農業土木学会論文集
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1997 巻, 189 号
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  • 佐藤 洋平, 増田 健, 渡辺 雅洋
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 331-337,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村の活性化を進める上で大きな意味を持つ観光保健休養機能を取上げ, それがもたらす便益を評価した. 具体的には, 使用料や入場料を徴収しないレクリエーション活動の空間として整備されている横浜市「寺家ふるさと村」を対象に, 地域旅行費用法を適用し, そこの経済的価値を評価した. 各ゾーンの訪問頻度を説明する旅行費用モデルを, さらに需要曲線を推定して, 消費者余剰を求めた.「寺家ふるさと村」がもたらす観光保健休養機能の経済的便益は年間で約8,000万円と推定された. これは年間の経常的維持管理費用の3倍強に相当する.
  • 農業集落排水処理施設の整備に関する住民意識の解明 (I)
    木俣 勲
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 339-346,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村定住条件創出の核となる農業集落排水施設についての住民意識を多面的に把握するために, TN法第1ステップを適用し, 住民が認識している施設に対する多面的な意識を構造的に明らかにできた. 期待としては,(1) 事業による精神面への効果, 定住条件の改善効果や水環境保全・改善効果,(2) 生活環境改善効果や農業生産環境改善効果がある.
    一方,(3) 運転コストの負担金, 事業実施, 処理施設の場所の位置および確保, 受益者負担, 処理施設の構造, 日常管理について懸念している.
  • 農業集落排水処理施設整備に関する住民意識の解明 (II)
    木俣 勲
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 347-355,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水事業の多面的機能についての住民の意識調査の結果, 以下のような結論を得た.
    (1)分析手法としてDEMATEL法が; 施設整備に関する住民意識の総合的な関連構造を的確に把握する上で有効である.(2) 期待の代表的効果は生活環境改善効果, 水環境保全・改善効果,精神的効果, 農業生産効果, 定住条件の改善効果である.(3) 農業生産効果,生活環境改善効果が水環境保全・改善効果,精神的効果に影響を及ぼしている.(4) 影響関係の効果項目相互間でさまざまなフィードバックの存在が認められた.
    事業の多面的機能の実現により, 農家以外の受益者をも含めた集落住民による地域活性化活動の展開を支援する事業の創出の可能性をもこの分析結果は示している.
  • 緒方 英彦, 國武 昌人, 近藤 文義, 中澤 隆雄, 山下 博
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 357-364,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物における温度応力の解析結果は, 入力パラメータである熱膨張係数と弾性係数の影響を顕著に受ける. そこで, 実物のRCボックスカルバートの上スラブ内部で計測した温度応力, 温度, そしてひずみの結果を用いて, 温度応力の中でも内部拘束応力を三次元有限要素法で適切に解析するのに必要な熱膨張係数と弾性係数について考察を加えた.
    まず熱膨張係数は, コンクリート内部温度の上昇域と下降域に分けて考察を加え, 次に弾性係数は, 4つの推定方法を用いて温度応力を解析し, いずれが実測の温度応力を近似するのに適しているのかを考察した.
  • 渡辺 正平, 岸 武保
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 365-374,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    表面に垂直荷重を受ける有限深さ平面弾性体に生じる変位解の半無限体への適用性と, 有限領域弾性体の応力解に及ぼす寸法効果について, 主に応力関数による解析解とその数値計算によって考察した. さらに, 光弾性実験の半無限体への適用性についても検討した. その結果, 剛性基盤上の弾性体の鉛直表面変位は弾性体の深さと載荷幅の比の増加に伴って一定の値に収束する傾向はみられなかった. そして, 載荷部近傍の鉛直応力は有限領域弾性体と半無限体のものが近似する傾向がうかがえたが, 最大勢断応力にはそのような傾向はみられなかった. そのため, 光弾性実験から分布荷重を受ける半無限体の応力を推定することは容易でないことが判明した.
  • 畜産主体の集水域における窒素流出に関する研究 (IV)
    志村 もと子, 田渕 俊雄
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 375-380,a1
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    養牛6地区(舎飼3地区・放牧3地区)の河川水の水質(EC・T-N濃度・NO3-N濃度)を調査した. 飼養頭数密度と硝酸態窒素濃度との間には正の相関が見られた. 養牛の河川水質への影響は素掘貯留池を伴う養豚より小さく, 窒素排出率も10%以下と養豚の1/3以下にとどまった. 養牛地域は低飼養密度のため下流部における窒素濃度がT-N濃度で4.4mg/l以下, NO3-Nで3.0mg/l以下と低く, 解析の際にはバックグラウンドとなる面源の影響が相対的に大きいことを考慮する必要がある. また, 舎飼と放牧では放牧地の河川の窒素濃度の方が, 低い傾向が見られた. 放牧中の夏季と放牧しない冬季の濃度差はほとんど見られなかった. 肥培潅漑地区では若干の濃度抑制効果が見られた.
  • 流出負荷予測タンクモデルに関する研究 (II)
    黒田 久雄
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 381-388,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    純農業地区の非潅漑期を対象に, NO3-N日流出負荷量を簡便に推定するモデルを作成した. モデルは, 集水域を台地と低地に分けた並列型タンクモデルを採用した. また, それぞれタンクの段数を変化させモデルの精度を考察した. その結果, 台地4段・低地2段モデルと台地2段・低地2段モデルの精度差はわずかであった. NO3-N日流出負荷量の推定はLQ式法と濃度係数法の2方法を用いた. LQ式法は, 収支誤差率±3%以内で, 相対誤差率は, 月別LQ式で約15%, 全期間LQ式ではそれよりも8%程度精度が落ちた. 濃度係数法は, 収支誤差率-3.3%, 相対誤差率15%程度で推定できた. どちらの方法でも精度よく推定できることがわかった.
  • 増本 隆夫, 高木 強治, 吉田 修一郎, 足立 一日出
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 389-398,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北陸地域を対象に, 中山間水田の耕作放棄が流出にどのように影響するかを, 放棄区と耕作区の流出観測に基づく流出特性の比較によって明らかにした. 放棄区の流出機構は多雨や渇水などの気象要因の影響を受けやすく, 特に, 干ばつを境に流出特性が大きく変化した. すなわち, 十分な降雨と地下水供給のもとで湿潤状態にあった放棄区では, 流出率や流出ピークが耕作区より大きくなっていたが, 干ばつによる土壌の乾燥によって, この大小関係が逆転した. この流出変化は, 土壌構造の変化に起因したもので, 干ばつ後の営農管理によりその影響が軽減された耕作区とは対照的であった.
  • Masayuki FUJIHARA, Toshihiko KAWACHI, Gyozo OOHASHI
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 399-409,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    新たな漁場を造成するための人工湧昇流構造物の効果を予測する目的で, 物理一生物結合数値モデルを開発した. 本モデルは流体力学モデルと植物プランクトン動態モデルから構成されている. 流体力学モデルにより潮流場と残差流場を合成した流場を計算し, その流場において植物プランクトン動態モデルを実行させる. 植物プランクトン動態モデルでは, 溶存栄養塩と植物プランクトン間のリンのフラックスが計算される. このモデルにより植物プランクトンが, どこで, どれくらい増えるかという定量的な予測が可能となる.
    このモデルは将来計画されるであろう人工湧昇流漁場開発事業の評価のための強力な武器となるであろう.
  • ハス田の圃場整備に関する基礎的研究 (I)
    長嶋 律, 多田 敦, 東 照雄
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 411-418,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    レンコン表皮の黒変現象と褐変現象の関係, それらと作土のEhとの関係について, 現地圃場でこれらの関係を実測確認し, 次のことが明らかになった.(1) 黒変・褐変物質共に主成分は鉄である.(2) 黒変・褐変物質は共にEhがほぼ-100mV以上の場所で付着し, Ehの高い場所で多く付着する.(3) ハス田のEhは,夏期には低い領域にあるが, 秋・冬期の温度低下に伴い, 作土上層から上昇する. したがって, 収穫最盛期の冬までEhを低く保ちうる圃場・水利条件が必要である.(4) 土壌Eh以外に黒変・褐変現象に影響を与える要因として, レンコン生育深さの土壌で遊離鉄含量が低いほど,有 機物含量が高いほど黒変・褐変物質の付着は少ないことを示した.
  • ハス田の圃場整備に関する基礎的研究 (II)
    長嶋 律, 多田 敦, 東 照雄
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 419-426,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    レンコン表皮の黒変現象と褐変現象の関係,それらと作土のEhとの関係について, 現地圃場でこれらの関係を実測確認し, 次のことが明らかになった.(1) 黒変・褐変物質共に主成分は鉄である.(2) 黒変・褐変物質は共に勘がほぼ-100mV以上の場所で付着し, Ehの高い場所で多く付着する.(3) ハス田のEhは, 夏期には低い領域にあるが, 秋・冬期の温度低下に伴い, 作土上層から上昇する. したがって,収穫最盛期の冬まで勘を低く保ちうる圃場・水利条件が必要である.(4) 土壌Eh以外に黒変・褐変現象に影響を与える要因として, レンコン生育深さの土壌で遊離鉄含量が低いほど, 有機物含量が高いほど黒変・褐変物質の付着は少ないことを示した.
  • 杉山 博信, 崔 毅年, 間野 和美, 高桑 史郎
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 427-435,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    八ケ岳東部地域に位置し, 風化の進んだ火山噴出物に覆われた森林山地小流域(A=0.367km2)における観測水文データを用いて, 水文諸量間の応答特性および流出特性を検討し, さらにはタンクモデルパラメータの同定結果を吟味することによって, 以下のことを明らかにした.まず始めに, 当該試験流域では, 雨水貯留能が大きく, そのことが無降雨期における基底流出を安定化させていること, 観測流量データを高水流量グループと低水流量グループに分離するデータのグループ化は, 出水時の雨量・流量の応答特性の検出に有効であること,さらに合成逓減曲線の逓減係数とタンクモデルパラメータとの間には関連性があること等を明らかにした.次いで, 流量の日変化と日射量のそれとの応答性が明瞭であることを確認した.
  • 小泉 健
    1997 年 1997 巻 189 号 p. 437-445,a2
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    新たな社会資本整備の在り方に関する研究の一つとして, 国土庁が発表した「満足度からみた社会資本」等を活用して, 農業農村整備事業の意義を分析した. この結果,中山間地域等の農村地域は, シビルミニマム的な整備が遅れている. 財政力からみても, 農村は都市とは異なった発展段階があり, 都市が最終の農村の姿ではないと考えられる. 投資効果は, 農村地域は効果の高い地域であり, 農業農村整備事業の意義は大きい. 生活環境の整備と併せて生産基盤の一体的・総合的な整備が強く要望されている. 農業農村整備事業においても, 整備の発展段階があり, 整備を推進するにあたり, 最終的な農村の姿を描くことが重要であること等がわかった.
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