農業土木学会論文集
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1994 巻, 174 号
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  • マレイシア・ムダ地区の事例
    笹野 伸治
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 1-14,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    貯水池依存の水稲一期作の場合,潅漑期初日には貯水池は一般に満水状態でなければならない.そしてある干ばつ年がN年回帰の計画基準年と定められる.この計画基準年において,用水は確実に供給されねばならない.しかし,二期作においては,潅漑期の初日に貯水池は必ずしも満水状態にあるとは限らない.貯水池の貯水量は通常は乾季に低下し雨季と休閑期に回復する.貯水量はこの上下動を毎年繰返している.計画基準年という概念が適用できない.これに代るべき何らかの新概念と計画手法が考案され提案される必要がある.
    この報告においては,マレイシア・ムダ地区におけるケーススタディとして,貯水池における水需給バランスの再点検事例,干ばつ年/豊水年の年次配列に配慮した潅漑不能乾季作の回帰年推定方法,および水不足解消対策の検討事例を提案した
  • 野中 資博, 但田 廣次, 杉田 秀雄, 森 忠洋
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 15-22,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水処理施設に発生している,コンクリートの微生物腐食機構を解明するために,3カ所の現場調査を行った.その結果,腐食機構の概略は,従来のコンクリート下水管の微生物腐食機構とほぼ同様であることがわかった.ただし,農業集落排水処理施設については,次のような特徴がある.
    1)処理水量の変動が大きく,嫌気的になりやすい.
    2)硫化水素のみならず二酸化炭素濃度も高い.
    3)処理型式によっては,微生物腐食が確実視される.
    最終的なまとめとして,汚水処理施設におけるコンクリート微生物腐食機構に関して,その階層関係を提示した.
  • 野中 資博, 杉田 秀雄, 但田 廣次, 森 忠洋
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 23-31,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水処理施設に発生しているコンクリートの微生物腐食の防止法を検討するために,31カ所の実態調査を行った.その結果,腐食機構は,前報で提示した階層関係に従っており,それに基づいて,この微生物腐食対策に関して,次のような提案を行った.
    1)硫化水素の生成防止などの根源的な対策は,その効果および費用などに問題があり,適用が難しい.
    2)現時点では,壁面被覆が最善の策である.その防食被覆設計に用いる指標として,コンクリート壁面pH,硫化水素濃度,二酸化炭素濃度を併用すべきである.
  • 喜多 威知郎, 北村 邦彦, 河地 利彦, 金 翰泰, 南 勲
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 33-39,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    複数の貯水池を含む貯水池群では,個々の貯水池の貯水容量が適切に設定されていても,降雨量の時期的および地域的な分布状況の相違のために生じる貯水池への流入量や受益地への放流量の変動により,貯水量の不均衡が生じる可能性がある.導水路で連結されている貯水池間で貯水量を調整することが可能であれば,貯水池群を一層有効に運用することが可能である.
    個々の貯水池が直列に連結されている貯水池群について,決定論的なDDDPを用いて導水路で直接連結されている貯水池間で貯水量を最適に調整するモデルを作成した.
    モデルを5貯水池を含む貯水池群に適用し,得られた結果から本モデルによる不均衡を調整する可能性について報告する.
  • 宮崎 毅, 西村 拓
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 41-48,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌の物理性をスケーリングするために従来使用されてきた相似多孔質体モデル(similar media concept)の限界を明らかにし,新しく固相特性長,間隙特性長および固相形状係数をパラメータとする非相似多孔質体モデルを提唱した.このモデルを用いて,数種の土壌の空気侵入値と飽和透水係数を乾燥密度に関してスケーリングし,空気侵入値と飽和透水係数のスケーリングが統一的に実行できることを示すとともに,飽和透水係数に関して,従来使用されてきたKozeny-Carmanの式に対する本モデルの優位性を示した.非相似多孔質体モデルの適用性は,固相形状係数の適切な決定にかかっているので,この係数の信頼性をさらに高める必要性を述べた.
  • 造成農地の水質形成機構の研究 (I)
    多田 明夫, 堀野 治彦, 渡辺 紹裕, 丸山 利輔
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 49-55,a1
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    造成農地流域で3年間,2週に1度の間隔で測定した定期水質データと,3度の降雨流出調査時の水質データをもとに,主成分分析を用いて流出成分の分離を行った.分離に用いた水質項目は溶存性のHCO3-,NO3--N,Na+,K+,Ca2+,Mg2+,Cl-,SiO2,SO42-の9つである。水質情報をもとに流出水を雨水・土壌流出水・地下流出水の3成分に分離し,水質形成機構についても考察した。
    その結果,1)流出水の水質変動には土壌流出水の水質変動の影響が大きいこと,2)主成分分析を用いた成分分離が調査流域では有用であること,3)流出水の水質変動は,施肥項目とそれ以外の項目の変動が大きな2つの要因であること,4)降雨流出時の地下流出水成分の占める割合は10%強であることなどがわかった.
  • 三野 徹
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 57-63,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    流域の水収支を構成する基本量は降雨量時系列{R}と蒸発散時系列{ET}であり,これらの時系列は,年による変動,季節による変動,日変動などの各種の変動成分が加わって,不確定で不安定な変動をする.このために水資源の利用・開発計画では,一年間の内で,水収支不足が最も顕著となる特定期間(Critical Period)における供給可能な強度によって,その年全体の水利用量が制限を受けることとなる.そこで,ここではこの期間の平均供給可能強度によって水資源の供給能を評価することとして,その具体的な計算方法を提案するとともに,その方法による評価例をもとに水資源の供給能と需要ポテンシャルについての考察を行う.
  • 取水堰にかかわる開水路系水田地区の水管理の研究 (II)
    鈴木 光剛
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 65-72,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    用水計画において,用水量の構成要素の一つとして重要な位置づけをされた管理用水に関して,実証的な研究を行い,次のような結果を得た.
    (1)本研究対象地区で,栽培管理用水と施設管理用水が同時に発生しているとき,両者の間に水量的補完関係があることを実証した.
    (2)施設管理用水に関して,幹線レベルでの発生と小用水レベルでの発生に関して,時期別の発生原因を明らかにした.
    (3)開水路系での施設管理用水の主要部分を占める水位維持用水に関して,その発生機構を理論的に明らかにした.
    (4)管理用水の定量的評価に関して,用水計画論的な考え方の分析の方向を示した.
  • 酒井 一人, 後藤 章, 中村 良太, 吉永 安俊
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 73-81,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    乾季の卓越した地域では土壌水分の変化がはげしく,蒸発散能に簡単な係数をかける方法では実蒸発散量の推定が難しい.そこで,SPAC土壌層モデルを用いた数値計算により土壌水分量と蒸発散量の関係を求め,その関係を取入れることにより流域の土壌水分状態や植性を考慮して蒸発散量を推定する蒸発散サブモデル(ETサブモデル)の構築を試みた.SPAC土壌層モデルによる数値計算から求められた土壌水分量と蒸発散量をLogistic曲線で関係づけた.ETサブモデルを組込んだ簡単な貯留型流出モデルによる長期流出解析を行った結果,ETサブモデルが流出解析において十分良好に機能していることが確認できた.
  • 観測資料に基づく成層特性の解析
    大橋 行三, Yuli SUHARNOTO
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 83-93,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    潮差の大きい強混合型の感潮密度流は,1潮汐周期間の遡上・流下の流況変化が著しく,多様な2成層流形態および密度界面の消長が見られ,安定性や特異点の解析理論との整合性が明らかでない.本研究は,肱川感潮域の観測結果に基づいて,流速および密度の鉛直分布形状を勘案した連続的な8種類の密度界面の識別アルゴリズムを考案した.
    これを用いて,経時的に遷移する6種の2成層流パターンを特定し,新たな計量法によってそれらの水理特性が特徴づけられ,各成層機構の区分が統一して説明できることを明らかにした.すなわち,固有関数を含む安定係数と質量欠損則の準用によって,遷移の速い流況を合理的に識別し,2種類の摩擦損失係数の評価可能範囲を明示した.
  • 浅井 喜代治
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 95-101,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリート用骨材のアルカリ骨材反応は,骨材中のある種の鉱物と,コンクリート中のアルカリ性細孔溶液との間の化学的反応であるとされている.本研究は,このような反応骨材に対し,籾殻灰,籾殻灰からの抽出液,液抽出後の籾殻灰および市販のフライアッシュを混入した実験を実施した.その結果,籾殻灰からの抽出液および市販のフライアッシュ混入のものについては,抑制効果が認められなかった.しかし,籾殻灰および籾殻灰煮沸後の液を取出した籾殻灰を,それぞれセメント重量の7%以上混入することにより,アルカリ骨材反応の抑制が可能であることを示した.
  • 久保 成隆, ナカセ リリオマサル, 伊藤 良栄, 中村 良太
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 103-110,a2
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    開水路非定常流計算により,潮汐の影響を強く受ける低平地での流出解析の可能性を検討した.対象流域は岐阜県の高須輪中で,輪中内の水田・畑・宅地などは多数の地表タンクで,地下水は数個の地下タンクで表現し,それらを樹枝状の排水路で接ぎ合わせて流域をモデル化した.タンクや排水路内での水の動きは,Saint.Venant方程式を陰差分法のPreissmann Schemeを用いて離散化して計算した.その際,水利施設等は,多数の内部境界条件で表現した.また,追跡期間は2カ月間であった.その結果,従来,タンクモデル等の貯留モデルでは難しいとされていた感潮低平地においても,十分な精度で解析可能なことが判明した.
  • 差分法の各種スキームを用いて
    武本 行正, 田中 雅史
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 111-133,a3
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究展望では,最近の流れの数値解析手法(差分法に限定する)に関するいくつかの解析法として,3次上流差分スキームならびにCIP法などのより高精度なスキームを解説した. さらに波動方程式. バーガース方程式.移流拡散方程式.ナビエ・ストークス方程式に適応した場合の数値解を示した. またこれらのプログラム例についても記述した. とくに,CIP法がよい結果をもたらすことを示した.
  • 中石 克也
    1994 年 1994 巻 174 号 p. 135-136,a3
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,カオリナイトの荷電状態,吸着カチオン種,粒径をコントロールして,塩濃度がNaカオリナイト・水系の塑性粘度にどのように影響を及ぼすのかを調べた.試料濃度100kg/m3,pH10の条件においてNaカオリナイト・水系の塑性粘度は,塩濃度が1.0×10-2mol/lに達するまでは指数関数的に増加するが,1.0×10-2mol/lを超えると塩濃度に依存しない.この結果は,粒子の形状や構造を定性的に把握するのに有益な極限粘度の結果とほぼ一致することから,塑性粘度がフロックの成長と密接な関係にあることが確認された.さらに,Naカオリナイト・水系の流動特性は,凝集領域において2段階の変化を示すことがわかった.
  • 1994 年 1994 巻 174 号 p. e1
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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