
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 69-75,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    貯留関数モデルは,本質的には集中型モデルであるが,これを複数地目が混在する流域にも適用できるように,このモデルの総合化を目指している。
    はじめに,種々の土地利用形態を含む14流域48出水についてSP法により求めた最適定数を統計的に考察し,貯留関数の実用的な定数推定式を提案した。次いで,この定数推定式を用いて貯留関数モデルを分布型モデルとして拡張適用するための方法を提示し,それらの有用性を実証している。
  • 島田 正志
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 77-84,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    管路の接続情報(接続行列)で定式化された定常流管網解析(節点水頭解析)がパイプライン非定常流にも拡張でき,バルブ閉鎖問題も取扱い可能となる。緩やかに変化する非定常流を解析する剛性モデル理論を接続行列でグラフ理論論に体系化し,弁の完全閉鎖時にも閉路組替えの必要がない常微分方程式系の処理が可能となった。また,弾性を無視するので,バルブを損失係数で制御した場合,任意にバルブ閉鎖ができない。微小流量をゼロとみなし弁を完全閉鎖する方法が有効であるが,流量保存則を満足させるための誤差補正の考え方,計算アルゴリズムを接続行列を基礎として示した。
  • 秀島 好昭, 廣瀬 照光
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 85-92,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今日,低品質の軟質岩をダム材料として活用する技術開発が望まれている。軟質岩は,粒子破砕により締固め特性・透水性に著しい変化を示し,硬質岩に比べ勇断抵抗の発現が小さいなどの特徴をもつ。道内国営潅漑ダムの岩石材料の力学的特性は,とくに吸水率の大小に強い関係がみられる。たとえば,勢断抵抗角φdは,吸水率の小さいものほど大きい傾向を示し,破壊時のダィレタンシー比(-dεv/dε1)fも吸水率が小さいものほど大きなことが示される。本論では,岩石材料の吸水率を指標にその力学的定数との関係について整理を行った。
  • 月岡 存
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 93-99,a2
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の温度応力によるひびわれ防止に資することを目的として,おもに初期材令コンクリートのクリープと応力緩和の関係についての実験研究を行った。その結果,クリープひずみと載荷後時間ならびに緩和応力と載荷後時間の関係の実験式を求めた。次に,コンクリートの緩和応力は,クリープ係数を使用した有効弾性係数法による緩和応力の計算値から推定できることがわかった。一方,Wittmannの方法による緩和応力の計算についての検討も行りた。また,クリープ特性および応力緩和特性に及ぼすコンクリートの種類,載荷時材令および載荷応カ-強度比の影響についても検討を加えた。
  • 酸性水中におけるコンクリートの劣化について (IV)
    服部 九二雄, 柘植 巳一
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 101-108,a3
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    AE剤は,コンクリートの耐凍結融解性を改善するものであるが,同時にその耐化学抵抗性も向上させるといわれている。そこで,pH値が,過去14年間(1973年以来)平均して3.6の谷川の水中に,AE剤を混入した普通ポルトランドセメントから成るコンクリート供試体を浸漬し,その耐久性(耐酸性)を5年間(1981~1986年)にわたって追跡した。測定項目は,質量および体積減少量,曲げ強度,圧縮強度,動弾性係数である。また,表面劣化の進行状態にランクを設定し,その定量化も試みた。その結果,AE剤の添加は,コンクリートの耐酸性の改善または向上に効果を有するが卓越したものでないことがわかった。
  • 河地 利彦
    1988 年 1988 巻 134 号 p. 109-122,a3
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    前稿に引続き,有限要素法によって解析される残りの水工学問題を取扱い,この一連の研究を完了させる。論議を容易にするために,問題を便宜的に“対流・分散問題”,“波動および開水路流問題”,“沿岸水域問題”,“陸水盆問題”,および“水質環境問題”に分類する。問題ごとに,啓蒙的な関連文献を取上げてその寸評を行い,今後に残された研究課題を呈示する。最後に,広い視野に立って,手法の適用研究の今後の見通しを示し,研究のこれからの方向はこれまでに取組まれてきた問題について再度突っ込んだ検討を行うことと,大規模な連成問題の解析を可能にすることであると強調する。
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