農業土木学会論文集
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1995 巻, 180 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • Watcharin GASALUCK, Masaki ATO, Ken OHNO, Takeshi KONDO
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 693-702,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    10種類の土 (粗砂, 細砂, 砂質シルト, シルト質粘土) を, 円筒形モールドと立方体モールドに締固め, 1方向と2方向の変水位透水試験を行った。締固め土の不飽和状態が浸透流の流れに非線形性を引き起こすにもかかわらず, ダルシーの法則が近似的には適用できることが分かった. ダルシーの法則からの逸脱が甚だしいのは, 動水勾配が1よりも小さいときであった。水平流量の鉛直流量に対する比は, 動水勾配が1より大きいときは, 概ね一定であった. 動水勾配が大きいほど, その比は大きくなった. 粗砂においては, 突固めの方法は浸透流の挙動に影響を与えなかった. 2方向試験によると, 異方性は粗い砂よりも細かい土において存在した.
  • 斜画および地下空間の設計・施工支援システムに関する基礎的研究 (I)
    小山 修平, 松下 良司, 桑原 孝雄
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 703-711,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    斜面の掘削や地下空間の構築は, 環境に配慮しつつ周辺地盤や既設構造物への影響を最小限に抑え, 安全でかつ経済的な施工を行わなければならない. そのため, シミュレーションによる施工中の挙動予測および現場計測結果に基づく地盤定数の推定(逆解析)等の基本的な情報化施工の実施が要求されている. 本研究では, FEMよりも地盤(岩盤等)の亀裂やすべり等を考慮しやすい剛体ばねモデルに基づく2次元離散化極限解析(RBSM)と拡張カルマンフィルタ法を組合せて, 観測変位から周辺地盤の地盤定数を推定するための新たな逆解析法を開発・提案する. 今回, 地下空間モデルにおいて本逆解析法の検証を行い, 応用例として, すべりを生じた地下空間, 特に近接構造物を有する地下空間のモデルを想定し, 周辺地盤の地盤定数を推定した結果について述べる.
  • 千家 正照, 西出 勤, 太田 あけみ, 小倉 健
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 713-720,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    反復利用を考慮した広域水田地帯の降雨有効化の分析法について提案し, その適用事例について紹介した.
    従来から最大水需要時の元杁取水量を算定するときに用いられるCB法の考え方を応用して, CB, RB, NBブロックの降雨が元杁取水量に与える影響について検討した結果, 以下のことを明らかにした.
    1. NBブロックにおける降雨は元杁取水量に影響しない.
    2. CBブロックの有効雨量の上限値は減水深となる.
    3. RBブロックの有効雨量の上限値は, 還元水量DRBと下流CBブロックの取水量QCBの大小関係で異なり, DRBQCBの時は減水深GRBとなり, DRB>QCBの時は蒸発散ETとなる.
  • 土壌流亡量推算式の適用性に関する研究 (I)
    Kingshuk ROY, 日下 達朗, 深田 三夫
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 721-729,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    これまでに提案されている土壌流亡量推算式は, 山口大学内枠試験圃場から得られたデータを比較検討した結果, 裸地圃場に対しては比較的高い適用率が得られている. しかし式中の侵食係数に含まれ, 作物の生長に伴う被覆の状態や圃場の形態を表す係数の値については十分に検討されていない. そこで, 2年間にわたり生育形態の異なる数種の作物を自由型枠試験圃場に栽培し, 降雨量, 流出水量, 流亡土量等の測定結果をもとに, 推算値と実測値の比較から, 式中における各栽培作物ごとの係数の定数化を試みた.
  • 山腹切土法面を対象にした連続繊維緑化基盤工の実用化
    横塚 享, 山本 太平, 田中 明, 井上 光弘, 杉山 靖, 瀬川 進
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 731-739,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自然環境の保護・復元が大きな課題として取上げられている今日, それを具体化する技術としての緑化工が注目を浴びている. 開発や整備に伴い出現する山腹切土法面などの荒廃裸地において, 緑化工の施工は不可欠である. こういった急傾斜法面に造成された薄層の植生基盤の水分動態について, 有限要素法によるシミュレーション解析を行った. また, 計算結果と実験フィールドにおける測定値との比較により, 水分動態予測と山腹切土法面などの緑化困難地への適用の可能性を検討した.
  • 緒方 英彦, 國武 昌人, 近藤 文義, 中沢 隆雄, 山下 博
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 741-749,a1
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリートボックスカルバート壁体に発生する温度ひびわれの防止方法として保温養生方法は有効である. 今回, 新たに保温養生方法を実物のコンクリートボックスカルバートに適用した結果, 1本の温度ひびわれも発生しなかった.
    この事実を基に, これまでに行ったコンクリート壁体内部の温度計測結果を用いて, 保温養生方法についての基礎研究を行った. その結果, 温度ひびわれを発生させないために必要な限界降下温度勾配と, それに必要な内部環境温度の増加量を求めることができた. また, これらを総集することで保温養生方法の簡易的システム化を行った.
  • 永井 明博
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 751-756,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    山地8流域で最適同定されたモデルに基づき, 長短期流出両用モデルの標準的定数を提示した. このモデルが洪水流出, 長期流出について, 対象8流域の平均的結果を与えることを数値実験的に示した. また, 菅原の提示する標準的長期流出タンクモデルと標準的長短期流出両用モデルとを比較して, 両者はほとんど同じ流況を与えることを14年間の流出計算から確かめた. さらに, この標準的長短期流出両用モデルを同定対象外の3流域の長期流出に適用し, 好結果が得られることを実証した. 以上から, ここに示した標準的長短期流出両用モデルは, 定数推定の際の初期値, または観測値のない流域の流況推定にある程度利用できるものと期待される.
  • 沖縄県における赤土流出のモデル化に関する研究
    酒井 一人, 吉永 安俊, 翁長 謙良
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 757-765,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    表面流出を雨水流モデルにより計算し, その計算に流出土砂量を推算するモデル(LQ式, Meyerモデルおよび本研究で考案した浮遊土砂濃度解析モデル)を組込み, 浮遊土砂濃度の解析を行った.
    その結果は次のようである.
    1) ガリを水道とする表面流出では, 出水の規模により, 同一圃場でも粗度係数が違う場合があると考える.
    2) LQ式は浮遊土砂濃度の解析には適さない.
    3) Meyerモデルの適用では, 受食性の強い土壌の場合, 土砂流出は運搬能力に支配されると解釈できる結果となった.
    4) 浮遊土砂濃度解析モデルは, 流量と浮遊土砂濃度の関係におけるヒステリシスを含め, 浮遊土砂濃度時系列の再現に有用であることが認められた.
  • Masayuki FUJIHARA, Toshihiko KAWACHI
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 767-776,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海の豊後水道に人工湧昇流発生構造物が設置されている. この構造物により湧昇した栄養塩等の輸送経路を予測することを目指して, 第一段階として長期的な物質輸送に重要な役割を果たす残差流を再現するため診断モデルの適用を試みた. 成層が発達して湧昇流が抑制される8月の状態を想定し, 水産試験場が測定した過去5年間の水温・塩分場から客観解析により密度場を求めた. そして, アメダスを利用して, 8月の豊後水道上の風応力分布を求め, さらに潮流計算を基に潮汐応力を計算し, それらを6層位の診断モデルに組込み, 密度流・吹送流・潮汐残差流が計算可能なモデルを構築した. 計算結果は現地データとの比較により検証し, 考察を行った
  • Toshihiro MORII, Kunio HATTORI, Takashi HASEGAWA, Kiyoshi SHIMADA
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 777-784,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アースダムや河川堤防などの盛土構造物を対象に, 豪雨とそれに続く外水位の変動を受けた場合の浸透流動, 有効応力挙動および安定性の相互関係を調べた. 検討手段として, 飽和・不飽和浸透流解析, 応力・変形解析および斜面安定解析を組合せた有限要素法を用いた. 単一の豪雨が継続したのち, 外水位上昇, 一定高水位および外水位低下が起きるとした. アースダムの安定性は, 要素応力を用いて計算した円弧すべり安全率で評価した. そして, 次の結果を得た.(1)非定常浸透によって生じる堤体内の応力変化を通して, ダムの不安定化を良好に説明できる.(2)豪雨そのものより, それに付随して生じる外水位の変動からより大きな不安定化の作用を受ける.
  • 融雪解析におけるKalman Filterの応用 (I)
    鎌田 新悦
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 785-794,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    DDF法によって得られた融雪量と観測降雨量をLST-IIモデルの入力とし, さらに第1タンク~ 第4タンクの水深をKalman filterの状態変量とし, ダム地点における日単位データを用いた場合のKalman filterのパラメータの最適化を行った. その結果,(1) システムの応答特性を改良するためにはダミー降雨が有効である(2)急峻な立ち上がりの融雪現象の場合, 第2タンクの水深がモデルの物理的制約を超えないようにKalmanGainの再配分が必要である.(3)急峻な立ち上がりを伴わない場合は予測値と観測値の良好な一致がみられる,等のことが明らかになった.
  • 角保 彰紀, 松川 進, 加藤 秀正
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 795-802,a2
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    pHの異なる硝酸溶液を関東ローム表土, 心土, および黄色土に浸透させ, 硝酸溶液が土壌の透水性と塩類溶脱に及ぼす影響を実験的に考察した. 硝酸溶液を土壌カラムに浸透させた後, カラムを分解し, 塩類濃度, 土壌水のpH, 水圧ポテンシャル分布などを測定した.
    硝酸溶液の浸透により, 酸性側で分散する土壌は顕著に透水性が低下したが, 有機物に富む土壌では透水性低下の程度は軽減され, 酸性側で分散しない土壌では透水性低下は少ない. また, 土壌粒子の分散はイオン交換の場を新たに形成するため, 酸性側で分散する土壌では塩類の溶脱が促進された. pHと土粒子分散特性有機物含有量が透水性と塩類溶脱に影響することを示した.
  • 都市緑地における植生の土・水環境 (III)
    矢部 勝彦, 谷川 寅彦, 衣裴 隆志
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 803-809,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市緑地の造成と保全が全国的に叫ばれているが, 現存する都市緑地における土・水環境に対する現状認識や分析はほとんど行われていない. そこで, 造成後数十年が経過した樹林地を対象に一年間を通じての土壌水分環境を土壌水の動態と水分消費特性から追究した. その結果, 調査した造成樹林地では保水力が小さく, 夏季には土壌の乾燥が激しく, 冬季には過湿状態になるので排水改良が必要であることがわかった. すなわち, 熟化した樹林地であっても土壌水分環境は必ずしも十分でなく, 土壌や土層の改良が必要であることを明らかにした.
  • 都市緑地における植生の土・水環境 (IV)
    矢部 勝彦, 谷川 寅彦, 衣裴 隆志
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 811-818,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市緑地の樹林地に隣接して存在するナシとカキ植栽地を選定し, 年間を通じての土壌水分環境を土壌水の動態と水分消費特性から追究した. また, 既報の樹林地における土壌水分環境と深さ100cmまでの土層平均で比較検討した. 樹園地は土壌の乾燥が夏季でもそれほど進まず, せいぜい深さ40cmまでであり, 冬季では過湿になることが分かった. また, 樹林地より湿潤あるいは過湿になることが分かった.
  • モデル事業実施地区のアンケートに基づく分析 (III)
    有田 博之, 唐崎 卓也, 松尾 芳雄
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 819-825,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村公園の計画手法開発の基礎的調査として, 農村総合整備モデル事業実施市町村を対象に実態把握を目的として行ったアンケート結果の分析で, 農村公園の利用と維持管理の状況を検討し, 計画課題を抽出した.
    特徴的事項として, 以下のような傾向があった(1)利用形態は多様化(スポーツ化・コミュニティ機能の拡大)し, 定型的ではない整備形態の要求を生み出している.(2)中山間地等では公園システムの計画でも独自の対応が求められている. 過疎等の理由で利用率が低い地区では画一的な整備に対し懐疑的傾向がある.(3)市町村は維持管理を住民組織へ委託する傾向が強い. しかし, 前提となる役割分担と費用負担の明確化の作業は不十分である.
  • モデル事業実施地区のアンケートに基づく分析 (IV)
    有田 博之, 松尾 芳雄, 唐崎 卓也
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 827-833,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村公園の計画手法開発の基礎的調査として, 農村総合整備モデル事業実施市町村の担当者を対象に実態把握を目的として行ったアンケート結果の分析で, 農村で求められる公園の機能と形態について検討した. 特徴的事項として以下のような傾向があった.(1)公園機能に対する要求は, 幼児・児童の遊戯に特化したものから多様化している.(2)公園形態・グリーンスタイルに対する要求は変化し, スポーツ機能と共に芝生の広場・樹陰等に対する要望が強い.(3)多目的広場型や総合公園型など広域を対象圏域とする公園を希望する地区が多い.(4)公園の形態への要望は, 都市公園の調査結果と近似する面が多い.
  • 成岡 道男, 山本 太平, 田中 明, 井上 光弘
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 835-844,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    潅漑を考慮した二次元毛管補給モデルを提案し, これを実験モデルにより検証した. この結果, 数値モデルによる土壌水分分布の再現および毛管補給量と浸透損失量の推定が可能であることが示された. 浸透損失水が根群域周辺に残留し, 毛管補給の補給水源になることが示唆された. 残留水分量の増加に伴って, 毛管補給量が増加することが示された. また, 圃場で実測された根群分布を用いてシミュレーションを行った結果, 二次元毛管補給モデルを用水計画に応用する可能性が示唆された.
  • 筑紫 二郎
    1995 年 1995 巻 180 号 p. 845-851,a3
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    従来の土壌-植物-大気系(SPAC)モデルでは, 植物中の水分移動は単なる物理的な現象として扱われてきた. つまり, 気孔からの蒸散は葉の水ポテンシャルと関係づけられるという考えに基づいて, モデルは構築されてきた. しかし, 植物生理学における最近の知見によると, 気孔をコントロールしているのは根からの信号物質であるといわれている. そこで, 植物の水環境についての最近の知見を整理するとともに, その知見を考慮したモデルを紹介した. それによって, 最近の研究の動向を探り, それらモデルに内在する問題点と将来の研究の展開について論じた.
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