切土法面の不安定化機構の解明および崩落防止策の確立のための基礎的研究の一つとして,乾燥(110℃)-水浸-凍結(-20℃)の繰返し処理が,土壌の理化学性および粘土鉱物の性質に及ぼす影響を調べた。供試した土壌は花こう岩,砂けつ岩および結晶片岩に由来するもの,および水田表土の4種で,土性の分類名はシルト質砂もしくは粘質土である。結果はおよそ次のように要約される。
(1)いずれの土壌試料も,繰返し処理により,粒径組成はほとんど影響を受けないが,強熱減量,コンシステンシー限界,およびpF0.5-3.2における保持水量はいずれも低下した。この低下の主な理由は,乾燥と水浸・凍結の繰返しによる土壌粒子の水分吸着能の低下やaggregateの構造変化にあると考えられる
(2)主要粘土鉱物のうち,ハロイサイトは処理によってヒドラジンの層間侵入が困難になり,バーミキュライトおよびこれとク鷲ライトの中間体は収縮し,または収縮しやすくなった。これらのことは,乾燥と水浸・凍結の繰返しによって粘土鉱物の層間結合が強固になり,層間水が不可逆的に排除されるか,または侵入しにくくなることを示している。このような粘土鉱物の挙動の変化は少なくとも一部,上述の水分吸着の可逆性の低下に寄与していると考えられる。
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