農業土木学会論文集
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1989 巻, 144 号
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  • 遠心力場内における土壌の挙動 (III)
    櫻井 雄二, 佐藤 晃一
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 1-7,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    体積~含水量関係がII,III型を示す圧縮性土壌において、載荷作用のない保水性測定法(吸引法、圧板法、圧膜法)によるpF~含水比曲線に基づいて,遠心法における載荷圧力の水分ポテンシャルへの寄与を検討し,載荷圧のある場合の保水性を考察した。
    III型(ΔV=ΔVw)試料は載荷圧がそのまま水分ポテンシャルの増分に対応した。II型(ΔV<ΔVw)試料は,約pF3まではIII型試料と同様である。pF3以上を示す試料の上層部では,その水分勾配が無載荷法のものと一致した。載荷圧の効果とこの水分勾配の性質から,圧縮性土壌の遠心法と無載荷法との差異を説明し,載荷圧のある場合の保水性を論じた。
  • 愛知川扇状地における地下水利用に関する研究 (I)
    堀野 治彦, 渡辺 紹裕, 丸山 利輔
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 9-16,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田用水計画では、用水源として,地表水と地下水は完全に代替可能であると認識されてきた。しかし実際には,両者は異なった特質を持っているばずである。
    本論文では,愛知川扇状地を事例として、とくに水田地帯の地下水が持つ機能特性を実証的に明らかにすることを試み、水田潅概においては,地下水は中間貯留施設的な役割を果たし,潅概ピークの時間的調整に役立っていることを推論した。しかも,ここでの地下水利用は,循環的水利用に属し、地下水利用量をある程度増加させても循環速度が速くなるのみで,地下水位の変動には大きな変化が見られないことも明らかにした。
  • 愛知川扇状地における地下水利用に関する研究 (II)
    堀野 治彦, 三野 徹, 丸山 利輔
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 17-24,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,愛知川扇状地を一つの容器とみなした場合の年間地下水貯留量変化を推定し,本地区のマクロな・地下水循環特性を検討した。
    まず,地下水流動シミュレーションおよび潅滅終了後の地下水位逓減状況の分析によって,地区を代表する透水量係数,貯留係数,(逓減時の)時定数を推定した。さらに,潅概期と非潅漉期の地下水位の差を,Kriging法を用いて内挿し,地区の平均値を得た。以上の結果から,本事例地区では,年間約1,400万m3の地下水貯留変化が生じていることが推定され,多量の地下水が,潅概期に形成された地下水体から流出していることがわかった。
  • 低品質骨材の有効利用に関する研究 (I)
    服部 九二雄, 柘植 巳一
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 25-32,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    良質のコンクリート用骨材の枯渇が叫ぼれて久しい。そこで,中国地方に多く散見されるいわゆる風化花こう岩としてのマサ土を,コンクリート用細骨材として使用,できるかどうか,そのコンクリートの特徴,その欠点,欠点を補う方策などを検討する実験を継続して行ってきた結果,次のような点を明らかにすることができた。
    (1)マサ土は,コンクリート用細骨材として使用できるが,川砂・川砂利から成るコンクリートと比べて,単位水量・単位セメント量が多くなる。
    (2)練混ぜて砕粒化するマサ土のような細骨材を雲茗クリートに使用する場合,砕粒化後の粗粒率をもとに配合設計する方が合理的である。
  • 松下 玄
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 33-42,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    静水時水面が管内にあるオープン型管水路を対象にして,管内で発生する跳水について,それらの形態,発生位置,水理諸特性を実験的,理論的に追求した。管内跳水は初期跳水位置がそのまま持続される単一跳水,跳水-気塊-跳水-気塊と連続的に多くの跳水が形成される多段跳水とこれらの中間の遷移跳水に分類される。これらの発生条件を下流スタンド水位,流量,管勾配,管径などの関数として,また給・排気管の有無とも関連させて論じた。また,単一跳水の発生位置を求める理論式や跳水損失水頭算出式とその特性を示し,実験で検証した。また,単一,遷移,多段跳水時のオープン型管水路の水面形,エネルギ線図などを示した。
  • パイプの傾斜ならびに上端形状が誘発流に及ぼす影響について
    木村 晴保, 神崎 公彦
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 43-49,a1
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    流れの中にパイプを立てると,パイプ内に流れが誘発される。この現象の水産面への応用には,湾内にパイプを立て潮汐流を利用して湾内水の鉛直混合を促進し,成層期における底層の貧酸素化を抑制したり,浮魚礁と組合せて深層水を揚水し,表層の基礎生産力を高める,などが考えられる。
    上記の可能性を検討するために,パイプを上下流側に傾斜固定し,傾斜角と誘発流れの関係と,パイプ上端セご各種規模の長方形板,円板,円筒を取付け,パイプ上端の形状変化と誘発流れの関係について調べた。これらあ結果,上記現象の水産面への応用の可能性が十分にあり得ることが示唆された。
  • 甲本 達也
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 51-56,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    粘土におけるフォールコーンの貫入問題を粘土の動的強さを考慮に入れて理論的に解析した。解析によれば動的コーン貫入深さhと静的な貫入深さhsとの関係は粘土の静的な非排水勢断強さCuと動的な非排水勇断強さCudとの比ζ(=Cu/Cud)のみの関数で表された(h/hs=3ζ)。この関係を用いるとHansbo式(Cu=KQ/h2,Qはコーン重量)の係数Kはコーン先端半角をα,コーン支持力係数をNcとするとK=3ζ/πNtan2αで表された。粘土における低速貫入時およびフォールコーン時と同速の貫入時のコーン支持力値よりζ=0・71が得られた。ζ=0.71のときのh/h3およびKの計算値は粘土におけるフォールコーンテスト結果とよく一致した。
  • 中山 修, 豊田 勝
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 57-65,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北陸の特色として積雪・融雪そしてそれによる春先の洪水が挙げられる。暖候期低水流量を推定するに当り流出に対する降雨を考えた場合,融雪水を降雨の中に含めることが必要とされることからタンクモデルにより暖候期のデータを用いて流出解析を行った後,degree-day法を用いた雪モデルを決定した。融雪水を含めた降雨には3.5ヵ月程度を周期とする比較的強い変動がみられ,この特性を利用した3ないし4ヵ月間の先行降雨を用いた線形重回帰モデルで暖候期低水流量を推定した結果,タンクモデルほどではないが,毎年ほぼ安定した精度で推定できたことから,このモデルは実用上十分に利用できるものと考える。
  • 松川 進, 相馬 恒一
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 67-73,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ロータリ式切換え装置を2個使用し,ベローズポンプと電磁弁を制御して,システム内に発生した気泡を自動的にサクション測定部外に排除するテンシオメータシステムを試作した。気泡は比較的良好に排除され,関東ローム撹乱表土を用いた測定では,切換え後平衡に要する時間は2~5分であった。また,同一深さの水銀マノメータ式テンシオメータ測定値との一致も見られた。切換え装置を用いたテンシオメータの平衡時間について,土壌の不飽和透水係数,ヵップと土壌の接触の程度を考慮した水分移動モデルにより,平衡時間を支配する因子の推定を試みた。その結果,土壌の不飽和透水係数よりも,土壌との接触の程度が主要因子と判断された。
  • 森 健, 戸原 義男, 四ヶ所 四男美, 平松 和昭, 加藤 治, 長 裕幸
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 75-84,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    吹送流型二層流における連行機構を解明し,連行速度則を求めるため,乱流構造に関する可視化および計測実験を行った。可視化実験から,下層水の上層への連行は,表層で放出された渦の間欠的な界面への衝突,撹乱が支配的であることがわかった。また,計測実験から,表層勢断層の乱流構造は開水路乱流における壁面近傍のそれと類似しており,界面近傍のそれは浮力効果に支配されることがわかった。可視化および計測実験の結果を用いて乱れエネルギ収支式から導かれた連行速度則は,吹送流の連行速度に関する既往の実験結果をよく説明することがわかった。
  • 森 健, 戸原 義男, 加藤 治
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 85-93,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    風の作用によって生じる閉じた密度2成層水域の乱流連行に関して風浪水槽実験を行い,連行係数Eと空気の摩擦速度を用いた層平均リチャードソン数Riaとの関係,いわゆる連行速度則について検討した。吹送流による連行係数と層平均リチャードゾン数の間には,Riaの値がおよそ100付近を境にしてE∞Ria-1(Ria>100)とE∞Ria-3/2(Ria<100)の二つの関係が成立することを示した。この領域区分は,上層のポテンシャルエネルギ増加に対する風のなす仕事の寄与率がRia>100の領域とRia<100の領域とでは異なるためであることを明らかにした。
  • 松田 誠祐
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 95-100,a2
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    降雨の面的分布特性を考慮した降雨強度一面積(DA)式を用いて,排水計画等における流域上下流の整合性を保った計画降雨の策定に利用できる流域平均降雨強度の推定法を検討した。ここで得られた主な結果は次のようである。1)DDA座標を用いてDD曲線,DA曲線およびDD曲線の関係を明確にした。2)DDA解析の立場からみた豪雨,降雨の集中度を定義し,これに関連したDD式およびDA式中の定数の同定法を示した。3)地域DA式を用いた流域平均降雨強度の推定法を示し,流域上下流の整合性を保った計画降雨の作成に応用できることを示した。
  • 林 静夫
    1989 年 1989 巻 144 号 p. 101-108,a3
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国では推古天皇時代から干ばつの記録が残されており,その後干ばつの発生頻度は新田開発とともに増加傾向を示している。最近では,農業用水の整備がある程度向上し,被害は減少傾向にある。しかし,水不足による被害は都市用水や工業用水が枯渇する渇水被害へと質的変化を示している。干ばつの影響や対策については気象学,水文,水資源学や農学の分野とともに社会・経済学の立場からも検討され,水不足対策にシステム論が導入され,水管理による有効利用が一層強調され始めたことが最近の特徴である。一方,干ばつの定義については,背景となったその時代の被害や研究の経緯を反映して,提案されていることを示した。
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